旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

高田の夏は爽涼と 2023.

2023-08-30 | 日記・エッセイ・コラム

『高田の夏は爽涼と 日本海の波が呼ぶ』
外濠に架かる朱の欄干の袂に、七五調の歌碑が置かれている。旧制高田中学校の寮歌だそうだ。
爽涼どころか連日の酷暑に草木はもちろん三重櫓でさえも、クタッと疲れているようにも見える。

春には4,000本の桜が爛漫に咲き誇る高田城址公園、夏には紅蓮と白蓮が外濠を埋め尽くす。
ハスは未明から早朝に咲き始めて午後には閉じてしまうから、午前中に訪ねるといい。
とん汁に時間を費やして、すでに蓮花はお椀状になっている。それでも濃緑に点描するピンクと白が美しい。

蓮に埋め尽くされた外堀の背景は詩に謳われる「南葉の山」か。
南へと尾根を辿ると「妙高山」が見えるはずだけど、今日は湧き出た雲に頂を隠している。
20代の頃は東京を遠く離れて配属された我が身を嘆いたけれど、
今はただ穏やかにこの風景を眺めるのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Dandelion - The Late Blooming Dandelion / 松任谷由実 1983


紅がらの赤い町と白い蔵の街と嘉美心と 伯備線を完乗!

2023-08-26 | 呑み鉄放浪記

朝陽を浴びて始発の820Mが伯耆大山の3番ホームに入ってきた。濃黄色は岡山の車両だ。
伯備線を旅すると陰陽連絡線の呑み潰しも完了、JR西日本の完乗もゴールが見えてくる。

山陽地方と山陰地方を陰陽連絡線の中で、唯一の幹線と言えるのが伯備線。
14往復の特急と、東京と直結する寝台特急、長大な貨物列車も走って気を吐いている。

車窓に名峰 大山(1,729m)を眺めようと楽しみにしていたのだけれど、
手前の山々と、すでに東の空高くに昇った夏の陽の逆光となって、その姿を仰ぐことができない。
早々に諦めてプシュッと開ける手塩にかけた “男梅サワー” が美味い。

濃黄色の115系の後ろ姿はまるで食パン、中間車両に無理やり運転台を設置するとこうなる。
820Mは途中駅で上り下りの特急やくも号に道を譲って、1時間40分をかけて新見駅に終着する。

赤い瓦が目をひく木造2階建ての新見駅の降り立つのは2度目になる。
2年前の夏、芸備線と姫新線を乗り継いだ際、この小さな町に投宿して一杯やっている。

岡山県で人気のご当地洋食グルメ “えびめし” が食べたくて、ローカルなファミレスに足を運んだ。
9:00開店は調べておいたのだけど、ご飯物の提供は10:00からでした。っでなんだか懐かしいモーニング。
このあたりの「抜け」具合が呑み人の旅、行き当たりばったりが楽しい。とひとり言い訳。

1時間を待てないのは2番手の850Mの出発が09:57だから、これを逃すと2時間待ちになる。
わずかに姫新線のディーゼルカーが先きに出発し、濃黄色の2両編成岡山行きがガクンと動き出す。

車窓には緑深い谷と夏の陽が煌めく川面が流れる。
新見から倉敷までの伯備線は、岡山鳥取県境を源流とする高梁川に寄り添って蛇行して往く。

この113系・115系というのは国鉄時代の電車、だいたいアラフィフといったところか。
普段首都圏で乗っている車両とはモーターの唸り方が全く違っていて、これがまた楽しい。

備中高梁で途中下車するのは、高原の「赤い町並み」が見たいから。
小さなバスに1時間揺られて辿り着く「吹屋」は、かって弁柄と銅生産で繁栄した鉱山町の町だ。

レトロなボンネットバスが走ってきた。戦後まもない頃の風景といったところだろうか。
この町は、財を成した商家の旦那衆が石見(島根県)から宮大工や瓦職人の棟梁たちを招き、
競うように優れた意匠のお邸を建てた結果、形成されたものだという。

旧吹屋小学校は平成24年3月末まで、現役最古の木造校舎として使用されていた。
小さな校庭やプールから、子どもたちの歓声が聞こえてきそうなくらい、そのままに保存・公開している。

