旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

富山湾と立山連峰をのぞむワイナリーで

2023-06-17 | 旅行記

富山湾と立山連峰をのぞむ丘の上のワイナリーにやって来た。
もっとも午後から降り出した五月雨に山は霞んでいる。今日は緑に囲まれたゲストハウスで呑みたい。

酔う前にレポートしておく。
エントランスの左側には12人掛けのテーブルを設えたリビングダイニングがある。
壁際にはアンティークな薪ストーブがあって、黒々とした煙突が天井を越えて立ち上がっている。
広々としたオープンキッチンは仲間でワイワイやりながら料理するのも楽しそうだ。

エントランスから右へは白く長い廊下が延びていて、ベットルームが3つ並んでいる。
突き当たりには、オープンスペースにつながる広々としたジャグジーがある。
なぜかここにワインセラーがある。このオープンスペースでシャンパンを開けるのもいい。

ゆったりとしたソファーに身体を沈めたら、二度と立ち上がれそうもないくらい心地よい。
“シードル” のマグナムボトルを開けて華やかな香りをワイングラスに注ぐ。
BluetoothスピーカーからJazzが流れる。
この雨で葡萄畑を散策できないから、ゆっくりと流れる時間を愉しみたい。

最後のひとりが呼び鈴を鳴らすころ、ディナーサービスが運ばれて来た。
ワイングラスとシルバーセットはいそいそと並べて置いたから、宴を始めるのに時間はかからない。

“SAUVIGNON BLANC 2022” で互いのグラスをあわせたら、オードブルを取り分ける。
鯵のマリネ、鰆のカルピオーネ、自家農園の卵のフリタータ、豚肉のパテ・ド・カンパーニュ、
白ワインに合わない訳がない。

氷見で揚がった黒鯛と真鯛、アサリとムール貝をしたがえて “アクアパッツァ”。
爽やかな “YOKAWA BLANC 2020” に漁師飯が美味しい。

色鮮やかな野菜たち、STAUB鍋は “富山ポークのブレゼ” だ。
オープンキッチンのコンロの弱火で40分ほど、重い蓋を開けるとオリーブオイルの香りが広がる。
出来上がりを待つのは “Merlot 2020”、華やかで優しい口当たりだね。

コクと旨みがぎゅうと詰まった “氷見牛ボロネーゼ” を抓む?言っていることが怪しくなっている。
ワインももう分からない。目の前の “ROSE 2019” を自ら注いでゆるりと愉しんでいる。

翌朝のダイニングテーブルに空いたボトルを並べて一枚、よく呑みました。
昨年、室町和久傳 × SAYS FARM のイベントに参加して嵌ってしまったワイナリー、
とうとう現地まで来てしまって、ワイワイと楽しく美味しいステイだったね。

ひんやりとしたワインセラーに降りる。
樽やボトルで眠る子たちに「美味しくなって出ておいで」っと思わず声をかけるのだ。

Tell Her About It / Manhattan Jazz Quintet 1983


大人の休日 岩手山と石割桜と盛岡冷麺と

2022-05-07 | 旅行記

 東北新幹線が全線復旧しましたね。盛岡城跡公園の満開を狙って4月のとある大人の休日。

はやぶさ305号の車内に盛岡到着のアナウンスが流れる頃、車窓を占めるのは雄大に裾野を広げる岩手山。

駅前から盛岡都心循環バス「でんでんむし」(1乗車120円)に乗って、先ずは盛岡地方裁判所に向かう。

裁判所の前庭には国の天然記念物「石割桜」が孤高に美しく咲いている。
巨大な花崗岩の割れ目から突き出た樹高11.0メートルのエドヒガンザクラ、樹齢は360年以上だそうだ。

県庁前交差点から鳥居を潜り、じゃじゃ麺の白龍をやり過ごしたら盛岡城内の櫻山神社へ。
神社の厳かな雰囲気を引き立てるのはシダレザクラ、ピンクの花弁が可憐だ。

ところでここに来る前に、盛岡駅前の「ぴょんぴょん舎」で早めのお昼、そう盛岡冷麺がもう一つの目的なのだ。
ランチメニューの “ミニプルコギ丼” をアテに、地ビールの “BEAREN CLASSIC” をいただく。
甘く脂があるプルコギに、コクとほどよい苦味のラガーが美味しい。 

さてっと真打ち “冷麺” が登場。澄んだスープの真ん中に麺を盛り上げ、脇をキムチ、牛肉のチャーシュー、
ゆで卵に三杯酢漬きゅうり、ナシが固めて見目麗しい。
コクのあるスープ、コシが強い麺のツルッとした喉ごしを味わい、キムチを沈めて辛味を増したりして楽しい。
想像していたよりはるかに美味しい、初めましての本場盛岡の冷麺に満足なのだ。

