旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

駅そば日記 金沢「加賀白山そば」

2022-09-28 | 旅のアクセント

 “白えびかきあげそば” を択ぶ。金沢や富山を訪ねたら、酒場でアテにしたいやつだ。
温かいどんぶりに両手を添えて先ずは汁をひと口、んっいい香り、鼻腔をくすぐってくる。
カラッと揚がったかきあげは汁を吸わない。箸で運んでひと口齧ってみる。サクッと歯応えがいい。
ネギと一緒にそばを大掴みしてズズッと啜る。美味いね。駅そばとしては上々のクオリティーだ。

北陸新幹線延伸開業のタイミングで、改札内の蕎麦スタンドは駅ビルRintoに移転して、旅情もなにも無い。
ホームにあった頃の風景は味があった。もっともその頃は立ち喰いそばには興味はなかったのだけれど。
美味しいけれどちょっと寂しい、金沢駅は「加賀白山そば」での一杯なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
約束 / 渡辺徹 1982


風を感じて! September

2022-09-24 | 単車でGO!

 長坂ICから北杜八ヶ岳高原線を駆け上って山梨県立まきば公園、牛さんたちが長閑に草を食んでいる。
どうもボクと八ヶ岳の相性は悪いらしい、こんなに晴れているのに雄大な峰々は雲の中だ。

裾野を削る深い川俣川渓谷にかかる赤い橋を渡る。ポールラッシュ通りに入るとご存じ清泉寮。
ファームショップでカップルに混じってソフトクリームを試す。練乳のような濃ぉい甘さが堪らない。

JR甲斐小泉駅まで下ってきた。苔むした岩の間から清らかな水が湧くというよりまさに溢れ出している。
1日に8,500tも湧出するという八ヶ岳南麓高原湧水群の一つ「三分一湧水」の名称は、武田信玄が湧出口に
三角石柱を立てて水を3等分して流し、村々の水争いを治めたという伝承からだと云う。

湧水の近くには「そば処 三分一」がある。少々並んでもうまい蕎麦が食べたい。
“十割そば” の天盛りを択ぶ、香こそそこそこだけどコシが強くて喉ごしの良い蕎麦はなかなかの美味だ。

足が竦むような八ヶ岳高原大橋を越えて清里へ、さらに緩やかな勾配を登り切るとそこは甲信国境、
折よく高原列車が登ってきた。蒸気機関車が喘いだ急坂もディーゼルカーは軽快に駆け抜けていく。

カランカランっと、高原の乾いた空気に鐘の音が響いてきた。
標高1,357mは日本の鉄道最高地点、巨大なモニュメントに提がる「幸せの鐘」を恋人たちが鳴らしている。

野辺山宇宙電波観測所を訪ねる。直径45メートルの電波望遠鏡が仰ぐ天は、どこまでも蒼くそして高い。
エキゾーストを響かせて高原をゆく。夏の日差しが弱まるようにSeptember、季節は確かに秋に変わった。

SEPTEMBER / 宮本浩次


一酒一肴 津•るみ子の酒×松坂牛レアステーキ

2022-09-21 | 津々浦々酒場探訪

 伊勢鉄道の短い旅を終えて、県庁所在地にしては良く云えば落ち着いた雰囲気の津駅前。
ほど近い懐石料理店の暖簾をくぐる。伊勢志摩の贅沢を楽しむ店にリーズナブルなランチメニューがあった。

"るみ子の酒" は、伊賀は森喜酒造の酒、注ぐ特別純米生原酒がリーデルグラスを曇らしていく。
紅が鮮やかな肉に青い刻みネギを散らして “松坂牛レアステーキ” が美しい。サッと青柚子を絞って準備万端。
松坂牛の旨みに青柚子の酸味がちょっぴりきいて美味しい。追いかける純米酒のすっきりした味わいが合う。

さて、腹ごなしに2キロほど南へ彷徨うと津城跡、丑寅櫓が復元されている。
馬上の甲冑姿は藤堂高虎公、主家を転々とした後徳川に与し、伊予今治から入城して伊勢藩主となった。
伊勢の酒肴と歴史にちょっぴり齧って、夏の終わりの伊勢鉄道の旅なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
すみれ September Love / 一風堂 1982


赤電とEVANGELIONと志田泉と 遠州鉄道を完乗!

