旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

宗谷はもうコバルトの季節の中で 宗谷本線を完乗!

2017-08-31 | 呑み鉄放浪記

 日本最北端の地に立つ。海の向こうは樺太だ。
空は深みのある明るいコバルトブルー、宗谷はもう秋の装いだ。

 

旭川ラーメンを堪能し、蔵元で車中酒を求めて、ふたたび旭川駅。
予報に反して青空が広がった午後、宗谷本線で稚内をめざす。 

 

12:31、名寄行きの快速列車でさらに北へ向かう。列車はまたしても単行気動車なのだ。
緩慢なスタートの旧型気動車に横目に、1番線から同刻発車の富良野線が先行していく。

乗車して早速、"吟醸生貯蔵酒 國士無双" のスクリューキャップを切る。
味噌ラーメンを啜って喉が渇いているので、冷えた生酒の喉越しが嬉しい。
あてはやはり蔵元で求めてきた酒饅頭、日本酒と餡子って意外と合うのだ。

午前中、美深から音威子府にかけての大雨で大幅にダイヤが乱れているようだ。
名寄駅では若い駅員氏が、下り稚内行きが30分以上発車が遅れると繰り返し叫んでいる。

 

14:52発の稚内行きは、別の車両が用意されて約40分遅れで発車。
旅の最終ランナーは、天塩川と絡みながら北の果てをめざす。

名寄盆地までは見られた田圃はほとんど見られなくなる。
車窓に広がる畑はカボチャかジャガイモだろうか。 

あるいはロールケーキが転がる牧草地の風景だ。

悲しいかなダイヤでは音威子府は62分ある停車時間が、列車の遅れで消化してしまった。
1キロ離れた一路食堂で、黒い "音威子府そば" を食べようと企てたのだが無理なようだ。

北の無人駅に佇む1両のディーゼルカーが絵になる。気をとり直してあと130キロ。

丘陵の向こうに陽が沈んでいく。
午前中の大雨を集めて、天塩川は茶色く濁った水を満々と湛えて北へ北へと流れる。

 

20:10、単行気動車は稚内駅に終着。北緯45度25分03秒、もちろん日本最北端の駅だ。

 

 今晩は手痛くやられた。中途半端な時間に独りの一見さんは割に合わないのだろう。
目星を付けていた2軒につれなく断られ、久しぶりに味わうアウェー感なのだ。
3軒目の居酒屋 酖竹林(ちんちくりん)は、結果的には大正解、美味しく居心地の良い店だ。

 

お通しは、ほっけつみれ揚げ、北海しま海老、サザエと並んで味も彩りも申し分ない。
好物の "たこわさ" を肴に生ビールではじめる。ジョッキもキンキンに冷えて気が利いてる。
"北の勝" は根室の碓氷勝三郎商店の酒。今日の白身は "そい"、芳醇な酒がよく合う。

 

赤味は "まぐろの山かけ" をいただく。酒は "上撰 國稀"、増毛で醸す淡麗辛口の酒だ。
三晩とも大満足の酒場探訪、旨い酒と肴に巡りあった "北の旅人(吞み人?)" なのだ。

宗谷本線 旭川~稚内 259.4km 完乗

 

コバルトの季節の中で / 沢田研二 1976


千歳鶴と鰊切り込みと旭川ラーメンと 函館本線を完乗! ≪札幌~旭川編≫

2017-08-29 | 呑み鉄放浪記

 立ち飲み "鶴の蔵" は札幌唯一の地酒「千歳鶴」の蔵元が直営する店。
札幌駅にほど近いオフィスビルの一角にあるので案外と洗練されている。

 

日本酒の店に来たって、枕詞はとりあえずのビール、冷たい一番搾りを呷る。
三点盛は "鮭とば"、"わさび味噌"、"にしん燻製" と申し分ないラインナップだ。

 

一杯目の "純米吟醸 千歳鶴" は、華やかな香りの酒。
肴は "鰊の切り込み"、塩と米麹で漬け込んだこの一品、絶品だね。
この小鉢ひとつで2~3杯は飲めそうだ。

 