北上川の支流中津川の河岸段丘、桃山様式の石垣を残す盛岡城跡公園の桜は主にはソメイヨシノか?
桜は二段目の淡路丸と腰曲輪を埋め尽くして爛漫を誇り、本丸に登城するとそこには桜の雲海が広がっている。
淡いピンクの雲海に、浮遊感というか、かるい眩暈を感じたというか、とても心地よい盛岡の桜。

ちょっと贅沢な大人の休日、満開のサクラと冷麺を求めて、日帰りの盛岡紀行なのだ。

夜よ泣かないで / 松山千春 1982
     


大人の休日 雨の山形で1時間3本勝負

2021-05-08 | 旅行記

 予報通りに雨が本降りになった福島駅、15:31、つばさ141号が入線してきた。
本宮までソースかつ丼を食べに来た勢いで、山形で立ち飲みしようと山形新幹線に乗車する。

なにか車中酒をと覗いたNewDaysで目を引いた "寶CRAFTふくしま あかつき桃" って地域限定チューハイ。
福島県を代表する桃「あかつき」を丸ごと搾ったストレート混濁果汁を使用した桃スピリッツなのだ。
甘く芳醇な香りを愉しむうちに、つばさ141号は雪の残る板屋峠を越えて山形県へ。雨が止む気配はない。

 冷たい雨に煙った山形駅に着いたのは16:48、滞在時間は1時間と少々を予定、日帰りだからね。
ところがだ、目星を付けていた立ち飲み屋は臨時休業(行き当たりばったりで偶にやらかす)なのだ。
代わりに見つけた「山形名物 花膳」は地酒と郷土料理の素敵な店でした。でも残り1時間を切ってる。
先ずは "秀鳳 純米大吟醸 つや姫"、山形県オリジナル品種で醸したフルーティーな酒、美味しい。

山菜天ぷら五種盛りを注文した積りがお浸しが出てきた。でもGood、カタクリって初めて食べた。
初孫の "赤魔斬" を注文したら、もっきり一盃に満たずサービスしてもらった。キレある+10がスッキリと旨い。
当然に芋煮が食べたかったのだけど、時間が無いので "山形牛 旨味たっぷりメンチカツ" に変更、
噛んでサクサク、口に入れるとジュワーって肉汁の旨みが広がって、いい仕事しているなぁ。

そして三杯目は "惣邑 純米酒 出羽の里"、初夏はあやめが美しい長井の酒、サラリとでも深い旨みが良い。
っと、つばさ156号の出発時間まで10分を切った。慌てて跳ねを飛ばして駅までダッシュ、酔いが回る。
プロレスじゃないけど山形の地酒を1時間3本勝負、ちょっと消化不足。この店はまた訪ねたい。

お嫁サンバ / 郷ひろみ 1981
     


大人の休日 桜花爛漫の津軽・弘前城へ

2021-05-01 | 旅行記

 400本のソメイヨシノ、しだれ桜や八重桜などを併せて約2600本が咲き誇る弘前公園の桜を観たい。
折からの低気圧が過ぎ去って午前中には雨も上がった。満開の便りは昨日届いている。

 秋田駅での乗り換え時間は10分、それでも改札を飛び出して駅ビルで地酒のワンカップを求めてきた。
12:40、2号車には僅か3人を乗せ「つがる3号」が滑り出す。初めての桜の弘前に期待は大きく膨らむ。

20分もすると車窓に八郎潟干拓地が見えてくる。とにかく広いの一言、昭和の大事業に思いを馳せる。
"天の戸" は横手盆地の浅舞酒造の酒、酒名は大胆にも天照大神の逸話「天の岩戸」からとられている。
なるほどラベルには勾玉 (まがたま)があしらわれてるね。カップ酒だけど純米酒?スッキリと旨い酒だ。 
っと一合の旨酒に酔い、うとうと微睡むうちに碇ヶ関を越えて津軽平野に入る。弘前までは2時間の旅になる。

 弘前さくらまつりの100円バスに揺られて10分、左手車窓がピンク一色になる、いやいや想像以上だ。
三の丸東門までやってきた。外濠の土塁にはびっじりとソメイヨシノが満開を誇って目を奪う。
もはや外堀と一体となった絢爛たる桜の海が城と城下を分けているのだ。