壁には紅がら格子を嵌め、屋根には赤銅色の石州瓦を載せて、ジャパンレッドの町並みが美しい。
吹屋の「弁柄」は、九谷焼・伊万里焼あるいは輸島塗り・山中塗りにも用いられ、日本文化の赤を彩った。

苦しそうに坂道を登っていくボンネットバスを追いかける。そろそろ時間だからね。
吹屋を訪ねるには備北バスの2往復がある、どちらの便で行ってもおよそ1時間の滞在となる。

県都岡山が近づいて、さすがに3番手の1840Mは4両編成となった。
濃黄色の4両編成は、停まる駅ごとに乗客を増やし、いつしか立ち客が出るほどの満員になる。

それでも列車は総社に出るまでは、風光明媚な高梁川が織りなす風景の中を走る。
こんな風景の中に帰るべき故郷があったらと思うことがある。
旧盆の帰省で降り立った無人駅、駅頭で偶然に初恋のひとに出会う。いやこれは必然か。
夏祭りの夜、角のたばこ屋の前で落ち合う約束をする。っと妄想がすぎるなぁ。

伯耆大山から所要3時間で山陽路に戻ってきた。山陽本線と合流する倉敷がこの旅の終わりになる。
が陽はまだ高い、東京行きの新幹線に乗車する前に、蔵の街を歩き、そして呑みたい。

この日も35°を超える猛暑日、せめて日陰を求めて古いアーケードの商店街を歩く。
狭苦しい通りを抜けると、突然に白い蔵の街が開ける。こんもりとした緑を背景に眩しいくらいに白。

緩やかにカーブして続いている本町通りは早島とを結ぶ街道筋なんだね。
江戸から明治時代の面影を残して、どこまでも続くかのように白い町家が軒を連ねて美しい。

何度か訪ねた倉敷だけど、今の今まで、大原美術館がある倉敷川沿いしか知らなかった自分が恥ずかしい。
っで、暑さも忘れて路地から路地へ、町家と蔵が織りなす白い世界を歩き廻るのだ。

「おつかれ生です♡」って新垣結衣ちゃんとジョッキを合わせる。
古いアーケードのえびす通り商店街を辿って「ほしや食堂」を見つける。
こんな時間帯は超コアな常連さんしか居なくて、アウェー感いっぱいだけど、
東京行きの新幹線に乗る前に汗は鎮めておきたい。

“白菊” はさっき抜けてきた備中高梁の酒、五百万石で醸した超辛口がキリッと切れる。
そしてこの “胡麻カンパチ” の甘みと風味が辛口の酒によく合う。当たりだ。

夏らしく “なす焼き” が登場、削り節が踊っているね。ポン酢でさっぱりと美味しい。
一転して “嘉美心” は旨口の酒、寄島という瀬戸内海に面した町の蔵らしい。
山の酒と海の酒、地元オヤジの定番酒をいただいて、少しだけ岡山を知った気になって愉しい時間だ。

さて伯備線の列車は山陽本線に乗り入れて岡山まで走る。旨口の余韻を残して呑み人も車中の人となるのだ。

伯備線 伯耆大山〜倉敷 138.4km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
SWEET MEMORIES〜甘い記憶~ / 松田聖子 1983


新井名物たちばなのとん汁

2023-08-23 | 日記・エッセイ・コラム

白味噌で仕立ての汁に豚肉と豆腐が辛うじて原形を止める程度に蕩けている。
先ずはレンゲで一口啜る。大量の玉ねぎが自然の甘みを引き出して、名物の “とん汁” が美味しい。
小さな民家のようなお店で、路肩に長距離トラックが停まっていた、あの頃の味と変わらない。嬉しい。

箸休めに “なす漬け” を頼んだ。新潟の茄子は枝豆と並ぶほど種類も多くて美味い。勢い消費も多い。
夏の夕方、新潟駅の新幹線コンコースでは、茄子やなす漬けのワゴンが出る。
出張族や、金曜日にはボクのような単身族が買い求めて東京行きに乗る訳だ。それほどに美味しい。

信州でお盆の義理ごとを終え、少々遠回りになるけど新潟県上越を巡る。
20代で8年、40代で3年を過ごしたから、それなりに食べたいもの、訪ねたいところがある。
とん汁の名店のその一つ。きっと帰省した家族が連れ立ってふるさとの名物を食べに来ている。
狂ったような暑さの中を1時間と少々待ったけど、懐かしくも美味しい一丼だった。
ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
CAT'S EYE / 杏里 1983


三段スイッチバックとヤマタノオロチと美波太平洋と 木次線を完乗!