二杯目からの "吟醸 蔵" はふくよかな香りの酒、焼き物にも揚げ物にも合いそう。
肴は "おでん盛合せ"、これからの北海道では恋しくなる一品だと思う。

 前日からの雨が上がった早朝の札幌駅、これから旭川までの140キロをラストスパート。 

7番手のランナーは06:00発、始発の旭川行きは意外にも気動車が登場。
2大都市を結ぶには寂しい2両編成は札幌~旭川間を走りきる唯一の鈍行列車なのだ。 

札幌都市圏は案外広く、江別辺りまでは住宅街が延々と続いている。
山の際まで田圃が続く風景が見られるのは、岩見沢を過ぎてからだった。 

滝川を過ぎると車内も閑散として、昨日仕込んだ小樽の酒  "純米大吟醸 寶川" に酔う。
それにしても車齢40年にはなるこの車両、JR北海道では幅広の窓枠があって旅情がある。
なにしろ酒やつまみが載るからね。ただ油断すると瓶が滑るのが玉に瑕ですが。

 同じ石狩川の流域だけど、石狩平野と上川盆地は繋がっていない。
15キロ程の山間部を幾つかのトンネルで抜けると旭川の町が広がった。
140キロ、3時間を駆け抜けてた2両編成は高架になった旭川駅に終着する。 

 さて稚内方面に向かう列車までは3時間半の待ち時間、少なからず街を巡る余裕がある。
まずは旭川ラーメン、豊岡1条のラーメンよし乃で "味噌ラーメン" をいただく。
濃厚で辛みのあるスープにしゃきしゃきのモヤシ、バターを落として絶妙な旨さだ。

 

函館で飲んだ "法螺吹" の高砂酒造はここ旭川の蔵元。
明治42年に建てられた明治酒蔵では工場見学と試飲が楽しめる。
車中酒には "吟醸生貯蔵酒 國士無双" を仕込んで、午後は宗谷本線を行く。

函館本線 函館~旭川 423.1km
(藤城線) 七飯~大沼   13.2km
(砂原線) 大沼~森     35.3km

 

THE NUMBER / The Square 1978


イカ飯とカニ飯と二世古生原酒と 函館本線を往く! ≪大沼~小樽編≫

2017-08-27 | 呑み鉄放浪記

 函館港には青函連絡船に就航していた旧国鉄の「摩周丸」が保存係留されている。
往時は桟橋から駅へと延びる長い長い通路に大きな荷物を抱えた旅客が列を成し、
車両甲板からはディーゼル機関車が貨車を引き出す光景が見られたことだろう。

 

5番線車止め脇に打ち込まれた函館本線0キロポストは北へ向かう旅の道標なのだ。 

トップランナーは07:10発の大沼公園行き。単行気動車は身震いひとつ走り出す。 

後続の長万部行きまでは1時間、秋の気配がしてきた大沼公園を散策しよう。
幾つもの小島を浮かべた大沼の向こうに、裾野を広げた駒ケ岳が青空に映えている。 

地ビールの "大沼ビール ケルシュ" を求めて後続の長万部行きに乗車、朝のビールは効く。

 

長万部では33分の長い停車。この時間を利用して駅前の新発田商店で森名物を求める。
小ぶりのイカにもち米を詰め、醤油ベースのタレで煮込んだ "いかめし" は、
甘辛い味付けで中身はもちもち、薄く切って粋な皿に盛ったら旨い肴になりそうだ。 

 森から長万部までは噴火湾岸を半周、4分の3周すると室蘭の町まで達する。
平坦で複線、継ぎ目のないレールだから、老朽化した気動車でも快適に疾走するね。
函館本線から室蘭本線が分岐する長万部は、かつては鉄道の町として大いに栄えた。
今では広すぎる構内に、気動車がぽつんぽつんと留置されている寂しいローカル駅だ。 

 

長万部駅にもまた名物駅弁あり、かなや本店の "かにめし" が有名だ。
倶知安行きまでは2時間ほどの待ち合わせ、駅前の「かなや食堂」で美味しくいただいた。

 

 長万部から先の函館本線(通称山線)は、1日に4本の鈍行列車しか走らない。
札幌行きの特急はすべて室蘭本線(通称海線)を往く。車両はやはり単行のレールバスだ。

長万部を発車するレールバスは、旧国鉄型の気動車と違って、喘ぐことなく走り出す。
函館本線は緩やかに左カーブしてニセコの山をめざす。
ボックスシートに品の良い老婦人とご一緒した。小さい体に重そうな買い物袋を提げ、
ふたつ目の無人駅で下車していった。母と同じくらいだろうか、どうかお元気で。

 

