旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

風を感じて! 黄花コスモスとZとマルゲリータと

2022-08-20 | 単車でGO!

黄色と橙色が入り乱れて、夏の終わりの高原に “黄花コスモス” の花畑が広がっている。
トップスの色に似ているから、はしゃいで花畑の中の小径にかけ込む彼女を見失いそうだ。

渋谷からR246を走ってきた。付き合いはじめの1,000kmは1速から6速まで満遍なく回したいからね。
県道151号に乗り換えて、富士の裾野を快適に駆け上がってくると、須走浅間神社の大鳥居にぶつかる。
ちょっと寄り道、手水舎の冷たい水で清めたら、二拝二拍手一拝、ふたりの旅の安全を祈る。

上空の雲は驚くほどのスピードで流れ、時々思い出したように青空がのぞく。富士山は見えない。
ドーン、ドーンと遠雷が聞こえる。雨か!一瞬の緊張。どうやら東富士演習場の砲音のようだ。

籠坂峠へのR138を駆け上る。右へ左へ深いカーブの内側に体ごと傾けて、だいぶ息が合ってきたね。
峠の下りは案外短くて、ほどなくT字路に突き当たるとそこは山中湖畔、ボクたちは左に折れて花畑をめざす。

やっぱりは “ひまわり” が好きなんだね。
藍色のリボンを飾った彼女の麦わら帽子が、微笑む “ひまわり” たちの合間に見えたり隠れたりしている。

白に赤、ピンクにオレンジ、それに黄、彩り鮮やかな “ヒャクニチソウ” の花畑は、まもなく見ごろを迎える。

彼女が花畑を去りたがらないのは、見えそうで見えない富士山のせいだね。
ちょっと今日は無理なようだね。そんなにがっかりしないで、また訪ねたらいい。

湖畔のピッツェリア、相変わらずビールテイストにこだわるボクを見て、半分呆れて笑っているね。
彼女のアイスティーは大きめのグラスに角氷、レモンよりも薄く切ったオレンジを浮かべると似合いそうだ。
テラス席で涼風に吹かれる。凪いだ湖上をスワンが滑っていく。それにしても “マルゲリータ” は美味しかった。

野外シアターでは、SWEET LOVE SHOWER 2022 というイベントが開かれているらしい。
ライトが激しく点滅し、アーティストが大音響で愛を叫ぶ。思わず顔を見合せ、ボクはちょっと照れくさい。

復路はR413を相模原へ下る。夏の終わりを感じさせる湖畔から、高度を下げるにしたがって猛暑が戻ってくる。
途中通り雨に降られた。焼けたアスファルトが冷やされる匂い、現実に引き戻されていくボクがいる。

<40年前に街で流れたJ-POP>
246:3AM / 稲垣潤一 1982


風を感じて! ひまわり畑とZと渚橋のコーヒーショップ

2022-08-06 | 単車でGO!

中央環状線の長い暗闇を抜けると、真正面から真夏の朝日に射られる。
反射的に左手を翳して「どこまで走るの?」と彼女。
何本もの赤い巨大なクレーンと、色とりどりのコンテナを見ながら湾岸線に合流する。

「湘南の海を見ながらコーヒーを飲もう。」 若い頃のボクなら決してこんな台詞は口にしない。
左手には何本もの新幹線のぞみが生真面目に整列している。

「モーニングコーヒーのために走るの?楽しいのね。」
高度を上げていく銀色の機体が、広げた翼いっぱいに朝日を浴びて、キラッと光った。

「火星の基地みたいね。」 時折、彼女は不思議な発想をする。
人工島に広がる緑の森から、オレンジとホワイトで塗られたチェックの巨大なサイロが何基も生えている。
まるで尖塔のような煙突が幾つも天を突き、それら構造物をあたかも血管のように錆びたパイプが繋いでいる。
このコンビナートのことを言っているのかな?
湾岸線はコロニーの上を飛び去って、やがて横浜ベイブリッジに差しかかった。

