旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

風を感じて! 冠雪の富士とZと錦繍の湖北ビューライン

2023-11-25 | 単車でGO!

河口湖周辺の紅葉が見ごろを迎えていますね。
色鮮やかな紅葉の中に浮かび上がる富士山を見ようと、早朝の中央フリーウェイへZを走らせる。

先ずはインバウンドから人気に火がついた新倉山浅間公園を訪ねる。
雄大に裾野を広げる富士山、朱塗りの五重塔、紅く染まったソメイヨシノ、美しいね。

新倉河口湖トンネルを抜けて河口湖畔に出る。ここから暫く湖北ビューラインを愉しむ。
もみじ回廊の渋滞を抜ける頃には、晩秋の陽は南に回って、富士は青いシルエットに変化していく。

大石公園のパークキングにスタンドを立てる。
真っ赤に紅葉したコキアと富士山のコントラストがキレイ?いや少々遅かったかなぁ。

右に左に身体を傾けて、湖畔のワインディングロードを走らせる。カーブを重ねるごとに富士は表情を変える。
長浜のT字路を右に折れて河口湖に別れを告げる。小さなピークを越えると西湖のススキの原が見えてきた。

紅葉に囲まれた湖畔のそば処、重厚なテーブルとイスに身体をあずける。
すでにストーブに火が入っているね。窓越しに湖畔の紅葉を眺めて、そばを待つ時間も愉しい。

“とろろ蕎麦” を択んだ。信州の二八だね。
前半は大和芋のとろろにうずらを落としてそばに絡める。この粘りと淡白な味がいい。
後半は辛めの汁に山葵を溶いて、ちょいと浸してズズッと啜る。なかなか美味い。

湖北ビューラインをさらに西へ進める。
西湖根場浜できょうの一枚、モミジにススキに冠雪の富士山、それにZ、満足だ。

湖北ビューラインはいつしかR139と合流して深い樹海を抜ける。青木ヶ原大橋からの眺めが雄大だ。
精進湖展望台からの富士山、駆け足で西に傾く晩秋の陽に冠雪がキラリ煌めく。

ここらで富士に背を向けて、精進ブルーライン(R358)は女坂峠を越えて甲府盆地へと降りる。
ほどなくやって来る冬の気配を風に感じて、Zを走らせた小雪近い週末なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ロング・バージョン / 稲垣潤一 1983年


風を感じて! 錦繍の赤城山とZとキノコピッツァと

2023-11-04 | 単車でGO!

青々とした牧草地が広がって、まるで北海道の牧草地のような風景でしょう。
昨夜、Webの紅葉情報と睨めっこして、目的地を赤城山に択んだ。カルデラ湖周辺が見ごろを迎えている。

ほぼ日の出の時刻にイングニッションを回してR17を北上してきた。朝の空気は引き締まるほどに冷たい。
4車線になったり2車線に戻ったり、まだまだ整備途上の上武道路、利根川を渡ると赤城山の存在感が大きくなる。

P17(上武道路)の高架を降りて、県道4号線へ右折する。
正面に赤城山を捉えて裾野を駆け上がると、ひときわ目を引く朱色の「赤城山大鳥居」が見えてきた。

県道4号線には100m単位で標高を示すサインボードが出ている。
雄大な裾野が広がる赤城山だけど、さすがに900mを越えると九十九折りが始まった。

1,000mのボードがキラリと煌めくころには、身体が硬くなった気がする。電光掲示板は10°を切っている。
外輪山を越えるピークは1,400m、その内側には錦繍の世界が広がっていた。

昨日は大陸から流れ込んだ寒気の影響で、上越国境は降雪とニュースが流れていた。
そのおすそ分けだろうか、最高峰の黒檜山(1,828m)にはシュガーパウダーが振りかかっている。