左手にニセコアンヌプリ、右手に羊蹄山を見ながら倶知安に到着。
ニセコやヒラフなど国際的なリゾートを控えて、思いがけず賑やかな駅前を作っている。
ここで4番手の小樽行きに乗り換える。この列車、北へ向かう旅ではじめての2両編成だ。

倶知安には二世古酒造が在って、ニセコ連峰から湧き出る雪清水を使って酒を醸してる。
残念ながら蔵を訪ねる時間は無く、20分ほどの乗り換え時間に駅近のコープ店で仕入れた。
2両編成の気動車が動き出すと、早速 "二世古 生原酒" のスクリューキャップを切るのだ。 

 
 

 余市にはニッカウヰスキー蒸溜所、云わずと知れた竹鶴政孝のウイスキー作りの原点だ。
竹鶴と妻リタが暮らした私邸の一部を観ることができる。歴史ある建造物は趣があります。 

余市で寄り道をしたので小樽到着は17:00過ぎ、空模様は雨、すでに薄暗くなっている。 

ぽつりぽつりと灯が入りはじめた小樽運河をカメラに収めたら、田中酒造を訪ねる。
小樽天狗山の伏流水と道産の酒造好適米彗星を使って酒を醸している。
明日一番の車中酒として "純米大吟醸 寶川" と、もちろんオリジナルの猪口を仕込む。 

 

18:30、快速エアポートで札幌に向かう。6番手のこの列車はこの旅初めての電車になる。
札幌に到着する頃は夜の帳が下りて、今宵は「すすきの」で呑むことになる。

函館本線 函館~札幌 268.3km

Lucky Summer Lady / The Square 1978


群青の函館山といかそうめんと法螺吹と 函館本線を往く! ≪函館〜大沼編≫

2017-08-25 | 呑み鉄放浪記

群青色の空に墨が流し込まれるにしたがって、眼下の宝石たちも輝きを増していく。
函館山の夜景はこの頃が一番美しい。青春18きっぷを握りしめて北の大地にやってきた。
夏の終わりに、酒蔵と酒場を巡りながら稚内まで呑み潰そうと思う。
 

 

 地図を見ると函館本線は、大沼駅を中心に本線と2つの支線が8の字を描いている。
運行本数も少なく、呑み潰すにはかなり厄介な区間なのだ。
七飯と大沼を結ぶ下りの短絡線(通称藤城線)は、かつて特急が駆け抜けていた。
新函館北斗を経由しないこの線、今や旅客列車は1日に3本の下り鈍行が走るのみ。
七飯発12:54の森行きはそんな希少な3本のうちのひとつなのだ。 

新北斗函館経由の本線と合流すると、左手に小沼そして駒ケ岳の雄姿が展開する。
美しい稜線に見惚れるうちに、単行気動車は大袈裟なブレーキ音を響かせ大沼駅に到着。
大沼公園経由するこの列車を見送って、渡島砂原経由の後続列車を待つのだけれど、
それにしても待ち時間は2時間を超える。

 

 大沼公園まで歩いて「コーヒーラウンジ・サナ」は観光客に媚びない雰囲気が好感。
ドライカレーをたまごで包んでカレーをかけた一皿は乙女チックに "かんけいないもん"。
副題には「たまごでカレー関係をマイルドに!」と紹介している。 

 

 大沼発15:13の森行きは、駒ケ岳の南麓から東麓に迂回する通称砂原線を大回りする。
砂原線は本線より13キロも長く、下り5本上り7本の列車が通勤通学時間帯に走っている。
確かに乗客のほとんどはすでに2学期にが始まった高校生たちなのだ。

 

列車が鹿部を過ぎると、右手の鬱蒼とした原始林の先に太平洋が見えてくる。
徐々に標高を下げて潮の匂いがしてくると間もなく終点の森駅、左手から本線が合流する。
構内の護岸には海鳥がならび、噴火湾を隔てて室蘭のコンビナートが手に取れる。
爆裂火口が臨める北側からの駒ケ岳は雄々しい姿だ。

函館本線(藤城線) 七飯~大沼 13.2km
函館本線(砂原線) 大沼~森  35.3km

 

 高砂通りは「あかちょうちん」と云う名の炉端焼きの店を訪ねる。
常連さんに席を詰めてもらって、八角形を半分にしたカウンターの一角に席を占める。
聞こえてくる会話から、女子旅3人娘を除いては地元の方に違いない。
ここのところ「呑み鉄」と云う大人の遊びは酒場放浪記の様相を呈してきた。

 