逗子インターから続くランプウェイの急カーブ、右に左に車体を傾けるとそのまま逗葉新道に吸い込まれる。
トンネルを2本潜る。R134となった道路が海に出会う渚橋交差点を左折すると、そのコーヒーショップはある。

エスプレッソマシーンで淹れたコーヒーがテラスに薫る。
シュリンプとタマゴそれにフレッシュトマトのクラブサンドイッチをシェアして、ボクたちの朝食だ。
遠くに見える江ノ島を遮るように、カラフルなセイルたちが海を滑っていく。

「近くにね、ひまわりが咲く丘があるの。今頃キレイだと思うわ。」
パーキングを出るタイミングで彼女がつぶやいた。
左に点滅していたウインカーを右に出し直す。冷静を装って。ボクたちは三浦半島を南に向かう。
「詳しいんだね。誰と来たの。」もちろん台詞の後半は飲み込んだままだ。

<40年前に街で流れた J-POP>
SPARKLE / 山下達郎 1982

Hearts / The Square 1982


風を感じて! She's so delicate.

2022-07-09 | 単車でGO!

往復4車線の旧国道、彼女は約束の店の前でボクを待っていた。
暑いんだから入って待てばいいのにと云うと、上目遣いに「いいの」と一言。愛おしくなる。

ほどよく冷房が効いたショップに入る。アイスコーヒーを運んできたマスターが、そのままボクたちの席に座る。
頼みもしないのに、お節介にもマスターは気難しい彼女の扱い方をボクに説明し始めた。
彼女がこの店の常連とは聞いていたけど、元カレでもなければ、共通の友人でもあるまいに。

30〜40分位だろうか、ようやく奇妙なテーブルから解放されて、彼女と二人きり、少し遠出をしようか。

今日の彼女、しなやかな脚にはブラウンのタイトスカートを纏い、さりげなくシャンパンゴールドの
アンクレットを着けている。上品なオレンジのトップスに包まれた上半身は、案外ボリューミーだ。

そういえばマスターが言っていた。近頃の彼女はデリケートだから、最初の1,000kmは4,000rpm以下でと。
気遣ってやれってこと?言われるまでもない。スロットルは優しく開き、シフトダウンはゆっくり時間をかけて。

店を出てから2時間、ボクたちは多摩川に沿ったワインディングを駆けて神秘の大宮殿までやってきた。
ここに誘ったのは、彼女が大宮殿の主人公に相応しいほどステキだから。ここはシンデレラが踊った古城か、
はたまたララ・クロフトが躍動した遺跡の空間か、どちらを演じたら似合うだろうか。

古城に例えるなら、100名の晩餐会が開けそうなゴールドのシャンデリアが煌めくダイニングを通って、
舞踏会を催すホールは、5階まで吹き抜けるような尖塔を、カクテル光線が内から照らしている。

大宮殿を後にしたボクらは、一度多摩川の谷間で戻り、さらに上流へと走る。やがてエメラルドグリーンの
水を湛えた湖畔に出る。風が青もみじを揺らして一瞬涼やかになる。少し話そうか。

せっかくだからダムにも寄ってみる。空と山と水が織りなす青から緑へのグラデーションが美しい。
夏の日差しは痛いほど射るけど、標高500mを渡る風は案外涼しげなのだ。

ダム天端から下を覗き込むとさらに涼しい。下半身をツーと冷ややかなものが流れる感じだ。
もっとも高いところが苦手だという彼女は、駐車場に残ると言って聞かなかった。

そういえば「最初のデートはイタリアンが無難だよね」と、うちの部の若い社員が二人で話していた。
どこぞのハウツー本にでも書いてあったのだろう。
でもこの谷間に気の利いたイタリアンレストランがある訳もなく、やはり古民家風の蕎麦処を択んだ。

“なめこざるそば” の注文を取って立ち去りかけた店員さんに、「あと」っと挙げかけたボクの右手を
彼女の右手が柔らかく押さえて、「ビールはだめよ」と優しく囁く。
どうやら二人のときはアルコールはNGらしい。これから呑み人の呑まない旅がはじまりそうな予感だ。

湖畔を巡るワインディングの橋上、今日、彼女を連れて帰りたい衝動に駆られている。それとも拙速だろうか。
そんなボクの葛藤を背中で感じて楽しんでいるだろうか。湖面を見つめる彼女が長い髪を風にそよがせている。

<40年前に街で流れたJ-POP> 
彼女はデリケート / 佐野元春 1982
     


風を感じて! “風立ちぬ” いまは秋の中山道

2021-10-23 | 単車でGO!