2022-09-17 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

「あかでん1日フリー切符」を求めたら、EVANGELIONのキャラクターが描かれている。アスカって言うらしい。
どうやらラッピング電車が走っているようなのだ。どこかで遭遇できるだろうか。世代ではないが楽しみだ。

遠州鉄道の終点駅は西鹿島、山小屋風の瀟洒な駅舎が印象的だ。
ここで天竜浜名湖鉄道に接続し、また東海随一の霊山を神体山と仰ぐ秋葉神社への路線バスにも乗り継げる。

西鹿島を発った赤い2両編成は、緩やかな下り勾配で勢いをつけると、軽快に三方原台地を滑っていく。
新東名高速を潜って、走り出しは農地と宅地が混在した田園都市の風景の中を往く。

新浜松と西鹿島の両端の駅を00,12,24,36,48分に始発する高頻度の運行をしているけれど全線が単線。
このため上下線の交換風景は多く見られる。各駅はほとんど跨線橋を持たず乗客は構内踏切を渡る。
カンカンカンと踏切が鳴って、積志駅に上り下りの赤い2両編成が入ってきた。まさに私鉄沿線の情景だね。

上島駅からは高架に上がって、赤い2両編成は都市の電車に変身する。右手にはYAMAHA本社が見えてきた。

終点まで500mを残して第一通り駅に降りたつ。この界隈に気になる酒場が点在しているからだ。
っで、西へ向かう繁華街の道路から1本目の裏路地に紛れ込むと「立呑やじゃんだら&LA・JANN」がある。

開店直後にもかかわらず店内は立錐の余地も無い。親切なご常連氏が僅かなスペースを空けてくれたけど
そこはこのご時世、丁寧に遠慮して少し寂しいけれど2階席へ。やはり立ち飲み、連れ立って来るには良い席だ。

冷たい生ビールで汗がひくのを待ちながら、短冊と黒板を交互に眺める。アテもなかなか凝っているようだ。
一瞬手の空いた姐さんに遠州の酒を尋ねる。“國香” と云うのが袋井の酒だと教えてくれる。然らばこれを一杯。

中汲み無濾過生原酒だからうすにごり、17.5度ある原酒だけどふくよか、ちょい辛でキレの良い純米酒。
うすにごりを舐めているうちに “炙りしめ鯖”が登場、〆鯖の美味さそのままに皮がカリカリっと食感が楽しい。

“志田泉” は藤枝だから駿河の酒、香り控えめ旨味しっかりと “開龍 純米原酒” も18度、力強い酒だね。
冷えた原酒がグラスから溢れて堪らない。そっと優しくお迎えにいこう。
黒板に見つけた “秋茄子の揚げ浸し” が気になるでしょ。秋茄子ばかりかツミレとししとうもカラッと揚がって
大根おろしにたっぷりとみょうが、美味い。地酒のラインアップにこのアテのクオリティ、魅力的なお店です。

日が暮れてさすがに2階席も譲り合い。灰皿から余ったコインを拾ったら、ここはきれいに席を辞したい。
ホームへの階段を上っていくとタイミングよく、っと最後に会えましたねEVANGELION電車、
ドア近くで切符に描かれた惣流・アスカ・ラングレーと対面して、妙な達成感を感じる遠州鉄道の旅の終わりだ。

遠州鉄道 西鹿島〜新浜松 17.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏をあきらめて / サザンオールスターズ 1982


駅そば日記 小田原「箱根そば」

2022-09-14 | 旅のアクセント

 自慢のかき揚げが丼の背にもたれ掛かって、刻みネギとワカメが “かき揚げそば” の麺と汁を覆っている。
具と一緒に麺を大掴みして、フウっと一息かけてズズッと啜る。汁はやや辛めか。美味い。
汁に浸って柔らかくなったところから “かき揚げ” を崩して、またズズッと啜る。旨い。汁が甘みを帯びてきた。