原生林に囲まれた大沼は80万㎡のカルデラ湖、北西の外輪山の切れ目から沼尾川となって流れ落ちる。
湖面の藍と、周囲の峰々にナナカマド・ミズナラ・カエデの赤や黄とのコントラストが美しい。

大沼湖畔に建つ朱塗りが美しい赤城神社は、赤城山と湖の神様「赤城大明神」を祀ったパワースポットだ。
穢れを清める手水舎で龍神が御神水を吐いているのが印象的なのだ。

最高峰の黒檜山(1,828m)直下で外輪山を越えたら、北へ流れる赤城川に沿って沼田方面に降りる。

この県道が根利川にぶつかると南郷温泉がある。
この地で神官や名主を務めた鈴木家が関東では珍しい曲り家を一般公開している。
庭先の足湯を拝借して一息、寒さで凝り固まった身体が溶けだすようだ。

県道62号線に乗ったら、赤城山の東麓をぐるっと巡って南に転針する。
Zが渡良瀬川渓谷に向かって降りはじめた辺りに、プチリゾート風の一軒家レストランを見つけた。

秋らしく柿が入ったサラダを突っつくうちに “キノコピッツァ” が焼きあがった。
厚切りベーコンと風味あるしめじを絡めて、トロりチーズが糸を引いて、なかなかの美味。
熱いコーヒーで一息ついたら、乾いた北風に背中を押されて都会へ帰ろう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ASPHALT LADY / 杉山清貴&オメガトライブ 1983


風を感じて! 伊豆スカイラインとZと夏のクラクション

2023-09-30 | 単車でGO!

眼下に駿河湾が弧を描いて煌めいている。
夏の落とし物と、秋の気配を探して、この休日は伊豆スカイラインまで登ってきたのだ。

箱根ターンパイクを駆け上がって大観山展望台。ここで1,000m
碧い芦ノ湖に観光船が滑り、富士が美しい裾野を広げている。
最高気温30度の予想でもここまで登ると風は冷たい。ボクだけがメッシュ地のジャケットで夏のままだ。

玄岳(くろたけ)の尾根をワインディングロードが銀のクレヨンでなぞっている。
大自然の中を走り抜ける爽快な絶景ロードは、伊豆初心者のボクには外せないルートだった。

冷川ICでスカイラインを降りたら、狩野川の谷まで高度を下げる。
天城街道を南進すると「浄蓮の滝」のサインが見えてきた。
深い樹木が生い茂る柱状節理の岩肌に、白く太く流れ落ちる水からキラキラと飛沫が舞う。
けっこうな深さを持っているであろう滝壺は神秘的に碧い。

浄蓮の滝の降り口には伊豆の踊子の像がある。まったくここは観光地なのだ。
私が指差し踊子が見上げるのは天城山だろうか。

R414でさらに狩野川を遡ると10分ほどで天城峠、とは言っても800mの新天城トンネルで抜ける。
旧道はさらに山の上を旧天城隧道が穿っている。

新天城トンネルを抜けると、寄り添う流れは南へと向きを変えている。
上半身を左側に投げ出して、R414は河津七滝ループ橋で一気に高度を下げる。
ループの下に七滝を連ねた河津川は相模湾をめざす。

下田の町を目前に箕作という集落で西に転進すると、婆娑羅峠を越えて西伊豆へ向かう。
駿河湾と出会う松崎はドラマ「セカチュー」のロケ地になった。白と黒のなまこ壁の町にZで紛れ込む。

2つの川の河口に開けた松崎港、潮風が吹き抜ける田舎家風の店できょうのランチ。
じゃこ、ひじき、それに塩辛の小鉢が並ぶと、思わず冷や酒を求めたくなるね。

水色の器に造りが登場、ねぎと生姜をのせてアジが良いね。
分厚い本マグロ、それに真鯛、目鯛、金目鯛が並ぶ、おろしたての生わさびで美味い。
追いかけて炭火で焼いたアジの干物がやってきた。すぅっと箸をとおしてご飯と一緒にかき込んで旨し。