「坂本宿」へやって来た。正面に中山道が登っていく碓氷峠の難所・刎石山が見える。
ちょうど10年前、小学生の息子と3日かけて歩いた上州・坂本宿から信州・塩名田宿まで秋の中山道を駆ける。
今日の相棒は「火の玉カラー」のZ900rs、そういえば初夏の軽井沢へも一緒にやって来たな。

坂本宿の手前には碓氷関所跡がある。江戸幕府によって設置された碓氷関所は関東出入国の関門として、
箱根関所とともに、幕府が「入鉄砲と出女」を厳しく監視したところである。

火の玉カラーは足でしか越えられない中山道旧道を離れ、国道18号線で碓氷峠を登る。
180余のカーブが連続する道は、概ね信越本線廃線跡に寄り添うように進むので、明治の鉄道遺構を目にする。
めがね橋と称される碓氷第三橋梁が、秋空を背景にレンガ造りの美しいアーチを見せている。

軽井沢まで駆け上ったら中山道旧道の碓氷峠に先回りする。色づき始めた木々の遥かに高崎の街を望む。
日本書紀では坂東平定から帰還する日本武尊が妻の弟橘媛を偲び『吾妻(あづま)はや』と詠じたとある。

碓氷峠の山頂すなわち上信国境には「熊野皇大神社」が鎮座している。本来一つの神社であるのだけれど、
長野県側に「熊野皇大神社」、群馬県側に「熊野神社」と二つの別々の神社が並んだ形になっている。

神社と同様に上信国境を跨いでいるのが「元祖力餅しげのや」だ。
名物力餅はひと皿500円、あんこ、きなこ、ごま、くるみ、大根おろしの5種類から択べる。
信州に来たからには “くるみ” がお奨め、でもボクには目が醒めるような “大根おろし” の辛味が美味しい。

「軽井沢宿」はまだまだ賑やかな旧軽井沢銀座あたり、Z900rsはセカンドギアでそろりそろり人混みを進む。

「沓掛宿(中軽井沢)」に差し掛かるころに浅間山にかかっていた雲が流れた。
林が切れた場所を見つけて単車を停める。裾野を広げたその雄大な姿にはいつもながら惚れ惚れする。

 国道18号線と離れて静かな「追分宿」にはギャラリーや堀辰雄文学記念館、それに美味い蕎麦処がある。

紺に染め抜いた暖簾をくぐった店内は、昼のピークを過ぎて静かな空間になっている。
そばとミニ天丼、それに “クルミだれ” を注文する。コシのある二八に甘いクルミだれを絡ませて美味しい。
海老天の脇を固めるのは地産のサツマイモとタマネギ、この天ぷらがまた甘くて旨い。
口が甘ったるくなったら、ちょい辛のつゆに山葵を溶いてズズっと啜る。いいね、信州を感じる。

 追分で国道18号と分かれた中山道は県道となって佐久平に向かって長い長い下り坂をゆく。
時の流れに取り残されたような「小田井宿」は、道の両側に用水を流して静かに佇んでいた。
岩村田の町で西に転じると、右に夕日を浴びた浅間山、左にシルエットとなった蓼科山の眺望が素晴らしい。
旅の終わりの「塩名田宿」で千曲川の流れにぶつかる。今にも秋の陽が赤い橋の向こうに沈んでいく。
今度はいつ走れるだろうか。っとZ900rsは踵を返して満月へと向かう月夜の上信越道を坂東へと帰るのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
風立ちぬ / 大瀧詠一 1981


風を感じて! 清津峡と星峠の棚田と由屋のそばと

2021-10-02 | 単車でGO!