2023-08-19 | 呑み鉄放浪記

定刻から3分遅れてパステルカラーを纏ったディーゼルカーが1番ホームにやってきた。
ヘッドマーク代わりの「き♡」が木次(きすき)線を表しているようだ。
呑み人が乗車するのは折り返しの1462D宍道行き、木次線も今乗っておくべきローカル線と言える。

この日は3月23日の落石〜脱線事故で運休していた芸備線 備後落合~東城 間の運行再開日。
14:30過ぎの備後落合駅は、三次、新見、宍道からやってきた列車がホームを埋めて往時の賑わいを見せる。
三次行きと新見行きを見送って14:43、パステルカラーはガクンと動き出した。

パステルカラーは広島・島根県境をめざして、必殺徐行区間を織り交ぜながらもぐいぐい勾配を登る。
標高727m、県境の三井野原駅から第八坂根トンネルを潜ると、足もすくむ様な崖上に飛び出す。

並行するR314は深い谷をアーチ橋で跨ぎ、1と4分の3周する奥出雲おろちループで急勾配を降りていく。
一方、木次線は三井野原駅(727m)から出雲坂根駅(565m)の高低差162mをZ字の三段スイッチバックで降る。

三井野原からの6.4kmを20分をかけて出雲坂根まで降りてきたパステルカラー、
運転士が運転台を替わるために少し長めの停車をしている。

右手は備後落合方面から降りて来た本線、左手はこれから向かう宍道方面への本線。
急な下り勾配はまだまだ続く。

二つ先の出雲三成駅、宍道方面から登って来たのはピンクの「き♡」やはりパステル調だ。

いくつかのトンネル出口で幻想的な光景を見る。谷川から立ち昇る霧が漂って真っ白になるのだ。

16:50、沿線最大の町木次に到着、ここでは途中の出雲横田まで行く下り列車と交換の10分停車。
青春18きっぷの季節ならでは、ほぼ全ての座席を埋めた乗り鉄ご同輩は誰ひとり降りない。
唯一人改札を出るのは呑み人、そうボクの目的は呑んで乗るだから。

突然っと大粒の夕立、アスファルトが夏の匂いを発する。
慌てて飛び込んだ大きな軒下、振り返ると偶然にも探していた “美波太平洋” の木次酒造さんだった。

「大変ですねぇ 降られちゃって」と品の良い奥さんに声をかけていただいた。
来訪の目的を告げると、奥から出してきたご自慢のお酒を次から次にグラスの猪口に注いでいただく。
ヤマタノオロチを酔わせた酒を思いながら試飲を重ねる。いやぁ酔っちゃいそうだ。

雨上がりに煙った木次駅に夕暮れが近づく、終点の宍道まではあと30分と少々の旅になる。

18:57、宍道行きの1464Dが入ってきた。今度は昔ながらの朱色の車両だ。

おっとその前にこの日の一杯を備忘しておこう。
山中の小さな町で寿司でもないでしょ、でも木次酒造の奥さんが奨めてくれた「和かな寿司」へ。

みっともないくらい噴き出した汗に、やはり生ビールから始める。
中皿の陶器に盛られた、よこあ、はまち、たい、いか、日本海の海の幸が美味しい。

カウンターの中は19時からの宴席の準備に忙しい。
その献立の中から気になった “奥出雲牛しぐれ煮” をアテに分けてもらう。
無濾過生原酒 “雲” は、辛口ながらも米の旨味を感じる爽やかな純米吟醸だ。

“七冠馬” は通り過ぎてきた出雲横田の酒、レモンを絞って “焼き鯖” を肴に美味しい。
七冠馬とは「皇帝」シンボリルドルフのこと、名門牧場のオーナーのルーツが石見にあるらしい。

さて、朱に染まった1464Dはいつしか平地に出て、青々とした田圃の中をラストスパートをかける。

左手から山陰本線が近づいてきた。暫し並走したのち、朱のディーゼルカーは宍道駅の3番ホームに収まる。
出雲の酒肴を楽しみつつ、今乗っておくべき木次線の旅は終わる。中空には上弦の月が輝いている。