東門から南門へと中濠を巡る。二の丸と三の丸双方からソメイヨシノが枝を延ばして濠を桜色が覆う。

杉の大橋を渡る、視界にいっぱいのソメイヨシノ、重厚な南門の黒、欄干の朱がアクセントになって美しい。

下乗橋を渡ってようやくの本丸、曳屋されて石垣のスカートを脱いだ三層の天守はなんだか恥ずかしそう。
「弘前枝垂れ」と「八重紅枝垂れ」が天守に付き従い、その薄紅と淡紅紫が足元を隠そうと努めているね。

最後に本丸未申櫓跡に上る。ソメイヨシノ越しに西濠と城下を見下ろし岩木山を眺望する。絶景だね。

「美食処 松の木」に萌葱色の暖簾が掲がる。帰路の特急まで僅かな時間だけど津軽の酒肴を堪能したい。
先ずは生ビール、今日のおすすめから "めばち鮪" を択ぶ。適度な脂が乗って美味しい。中落ちが泣かせる。
ところでお通しの "つがる漬け" が絶品、数の子が入った松前漬けとでも云うのか、日本酒のアテに最高だね。

カネタ玉田酒造店は弘前市内の蔵、ふわりとフルーティー、すっきりとしたキレの "華一風" をいただく。
特別純米酒の華やかなピンクラベルが満開の桜にぴったり重なるね。
イカをたたいて玉ねぎなど野菜と揚げた "イカメンチ" は酒の肴には外せない津軽地方の郷土料理だ。 

"帆立貝味噌焼き" が湯気を立てて運ばれてきた。熱々のホタテと豆腐が、口に入れてハフハフと美味しい。
二杯目の "豊盃" も弘前市内の蔵(三浦酒造)、どんな食事とも合う定番の特別純米酒なのだ。

店を出ると弘前駅が夕陽に染まっている。小一時間だけど津軽の酒肴を存分に愉しんだ。
こんな時勢だから人気店の客もボク一人、飲食業の皆さんには辛い時期に違いない。今暫く頑張ってほしい。

18:02発「つがる5号」で新青森へと向かう。22:00過ぎには東京と云うんだから新幹線は偉大だ。
角館武家屋敷と桧木内川堤、弘前城で満開の桜を眺め、津軽の酒肴を愉しんでの濃~い日帰り旅を終える。
車窓に夕陽を背負って津軽富士が美しい。

渚のラブレター / 沢田研二 1981
     


大人の休日 桜花爛漫の武家屋敷と桧木内川堤

2021-04-24 | 旅行記

 "みちのくの小京都" 角館、武家屋敷の黒板塀に薄紅色のシダレザクラが可愛らしく映えている。
平年ではとても叶わない桜花爛漫の角館行、万全の態勢と細心の注意を払って、この風景に身を置きたい。 

 日本気象協会の tenki.jp によると角館の桜が満開を迎えたらしい。昨日からの雨も午前中で止むという。
という訳で(いったいどんな訳?)、大宮06:57発、こまち1号で北へ向かうぼっち旅に立つのだ。

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」とは啄木。
県のシンボル岩手山(2,038m)、頭を雲で隠した成層火山が残雪を抱いて裾野を広げている。

東北新幹線を320km/hで飛ばしてきたE6系も、在来線区間に入るとガクッと速度が落ちる。
岩手・秋田の県境は勾配もカーブもキツイから、さしもの新幹線車両もそれなりに揺れるのだ。
したがって、朝ビールのプルトップリングを引くのに慎重になる。案の定少なくない量の泡を吹いた。

雨、上がったね。角館駅から歩くこと10分、歴史ある屋敷が点在する「武家屋敷通り」にやってきた。
約450本のシダレザクラがお屋敷から通りへと美しく枝を垂らす。樹齢300年を超える古木の花は白に近い。

角館樺細工伝承館の辻までやってきた。シダレザクラの薄紅のグラデーションが美しい。

武家屋敷の重厚な屋根と黒板塀を背景に、淡いシダレザクラは儚い美しさを際立たせている。

武家屋敷の町並みに溶け込んで和の風情の食事処がある。10:00から開いているのでひるまえの一杯を。
"比内地鶏" の正肉とねぎ間を焼いてもらって、酒は羽後長野、鈴木酒造の "秀よし 花綵の里" をいただく。

そして "稲庭雪見うどん" を啜って温まる。 雪見とはとろろを雪に見立てているらしい。姫竹に春を感じるね。
「花冷え」って季語(日本酒の温度も)があるけど、桜花爛漫の今日も温かな饂飩が欲しくなる肌寒さなのだ。

 角館のもう1つの桜の名所「桧木内川堤」には、全長2kmにわたるソメイヨシノの花のトンネルが続く。
みごとに色づいた約400本の桜並木は、1934(昭和9)年に現上皇の御誕生記念として植樹されたそうだ。