ビールはもちろんサッポロ生ビール。刺身は "いかそうめん"、かがやきが見事だ。
"かにサラダ" に、焼き物は "アスパラ塩焼き" と "じゃがいも(塩辛セット)" を択ぶ。
北海道の玄関で、道産の肴を満喫の夜なのだ。

 

北海道の酒、旭川は高砂酒造の “純米 法螺吹 寒仕込” をいただくことにした。
はじめましての法螺吹は、
中富良野産の米で仕込んだ旨味豊かな純米酒。
口あたりがまろやかで飲み口にはキレもあり、刺身にも焼き物にもマッチするなぁ。
ついつい3合、ちょっと過ぎたようだ。明日は旨い酒と肴を求めて函館本線を北上する。

 

A FEEL DEEP INSIDE / The Square 1978


旧東海道・品川宿でBiz-Lunch「麺屋まる」

2017-08-23 | Biz-Lunch60分1本勝負

 北馬場参道通り商店街、めざす店がお休みで代わりの「麺屋まる」が当たりでした。
夏限定 "冷やしつけ麺" をいただきます。チャーシュー、煮玉子、メンマ、海苔がのった
モチモチの中太麺に、胡麻と刻みネギたっぷりのつけ汁が絡んで美味しい。
柚子の調味料を添えるのがお奨めらしい。
ランチタイムのサービスの "小チャーシュー丼" は、スープで炊き込んだご飯が絶品。
次回は看板メニューの "鶏魚介ラーメン" をいただこう。

      
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旧東海道・品川宿でBiz-Lunch「居残り 連」

2017-08-21 | Biz-Lunch60分1本勝負

 品川宿は日本橋方の入口、問答河岸跡近くにイタリア家庭料理の「居残り 連」はある。
碧の壁に蔦が絡まって良い雰囲気でしょう。
エントランスは、わざわざ路地側に木の引戸を設えて隠れ家っぽい雰囲気を出している。
メニューはご飯もの1種、パスタ4種、"じゃことキャベツのぺペロンチーノ" をいただく。
夜のMenuを期待させるに十分な味です。日が暮れてからワインを飲みに来たいね。

 
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Biz-Lunchi 天王洲アイル「朝霞刀削麺」

2017-08-19 | Biz-Lunch60分1本勝負

 お盆だからかな、11:30AM、朝霞刀削麺・天王洲店にいつもの長い列がない。
で突入しました。きょうは品川宿まで歩きません。
"刀削坦々麺" は、ミニ日替わり丼orミニチャーハンとセットで980円、ボリューム満点。
むちむちの麺に坦々スープと大粒の挽肉が絡んで美味しい。
別のメニューも試してみたいと思わせるに充分な旨さです。
再来店意向あり、でも並ぶのはご免だけどね。

     


信州の峠道「十石峠」にて

2017-08-17 | 日記・エッセイ・コラム

 高速道路や幹線国道の渋滞を回避する手段と旅人としての冒険心から、
標高1,351m、十石峠を越えて信州から首都圏へと還る。
走り屋からは「酷道」と云われるR299は、車がすれ違うことも適わぬ隘路を往く。
かつて米が獲れなかった上州地方西部の山間部へ、
信州佐久平から一日十石の米が運び込まれた道であることから名付けられたと云う。

 佐久穂町のR141千曲病院入口交差点から、秩父市のR140上野町交差点まで85.2km。
只一度の信号待ちもなしで所要2時間10分。対向車とのすれ違いに7~8度停まったけどね。
見事に渋滞回避。旅人としては大いに自己満足、家族にはGに苦しんだ峠越えなのです。 

 


信州・美ヶ原温泉「翔峰」にて

2017-08-15 | そうだ温泉にいこう!

 空にのびる絶景ロード "ビーナスライン" を往く。
旅の終わりは標高2,000mの雲上の高原台地「美ヶ原高原」だ。
霧の立つ日はその鐘が道しるべとなる「美しの塔」は美ヶ原のシンボルになっている。
周辺にはノアザミとハクサンフウロの薄紫が彩りを添えている。

美ヶ原からは、西には穂高連峰、北は妙高山に浅間山、東は八ヶ岳に富士山、
南に中央アルプス...と360度の大絶景が見渡せるはずなのだが、
まさに霧の立つ今日はのんびりと草を食む牧牛しか見えない。 

 

