旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

呑み鉄放浪記 「小さな旅」 2022.

2022-12-31 | 日記・エッセイ・コラム

80年代に流行っていましたね「いい旅チャレンジ20,000km」って国鉄・JRのキャンペーン。
「青春18きっぷ」が発売されたのもこの頃。キャンペーンのポスターは旅情を誘ったものです。
学生になったら寝袋背負って旅に出ようと思ったけれど、何時しか忘れて時は過ぎました。



"呑み鉄" という大人のゲームを始めたのは新潟に単身赴任していた頃。
単純な話、吉田類氏や六角精児氏、あるいは井之頭五郎氏のような旅をしてみようと思ったのです。

高校生や小母ちゃんに交じって鈍行列車に乗る。蔵元を訪ねて地酒を求めたら車中酒を愉しむ。
蔵元がない土地では「縄のれん」を潜って常連さんに倣ってカウンターで呑んでみる。

今年は北陸地方の私鉄線、陰陽連絡線で呑んで、また初期に呑み潰したJRのローカル線を再訪したりしました。
旅先で潜った暖簾は30軒、訪ねた酒蔵は14軒。
先々で触れる文化、風景、人情そして酒と肴は「旅」のアクセントになります。
彷徨う "呑み鉄" の旅は、まだまだ続く。と思います。

それでは皆さま、どうか酔い年をお迎えください。

わたらせ渓谷鐵道 44.1km
流鉄 5.7km
小湊鐵道 39.1km
いすみ鉄道 26.8km
御岳登山鉄道 1.0km
大山観光電鉄 0.8km
遠州鉄道 17.8km
天竜浜名湖鉄道 67.7km
伊賀鉄道 16.6km
北陸鉄道 20.6km
えちぜん鉄道 53.0km
福井鉄道 21.4km
智頭急行 56.1km
若桜鉄道 19.2km
以上、完乗

小さな旅 / 岩崎宏美


旅の途中の酒場探訪 札幌「第三モッキリセンター」

2022-12-28 | 津々浦々酒場探訪

 札幌出張の日は大雪警報に見舞われた。確か去年もそうだった。時計台にも横殴りの雪が容赦ない。
支社のメンバーとは昨晩会食したから、今宵はひとりバスターミナル裏の「第三モッキリセンター」を訪ねる。

ガラッと引戸が思いがけず大きな音を立てる。先客の視線が一斉にこちらを射る。えっ、これ不味い雰囲気か?
身体は凍えても先ずは “生ビール”、アテに “厚揚げ焼き” ではじめる。生姜醤油でカリカリと美味しい。

赤ら顔のご常連達は最早一介の余所者には関心を寄せていない。さっきの悪い予感は杞憂に過ぎなかったのか。
横に長いコの字カウンターの中、エプロン姿の昔のお嬢さん達はこんなボクにも優しく世話を焼いてくれる。

コップ一杯の焼酎と古いアイスペールが運ばれて、ホッピーを楽しむのにかなり自由度が高い。
小さな土鍋がグツグツと “とん鍋” が登場、優しい味噌味に芯から温まる。むせたのは振りすぎた七味のせいだ。

アテは “にしんきりこみ”、これには目が無いんだよね。唯一の道産の酒 “千歳鶴” の生酒のキャップを開ける。
今日は “鮭のいずし” があるよとお姐さん。こういうお奨めには乗ったほうが良い。
沿岸部の郷土料理は、米の甘みと乳酸の酸っぱさのバランスが絶妙で、これってなかなか美味い酒の肴だ。
最後の一杯に合わせて “ザンギ”。醤油ベースの甘辛いタレに漬けこんだ鶏唐は日本酒のアテに申し分ない。

大きな荷物を抱えた親父さんがオーバーコートの襟を合わせて出ていった。夜行バスで故郷へ帰るのだろうか。
さてっボクもそろそろ。堪能した昭和な大衆酒場を出る。固まる雪を踏み締めてぶるっとくる呑み人なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
北酒場 / テレサ・テン 1982


Osaka メトロに乗って 悲しい色やね 中央線を完乗!