ところでこの堤に魅力的な助演女優を見つけた。一群の淡い黄色の水仙が可憐に美しく脇を固めている。

緩やかな川の蛇行に沿って一分の隙もなく続くヨメイヨシノの様は、春の朝日に染まった雲の様にも見える。

2時間少々の駆け足の花見(昼酒も一杯やったけど)を終えて角館駅へ。そしてここにもシダレザクラが。
満開を迎えたシダレザクラ、ソメイヨシノ、そして水仙、とても素敵な風景に身を置いて満足の時間だ。
東京方面には戻らず、11:42のこまち9号に身をゆだねる。折角だから弘前まで足を延ばそうと思う。

抱かれたい、もう一度 / 矢沢永吉 1981
     


大人の休日 "小千谷そば"と"蔵人の盗み酒"と

2021-04-17 | 旅行記

 長岡から2つめの駅を過ぎると列車の窓には信濃川の流れが存在感を増してくる。
堤のあちらこちらで桜が満開になっている。山際のこの辺りはさすがに桜の盛も遅いようだ。
右手に高の井酒造の蔵が見えたら、普通列車は徐々に速度を落として小千谷駅に滑り込む。

闘牛、小千谷縮、にしき鯉、小千谷の町を形容する産物は結構多い。美人の町かも知れないなぁ。
吞み人からしたら、是非とも「小千谷そばの町」を推したい。

駅前通りを緩やかに500~600m下って行くと、目の前に長い橋が現れる。
この長い橋の下を流れるのは信濃川、少し上流で魚野川さえ抱え込んで水量も多く滔々と流れて行く。
対岸の河岸段丘を上って行くと小千谷の市街地、めざす「元祖小千谷そば角屋」がある。

 季節柄 "ふきのとう天ぷら" が出ていたので蕎麦前のアテに択ぶ。苦みに春を感じる。
"蔵人の盗み酒" とは、ふな口からの一滴一滴の新酒は、蔵人が人目を盗んでも口にしたい感動の酒、
と云う意味だそうだ。フレッシュかつ濃厚な味わいの無ろ過吟醸原酒にご機嫌な蕎麦前のひとときだ。

     

絶妙のタイミングで "へきそば" が運ばれる。翡翠色のつやつやした蕎麦がキレイだ。
布海苔(ふのり)を使ったコシの強い蕎麦をズズっと啜って美味しい。
雪国が生んだ素朴な味わいを愉しんで、この美味しい途中下車にほくそ笑むのだ。

 1736M水上行は関東平野まで戻れる数少ない1本。"青春18きっぷ" の季節ならではの鈍行列車の旅は、
地酒と郷土料理を求めてのんびりと往く。越後川口から堀ノ内にかけて2本の長いトンネルを潜ると、
左手に越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)が見えてくる。どれもたっぷりと残雪を背負っているね。
ここで仕込んでおいた "八海山" を開けると云うストーリー。幸い車内はガラガラだから心配はない。
ほろ酔いの耳に唸りを上げる1736Mのモーター音が響くと越後湯沢の町が見えてきた。

まちぶせ / 石川ひとみ 1981
     


大人の休日 大天狗と名代ソースかつ丼と

2021-03-27 | 旅行記

 この日は東日本どこも雨、それならばとゆっくりスタートで10:36、やまびこ57号で郡山へGO!
手元のフリーパスを遊ばせておくのも愚かだから、福島ソースかつ丼の名店を訪ねることにする。
会津若松だとお思いでしょうが違います。郡山から1133Mに乗り換えて、今回は本宮へ。

NewDaysのリーチインで見つけた "ピルスナーウルケル" をプシュッと開ける。
4月6日から首都圏・関信越エリアで発売開始のこの缶、品薄状態だったから上々の滑り出しだろうか。

本宮駅から徒歩10分、幸い折からの雨も小止みになって、傘もささずに「柏屋食堂」を訪ねる。
田舎町の小さな食堂と思いきや、2階の大広間二間にテーブルを並べて満席状態、なるほど人気店だ。
これは着丼までかなりの時間が ・・・・・・、でも大丈夫、飲んで待つから。
初めましての "大天狗"、地元の親父さんの晩酌そのままに常温でいただく。突出しの "たこわさ" が嬉しい。

"名代ソースかつ丼" が着丼、厚切りロースが二枚、甘みある継ぎ足し秘伝ソースを絡めキャベツを従え登場。
分厚けど柔らか、サクサクと口にいれたら、ジューシーな肉が甘味とともに口いっぱいに広がって美味しい。
なるほどWebに2,000を超える口コミがあるのも頷ける上々の丼なのだ。

意外と大天狗酒造は本宮駅前に在った。左横書きの大天狗の文字、赤レンガ造りの煙突に歴史を感じる。
大粒の雨に急かされて改良工事中のプレハブ仮駅舎に飛び込む。っと程なく上り電車が入線してきた。
初めての町で絶品のソースかつ丼に巡り合って上々の休日、さてまだ時間があるから何処かで立ち飲みでも?