午後は西海岸を北上する。R136は駿河湾の入江と入江をトンネルで繋いで北上していく。
このルートには風光明媚なジオサイトが次から次に現れては流れていく。

もう少し粘れば夕陽を浴びて黄金色に輝く美しい岩肌を見ることができるだろうか。
黄金崎の「馬ロック」の景勝にちょっと寄り道。

彼岸を過ぎて驚くほど急ぎ足で陽が短くなった気がする。
あれだけ暑かった夏が、カーブをひとつ曲がるたびに過ぎ去っていく。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏のクラクション / 稲垣潤一 1983


風を感じて! ビーナスラインとZと夏の行方

2023-09-02 | 単車でGO!

標高1,700m「女の神展望台」気温26°
さっきまで雲に隠れていた八ヶ岳が一瞬その雄大な姿を見せた。もう風も少し向きを変えた9月。
早朝の中央道に上って2時間と少々、涼を求めてビーナスラインを走りたい。

標高1,400m、蓼科山に抱かれて「白樺湖」気温28°
優美な円錐型の成層火山がなだらかな裾野を広げて美しい。

賑やかだった避暑地も、落ち着きを取り戻しつつある静かな湖畔。

コテージに一人きりで、街に帰った彼女を想って、夏を過ごしたテニスコートを探す。
そんな夏の恋の終わりを感じている人、いそうだなぁ。

 標高1,800m「車山肩」気温24°、ここはニッコウキスゲの群生地だ。
カントリー風の小さな山小屋『ころぼっくるひゅって』で一息つく。

カランっとIced teaの角氷が音を立てて、ウッドデッキのテラス席で涼風に吹かれる。
冷えたグラスの向こうに望むのは遠く浅間山の雄大なシルエットだ。

ヒュッテの代名詞的メニュー “ボルシチ” を熱々の焼きたてパンと一緒に。
トマトソースでホロっと柔らかく煮込んだ牛肉、それに野菜たち、サワークリームを落として美味しい。

標高1,700m「富士見台」気温26°
八ヶ岳の裾野が扇の様に広がって、足元の諏訪盆地そして諏訪湖へと流れる。
なだらかな草原の先に絶景を展開するはずの南アルプスの峰々と富士山は雲に阻まれて見えない。

車山肩から霧ヶ峰へ、ヘアピンを2つ重ねて高度を下げていくのは「天国ロード」だ。
爽快な風に吹かれながら、左にそして右にZを倒し込む。このワインディングが楽しい。

標高2,000m「美しの塔」気温24°
霧ヶ峰交差点を右手にとって、ビーナスラインは県道40号から194号へと乗り換える。
和田峠、扉峠を越え、最後に見上げるかのような九十九折りを登るとビーナスラインの旅は終わる。

山本小屋から少し歩いてみる。
カランコロンっと乾いた鐘の音、「美しの塔」は美ヶ原のシンボルだ。
背景には屏風のように北アルプスの頂たちが連なりを見せている。 

標高820m「中山道和田宿」気温33°
ビーナスラインを走破したのち、野ノ入川の谷、県道178号を下りる。
インジケーターの気温計を見るまでもなく、ジャケットにまとわりつく空気が重くなってくる。
風が少し向きを変え、空の青も彩りを変えつつある9月、高原のワインディングを秋の風を感じて走った。
それでも下界ではもう少しだけ、この狂ったような暑さと折り合いをつけないといけない。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏の行方 / 稲垣潤一 1983


風を感じて! 天空の湖とZとノゾリカンゾウと

2023-07-22 | 単車でGO!

