のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

【ドラマ】ぴんとこな

2013年09月20日 01時08分09秒 | テレビ鑑賞
■ぴんとこな
■2013年度夏クールドラマ
■TBS木曜21時
■脚本:高橋麻紀
■出演
 玉森裕太、中山優馬、川島海荷、松村北斗、ジェシー
 山本耕史、高嶋政宏、榎木孝明、江波杏子、岸谷五朗

■感想 ☆☆*
歌舞伎を題材としたドラマだというので楽しみに見始めたのですが、回を追うごとに歌舞伎の場面が少なくなってごくごく普通の恋愛ドラマになってしまったのが非常に残念でした。
優馬さん演じる歌舞伎の門閥外故に努力を続けている一弥が今までの努力で培った技術力、演技力で玉森さん演じる主役の恭之介さんを圧倒していた初回、第2回を経て、どんでん返しを見せつける第3回が私の中でのクライマックスでした。それまでは一弥の努力に基づいた技術力、演技力を目の当たりにして、敗北感を味わってきた恭之介が、持って生まれた「華」で初めて一弥を圧倒する回。しかも恭之介自体は自分に華があることにも一弥が自分に対して敗北感を抱いたことにもまったく気付かない、そんな回です。

役者として大成するためには勿論、努力が必要不可欠だけれど、努力だけでは芸能の世界で人を惹きつけ、輝き続けることは難しいんだろうなぁ、という説得力にあふれた回でした。言うなればBOSSのCMで宇宙人ジョーンズさんがSMAPさんたちに「歌も踊りもうまくはないけれど、でも。」と感嘆しているのも、きっとそういうことじゃないのかなぁ、と思うのです。
ふたりの関係は「ガラスの仮面」で言うところのマヤと亜弓さんの関係。だからふたりがお互いに切磋琢磨して芸を磨きあうところがもっともっとじっくり丁寧に見たかったなー、と思うのです。ついでに少しとっつきにくいところのある歌舞伎の世界についても、もっともっといろいろと説明してほしかったな。第3回では演目についての注目ポイントも江波さんが丁寧に説明してくれていて、そういった面でもとても親切で見やすい回でした。そういった回がちゃんとあったのに、そのテイストを終盤まで活かしてくれなかったことがとても残念です。

ストーリーは単純明快。非常に説明しやすく、たまたま遊びに来て初めて見ることになった妹さんには「あ、このドラマ、『花より男子』だと思ってください。」の一言ですべて通じました。ストーリーは本当にほぼ『花より男子』です。オレ様キャラでデレ要素が高い玉森さんは完全に道明寺だったし、貧乏でおんぼろアパートを追い出され、玉森さんちで一緒に住まわせてもらうことになる海荷ちゃんも細かいエピソードからしてつくしちゃんで、色んな場面でデジャブを感じまくりのドラマではありました。ただ、優馬さん演じる一弥は、花沢類らしく海荷ちゃんに対しては王子様のように優しかったけれど、通常仕様はクールビューティ、かつ毒舌、にも関わらず、芸の道に対しては熱血漢、というかなり花沢類とは異なるキャラクターを持った人物でした。歌舞伎界においては、歌舞伎の家に生まれたか、そうでないか、で待遇は大きく異なる(らしい)ため、名門、木嶋屋でぬくぬくと育った恭之介に対して大きなコンプレックスとやっかみを持っているところも、道明寺と同じく恵まれた人だった花沢類とは大きく異なる設定でした。門閥外だからこそ、恭之介より何倍も努力する必要があることを自覚して芸の道を突き進む姿が彼の意志の強そうな眼差しにとても合っていました。

脇を支えていた高島兄さん、岸谷父さん、江波さんは、どの方も重厚感あるたたずまいで「歌舞伎」を愛し、「歌舞伎界」で誇りを持って生きている方々だということが伝わってきました。高島兄さんの少し舞台色の強い若干、くどい演技は「歌舞伎」とよく合っているなぁ、という気がします。ただ、岸谷父さんには少し違和感を抱いてしまったかも。私は岸谷さんの軽い演技のほうが好きなのかもしれません。重厚な雰囲気を出せば出すほど、「コメディ」っぽく認識してしまったのは完全に私のせいです。岸谷父さんは悪くない。
そして山本耕史兄さん!重厚感がまったく漂わない山本兄さんは飄々としたキャラクターにも関わらず歌舞伎に対する真摯な姿勢や深い愛情がきちんと伝わってくる素敵な先輩でした。

・・・というわけで、やっぱりこのドラマ、もっともっと面白くなったはずなんだけどなぁ、という気持ちがぬぐえません。
もしかすると、こういったテーマのドラマは視聴率とか度外視できる(というわけではないけれど、そう公言することが許される)某国営放送局で作ったほうがいっそ清々しく歌舞伎に主軸を置いて作成できたのかも。歌舞伎に対する映像や情報も多く持ってそうだし。歌舞伎に青春をかける若者の姿を主軸で描いて、それに恋愛要素をちらりとかませる、ぐらいのほうが面白かったんじゃないかなぁ、という気がしてなりません。好きな題材で好きなキャストで好きなテイスト、と「好き」が揃っているドラマだっただけに残念。