小田急系列の「名代箱根そば」のそばはなかなかレベルが高いと思う。
テーブル席も設置した明るく清潔な店内は、女性も家族連れもそのドアを開けることを躊躇わないだろう。
腹を満たしたら各駅停車で東海道をさらに西進する。青春18きっぷ最後の日は遠州鉄道を呑み潰すつもりだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
ゆ・れ・て湘南 / 石川秀美 1982


浜名湖とKATANAと開運シュヴァルツと 天浜線を完乗!

2022-09-10 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 エキゾーストノイズをガーター橋を鳴らす轟音に変えて、ミステイックシルバーの “KATANA” が迫ってきた。
9/11はフルーツパーク駅を「KATANA駅」として『KATANA Meeting 2022』を盛り上げる。

新所原駅を降りると香ばしい匂いがどこららともなく漂ってくる。匂いを辿るとまさに私の目的地である
天竜浜名湖鉄道の新所原駅、小さなエキナカのうなぎ店が浜名湖のうなぎを焼いているのだ。

元カレです? 国鉄時代より東海道本線を走っていた懐かしい「湘南カラー」のラッピング車両は、
AKB 48とコラボレーション。新曲のヘッドマークと掲げ、車内は彼女たちのモノクロのフォトで溢れている。

3つ目の知波田を出ると右手に浜名湖が広がる。当然にそれを合図にプルトップを引くのだ。
プシュッとお大袈裟な音が響く、TH2100形はクロスシートを備えて、呑む旅人に優しい車両なのだ。

みかんの産地三ヶ日に降り立つ。三ヶ日をはじめ天浜線内の5つの駅ではレンタサイクルを営業している。
夏の名残を探しに自転車を漕ぎ出す。名残を探すどころかこの日は真夏日、すぐさま汗みどろになるのだ。

スペイン風のオレンジの瓦を載せたリゾートホテルが佇む。パームツリーがゆっくりと揺れている。
まだこんなに暑いのに、湖畔のプールもデッキチェアーもがらんとして、夏の夢のあとだね。

湖畔のcafeでふわとろの “オムライス” が、コクのあるデミグラスソースをかけて美味しい。

諏訪湖から谷を深く抉った急流「暴れ天竜」はこの橋梁を境に表情を変え、流域広くゆったりと遠州灘へ注ぐ。
二俣本町駅近く筏問屋 旧田代家住宅を拝見(土日祝日のみ)できる。流れが変わる故に、信州から下った名木は
この地で筏を組み直し、河口から海を旅して江戸に運ばれたと云う。往時の繁栄と賑わいが想像される。

三ヶ日から乗ったTH9200型は、フィンランドの人気ファブリックMarimekkoで装飾した “Slow Life Train”。
転換クロスシート、北欧イメージした白い木目調の内装にカラフルなカーテンやヘッドカバーに彩られた
落ち着いた車内は、いつまでも揺られていたい気分にさせるね。 

ガッタンと大きな音を響かせて、ラッピング列車 “うなぴっぴごー!” がテーブルごと反時計回りに動き出す。
この際だから「転車台・鉄道歴史館見学ツアー」に参加してみる。貯水槽、転車台、扇形機関庫、もちろん
趣のある天竜二俣駅の駅舎やホーム上屋と併せて、旧く良き蒸気機関車が走っていた時代を想像させる。

彩やかなイエローの “ぶんぶん号” は、愛くるしいミツバチのイラストを描いて、きっと子どもたちに人気だ。

沿線の宮口駅近く、菰樽に花吹雪を散らして花の舞酒造がある。ちゃっかり純米吟醸の300mlを仕込んでおいた。
ボックスシートに一人っきりだから、車窓に流れていく夏を惜しみつつスクリューを切る。いい香りだ。

長閑な田園風景はいつしか住宅街に変わって約50分、イエローのTH2100形は掛川駅で行手を塞がれた。
「ぶんぶん」と「るんるん」に見送られて掛川の町に飛び出す。もちろん早い時間に暖簾を提げる酒場を探して。