2022-12-24 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

底冷えがする学研奈良登美ヶ丘駅、夕陽に照らされるようにオレンジに染まった近鉄7020系電車が並んだ。

行政区域は奈良市になるんだね。でもこの街に住む人や機能は奈良中心部ではなくて大阪を向いている。
冬の低気圧が張り出した日、近鉄けいはんな線〜Osaka Metro中央線を呑み潰して、大阪の海を見に行こう。

大阪・奈良の府県境に立ちはだかる生駒山地(生駒山=642m)を穿つのは、4.7kmと長大な生駒トンネルだ。
その長い急勾配を駆け下りて、Osaka Metroの24系電車が、麓の新石切駅に滑り込んできた。

第三軌条方式の複線が地下に潜って長田駅で乗務員が交代する。ここが近鉄とOsaka Metroの結節点なのだ。
さらに4つ目、JR大阪環状線との乗換駅森ノ宮で2度目の途中下車、大阪に来たら太閤はんにご挨拶したい。

弱々しい冬の陽に照らされて、さしもの5層8階の大天守も、なんだか黄昏ているようにも見える。

豊國神社前に立つ豊臣秀吉公像、軍配を手に陣羽織、具足を身に着け、彼方を見据える。何を思うのだろうか。

森ノ宮駅にスペクトリウムグリーンの20系電車が滑り込んできた。すでに車齢40年に近いベテランなのだ。

葉が落ちたイチョウ並木にパープルのイルミネーションが煌めく御堂筋、今宵の大阪は粉雪が待っている。

堺筋本町で3度目の途中下車、箒屋町筋は「本町ぼんてん」の縄のれんをくぐる。以前から気になっていた店だ。
縦長のコの字カウンターを10席ほどが囲む。炉端焼きになっているんだね。客層はむしろお嬢さんが多い。

能勢の酒 “秋鹿” を択ぶ。超辛口の純米吟醸は、香り爽やか、口当たり瑞々しく、ふくよかな旨味が楽しい。
小ぶりな焼き物に “お刺身盛合せ”、先ずはモンゴイカとタコにレモンを絞っていただく。美味しい。

“宇和島のじゃこ天” を焼いてもらった。おろしポン酢でいただく。ちょっぴり七味も振ってね。
冷えた生原酒がグラスを曇らせる。二杯目は交野の “片野桜”、深いコクとふくらみある味わいの雄町がいい。

新酒の季節、“大治郎” は大阪を飛び出して東近江の酒、フレッシュなうすにごり生原酒が美味い。
凍えるこんな日は “播磨産カキ入り湯豆腐” を。さっぱりした出汁に柚子を散らして温かいアテがいい。

マスクの中に新酒の余韻を残して、帰宅ラッシュが始まった堺筋本町から大阪市街を横切り海をめざす。

終点手前の大阪港駅、降車客のほとんどは外国人だ。欧米の方と中国系の方と半々って感じだろうか。
もちろん目的地は海遊館、なんだかその情景が寂しいと思ったら、激しい季節風に観覧車が止まっているのだ。

新鋭の30000A系にやっと当たった。最後の1区間、大阪港咲洲トンネルを潜ると終点のコスモスクエア駅だ。
Hold me tight 大阪ベイブルース ♪、恋や夢のかけらを流した冬の海が悲しい色をしている。

近畿日本鉄道 けいはんな線 学研奈良登美ヶ丘駅〜長田 18.8km 完乗
Osaka Metro 中央線 長田〜コスモスクエア 17.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
悲しい色やね / 上田正樹 1982


Go!Go!West! 2 駅そば日記・新橋「かのやそば」

2022-12-21 | 旅のアクセント

 店の名前を冠した “かのやそば” を択ぶ。ワカメにたぬき、めかぶをのせて、たっぷりのとろろ昆布。
関東のそばにしては澄んだ本ガツオ出汁を絡めてズズッと啜る。次第に昆布のとろみも効いてきてまた美味い。

新橋駅構内にあるけれどJR-Cross系ではないね。こういうお店には頑張ってほしいな。選択肢が多いと楽しい。
1番線に滑り込んできた小田原行きに乗って、次は品川で一杯ですね。ご馳走様でした。

新橋駅構内「かのや」: かのやそば 550円

<40年前に街で流れたJ-POP>
アンサーソングは哀愁 / 早見優 1982


真っ赤なモミジのトンネルをくぐって 大山ケーブルカーを完乗!