リトルガール / 西城秀樹 1981
     


はちのへ漫ろ歩記「漁師の漬け丼」

2021-02-13 | 旅行記

 マリンブルーのラインをひいた新鋭キハE130系気動車を見送るここは鮫。
北の海の幸と地酒を求めて、はちのへ漫ろ歩き、今回のターゲットは「漬け丼」だ。

漁港脇の市道を10分ほど歩いていくと、舟溜りの先に社をのせた蕪島が見えてくる。
でも何だか様子がおかしい、そう、八戸線を潰した一昨年の初夏、ヒッチコックの
映画のように島を埋め尽くしていたウミネコがいないのだ。

ウミネコは蕪島に繁殖のために集まる。その時期は節分過ぎだから少し早かったか。
5月に子育てが始まり、8月初旬には島を離れる。前回もぎりぎりだったんだね。
主祭神は市杵嶋姫命(弁財天)で財運・音楽・諸芸・交通航海・安産などご利益がある。

2駅戻って陸奥湊で "イサバのカッチャ" に迎えられる。駅前には八戸市営魚菜小売市場。
朝10時までなら場内で買ったお刺身、焼魚、お惣菜で朝定食が食べられる。
すでに10:30を回っているから近くの「みなと食堂」へ。旅の趣旨から地酒も飲みたい。

一見地味なこの店は八戸の超人気店、吞み人は開店間もないタイミングで入れたけど、
帰り道に通ったら長蛇の列で、今回は実についています。
まずは地酒 "陸奥男山"、冷やでよし燗でなおよし、地元の親父たちの晩酌の酒を一杯。

     

一番人気は "平目漬け丼" らしいけど、ちょっと欲張って "漁師の漬け丼" を択ぶ。
「限定7食」に引っ張られて、意外とミーハー(旧い!)な一面を見せる。
カニ、ホタテ、イクラ、タコ、マグロ、甘エビ、つぶ貝、サーモン、カジキ、イカ、
あれっ、平目がないなぁ。でもホタテが肉厚ぷりぷりだから良しとしよう。
前半は酒のアテとして楽しんで、後半は玉子を溶いて(これいける)美味しくいただく。

新井田川沿いに歩くと見えてくる漆喰土蔵と赤レンガ蔵は "陸奥男山" の八戸酒造だ。
「男山」って銘柄は全国に33蔵あるそうだ、特に東北地方に多い。
そこで商標登録の際に「陸奥」と付けたと云う。もっとも最近は「八仙」という銘柄を
知る人が多いんじゃないだろうか。どちらも青森県産米だけを醸す正に地酒の蔵なのだ。

未明にダメ元で蔵見学の申し込みをメールしておいた。幸い快くお受けいただいた。
大きな酒林(杉玉)を吊るした切妻造、桟瓦葺の主屋に案内される。豪壮で威厳がある。
こんな時期だから映像を見ながらの説明をいただいて、そして唯ひとりの試飲タイム。
漁師さんの食中酒、イカやサバに合うという "陸奥八仙 ISARIBI 特別純米生原酒"、
芳醇で洋食やチーズに合いそうな "陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸生酒" (何れも1月発売)、
それに定番 "陸奥男山 超辛純米" と3本求めて、なぜか達成感に満ちた漫ろ歩き。
さて、まだ日も高いようだから、青森まで足を延ばして「立ち飲み」といこうか。

街角トワイライト / 鈴木雅之 1981
     


あいづわかまつ漫ろ歩記「ソースかつ丼」

2020-12-29 | 旅行記

 快速あいづに揺られて会津若松へ、残念ながらも磐梯山はまたしても雲の中だった。
会津に美味いものは数ほどあれど、今日はB級、ソースかつ丼を食べにきたのだ。
というわけで、会津若松を漫ろ歩き。

一度訪ねたかった「さざえ堂」は寛政8年(1796年)建立の六角三層のお堂。
二重螺旋のスロープは上り下りが連続の一方通行構造になっていて、参拝者がすれ違う
ことなく西国三十三観音像にお参りできたという。日本の建築技術の高さを実感。