“ポテサラ” と “冷やしトマト” を並べ、喉を鳴らして生ビールを呷る。なかなか良いスタートだ。
駅前通りから一本入った「酒楽」は陽の高いうちから呑めるから、すでにご常連さんが賑やかにやっている。

地元掛川の酒 “開運シュヴァルツ” は、スッキリとキレの良い後口の本醸造酒。どんな料理にも合いそうだ。
“中トロ” と “赤身” が無造作に小皿からはみ出して嬉しい。鼻にツンとくるほどワサビをのせて美味いなぁ。

サッと山椒をふって “やきとり” を2本、付け合わせの “キャベツの浅漬け” が泣かせる。これ良いね。
二杯目は “開運 吟醸”、キンと冷やすと旨い瑞々しさとキリッとしたキレの良さが際立つ酒だ。

天浜線掛川駅のとんがり屋根を横目に東海道本線のホーム、これから東京までの4時間がもうひと旅だ。
熱海の乗り換えでハイボール缶かなぁ。まだマスクの中には吟醸の果実香が残っている。

天竜浜名湖鉄道 天浜線 新所原〜掛川 67.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
小麦色のマーメイド / 松田聖子 1982

 


旅するどんぶり 清澄白河「深川めし」

2022-09-07 | 旅のアクセント

 夕暮れを待てずに生ビーを呷る、"かにみそ豆腐" をアテに冷えた一杯を楽しむ。
こだわりの出汁で炊き込んだ "深川めし" は、あさりとしめじをがふっくらと、ネギと海苔を散らして美味しい。

半蔵門線の旅は始まったばかりなのに、3つ目の清澄白河で早くも途中下車してしまった。
「深川釜匠」で江戸庶民の味を堪能したら、パープルの帯が何やら妖しげな8000系で渋谷をめざそう。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
ひとり街角 / 小泉今日子 1982


風を感じて! CHANGE YOUR MIND

2022-09-03 | 単車でGO!

 盛夏の名残りを感じたいと湘南をめざして来たけれど、湾岸を走るうちに青空は薄曇りに移ろってしまう。
稲村ヶ崎から三姉妹の女神の島「江ノ島」を望む。古くから景勝地は夏のあるいは海の代名詞的なスポットだ。

ガタゴトと緑の電車が走っている。稲村ヶ崎から由比ヶ浜の間で江ノ電1000形とコラボレーション。
喧騒の海岸線をちょっと離れると案外静かな鎌倉がある。迷惑をかけない程度に風景の中に溶け込んでみたい。

田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)を祀る辺津宮は源實朝の創建、大河効果でちょっとしたブームか。
境内の奉安殿には八臂弁財天に並んで、琵琶を抱えた妙音弁財天が美しい裸体を魅せている。

江ノ島には美しい天女に一目惚れした五頭龍(龍口明神社)の伝説がある。
龍宮大神をお祀りする龍宮から丘に上がると、弁財天と五頭龍の伝説にちなんだスポット「龍恋の鐘」がある。
鐘を鳴らして金網に南京錠をつけると永遠に結ばれる。らしい。ちょっとその愛、重くないですか?

そんなことで、江ノ島も奥津宮辺りまで上ってくるのは若いカップルが多いようだ。
そうした二人連れに混じって江之島亭、富士山と湘南を望む絶景が見えるはずの窓際も今日は残念な眺めだ。

“生しらす” をのっけて “海鮮丼”、たっぷりと溶いたわさび醤油を垂らしながら、相模湾の幸が美味しい。
賑やかな8点盛りをアテに生ビールを呷りたいところだけれどそこはお約束、この旅の小さな我慢なのだ。
あの酷暑がなんだか懐かしく感じる週末、お腹を満たしたらzの鼓動を感じながらLovelandを後にするのだ。

<40年前に街で流れた J-POP>
LOVELAND,ISLAND / 山下達郎 1982

CHANGE YOUR MIND / The Square 1982