木次線 備後落合〜宍道 81.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
EMANON / サザンオールスターズ 1983


真夏のぎんねこ

2023-08-16 | 日記・エッセイ・コラム

思い出したように訪ねたくなるのが「ぎんねこ」という老舗の蕎麦屋さん。
県庁まで続く石畳の小路、向かい側はタイル張りの床屋さん、
その向こうに銭湯があって、昭和風情の趣のある一帯となっている。

暑い日の人気メニューは “冷やし月見”、シャキッとレタス、ワカメにトマトがのって賑やかだね。
お皿を傾けて山葵を汁に溶くのももどかしく大掴みに啜る。後半は半熟玉子を割ってこれまた美味しい。

客層はYシャツ姿は稀で、ビジネスカジュアルともいえない軽装の方が大半を占める。
古くからの商店街の旦那衆かご隠居ってところだろうか。

暑いからこそスパイスの効いた “カレーライス” は食べたい。
出汁の効いた蕎麦屋さんのカレーって好きなんだよね。昔ながらのポークカレーが旨い。

そしてボクの基本は “大ざる”、刻み海苔を絡めてやや甘の汁にサッと浸してズズッと啜る。美味しい。
年季が入っているけどよく磨かれた漆のせいろにお店の歴史と誇りを感じる。

ただいま「ぎんねこ」は8日間のお盆休み中、お休みが明けたら何を食べようか。
“冷やしたぬき” か “かつカレー” かな。お盆明けが楽しみな “真夏のぎんね” こなのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
家路 / 岩崎宏美 1983


福山城と瀬戸内産レモンと広島お好み焼きいまちゃんと 福塩線を完乗!

2023-08-12 | 呑み鉄放浪記

福岡でのミーティングを終えた金曜日、博多〜東京のキップを乗変して福山で降りてしまう。
せっかくの週末絡みの出張だから、陰陽連絡線を何本か呑み潰して帰ろうと思うのだ。
これらの路線はたいてい致命的な赤字を抱えているから(沿線の方には申し訳ありませんが)
いつ自然災害による不通〜復旧断念〜廃止の道を辿るとも知れないからね。

福山駅に降り立ったら、迷わずばら公園口の5番のりばに停車中のバスに飛び乗る。
一度観ておきたい「潮待ちの港」鞆の浦の風景、数々の映画やドラマの舞台となったおなじみの風景だ。
刻々と空と海の色彩がうつろう夕暮れ時、海に突き出した常夜燈の雁木で飽かず眺めるのだ。

町の風景に溶け込んだ古民家cafeを見かけた。一組のカップルが食事中だね。
洒落たカウンターで冷たいビールを飲みたいところだがバスの時間が迫っている。んっ残念。

早朝の福山駅にやってきた。東経133°は日の出前だ。
一昨日福岡支社のメンバーと痛飲したから、昨晩は一杯をスキップして、すこぶる快調な朝を迎えた。

8番ホームには濃黄色の105系が待っていた。始発の221Mで先ずは府中をめざす。
駅は福山城の三の丸や内堀外堀の一部を埋め立てた跡に敷かれ、本丸の石垣が間近に迫ってくる。

福山城のビュースポットはおそらく新幹線ホームだろう。福塩線のホームからも聳立する天守閣を望める。
一国一城令発布後の城ではあるが、五重の天守閣と七つの三重櫓を有する美しい城郭だ。

府中までは45分、途中すれ違う上り列車にはそれなりの数の勤め人と学生を乗せていた。
ここまでの区間は、(ほぼ)50万都市福山への都市近郊路線として機能しているらしい。
府中駅はまた濃黄色の105系の寝座 (ねぐら)らしく、入れ替え作業が忙しないなぁ。
乗ってきた2両編成は直様4両に増結されて、ラッシュ時の福山行きの発車準備が万端だ。

改札口を出て朝の1本を調達するうちに、3番ホームには乗り継ぐ1723Dが待っている。
っと、急いで跨線橋を渡らないと、この列車を逃したら8時間待つことになる。

07:04、唯一両のディーゼルカーがガクンと動き出す。
いきなり芦田川を渡ると、あとはこの流れに任せて鉄路も大きく小さく蛇行を繰り返すことになる。

右手に清流を眺めて、プシュッと1本目は “NIPPON PREMIUM 瀬戸内産レモン” を開ける。
駅前のコンビニには地酒は見つからなかったけど、これなら雰囲気あるでしょう。
朝から酷暑だけど、爽やかな酸味と香りに包まれて、扇風機の風が心地よい。