2022-12-17 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

中間駅の大山寺駅で01号車と交換する。ケーブル鉄道ではお馴染みの光景だ。スッキリと晴れ渡った週末、
z900rsと紅葉の名所にやってきた。案の定の大渋滞でバイクのスナップもなければ、呑みレポもないなぁ。
まぁケーブルカーは鉄道事業法によるから潰しておかないといけない。呑み鉄旅としてご覧いただこうか。

紅葉見ごろの週末だから、ケーブルカーの乗車には小一時間の列に並んで、漸くホームまで辿りついた。
軽快なチャイムに迎えられてブリリアント・グリーンの02号車が降りてきた。
この顔どこかで見たことがあるような。そう小田急ロマンスカーVSE・MSEと同じデザイナーによるものらしい。

倶利伽羅堂は大山寺にあって唯一の朱塗りの建物。真っ赤な紅葉をくぐって本堂に向かう旧い石段を往く。
奈良の東大寺を開いた良弁僧正が天平勝宝七年(755年)に開山した大山寺は、関東にあって紅葉の名所だ。

大山寺へと続く見上げるような階段の両脇には、ずらりと三十六童子像が並んでいる。
その前掛けの紅と、階段に覆いかかぶさるモミジのトンネルの紅とのコラボレーションが楽しい。

3つ目のトンネルを潜り、477‰の最急勾配を登ってケーブルカーはぐいぐいと高度を稼いでいく。
終点の阿夫利神社駅は標高678m、振り返ると鈍く光る相模湾の向こうに三浦半島が横たわっている。

大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)は、第十代崇神天皇の御代に創建されたと伝わるからその歴史は古い。
江戸時代には年間数十万が訪れた「大山詣り」は、この日もひっきりなしに紅葉を愛でる参詣者が訪れている。

大山観光電鉄 大山ケーブル〜阿夫利神社 0.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
横恋慕 / 中島みゆき 1982


JY12 山手線立ち呑み事情 ドラム缶@大塚

2022-12-14 | 大人のたしなみ

 東京の日の入りは16:30、大塚駅前はトワイライト、都電荒川線の電車がテールランプを引いて走っていく。
立ち呑みで巡る山手線の旅も3ヶ月半ぶり、いやいや反省しています。今宵は大塚「ドラム缶」で呑む。

 

先ずはPubを気取って “フィッシュ&チップス”、よく冷えたジョッキに泡立つ “生ビール” を一杯。
いやぁイングランドvsフランスはここで観たかったね。

“ナカ” をお代わりして、ホッピーを丁寧に注ぎ足す。キレイに泡立つとテンションが上がるでしょう。
この手の酒場に無くてはならない “ポテサラ” は店の特徴がよく出る。ドラム缶のそれはちょっとクリーミー。

フロアにはテーブル代わりの文字通り「ドラム缶」が置かれて、壁には遥さんが “角ハイボール” を誘っている。
なにより清潔感があるし、一見さんにも優しいお姐さん。ホスピタリティーも申し分ないご機嫌なお店だ。

隣の常連さんの鍋が気になって訊ねる。“牛なべ” だって、本日の特別メニュー、これ頼まなきゃ。
遥さんの視線が気になって最後は “角ハイボール” を。明治のハイカラと戦後のハイカラの酒肴で〆るのだ。
今までの12駅中最も明るくカジュアルな雰囲気の「ドラム缶」に夜の帳が下りる。次は池袋で会いましょう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
マイホーム タウン / 浜田省吾 1982


白鳳城と忍者電車と伊賀牛うどんと 伊賀鉄道を完乗!

2022-12-10 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 カンカン、カンカンとレトロな警報音が鳴動する。大袈裟に車体を揺らして “ふくにん電車” がやって来た。
フクロウで忍者ってことか?何れにしても伊賀鉄道のマスコットキャラクターだ。今回は忍びの国伊賀を往く。

伊賀上野を発った2両編成が大きく左にカーブしてゴトゴトと服部川を渡る。車窓いっぱいに秋の空が広がる。
やがて左手の高台に伊賀上野城が見えてくる。電車は城の東郭から南郭を舐めるように90度急カーブするのだ。

フクロウ・忍者・城・花火・サクラ・星空、ちょっと欲張り気味に描いた電車はさながら伊賀上野市の広告塔か。
よく見ると田園都市線を走っていた車両だね。転換クロスシートは京阪電車のものらしい。近鉄系なのになぜ?