 日本書紀に記される束間の湯(つかまのゆ)=筑摩の湯。
浅間温泉か美ヶ原温泉か両説あるのだが、今回は松本市里山辺、美ヶ原温泉に投宿する。
ちなみにこの旅館の大浴場の名称は「束間の湯」である。
広い庭園の中の露天風呂、深緑を眺めながら浸かる、至福のひとときだ。

 

 オープンキッチンの食事処 "旬菜ダイニング信州"、乾杯はDRAFT BEER 穂高地ビール。
前菜は、鱧じゅんさい、もろこし豆腐、五平餅など彩豊かに並ぶ。活魚は信州サーモンだ。 

 
 

安曇野産の岩魚塩焼きにかぶりつく。
ふくらみのある香りの "純米吟醸生酒 鏡花水月" は、ここ里山辺の酒だ。
つづく焼物は信州和牛ステーキ、揚物は高原野菜天婦羅、
冷静茶碗蒸しは信州らしく鰻と山芋で作っている。いずれも純米吟醸が良く合う。 

 
 

ほろ酔いでティーラウンジのJAZZ生演奏会。
スパークリングワインを片手にJAZZに身をゆだねる快感。
松本の街灯りを見下ろして里山辺の夜は更けてゆく。 

 

あずさ2号 / 狩人 1977


"いま、ふたたびの奈良へ" そして大神神社へ 桜井線を完乗!

2017-08-13 | 呑み鉄放浪記

あの山は神だ
遠い昔から大和の人は語り継いできた。
三輪山の麓、奈良、大神神社。
脈々と受け継がれた祈りは、今日も何ひとつ変わらない。
本殿は無い。青き山こそ「神」そのもの。
人は山に神を想い、山は人と神を結ぶ。

ぞくぞくするほど荘厳で美しいCMでしたね。
でっ "いま、ふたたびの奈良へ" そして大神神社(おおみわじんじゃ)へ。

 

 奈良へ戻って来た。 昨日と同様、夏の陽に容赦なく射られて茹だるような暑さだ。
桜井線は奈良を起点に和歌山線の高田まで至る。
三輪、香久山、畝傍、駅名を聞くだけで桜井線が歴史舞台を走り抜けているのが分かる。

1番線に入線してきた2両編成に乗車する。この碧は「和歌山色」だ。 

 

京終(きょうばて)、帯解(おびとけ)、長柄(ながら)、難読かつ趣深い駅名を幾つか数えると、
30分ほどの乗車で三輪駅に到着する。大神神社を控えながら小さな小さな無人駅だ。 

 

駅近く「三諸杉」の今西酒造は、酒造り発祥の地とされる三輪に今では唯一残った酒蔵。
三輪山の伏流水を仕込み水に、三輪産の米に拘って酒を醸している。 

 大神神社の御祭神は国造りの神様、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)。
高橋活日命(たかはしのいくひのみこと)が御祭神の神力で美酒を醸したことから、
酒造りの神様としても広く信仰を集めている。
毎年11月には全国中から蔵元・杜氏が集まり「醸造祈願祭(酒まつり)」が行われるそうだ。

大神神社には本殿が無い。 御祭神の大物主大神がお山に鎮まるために、
拝殿の奥にある三ツ鳥居を通して三輪山を拝するという原初の神祀りの様を今に伝える。

 

お参りが終わったら門前で冷たい "三輪そうめん" など。
次の高田行きまでは1時間以上あるので、まずはキンキンのスーパードライ。
メニューには無い冷製のつまみを美味しくいただく。 

 

酒はよく冷えた "吟醸新酒 三諸杉" をいただく。
お姐さんが鳥羽漁港から良い "活たこ" が入ったというので、さっそく盛っていただく。
愉しい昼下がりの一杯。〆は当然に "三輪そうめん"、冷たく滑らかなのど越しが心地よい。 

 三輪駅に戻った矢先、跨線橋の向こうに停車していた2両編成が動き出してしまった。
またやってしまったっ!さては良い気分で時刻表を読み違えたか。40分の居残り決定。
それにしても美味しく愉しんだ "いま、ふたたびの奈良へ" の旅なのだ。

桜井線 奈良~桜井 29.4km 完乗

 

アン・ドゥ・トロワ / キャンディーズ 1977


交野の森に旨い酒、大門酒造を訪ねる 片町線を完乗!

