旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

大人のたしなみ 立ち食い弁慶@新潟

2021-05-29 | 大人のたしなみ

万代橋のレトロな街灯に灯が入る。水面に映る灯は揺れ、信濃川にシャンパンを注いでいる様にも見える。
ボクにはそれが「もう飲んでいいよ」のサインと解される。それでは遠慮なく、今宵は万代島を訪ねる。

佐渡沖で獲れた旬のネタを佐渡産コシヒカリにのせて提供してくれるのは「別館立ち食い 弁慶」さん。
L字のカウンターには20人位立てるだろうか、カウンターには板さんひとり、ホールは二人のお嬢さん。
生ビールを一杯呷ってから "村祐 常盤ラベル亀口取り"、少々の苦味も持った若々しいフレッシュな酒だ。

"たこの唐揚げ" を抓んでいると、隣の寿司店から "お造り盛り合わせ" がカウンターに届く。
ブリ、本マグロ、ヒラメ、アジ、甘エビが並んぶ、これで500円也って云うんだからビックリでしょう。

たこ唐とお造りで満足なんだけど、カウンターに立っているからには握ってもらわないとね。
吟醸酒を飲んでいるから白身がいいかな、っで "ヒラメ" と "真鯛" をいただく。美味いね。 
ところで二杯目は "高千代 純米吟醸 桜" 、艶っぽい桜色のラベルは新潟県限定販売の1本。
とてもフレッシュな無濾過無加水一本〆は、コクとキレの良さ、フレッシュ感が同居した旨酒だ。

〆は今が旬の "生ホタルイカ" を味わう。新鮮な春の味覚を生姜醬油で口に放り込む。んっ美味なのだ。
佐渡沖で獲れた旬のネタと新潟の地酒で夢のような(ずいぶん大袈裟)なトワイライトタイム。
新潟赴任時代は24時間戦っていたから、離れてから愉しむこの矛盾、信越本線完乗後のひとり打上げの宵だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏の恋人 / 長渕剛 1981


街かどの蕎麦屋にて「品川宿の変わり蕎麦」

2021-05-26 | 日記・エッセイ・コラム

 旧東海道を旅人が往来した時代、品川宿辺りの街道は波打ち際で遠浅の海が広がっていたと云う。
そんな時代の品川の名物である「海苔」と「アサリ」を天玉の上にちらした名物メニューは "品川宿そば"
まずは熱々ピリ辛のつけ汁で味わって、後半は溶き玉子でまろやかな味を楽しむのがご作法なのだ。

奥の小上がりには「品川宿を駆け抜けた維新の人々」って大きなパネルが壁一面を覆っている。
旅人の見送りや出迎えの人々で賑わった品川宿は、桜や紅葉の名所を抱えた江戸の遊興地でもある。
幕末には維新の志士が集まり、密議をこらしたり遊女と遊んだり、歴史ドラマや映画で見る光景だ。

禿(かむろ)とは、遊郭に住み込み太夫や花魁の身の回りの世話をした童女のこと。色町のしきたりを学んだ。
水菜と人参のかき揚げを禿の簪に見立てた "かむろそば"、焼き海苔の上にアサリとゴボウ揚げがのる。
白醤油のかえしを使った出し汁が美味しい、でも出し汁がかかって、かき揚げが簪(かんざし)に見えないな。

野菜がたっぷりでヘルシーな "おいらんそば" は、柚子の香りがきいた冷たい汁をかけていただく。
これからの季節にぴったりのあっさりした蕎麦だ。なんとも香りと風味がいい。
柚子こしょうを溶きすぎてピリりと辛い、花魁に入れ込みすぎると痛い目に遭うと云うことか。

とても楽しい趣向の品川宿の変わり蕎麦、八ツ山橋から北品川商店街(品川宿)に入って中ほど、
日本橋から東海道を歩く人には初日のお昼にちょうど良い距離、そして話題になるメニューだと思う。

サニーサイド・コネクション / 三原順子 1981
     


風を感じて! "浅き夏" 三浦半島へ

2021-05-22 | 単車でGO!