 塩沢石打ICから十二峠トンネルで尾根を貫くと、黒部峡谷・大杉峠とともに日本三大渓谷として知られる
「清津峡」を訪ねることができる。大渓谷を穿つ光のトンネルを歩いて涼やかな渓谷のパノラマをめざす。

第三見晴所「しずく」は、湾曲したトンネルの内壁に雫のような鏡が散りばめられている。
雫たちは渓谷の風景と光を写し、朱のライトに浮かび上がるように、超現実的な空間を見せてくれる。

パノラマステーション「光の洞窟」では、水鏡が清津峡の景観を反転して幻想的な空間を演出している。
冷たい渓谷からの水に足を浸してトンネルの出口まで進むと、涼やかな渓谷のパノラマが眼前に広がった。

渓谷から解き放たれた清津川は広い河道をつくって信濃川へと向かって流れていく。
清津川に寄り添うR353も扇状地を緩やかに降っていく。空冷4気筒の低いエンジン音が心地いい。

 十日町に抜けたら名代生そば「由屋」を訪ねる。考えてみたらこの店は初めましてだなぁ。
厳選された地元の玄そばを石臼で挽き、布海苔(ふのり)でつなぎ、打つ。“へぎそば” はこの地方の郷土料理。

突き出しの小鉢を箸で突っつくうちに、へぎ(片木)に一口ずつ美しく手繰り盛られた三人前が届いた。
布海苔独特のツルツルとした喉越しが楽しくまた美味しい。
魚の出汁が効いた麺つゆが特徴的で、薬味に刻みネギとからしがを添えるのも由屋ならではなのだ。

R353からR403に乗り換え、上越方面に狭隘な国道を走らせて「星峠の棚田」を訪ねる。
大小様々に折り重なるような棚田は黄金に染まって収穫を待つ。ススキの穂が揺れていた。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ガラスのジェネレーション / 佐野元春 1980


風を感じて! "風薫る" 軽井沢へ

2021-06-12 | 単車でGO!

 瑞々しい若葉を透して陽光降りそそぐ5月の終わり、火の玉カラーで碓氷峠を駆って軽井沢へ。
新緑の季節を迎え、賑わいが戻って来た旧軽井沢銀座から、ぐるっと浅間山を廻ってみようと思う。

閑静な三笠通りから白糸ハイランドウェイに入る。適度なカーブに単車を操る楽しさを満喫する。
岩肌から浸み出す湧水が無数の糸を垂らす「白糸の滝」はまるで水のカーテンのよう。涼しげな情景に癒される。

浅間山の北東山麓は天明3年(1783年)の大爆発で噴出した溶岩流が凝固したゴツゴツした山肌を見せる。

溶岩流の風化によってできた奇勝は「鬼押し出し園」に観ることができる。先を急ぐ今回は通過だけど。

浅間牧場入口の交差点に地粉を使ったそば処がある。結果として吞み人の「バイクめし」は蕎麦が多い。
"わらびのおひたし" が泣かせる、これを抓むに冷酒が欲しいけど叶うわけもない。代わりにノンアルを呷る。 

     

お待ちかねの "野菜天ざる" が運ばれてきた。なんとも盛りがいい。
たらの芽、ふきのとう、こごみがカラッと揚がって、野菜天というより山菜天、微妙な苦みに季節を感じる。
黒いホシ(蕎麦殻)を散りばめた二八をズズッと啜る。かすかな香りが鼻腔をくすぐって美味い。

つまごいパノラマラインで北麓を廻り込む。四阿山、白根山が美しい。遠く北アルプスの銀の屏風が煌めく。
黒い大地をキャベツの緑が覆い始めた高原のワインディング、右に左に単車を傾け走りは爽快だ。

県道94号(東部嬬恋)線を下ると東御市、旧北国街道の宿駅・海野宿の町並みが佇んでいる。
用水が流れその両側に立ち並ぶ格子戸の美しい家並み、溶け込んだ火の玉カラーの鉄馬、案外絵になるね。

江戸時代の家並みを抜けたら、日が傾きかけた山麓を西から南へ、浅間サンラインをアップダウンして軽井沢。
そよ風に誘われ、新緑を浴びた浅間山周遊の旅なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
SOMEDAY / 佐野元春 1981


風を感じて! "浅き夏" 三浦半島へ

2021-05-22 | 単車でGO!