2017-08-11 | 呑み鉄放浪記

 夏の空に碧色の甍が映えている大阪城、それにしても外国人旅行客が多い。
ファミリーかカップルは欧米豪の方、旗持ちツアーは中国語圏の方、はっきりしているね。
どうか日本を観て、食べて、遊びつくしてください。

 

尼崎から京橋を結ぶ東西線は1997年に開通した新しい路線だそうだ。
東西線を介して福知山線(宝塚線)から片町線(学研都市線)を繋ぐアーバンネットワークだ。
木津まで直通する快速電車は暫く東海道線に並走したのち地下に潜って行く。

 

大阪城北詰駅は藤田美術館の敷地にぽっかり口を開けている。
東西線開通までは地上に片町駅があって片町線の起点であった。
ここから大阪城をめざすと京橋口から登城することになる。 

京橋口は大阪城観光の裏口にあたり閑散としている。ランナーしか見かけない。
でも、内濠と極楽橋、切り立つ石垣、聳える天守閣の風景は城郭の美しさを味わうには
BESTなルートだと思う。

極楽橋を渡ると山里門、そう豊臣秀頼公と淀殿が自刃したと山里丸にあたる。
千利休の茶室があった閑静な風情を湛えた一角だ。 

 片町駅が廃止となってから京橋駅が片町線の終点であり、東西線の起点になっている。
周辺にはまだ9時台というのに串焼き店やら立呑み処が早くも暖簾を下げて誘ってくる。
がここは我慢して片町線の木津行き快速電車に乗車する。 

 

2つめの放出(はなてん)で途中下車。
ここから関西本線の久宝寺(きゅうほうじ)まで連絡する おおさか東線を潰しておく。
おおさか東線は2008年に開通した新しい路線、再来年には新大阪まで延伸されるそうだ。

最新設備の高架複線に国鉄時代の車両が走る、なんともアンバランスな風景ではある。
放出に戻って、三度、木津行き快速電車に乗車する。
窮屈に並んだ住宅街から、ちらほら田圃が見えてくると河内磐船、ここでも途中下車。 

 駅から徒歩7~8分、交野の森に「利休梅」の大門酒造を訪ねる。
特にショップはないのだけれど、ずかずかと事務所を訪ねると、利き酒の歓待を受ける。
なかでも季節限定の "FRESH 純米吟醸 生酒" と "青山緑水 純米大吟醸 生酒" が旨い。
和食はもちろん、フレンチでもマリアージュしそうだ。土産にクール便で送ろう。

四度の木津行き快速電車に乗車、片町線は生駒山地の北辺を舐めるように走る。
打って変わった里山風景を眺めながら、仕込んできた "純米吟醸 利休梅" を愉しむ。
こちらは華やかな香りの辛口の酒だ。

300mlを飲み終わらないうちに、快速電車は木津に終着、1番ホームの北端に0キロポスト。
7両編成は慌ただしく折返して行く。モーターの焼けつく匂いをプラットホームに残して。

   東西線 尼崎~京橋 12.5km  
   片町線 京橋~木津 44.8km
おおさか東線 放出~久宝寺  9.2km 完乗 

 

愛のメモリー / 松崎しげる 1977


和歌山城下の名酒場で呑む 和歌山線を完乗!

2017-08-09 | 呑み鉄放浪記

 まさに茹だるような暑さです。この時期北へと旅立つのが正解でした。
でも大垣行きの夜行快速の指定席が取れたので「いま、ふたたびの奈良へ」
そして今宵和歌山で呑んでいる。

 

和歌山線は関西本線の王寺から分岐して和歌山へと抜けるローカル線。
2~4両編成の電車がのんびりと大和盆地のほぼ真中を南下する。

 

90kmの全線を通して乗ると2時間30分もかかる和歌山線、
旅の連れを求めて大和新庄で途中下車、もちろん無人駅だ。
駅から汗だくで徒歩10分、梅乃宿酒造の趣ある蔵と小さいけれど洒落たショップが在る。 

 

山田錦を醸した純米大吟醸生酒はワイングラスが似合うエレガントな酒だ。
一緒に求めたオリジナルの利き猪口で車中酒を愉しむ。 

大和盆地の淵を越えると、鉄路は進行方向を西にかえて紀の川沿いに紀伊水道をめざす。
生酒のお蔭で半分まどろみながら、退屈することなく和歌山に終着する。 

 

 和歌山の名酒場「多田屋」は吉田類氏も訪ねていた。壁には一面に短冊が貼ってある。
コの字カウンターの中では割烹着姿の小母ちゃん達が切り盛りしている。
まずは定番のポテトサラダで生ビールを呷る。今日の刺身はカンパチが良いそうだ。
辛口の地酒は「太平洋」の原酒、和歌山ならではの肴、鯨ベーコンを酢味噌でいただく。
荒々しい酒が鯨にマッチして、美味しい和歌山の夜は更けゆくのです。

和歌山線 王寺~和歌山 87.5km 完乗

 

秋の気配 / オフコース 1977


いま、ふたたびの奈良へ 関西本線を完乗!