伊賀軌道の開業に伴なって建てられた駅舎は、洋風の腰折屋根を十字方向に重ねて縦長窓を並べる。
モルタル塗の白い外壁に、朱い屋根を載せた姿は市のランドマーク的な建物になっている。

関ヶ原の戦い後、大坂に対峙するために藤堂高虎が改修する城は、普請中の五層の天守閣が大暴風で倒壊した。
まもなく大坂の陣で豊臣氏が滅亡すると、伊賀上野城は天守閣を持たないまま伊賀国の城となったようだ。

水色に澄んだ秋の空に映える白亜の三層大天守は、戦前、代議士が私財を投じて建てた木造の模擬天守だ。
ところで生涯を旅に生きた松尾芭蕉はここ伊賀に生まれた。城内には翁の生誕300年を記念した俳聖殿がある。

城を巡って少々汗ばんだら冷たいビールが飲みたい。っで駅前のニカク食堂のカラクリ扉を押してみる。
この日の上野市(忍者市)駅付近はマルシエが開かれ、食事処はどこも空席待ち。まぁ気長に待つとしよう。

焼けた味噌だれが香ばしい “豆腐田楽” をアテに、陶のジョッキに泡立ちよく生ビールが効くね。
人心地ついた頃に “伊賀牛うどん” が着丼。甘い伊賀牛をたっぷりのせて、ちょっと贅沢なうどんが美味しい。

うどんを掻き込んだら、車中で飲みたい地酒を物色する間も無く、伊賀神戸(かんべ)行きに飛び乗る。
なんだかこの電車、塗装も東急を走っていた頃のまんまだろうか?まるで池上線にでも乗るようなのだ。

建て込んだ市街地の風景は、市役所と大型SCに最寄りの四十九駅を過ぎると一転、長閑な田園風景が広がる。
やがて右手にが木津川が近づいてくる。傾きかけた午後の陽を浴びて、車中酒がなくてもうとうとしてしまう。

上り列車と交換する丸山駅、やっと会えた “忍者列車” は2009年の登場以来、伊賀鉄道の名物となっている。
なぜだか懐かしい気持ちにさせるラッピング、あとで調べたらこれ松本零士氏のデザインなのだ。なるほどね。

大きく右にカーブを描いて木津川を渡ると終点の伊賀神戸駅、小さな上野盆地を縦断して伊賀鉄道の旅は終わる。
ゴーっと音を立てて、真紅の “特急ひのとり” が駆け抜けていった。伊賀神戸は近鉄大阪線との連絡駅なのだ。

秋の乗り放題パス(連続する3日間)を握りしめて呑み鉄の旅、最終日は伊賀鉄道にちょっと寄り道してみた。
近鉄線で津まで出たら、再びJR線で延々と東京をめざす各駅停車の旅になる、まだまだここからが長いのだ。

伊賀鉄道 伊賀上野〜伊賀神戸 16.6km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
琥珀色の想い出 / あみん 1982 


Go!Go!West! 1 駅そば日記・東京「むじなそば」 

2022-12-07 | 旅のアクセント

 タヌキとキツネが同居しているから “むじなそば” ?、おかかが踊っているね。大葉のみどりも嬉しい。
麺を大掴みにしてズズッと啜る。カリカリっとタヌキさん、じゅわっと甘いおキツネ様、美味しい。

6番・7番ホームの下あたりの「二◯そば」は、なかなかいいお値段だけど味とサービスはそれを補って余りある。
新しい旅の始まりだから小瓶を開ける。冷えたタンブラーに注いだらぐっと呷る。んっ生きているなぁ。

今までアトランダムに紹介してきた「駅そば日記」だけど、そろそろテーマを持たせようと思うのだ。
OnでもOffでも余計なことに拘るのは、ボクの長所でもあり(いやむしろ)短所でもあるが、性だから仕様がない。
Go!Go!West!、駅そばで綴って東海道本線を西進しようと思う。これ、けっこう面倒だなぁ。

実は東京駅にもホームの立ち喰いそばがあった。18・19番線の「東京グル麺」なのだが去る9月30日に閉店。
こんなことなら最後に “かつ煮そば” でも食べに行っておけば良かったなぁ。今となっては後の祭りなのだ。
そうこうしているうちに9番線に踊り子号が入ってきた。さぁ新しい東海道本線の旅が始まる。

東京駅構内「二◯そば」: むじなそば 800円  

<40年前に街で流れたJ-POP>
セカンド・ラブ / 中森明菜 1982  


千本鳥居と鳳凰堂と吟醸朱雀門と 奈良線を完乗!