 渋滞をすり抜けて、横浜横須賀道路を飛ばしてきた。三浦海岸交差点から県道215号に入る。
賑わうビーチを左手に沖ノ島を追い越すと、県道は短いワインディングになって台地に駆け上がる。
青々とした畑の先に浦賀水道を見下ろし、房総半島は意外と近くに横たわっている。
大小の貨物船が白い航跡を引いて5月の海を滑って行く。爽風に吹かれて心地いい。

 京急バス「海35」系統が走るルートは、山本コウタローとウィークエンドの『岬めぐり』の世界らしい。
海岸、漁港、入江を巡ってバスは走る。いや水冷4気筒の900ccで岬を廻る、ひとりで僕は ♪

剱埼灯台の台地から下ると215号は西へと針路を転じ、江奈湾、毘沙門湾、宮川港と進む。
風力発電の巨大な風車が回る展望台から城ケ島、その先に伊豆大島、目を転じると富士山まで望む。

眼下にヨットハーバーが見えたので、エンジンブレーキを効かせて細くうねる坂道を海岸まで下りる。
実はこの入江の小さな漁港に面して、おいしいマグロが食べられる隠れ家的民宿食堂があるのだ。

 小一時間待って窓際の小さなテーブルに収まる、ノンアルを呷る。網戸を鳴らして海風が気持ちいい。
人心地ついたころに "中トロ漬け丼" 登場、ご飯を覆う分厚い中トロの「朱」と、タレの香ばしさがそそる。
ひと口運んだらマグロの旨みが口中に広がって、、、なんも言えねぇ。至福。

京急バス「海35」系統はこのまま西へ2.5kmほどの三崎港へ、さらに三崎東岡まで走る。
でも城ケ島・三崎港方面は相当に混んでいるらしい。然らばここでUターン。目的は達したからね。
旨マグロ深く 腹に沈めたら? この旅終えて 街に帰ろう ♪

<40年前に街で流れたJ-POP>
出航 SASURAI / 寺尾聰 1980


桃香にほのかな恋心

2021-05-19 | 日記・エッセイ・コラム

 真紅の「緋扇」が艶やかな大輪を魅せる、5月半ば、咲き誇るバラがその美と香を競っている。
それにしても花を撮るのは難しいですね。ボクの腕では彼女たちの魅力を伝えきれませんがご容赦を。

現下の状況では遠方への放浪も憚られ、伊奈町のバラ園へ。近郊のスポット再発見ですね。
伊奈町は大宮の北、東北新幹線と上越新幹線が地図にY字を描くまん中辺りになります。
約1.2ヘクタールの敷地に400種5,000株を超えるバラ、公営の施設とは思えない素晴らしいバラ園です。

緑のピッチに深紅のユニフォームが駆けだしたかの様な「Reds Rose」というミニチュア・ローズ。
浦和レッズがJ2降格に至った1999年から育種が始まったという。
「誰からも愛され、強く、そして耐えることを知っているバラ」とは育種家・河合伸志氏のコメント。

匂い立つような美しさのローズピンクは「桃香」の大輪。素敵なお嬢さんですね。

ローズピンクとアイボリーのグラデーションは「ほのか」、清々しい彼女も好感度が高い。

濃いローズピンクが華やかなのは「恋心」。淡いというよりはウキウキ、ハッピーな恋なんでしょうね。
THE NOLANS や 石野真子さんのヒット曲のイメージでしょうか。
そしてビロード調の濃赤色の美しい大輪、彼女たちの未来に「乾杯」です。

スマイル・フォー・ミー / 河合奈保子 1981
     


夏の扉を開けて 伊豆急行線を完乗!

2021-05-15 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 8000系電車がゴトゴトと白田川橋りょうを渡ってくる。ここまで来たら下田まではもう少しだ。
伊東線を呑み潰したのは昨年5月、今回は続きの伊豆急線で、はたまた下田漁港で飲もうと思う。

白亜の壁面にスペイン瓦風のオレンジを乗せ、ロータリーにはフェニックス、どこまでも南国風の伊東駅。
JR線の終点であり、伊豆急線の起点であるけれど、そんなことを感じさせることもなく列車は直通していく。

 5637Mが熱海方面から1番線に入る。6連の8000系はどうやら東急電鉄(東横線)からお嫁に来たらしい。

この車両、海側をクロスシートに改造している。ボックスの中心と窓の位置がズレているのがご愛敬だが、
小さなテーブルまで付いて吞む旅人には嬉しい。ついでにテーブル下に昔ながらの栓抜きがあるといい。
何故って、熱海や伊東で売っている地ビールがボトルタイプなのだ。
5637Mがガクンっと動きだしたら、早速 "SAPPORO静岡麦酒" を開ける。つまみは "ひとくちいわし" だ。

白田川橋りょうに今度は「サフィール踊り子」が差しかかる。サフィールは全車グリーン席の特急、
東京、新宿から伊豆急下田まで、快適で優雅、プレミアムなひとときを過ごせる。らしい。乗ったことはない。

ちょっと引いてR135の橋上から眺めると、白田川、サフィール、相模湾の「青」のグラデーションが美しい。

片瀬白田から伊豆稲取間は伊豆七島を望む海岸線を走る。際立つ相模湾の「青」に大島が浮かんでいる。

伊東から伊豆急下田までは普通列車でも特急でも1時間少々の乗車、350mlで丁度いい様な足りない様な。
5637Mは2番線に終着する。すぐ後ろからは「踊り子」が追いかけてきて、休日のホームは特急で賑わう。