河佐(かわさ)駅では上り列車と行き違い、1日5往復だから長閑な交換風景も貴重かも知れない。

今までノロノロと走ってきたディーゼルカーが、長いトンネルに入ると俄然スピードを上げた。
福塩線開通後に竣工した八田原ダムの関係で直線的な新線を造ったものと思われる。

ボックスシートに預けた身体がやや前のめりになったのは上下(じょうげ)駅の手前。
わりとあっけなくピークを越えたようだ。車窓右手に現れた上下川は進行方向に向けて流れる。
分水嶺を越えたみたいだね。この川はやがて江の川に注いで日本海へと流れる。

ディーゼルカーはしばしばガクンと急減速する。巷では必殺徐行25キロ制限と云うらしい。
JR西日本ではその超ローカル区間において、運転士の目視による安全確認で運行している。
保守点検にかかる費用を抑制し維持費を削減をしている訳だね。

山間をトコトコ走ること1時間30分、右手から流れてきた芸備線に合流して福塩線の旅は終わる。
ディーゼルカーは照りつけるホームに呑み人と少女を一人降ろして、3つ先の三次まで芸備線をゆく。

分岐駅とはいえども1日平均乗車人員が130人だから、塩町はさすがに無人駅。
風を通そうと待合室のサッシを全開にすると、シオカラトンボやらクマバチやらが飛び込んでなかなか賑やかだ。

日本有数の赤字ローカル区間をゆく呑み人は、塩町で4時間40分の待ち合わせ時間を持て余している。
っで、11:00の開店時間に合わせて、R184沿いの広島お好み焼き「いまちゃん」を訪ねる。

ここはかなりの人気店のようで、大将と奥さんのほかパートさん3人がフル稼働だ。
お持ち帰りの予約をたくさん受けているようで、呑み人を含めて3組のあとはお断りしている。

冷たい “生ビール” が吹き出した汗を宥めてくれる。
時間を稼ぎたいボクはアテに “ポテトフライ” を注文する。これがまた大盛りでgood。

頃合いを見計らって “肉玉入り” が登場、二杯目のタンブラーも一緒にね。
麺を抱えた太っちょにマヨネーズで格子を描いたら、たっぷりと追いカープソース。
垂直にヘラを入れて、片田舎の名店で、広島の味と生ビールが美味しい。

ここは極楽浄土か?冷房の効いた店で2時間を稼いだら、灼熱のうつつ世に戻る。ごちそうさまです。
まもなく1番ホームに備後落合行きがやってくる。

福塩線 福山〜塩町 78km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
シーズン / 甲斐バンド 1983


夏酒 でんご@浦和

2023-08-09 | 日記・エッセイ・コラム

ホームタウンの駅を降り立った夜、なんだか急に一杯呑みたくなった。
ブログの展開的に毎日呑んでそうだけど、あくまでも旅のアクセント、普段そんなに呑むことはない。
暑い一日だったから、タンブラーの生ビールで自分に「お疲れさま」っと。
目の前で大将が茹で上げてくれた “枝豆” は甘味たっぷり、塩を振ってシンプルがいい。

商店街の豆腐屋さんが作っている “おぼろ豆腐” は薬味のバリエーションで味変して美味しい。
若狭の “早瀬浦” は福井を訪ねた夜、小料理屋の板さんが教えてくれた酒。盛夏の搾りたてが旨い。

この店の看板的メニュー “ねぎ豚ポン酢” は、カラッと揚がった豚ばら肉を青ネギとポン酢でさっぱりといただく。
涼しげなブルーボトル、米沢の “九郎左衛門” は、おそらく呑み人には初めましてのお酒。
香り華やかでフルーティーな旨味の “超裏•雅山流”、これは美味いなぁ。
でもアテとの親和性からしたら、この酒を先に飲むべきだったかな、ちょっと残念。

なにしろ帰宅直前の美味しい寄り道が、案外愉しい時間になることを知った夜です。

 

<40年前に街で流れたAmerican-POPS>
Tell Her About It / Billy Joel  1983


じゃじゃ麺と座敷わらしの湯と安東水軍と 東北本線を完乗!