2017-08-07 | 呑み鉄放浪記

「いま、ふたたびの奈良へ」JR東海のCMは魅かれるものがありますね。
この夏、呑み人も、ふたたびの奈良へ。

 

 大垣行きの快速に乗ってやって来た早朝の名古屋駅。
高層ビルがにょきにょきと生えて、経済堅調な東海地方を象徴している。
これから関西本線に乗って奈良、そして難波に抜けようと思う。 

関西本線の起点であることを示す0キロポストを確認したら3両編成に乗車する。
13番線、06:11発の亀山行きがこの旅のトップランナーだ。 

濃尾平野を西進する電車は木曽、長良、揖斐と3つの大河を渡って三重県へと抜ける。 

関西本線のボトルネックは亀山から加茂の区間。
加太越えと呼ばれる25‰の急勾配、さらに単線・非電化なのだ。
2両編成のレールバスがディーゼルエンジンを唸らせてこの急勾配を越えて行く。
その代わりに車窓には鈴鹿川、越えて木津川が美しい風景を見せてくれる。

 

単線、非電化、急勾配を抜けた加茂には、大阪から7両編成の快速電車が迎えに来ている。
奈良までは15~20分、大阪までは70分で駆け抜ける俊足ランナーなのだ。

 初めて奈良を訪れたのは中学の修学旅行、どこをどう巡ったか記憶は曖昧だ。
Km観光のガイドさんの隣でご満悦な南大門前の写真から、東大寺を訪ねたのは間違いない。
確か「いとしのエリー」が流行っていたっけ。

改めて目の当たりにする大仏殿、圧倒的に大きい。 
創建から2度にわたって焼失した大仏殿、現存するのは江戸期に再建したもの。
現在でも世界最大級の木造建築である。

 

本尊盧舎那仏像の四方の守りを固めるのが四天王。
大仏殿には広目天が北西の隅を、多聞天が北東の隅を守るのみで2体しかない。

 
   

 古き良き日本の生活風景を残す奈良町に「春鹿」の今西清兵衛商店がある。
白壁に黒い格子の店構えは、奈良町にあってもひと際目を惹く。
底に鹿をあしらったガラスの酒器を求めると5種が利き酒できる。
純米超辛口、純米吟醸生酒、本醸造極味、純米生原酒木桶造り、大吟醸しろみき。
なみなみと注がれた自慢の酒に、利き酒と云いながらほろ酔いだ。

 

 奈良町から三条通りへと抜けるアーケード街に赤ちょうちんが開いていた。
洒落たcafeよりこんな店がいいね。生ビールを呷ってから「春鹿・超辛口」を呑む。
カウンターの大将が切り出したお造り、揚げたての天ぷらで昼間の一杯が愉しい。 

 奈良駅から大和路快速に乗って大阪をめざす。
やはり修学旅行で訪ねた法隆寺は、2つ先の法隆寺駅から路線バスで8分ほど。
でもあまりの暑さと酒が効きすぎているのでパス、快適に冷えた車両で先を急ぐ。 

大和路快速は大阪環状線に乗り入れて大阪駅にむかうので、天王寺で各駅停車に乗り換える。
首都圏では見かけなくなった国鉄時代の通勤電車が大阪では健在だ。 

いつの間にか地下駅になっていた関西本線の終着駅・難波。
地上はOCAT大阪エアシティターミナルになっていた。
階段を上って地上に出た正面の千日前通りを渡ると直ぐに道頓堀川が見えてくる。 

 

道頓堀はおもちゃ箱をひっくり返した様な世界だ。通りそのものがテーマパークの様にも思える。
そこら中の店から旨そうな匂いが漂ってくるのだけど、酒は夜までいいかなって感じだ。
いつか南海線か近鉄線で呑むときに道頓堀を堪能しよう。

関西本線 名古屋~JR難波 174.9km 完乗

 
 

Ellie My Love / Ray Charles