駅前ではペリー提督が乗艦していた旗艦「サスケハナ号」の模型が、春にしては濃い影を落としている。

 先ずは稲生沢川を渡って下田市魚市場へ、12時を過ぎて混み合う前に「市場の食堂 金目亭」をめざしたい。

市場の一角に設えたプレハブの味気ない造りだけど、金目鯛をはじめ新鮮な魚介が食べられる人気の食堂だ。
とりあえずは静岡の地酒、冷えた "花の舞" (遠く離れて浜松の蔵だけど)をキュっとやる。これが美味い。

人気の "金目三色丼" が着丼、平キンメ、キンメダイ、トロキンメが仲よく盛られて朱のどんぶりを賑やかす。
キンメたちはあらかた地酒のアテに刺身として堪能、ご飯は潮汁といっしょに掻き込むいつものパターン。
新鮮なキンメたち、やや辛の本醸造に、今回も満足の昼飲みなのだ。

稲生沢川河口をぐるっと回って「ペリー艦隊来航記念碑」で小さな旅を終える。初夏の陽射しに汗が噴く。
提督の背景には寝姿山、ロープウェイで展望台に上れば青々とした太平洋が望めるはずだ。

伊豆急行線 伊東~伊豆急下田 45.7km 完乗

夏の扉 / 松田聖子 1981
     


一酒一肴 伊東・海鮮丼と白隠正宗と

2021-05-12 | 津々浦々酒場探訪

 ラベルには、夜空いっぱいに咲く花火、ジャカランタ、そして浴衣のお嬢さん。
んっ夏が待ち遠しい。20分と短い伊東線の旅はピルスナーを1本くらいがちょうど良い。

 

 湯の花通り商店街を歩いて古民家風の居酒屋「楽味家まるげん」へ。
お天道様は真上だけど、喉ごし端麗な東海道・原宿の酒 "白隠正宗 特別純米" を愉しむ。
まぐろ、まんだい、〆サバなど、海鮮丼の具をアテについつい二合目、いや美味いね。
伊東線を呑み潰したのは昨年の5月、今年は続きの伊豆急線で呑みますかね。

2020/05
 
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缶ビールとデニムシャツ / 杏里


大人の休日 雨の山形で1時間3本勝負

2021-05-08 | 旅行記

 予報通りに雨が本降りになった福島駅、15:31、つばさ141号が入線してきた。
本宮までソースかつ丼を食べに来た勢いで、山形で立ち飲みしようと山形新幹線に乗車する。

なにか車中酒をと覗いたNewDaysで目を引いた "寶CRAFTふくしま あかつき桃" って地域限定チューハイ。
福島県を代表する桃「あかつき」を丸ごと搾ったストレート混濁果汁を使用した桃スピリッツなのだ。
甘く芳醇な香りを愉しむうちに、つばさ141号は雪の残る板屋峠を越えて山形県へ。雨が止む気配はない。

 冷たい雨に煙った山形駅に着いたのは16:48、滞在時間は1時間と少々を予定、日帰りだからね。
ところがだ、目星を付けていた立ち飲み屋は臨時休業(行き当たりばったりで偶にやらかす)なのだ。
代わりに見つけた「山形名物 花膳」は地酒と郷土料理の素敵な店でした。でも残り1時間を切ってる。
先ずは "秀鳳 純米大吟醸 つや姫"、山形県オリジナル品種で醸したフルーティーな酒、美味しい。

山菜天ぷら五種盛りを注文した積りがお浸しが出てきた。でもGood、カタクリって初めて食べた。
初孫の "赤魔斬" を注文したら、もっきり一盃に満たずサービスしてもらった。キレある+10がスッキリと旨い。
当然に芋煮が食べたかったのだけど、時間が無いので "山形牛 旨味たっぷりメンチカツ" に変更、
噛んでサクサク、口に入れるとジュワーって肉汁の旨みが広がって、いい仕事しているなぁ。

そして三杯目は "惣邑 純米酒 出羽の里"、初夏はあやめが美しい長井の酒、サラリとでも深い旨みが良い。
っと、つばさ156号の出発時間まで10分を切った。慌てて跳ねを飛ばして駅までダッシュ、酔いが回る。
プロレスじゃないけど山形の地酒を1時間3本勝負、ちょっと消化不足。この店はまた訪ねたい。