2022-12-03 | 呑み鉄放浪記

東山に連なる三十六峰最南端の霊峰稲荷山(233m)、その頂へと朝霧湧き立つ幻想的な伏見稲荷大社を訪ねた。
秋の乗り放題パス(連続する3日間)を握りしめて呑み鉄の旅、三日目は京都から奈良へと奈良線を潰そう。

凛とした空気に包まれた早朝の京都駅、ホテルのガラス壁面に京都タワーが映り込む。映えって感じでしょう。

先ずは1611M城陽行きに飛び乗る。観光客に登山客それに部活の中高生を乗せて満員の電車が出発する。
ひとつ目の東福寺で驚くほどの降車客があるのは京阪電車への乗り換えがあるからだね。次が稲荷駅だ。

深く一礼をして鳥居を潜る。三十六峰から昇った秋の陽に逆光となって、堂々たる楼門がひときわ朱い。

伏見稲荷にはどれだけの「白狐」が居るのかは知らないけど、本殿前の一対は取り分けて立派だ。
一方は金の稲穂を咥えているんだけど、これは稲荷大神様はもともと五穀豊穣の神様だからだそうだ。

朝霧の中をどこまでも続くかのような「千本鳥居」の朱塗りが美しい。でもこの静けさの中では畏怖の念が勝る。

ガタガタとガーダーを鳴らして613Mが宇治川橋梁を渡る。桁下を水量豊かな宇治川(淀川本流)が大阪湾をめざす。

08:27宇治着、二度目の途中下車をする。駅舎は当然に平等院鳳凰堂をモチーフにしている?のだそうだ。
奈良線を旅するならやはり宇治も歩いておきたい町だ。

駅を背にして歩き出す。宇治橋通りに出ると老舗中村藤吉本店に突き当たる。堂々たる暖簾が掛かっている。
抹茶の “生茶ゼリイ” が楽しめるカフェは10:00開店というのに、もう女の子たちが並んでいるね。

通りが宇治川に突き当たる橋の袂に紫式部、ご存知の通り源氏物語の最後の十帖は宇治を舞台に描かれている。

この世に極楽浄土を表現した「宇治平等院鳳凰堂」が優雅なその姿を宝池に映して美しい。
呑み人としてはいつもの事ながら、極楽浄土の楽団 “雲中供養菩薩像” を飽くまで眺めるのが愉しい。

2603Mが滑り込んできた。京都〜奈良間を45分で駆ける “みやこ路快速” は宇治で各駅停車を追い抜く。

奈良線の車窓も宇治を過ぎると明らかに緑が濃くなり、一方車内は停車駅ごとに空いていく。っでプシュ。
かつて京阪神間を新快速として鳴らした221系は転換クロスシート、呑み人としては嬉しい仕様なのだ。

三重県の青山高原を源に発した木津川を渡ると旅の終わりは近い。実は奈良線は奈良には辿り着かないのだ。

片町線(学研都市線)、奈良線、関西本線を束ねて木津駅が奈良線の終点。地図上で見ると畜産用のフォークだ。
“みやこ路快速” はこのまま関西本線に入って、奈良までの7kmに魂のラストスパートをかける。

結局、後続の “大和路快速” で奈良まで足を延ばす。木津の町では昼飲みは出来ないからね。
先ずは “生ビール” それに “豚キムチ”、ちょっと酸っぱい。JR奈良駅には「ゆるり」って昼飲み酒場がある。

脈絡もなく和に転じて “きざみ奈良漬” に “まぐろ山かけ” を、やっぱりこんなアテがいいね。
奈良の地酒 “豊祝” はキレの良いまろやかな味わいの純米酒、奈良漬を相手にそれこそユルリと呑みたい。

こんどは “吟醸 朱雀門” がグラスから零れる。これも同じく奈良豊澤酒造の酒だ。
七味を振って甘辛い “カツとじ” がアテ、華やかな吟醸香をスッキリと流したら、この奈良線の旅を〆るのだ。

奈良線 京都〜木津 34.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Oh!クラウディア/ サザンオールスターズ 1982