2023-08-05 | 呑み鉄放浪記

沼宮内駅に停車しているIGR7000系は、JRの701系電車と同系列なのだそうだ。
シルバーの車体に塗られた「スターライトブルー」は無限に広がる岩手の夜空をイメージしているという。

かつて日本最長営業キロを誇った東北本線、盛岡以北はいわて銀河鉄道線、青い森鉄道線となった。
それでもレールは繋がっているのだから、行くぜ、東北。二日目は仙台から青森をめざす。

その前に押さえておくべき利府支線は、岩切か新幹線総合車両センターに並行して利府へ延びる。
そもそも本線の一部であった利府支線だが、塩釜経由の新ルート開通によりいつしか盲腸線となった。

この日は臨時快速「毛越寺あやめ祭号」というワイルドカードが走る。使わない手はない。
少年たちがカメラを構える4番ホームに2両編成の110系気動車が入線してきた。

09:10、鉄ちゃんと家族連れと呑み人を乗せた8番手が仙台駅を出発。
ホームでは横断幕を掲げた駅員氏たちが手を振って、日常とはちょっと違った光景が展開する。

車窓を松島の海岸線が流れたら、プシュッと “一番搾り”、波と戯れる石田ゆり子さんと飲みたい。
そして朝飯代わりに “仙台牛ひとめぼれ” を、甘く煮込んだA5ランクが美味しいね。

いつしか2両編成は鳴瀬川を渡って肥沃な大崎平野、美しい緑が広がる田園風景の中をかけて行く。
おいしいお米とおいしい水に恵まれたこの平野は、当然に銘酒たちのふるさとでもある。

仙台から1時間30分、臨時快速は七夕飾りと縁日と、子どもの歓声が聞こえる平泉駅に終着する。
賑わいに背を向けて、強烈な夏の陽に射られながら、極楽浄土までは1キロの道のり。

ご本尊の薬師如来立像、脇を固める日光菩薩と月光菩薩に手を合わせる。美味しいお酒が呑めますように。
中世、荒廃した寺を奥州藤原氏が再興したことは教科書で読んだ気がする。

 

開山堂を背景に大泉が池周辺には花菖蒲園、300種3万株、紫に白ところどころに黄の大輪が咲き誇る。
学校の宿題だろうか、子どもたちがパレットに思い思いの「むらさき」を表現する姿が微笑ましい。

5分も前から前照灯がチカチカと煌めいている。9番手の盛岡行きが一関からの長い直線を駆けてきた。
偶然だろうけど、車体に帯びる濃淡の紫のラインは、まさに菖蒲か杜若だね。

啄木調の書体で描かれた「もりおか」駅ビルFESANに、元祖じゃじゃ麺の白龍(ぱいろん)が入っている。
この小綺麗な店舗には拍子抜けだけど、この暑い中櫻山神社まで歩かなくて良いのは助かる。

小麦でできた平麺が茹だるまでの10分ほどを、辛味噌を突っつきながら “一番搾り” を呷って待つ。
しつこい様だが、ほんとうは浴衣姿の石田ゆり子さんと飲みたい。

告白しておくとボクはこの “じゃじゃ麺” を混ぜるのは下手くそだ。
割り箸を手元まで汚しても均一に味噌が馴染まない。でも所々で味が変わってむしろ美味しい(と強がる)。
麺を少し残したら玉子を割ってかき混ぜる。店員さんに茹で汁とネギと味噌を入れてもらう。
この〆のスープ “ちいたんたん” がラー油を垂らしてまた美味しい。

いわて銀河鉄道線は構内隅っこの0番・1番ホームから出発する。この旅10番手の八戸行きに乗車する。
IGR7000系=701系はローカルを走るのにオールロングシート、この旅情を廃した鉄道会社に納得がいかない。

それでもワンマン運転の後部車両は大抵空いているから、午後の一本目をカポッと。
八幡平の “鷲の尾” はすっきりした上撰、やや甘いのが好みではないが、キリッと冷えていれば美味しい。

青森県境まであと一駅を残して金田一温泉駅に途中下車。キイコキイコと自転車を漕いで座敷わらしの里へ。
汗が噴き出るころに金田一温泉に辿り着く。まずは座敷わらし伝説の「亀麿神社」に手を合わせる。