 渋滞をすり抜けて、横浜横須賀道路を飛ばしてきた。三浦海岸交差点から県道215号に入る。
賑わうビーチを左手に沖ノ島を追い越すと、県道は短いワインディングになって台地に駆け上がる。
青々とした畑の先に浦賀水道を見下ろし、房総半島は意外と近くに横たわっている。
大小の貨物船が白い航跡を引いて5月の海を滑って行く。爽風に吹かれて心地いい。

 京急バス「海35」系統が走るルートは、山本コウタローとウィークエンドの『岬めぐり』の世界らしい。
海岸、漁港、入江を巡ってバスは走る。いや水冷4気筒の900ccで岬を廻る、ひとりで僕は ♪

剱埼灯台の台地から下ると215号は西へと針路を転じ、江奈湾、毘沙門湾、宮川港と進む。
風力発電の巨大な風車が回る展望台から城ケ島、その先に伊豆大島、目を転じると富士山まで望む。

眼下にヨットハーバーが見えたので、エンジンブレーキを効かせて細くうねる坂道を海岸まで下りる。
実はこの入江の小さな漁港に面して、おいしいマグロが食べられる隠れ家的民宿食堂があるのだ。

 小一時間待って窓際の小さなテーブルに収まる、ノンアルを呷る。網戸を鳴らして海風が気持ちいい。
人心地ついたころに "中トロ漬け丼" 登場、ご飯を覆う分厚い中トロの「朱」と、タレの香ばしさがそそる。
ひと口運んだらマグロの旨みが口中に広がって、、、なんも言えねぇ。至福。

京急バス「海35」系統はこのまま西へ2.5kmほどの三崎港へ、さらに三崎東岡まで走る。
でも城ケ島・三崎港方面は相当に混んでいるらしい。然らばここでUターン。目的は達したからね。
旨マグロ深く 腹に沈めたら? この旅終えて 街に帰ろう ♪

<40年前に街で流れたJ-POP>
出航 SASURAI / 寺尾聰 1980


風を感じて! "紅葉の帳" 日光東照宮へ

2020-11-21 | 単車でGO!

 東北自動車道を飛ばして日光までやってきた。この秋一番の冷え込みにフライトジャケットでも凍える。
大正ロマンを感じさせる白亜の洋館・日光駅とクラシカルな機能美のCB1100が調和しているでしょう。

江戸時代には日光東照宮に蕎麦を献上した「霧下そば」の名産地、その田園風景の只中に「長畑庵」が在る。
また蕎麦かい?なんて云わないで欲しい。10月末から新そばの提供が始まって今が訪ね時なのです。

竹ざるに盛られて "三合打" が運ばれて来た。メニューは「そば」のみ、もちろん十割だ。
大盛りの薬味とたっぷりのそばつゆが嬉しい。香り高くほのかに甘い新そばをずずっと啜って幸せなのだ。

 新そばの香りを余韻にCB1100で東照宮まで駆け上がる。晩秋の陽は午後ともなると弱々しい。

 参道を抜け、石鳥居をくぐって神域へと向かう。っと心なしか身が引き締まる。
五重塔、三神庫(さんじんこ)、回廊の「朱」が、紅葉にも負けず劣らず鮮やかだ。
石段を上ると豪華絢爛な陽明門そして唐門、まばゆい金と白で彩られた彫刻たちには紅葉の「黄」も霞む。

 杉並木に今にも落ちそうな陽が射し込む。きっと東北自動車道を走っているうちに夜の帳が下りるだろう。
それにしても、無骨だけどスタイリッシュなCB1100には、男のボクでも惚れてしまいそうだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
アンジェリーナ / 佐野元春 1980



風を感じて! "野山の錦" 三峯神社へ

2020-11-07 | 単車でGO!