 言わずと知れた酒どころ会津だから、市内に幾つかの酒蔵が点在している。
城へ向かう北出丸大通りには "冩樂" の宮泉名醸、白壁の蔵に煉瓦の煙突が誇らしい。

 会津若松のシンボル鶴ヶ城、豊臣秀吉の命で入城した蒲生氏郷が七層の天守を築いた。
慶長16年(1611年)の大地震で被害を受け傾いた天守は改修され五層となったという。
赤瓦に葺き替えられたのは、会津松平藩の藩祖保科正の慶安元年(1648年)だそうだ。
復元とは云え、赤瓦をのせて肥沃な会津盆地に睨みを利かす姿は威風堂々としている。

 数ある酒蔵から末廣酒造嘉永蔵を訪ねた。この時期にも関わらず蔵見学を受けてくれる。
木戸を抜けたエントランスは3階分の高い吹き抜けがあって、その重厚感に目を奪われる。

仕込み蔵、釜場、煉瓦造りの煙突を眺めて古酒蔵を巡ったらショップでちょっぴり試飲。
いつかイベントで飲んだ純米大吟醸 "ゆめのかおり" を求める。これ年越し用だね。

 戦利品をリュックに収めたら、上町の元祖煮込みソースカツ丼の店「なかじま」へ。
注文したのは "キャベツソースカツ丼(ヒレ)"、生ビールを呷って着丼が待ち遠しい。 

 丼の蓋を開けると甘い香りがる。あったか会津米にシャキシャキのキャベツをしき、
揚げたてアツアツに甘辛いソースをたっぷり絡ませたカツをのせて、これぞ会津の丼。
目的の美味いソースかつ丼にありついて至福なのだ。
鶴ヶ城の走長屋を模したような会津若松駅で赤べこに見送られる午後4時過ぎ。
んっ、まだ時間が早いな、仙台にでも足を延ばそうか。それではもう一軒。

さらばシベリア鉄道 / 太田裕美 1980
     


まつもと漫ろ歩記「山賊焼き」

2020-12-17 | 旅行記

 8時ちょうどに新宿を発ったあずさ5号を見送る。ここは松本、信州路。
今回は美味い "山賊焼き" を食べようとここまでやってきた。っでまつもと漫ろ歩き。

夏から秋にかけてアルピニストで賑わう岳都の玄関口も、この季節は落ち着いている。
まずは駅前通りを真東に歩きだす。この大通りが行きつく先は旧制松本高校の跡地、
あがたの森公園の先に見える山塊は、美ヶ原の王ヶ鼻(2,008m)だと思う。

 駅前通りがあがたの森通りと名前を変えると、奇想天外なオブジェが見えてくる。
子どもに付き合って遊んだ super mario bros の食人チューリップが生えているのだ。
松本市美術館は当地出身のアーティスト草間彌生氏の作品をメインに収蔵展示している。

 駅前通りの300mほど北を並行する中町通りは、なまこ壁の蔵が並ぶモノトーンの世界。
スイーツの店やカフェが多いレトロな町並み、女子旅やカップルならここを目指したい。
男ひとりの吞み人は雰囲気だけ焼き付けたら、早々に町並みを抜けて女鳥羽川を渡る。

 女鳥羽川の北側、四柱神社から始まる縄手通りにも昔ながらの店が立ち並んでいる。
この辺りには美味いそば処が多い。がっ寄りたかった「弁天本店」には当面休業の札、
残念。流行り病のせいか?確か老夫婦が営んでおられたから、ちょっと心配。

 太鼓門を鉤状に潜って二の丸御殿跡、内濠をまわり込むと五重六階の天守が現れる。
北アルプスの峰々が白く輝くこの頃、城内の松には冬の風物詩「雪吊り」がかかる。

三方に朱色の勾欄を巡らせた月見櫓が美しい。戦時の要塞としての無骨な大天守・乾小天守と、
泰平の世に造られた優雅な辰巳櫓・月見櫓の取り合わせもこの城郭の魅力だと思う。

 濠端から北へ500mほど歩くと、擬洋風建築の旧開智学校が見えてくる。
正面の車寄せの上には青竜、そして雲が沸き立ち、八角の太鼓楼が聳えている。
「開智学校」の旗を掲げているのは二人の天使たち。二つ目の国宝も市民の誇りだろう。

 正午になると「しづか」に暖簾がかかる。民芸調の店の前には道祖神まである。
創業昭和20年、"おでん" と "やきとり" の老舗居酒屋に "山賊焼き" を求めてやってきた。

山賊焼きは、鶏もも肉をニンニクとタマネギをたっぷり効かせた醤油だれに漬け込み、
片栗粉をまぶして揚げる中信地方(主に松本・塩尻)の郷土料理なのだ。
ちなみに吞み人が育った北信地方(長野など)では食べない。食べた覚えはない。
サクサクでジューシーな食感、ニンニクの香り、これビールに合わない訳ないでしょう。
冷やし過ぎってくらいキンキンの中ジョッキーを2杯、至福のまつもと漫ろ歩きなのでした。