それこそ金田一耕助が泊まりそうな旅館のひとつ、仙養館さんを択んで立ち寄り湯をいただく。
なんだか懐かしさを感じるレトロなタイル張り、まん丸な湯船に両手両足を投げ出して浸かる。至福だ。

ツルツルになった身体が再び汗まみれにならない様、慎重に自転車を漕いで駅まで戻ってきた。
ほどなく後続の八戸行きがホームに滑り込む。この11番で県境を越える。いよいよ陸も奥の奥になる。

乗り継ぎの良い列車を見逃して、八戸では1時間と少々の時間を作る。食べておきたい “八戸せんべい汁” だ。
もちろん市中の料理屋まで行く時間はない、っで隣接するホテルのテナント「いかめしや烹鱗」に飛び込む。

ことこと煮込んだ濃厚でもっちりした “いかめし” と、さっぱり醤油ベース鶏出汁の “せんべい汁” を味わう。
味覚で感じる「思えば遠くへ来たもんだ」的な感覚が呑み鉄の醍醐味ではある。

青い森鉄道のキャラクター「モーリー」をヘッドに描いた701系は空色を纏っている。
そういえばやり過ごした列車には空色の制服のアテンダント嬢が乗っていた。この列車には居ないのかな。

意外にも東北本線で海を見る機会は少ない。仙台を出た列車が松島海岸をチラッと覗き見るくらいだ。
野辺地を出た列車はようやく青い海とであう。ボクは思わず浅虫温泉駅に飛び降りてしまうのだ。

海岸線に出ると陸奥湾に弁財天宮を抱えた湯ノ島が浮かび、弓なりしたサンセットビーチに子どもたちが遊ぶ。
もう少し粘れば津軽半島に陽が沈むだろうか、でも青森の酒場も呼んでいるなぁ。

最終ランナーとなった13番手の2両編成が、長い長い青森駅のホームを余らせている。
車内を埋めていた部活帰りの高校生を散らしたら、週末のホームは閑散としてしまう。

かつてはこの長い長いホームを大きな荷物を背負った旅人が青函連絡船へと歩いたことだろう。
改札口を出て線路を辿って歩くと、3本の引き込み線が八甲田丸へと吸い込まれていく。

壁面にねぶたを描いた「壱乃助」を覗く。辛うじてカウンターに席を確保する。
汗を鎮めるキンキンの生ビールは、今度ばかりはプレミアムモルツ。「うまいんだな、これがっ。」
アテは津軽地方の家庭料理 “いがメンチ” をいただく。

厚めに切られた “カンパチ”、“バチマグロ”、“真鯛” を満載した木桶がなかなかの豪華版。
真っ赤なラベルは鯵ヶ沢の “安東水軍”、すっきりとした軽やかな純米酒は白身によく合う。

“貝焼き味噌” をいただく。熱々の玉子にゴロッと大ぶりなホタテ、味噌を溶いた出汁が美味しい。
酒は黒石の “亀吉”、ここまで来ないとお目にかからない辛口は、香り穏やかな旨い酒だ。

東京を発ってまる二日、みちのくの美味い酒肴を堪能して、青森の空は暮れゆくのだ。

東北本線 仙台〜盛岡 183.5km
利府支線 岩切〜利府 12.3km
いわて銀河鉄道線 盛岡〜目時 82.0km
青い森鉄道線 目時〜青森 121.9km

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏の夜の海  / TULIP 1983


駅そば日記 麺処新白河「白河ラーメン」

2023-08-02 | 旅のアクセント

日の高いうちから宵の口までよく呑んだから、どうも汁物が欲しくなりますね。
ようやく辿り着いた新白河、乗り継ぐ黒磯ゆきは40分待ち、っでコンコースの「麺処 新白河」へ。

駅そばと侮ることなかれ。ご当地 “白河ラーメン” 特有のちぢれ麺に濃いめの醤油ベースが絡んで美味い。
ナルト、叉焼、メンマ、海苔、ほうれん草、それに刻みネギ、良き時代の中華そばの再現だね。

閉店時間が近いのにお客様は引も切らず、おかあさんと若いバイトさんが頑張っている。
“白河ラーメン” のブランドは、400円単価の駅そばを700〜800円単価に引き上げて、
なかなか繁盛している現代の関所(乗り換え駅)新白河の駅そばなのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
半分少女 / 小泉今日子 1983