 KAWASAKI の火の玉カラーがもみじの「朱」とコラボレーションして、なかなかいい絵になっている。

里では気配もなかったけれど、三峯神社(標高1,100m)はまさに "野山の錦" って感じなのだ。

皆野寄居有料道路から続くR140バイパス、水冷4気筒はエキゾーストサウンドを響かせてグイグイ高度を稼ぐ。

 まるで『信心無き者は去れ』とばかりに睨みつける随身門の「狼」に導かれて本殿に詣でる。
三峯神社の神の使いは「狼」、獅子でも狛犬でも狐でもなく、参道の至る所に「狼」が鎮座しているのだ。

東征途上の日本武尊がこの地を通った際、三峯(雲取山・白岩山・妙法嶽)が美しく連なる景色に感動し、
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉册尊(いざなみのみこと)の国造りを偲んで二神を祀ったのが神社の起源だ。

日本武尊が三峯を越えたのは、こんな "野山の錦" の頃だったのだろうか。

 遅いランチは "豚みそ丼" を狙ったのだが、この日はすでに営業終了の看板が掛かっていた。
然らば手打ちの十割蕎麦の人気店「みやび庵」へ、お待ちかねの「新そば」の幟がはためいている。

三番粉を挽きこんだ香り高く野趣に富んだ "いなか蕎麦きり" をいただく。
蕎麦つゆをつけずに一本を啜る。香りは高くそしてなんとも甘い、これはなかなか美味い蕎麦に巡り合った。

 エメラルド色に流れる長瀞峡の荒川、この辺りが錦に染まるまであと数日かかるでしょう。
それにしても、思いのほかグラマラスな Z900RS のボディーラインに終始クラクラなボクなのです。
この娘本命なんだけれど、この秋冬シーズンは様々試そうと思っている。"吞まない旅" 続きます。

<40年前に街で流れたJ-POP>
シャドー・シティ / 寺尾聰 1980


風を感じて! "秋田刈る" 筑波山へ

2020-10-24 | 単車でGO!

 大型バイクを駆って爽快に秋の澄んだ風を切る。この感覚はいつ以来だろうか。筑波山が見えて来た。

麓からいくつかカーブを切ると、大きな朱塗りの一の鳥居が現れて路は行き止まりになる。
男体山と女体山、相並ぶ二峰の霊峰を御神体「いざなぎ、いざなみ」と仰ぐ筑波山神社だ。

神社の裏手からケーブルカーに乗って10分、折角なのでヘルメットを片手に山頂まで上がってみる。

山頂(877m)から関東一円を眺望、東に霞ヶ浦が鈍く光り、南に視線を転じるとスカイツリーと摩天楼が見える。

帰り道に築100年の風情ある古民家「筑膳」に立ち寄り、"自然薯 つけとろろそば" と "季節の天ぷら" をいただく。
期待に違わない香り高い石挽き手打ちそば、青海苔を散らしてどっしりコシのある自然薯、地野菜の天ぷら、
遠くから足を運んで、多少待っても、食べるに価値のある蕎麦処と見た。

今日、旅の相棒はSV650、Vツインエンジンの鼓動を感じながら夕陽を追いかける。"吞まない旅" 始めます。

風を感じて / 浜田省吾


風を感じて! It's so easy, easy to be free.

2010-07-10 | 単車でGO!

 単車を買った。単身赴任のつれづれに。家族には内緒だ。
ずっと乗りたかったのだけれど、なかなか機会に恵まれなかった。
最初の遠出は新潟から小出へ、大湯温泉に浸かって、R252で六十里越峠を越えて奥只見へ。
入広瀬からいつ果てるでもなく、長い長い登り坂が続く。
並走するJR只見線がトンネルに吸い込まれると、R252はつづら折りとなる。
トンネルが意外と長いなと感じていると、突然、空に飛びだすかのように視界が広がった。
眼下には雪解け水を満々と湛えたエメラルドグリーンの田子倉湖が横たわっている。
これからは、時々、こいつに遊んでもらおうと思う。峠をわたる風が爽快だ。

風を感じて / 浜田省吾