恋のハッピー・デート / 石野真子 1980
      


もりおか漫ろ歩記「じゃじゃ麺」

2020-10-08 | 旅行記

 開運橋で北上川を渡って、若き日の木が暮らした "もりおか漫ろ歩き"。
中ノ橋の「岩手銀行赤レンガ館」は東京駅を手掛けた建築家辰野金吾の設計。
ルネッサンス風の赤煉瓦造りに緑のドームが秋空に映えて威風堂々としている。

 こちら「紺屋町番屋」は、1891年に建てられた盛岡消防よ組番屋。
寄棟屋根に六角形の望楼を持つ木造様風建築、これもまた美しい。
こうした建物が街中に残っているのは住んでいる人の誇りですね。きっと。

 『不来方( こずかた )の お城の草に 寝ころびて 空に吸はれし 十五の心』
木が詠んだ盛岡城跡公園を訪ねる。

堅牢な石垣が積まれた本丸だが天守閣はない。完成したのが大阪の役の頃であるから、
南部氏が幕府に警戒されるのを避けたとする説が有力だ。

城の東側内堀にあたる鶴ヶ池、夏の夕涼みに訪れたくなるような清涼な雰囲気。

 城の北側には南部氏の開祖や南部藩初代藩主を奉った櫻山神社が鎮座する。
そして、その鳥居前にある盛岡じゃじゃ麺の元祖「白龍(ぱいろん)」が今回の目的地。

もちもちとした食感の平打ち麺と、ひき肉、胡麻、椎茸を混ぜ込んで炒めた味噌を
必死にかき混ぜて、好みで酢・ラー油・にんにくを少量加えて "じゃじゃ麺" 準備完了。
いただきます。

麺を少し残したところで、テーブルの丼に盛られた卵を溶いてカウンターに載せる、
ひと声かけると店員さんがじゃじゃ麺のゆで汁、ねぎ、味噌をかけてくれるのだ。
このスープが "ちいたんたん"、これで〆る。

 腹ごなしに中津川沿いを上流に歩くと、菊の司酒造の白い蔵が見えてくる。
江戸中期から醸す蔵で、"てづくり七福神" の300mlを仕込んだら花輪線を潰します。
開運橋から県のシンボル岩手山(2,038m)の雄姿、これから裾野をぐるり廻るのだ。

Season / 門あさ美 1980


ロング缶1本の旅

2020-08-29 | 旅行記

 特急は急勾配をものともせず軽快に高度を稼ぐ、やがて車窓に善光寺平のパノラマが広がった。
朝のニュースは、太平洋高気圧の張り出しと、熱中症への注意を繰り返していた。夏の日が射る。
 木曽福島に向かっている。遠回りだけど、僕のところからだと北陸新幹線で長野を経由するのが早い。
朝食代わりに「蕎麦処しなの」で "天玉そば" を掻きこむ。長野駅なら6・7番ホームのこの店がお奨めだ。
木曽福島に向かう車中のお供はロング缶1本、せめて気分だけでもと、Kioskで手が伸びたのは「秋味」なのだ。

 会社の同期入社数名と束の間の夏休みを共有しようと決めたプチGo-To、今回の木曽行きの目的だ。
自分の旅には無頓着な僕が、出がけになって慌てて出力した幹事からのA4の日程表(指令書)を開く。
えっ、滝行体験に日本一の星空ツアー、中山道トレイル約8キロって、旅行会社の社員研修でもなかろうに。
県庁の観光部に出向してインバウンド誘致をしている幹事は、この機会に素材を点検したいのだろう。
いい歳したオヤジたちが、炎天下、この苦行に耐えられるのだろうか?
考える暇を与えず、しなの6号は木曽福島に到着。仲間たちは改札口で待っている筈だ。
もしこの苦行を乗り越え、いいスナップが撮れたら、後日レポートしようと思っている。

Upside Down / Diana Ross 1980
     


ご当地B級グルメ 富良野・オムカレー「まさ屋」

2018-07-10 | 旅行記

 俄かライダーとなってCB750で北海道を彷徨った夏。
麓郷の森を訪ねた後だったかな、富良野駅前に「てっぱんやき・まさ屋」を訪れた。
こちらの一皿、鉄板で炒めたバターライスと上富良野産豚トロに半熟オムレツをのせる。
赤ワインを使ったデミグラスソース×カレーをかけて "富良野オムカレー" の出来上がり。 
熱熱でジューシーで美味い。黄色いのぼりが勇気のしるしなのだ。