お嫁サンバ / 郷ひろみ 1981
     


鶴見のホッピー酒場にて「大鶴見食堂」

2021-05-05 | 津々浦々酒場探訪

 夜の鶴見線の探検が終わったら、白提燈を灯した雑居ビルの穴蔵へと階段を降りる。
コの字カウンターを中央に配した「大鶴見食堂」は、せんべろ的な大衆酒場だ。
"赤ポッピー" を注文したら、焼酎は別のコップ、ボール一杯の氷、気が利いている。
だから2杯目、3杯目も自在に作って美味しくいただける。

アテは基本に忠実に、"冷奴 青唐辛子のせ"、これ日本酒にもビールにも合いそうだ。
子犬の糞?みたいに焼き明太子がのった "ポテトサラダ" が美味い。
満足の厚切りのハムをうす衣で揚げた "ハムカツ" がジューシーで申し分のない逸品。
冷えたホッピー、美味いアテをつまんで2,370円、思いがけず愉しい鶴見の宵、大当り!

2020 / 05

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Ai No Corrida / Quincy Jones 1981


大人の休日 桜花爛漫の津軽・弘前城へ

2021-05-01 | 旅行記

 400本のソメイヨシノ、しだれ桜や八重桜などを併せて約2600本が咲き誇る弘前公園の桜を観たい。
折からの低気圧が過ぎ去って午前中には雨も上がった。満開の便りは昨日届いている。

 秋田駅での乗り換え時間は10分、それでも改札を飛び出して駅ビルで地酒のワンカップを求めてきた。
12:40、2号車には僅か3人を乗せ「つがる3号」が滑り出す。初めての桜の弘前に期待は大きく膨らむ。

20分もすると車窓に八郎潟干拓地が見えてくる。とにかく広いの一言、昭和の大事業に思いを馳せる。
"天の戸" は横手盆地の浅舞酒造の酒、酒名は大胆にも天照大神の逸話「天の岩戸」からとられている。
なるほどラベルには勾玉 (まがたま)があしらわれてるね。カップ酒だけど純米酒?スッキリと旨い酒だ。 
っと一合の旨酒に酔い、うとうと微睡むうちに碇ヶ関を越えて津軽平野に入る。弘前までは2時間の旅になる。

 弘前さくらまつりの100円バスに揺られて10分、左手車窓がピンク一色になる、いやいや想像以上だ。
三の丸東門までやってきた。外濠の土塁にはびっじりとソメイヨシノが満開を誇って目を奪う。
もはや外堀と一体となった絢爛たる桜の海が城と城下を分けているのだ。

東門から南門へと中濠を巡る。二の丸と三の丸双方からソメイヨシノが枝を延ばして濠を桜色が覆う。

杉の大橋を渡る、視界にいっぱいのソメイヨシノ、重厚な南門の黒、欄干の朱がアクセントになって美しい。

下乗橋を渡ってようやくの本丸、曳屋されて石垣のスカートを脱いだ三層の天守はなんだか恥ずかしそう。
「弘前枝垂れ」と「八重紅枝垂れ」が天守に付き従い、その薄紅と淡紅紫が足元を隠そうと努めているね。

最後に本丸未申櫓跡に上る。ソメイヨシノ越しに西濠と城下を見下ろし岩木山を眺望する。絶景だね。

「美食処 松の木」に萌葱色の暖簾が掲がる。帰路の特急まで僅かな時間だけど津軽の酒肴を堪能したい。
先ずは生ビール、今日のおすすめから "めばち鮪" を択ぶ。適度な脂が乗って美味しい。中落ちが泣かせる。
ところでお通しの "つがる漬け" が絶品、数の子が入った松前漬けとでも云うのか、日本酒のアテに最高だね。

カネタ玉田酒造店は弘前市内の蔵、ふわりとフルーティー、すっきりとしたキレの "華一風" をいただく。
特別純米酒の華やかなピンクラベルが満開の桜にぴったり重なるね。
イカをたたいて玉ねぎなど野菜と揚げた "イカメンチ" は酒の肴には外せない津軽地方の郷土料理だ。 

"帆立貝味噌焼き" が湯気を立てて運ばれてきた。熱々のホタテと豆腐が、口に入れてハフハフと美味しい。
二杯目の "豊盃" も弘前市内の蔵(三浦酒造)、どんな食事とも合う定番の特別純米酒なのだ。

店を出ると弘前駅が夕陽に染まっている。小一時間だけど津軽の酒肴を存分に愉しんだ。
こんな時勢だから人気店の客もボク一人、飲食業の皆さんには辛い時期に違いない。今暫く頑張ってほしい。

18:02発「つがる5号」で新青森へと向かう。22:00過ぎには東京と云うんだから新幹線は偉大だ。
角館武家屋敷と桧木内川堤、弘前城で満開の桜を眺め、津軽の酒肴を愉しんでの濃~い日帰り旅を終える。
車窓に夕陽を背負って津軽富士が美しい。

渚のラブレター / 沢田研二 1981