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ユーラシア大陸最西端へ / ロカ岬

2013-06-24 | 旅行記

 リスボンから西へ20km。北緯38度47分、西経9度30分がユーラシア大陸最西端ロカ岬。
高さ144mの断崖絶壁、深い青色の大西洋、よろめく程の強風は “最果て感” たっぷりだ。

『 ここに地終わり、海始まる 』
岬の突端に立つ十字架の塔には詩人ルイス・デ・カモンイスの一節が刻まれている。
大航海時代に新大陸を目指した冒険家たちの夢と希望を描写しているかのようだ。

 ロカ岬と山ひとつ隔てて、王侯貴族から夏の避暑地として愛されたシントラの街がある。
イギリスの詩人バイロンが“エデンの園”と称えた街だ。

シントラには7世紀にムーア人が築いた城跡、王家の離宮「ペナ宮」がある。
はずなのだが故あって観光せず、陽光降り注ぐカフェテラスで待機となった。
でも名物のサルディーニャシュ・アサーダシュを肴に白ワインを空けてご機嫌な休日だ。


大航海時代を謳歌した都 / リスボン

2013-06-23 | 旅行記

 海とも河とも束ないテージョ川を4月25日橋で渡る。全長2277m、水面高80m、高い。
右手に旧市街のオレンジの甍が続く、アマリア・ロドリゲスが流れる。リスボン到着だ。
世界遺産「ベレンの塔」は河口を守る要塞であり、また航海を終えた船乗りたちを迎える
故郷のシンボルでもある。抜けるような青空に石灰岩の白壁が眩しい。
司馬遼太郎さんは著書の中で「テージョ川の公女」と賞賛している。

 世界遺産「ジェロニモス修道院」はマヌエル様式の最高傑作と謳われる。
マヌエル様式とはロープや珊瑚、新世界の動植物など航海にちなんだモチーフを指す。
南門上に幼いイエスを抱く聖母マリア像がが見える。

中庭を囲む55m四方の回廊にはその柱やアーチに、ロープや貝、異国の動植物など
大航海時代を象徴するモチーフがびっしりだ。

「サンタ・マリア教会」南面のステンドグラスはマヌエル1世の結婚式を題材としている。
礼拝堂は王家一族の墓になっている。柩の台座にはインド象が支えるように施されて、
インド交易と植民地支配を物語っている。

「発見のモニュメント」は、ジェロニモス修道院と通りを挟んでテージョ河岸にある。
大航海時代を拓いたエンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマ、フランシスコ・ザビエルなど
この時代を牽引した32名の偉人像が彫られている。

 旅程の半ばには大概日本食をアレンジする。この夜はローザ通りの「ボンサイ」で。
和の情緒あふれる店のオーナーは日本人女性、親御さんのお店を継いだ若い女将さん。
日本で修行したポルトガル人の夫君の包丁裁きが素晴らしい。目にも舌にも満足の内容だ。

 

ちなみにリスボンにある日本食レストラン、日本人の経営は2店舗。中国人・韓国人の
経営は100店舗以上とか。日本文化はきちんと伝わるのだろうか、心配になったりする。

 旧市街のアルファマを訪ねる。
1755年の大震災を被害を免れたサン・ジョルジェ城を中心とした最も古い街並みで、
迷路のような路地や急な坂道などが残りどこか郷愁を誘う。

カテドラルからトラムが走るアウグスト・ローザ通りを上ると、息が切れかかるころ
「ポスタル・ド・ソル広場」に至る。
広場からは青きテージョ川とオレンジ色の甍が連なるアルファマを一望できる。


 下町アルファマはファドを聞ける街でもある。
2日目の夜は古く狭い迷路めいた路地裏にあるカーザ・ド・ファド Pateo de Alfama で。
黒衣を纏った歌い手ファディスタ、ヴィオーラ、ギターラの奏でるファド。
その哀愁を駆り立てる切ない音楽が心を揺さぶる。

ボンバル公爵広場からテージョ川に向かって下る並木の美しいリベルターデ大通り。
高級ホテルや大使館などが並ぶ新市街。投宿している5つ星のホテルアルツもこの一角だ。
通りはレスタウラドレス広場で終わり、隣のロシオ広場(ペドロ4世広場)とテージョ川を
見守るコメルシオ広場を結ぶアウグスタ通りとオウロ通りが目抜き通りになる。


 リスボン最後の晩餐はガレット通りの LARGO で。
ノスタルジックな外観、店内はクラゲの漂う水槽をパテーションにした瀟洒なレストラン。
メインの仔牛料理をルビー・ポート・ワインで愉しんで、リスボンの宵は更ける。