連休最終日も猛暑日になると昨夜のニュースが伝えていた。
それならば一度訪ねてみたかった「天空の湖」をめざそうとZを起こす。
北へ向かう高速道路は渋滞もなく、インターチェンジを降りたらR353〜R145をひたすら西へと走らせる。

谷が急に狭まる吾妻峡、っと目の前に巨大な構造物が出現、政権交代した頃に有名になったアレだ。
ひんやりとした堤体の中のエレベーターで下に降りる。とにかく大きい。
放水口から勢いよく吐き出された水は狭隘なV字谷を落ちていく。まさにこの場所しかないなぁ。

ふんわりと涼しげに盛り上がった “氷” もベンチに運ぶまですっかり萎れてしまった。
ボクの世代ではまさに「水銀柱がうなぎのぼり」の朝なのだ。

長野原草津口から右に折れてR292、今度はこの道が果てるまで北へ北へと高度を上げていく。
途中、旧太子(おおし)駅でひと休み。ホームやホッパー跡を復元した産業遺構を見ることができる。
終戦の年に開通した国鉄長野原線太子支線(当時は日本鋼管専用線)は、鉄鉱石を京浜工業地帯へと運んだ。

国道番号を示す “おにぎり” が、いつの間にか405に代わっている。センターラインも無くなった。
“アナベル” というのかな?真っ白で玉のような紫陽花が咲いている最果てへの道が美しい。

スッと涼風が渡る。空気が高原のそれに変わった。っと視界は突然に開けるのだ。
2,000m級の山々はなだらかな裾を碧々とした水辺に浸し、その斜面には “ノゾリキスゲ” の橙が揺れている。
まさに「天空の湖」だね。都心からわずか3時間の別世界なのだ。

野反湖には周遊ハイキングコースが整備されている。
初心者〜中級者向けのコースだというから、上信越の山々と可憐な花々を眺めながら歩いたら楽しいだろう。

主演の “ノゾリキスゲ” が気高く美しく、
脇を固める “ハクサンフウロ” の薄紫、“オトギリソウ” の黄色も清々しくキレイだ。

左手に見え隠れする碧い水面を見ながら、Zはシラカバの林を北上する。どこまでも爽やかな高原の道だ。

野反ダムの堤頂でR405は突然に途切れる。ここまでくると天空の湖はさらに碧を深くしている。
ここから落ちる水は中津川となり、ほどなく長野県に入り秋山郷を経て信濃川へ注ぐ。
ここより先はクルマはもちろんZも進めない果てなのだ。

野反湖に上る途中で見つけた「六合 野のや」は山奥にただ一軒のそば処だ。
たいして美味しくないのは分かっていても、ぷはーとノンアルで喉を潤す。これはすでにお約束だ。

そして “きのこ三昧そば” 登場。
まるで小ぶりのキャベツのような “まいたけ天”、塩をふって肉厚でプリプリの食感を楽しむ。
舞茸やしめじがたっぷり入った熱々の汁(胡麻が利いている?) に、打ち立ての二八をつけてズズッと。
んっこれは美味い。辺りを気にせず音を立てて啜ってしまう。ここの蕎麦はお奨めです。

午前中に帰路につく理想的な展開の夏ツーリング、新調したメッシュのジャケットが快適なのだ。

<40年前に街で流れたjazz fusion>
君はハリケーン  / The Square 1983


風を感じて! 天空のポピーとZと鬼うどん

2023-06-24 | 単車でGO!

ZはR254をひたすら北上し、東武東上線の急行の終点小川町で左に折れる。
槻川に沿ったワインディングを楽しむうちに、関東平野と秩父盆地を分つ尾根筋に駆け上がるのだ。

標高500m、尾根筋まで続く広大な斜面で約1,000万本のポピーが涼風に揺れている。
決して溶け合うことのないポピーの赤と、澄んだ空の青のコントラストが美しい。

カランカランと鐘の音が響いて秩父高原牧場、見下ろすのは “あついぞ!熊谷” あたりか。
仔牛や羊が遊ぶ放牧地に子どもたちの歓声が聞こえる。

お嬢さんたちの真似をして、右手のスマホで撮ろうと思うが、なかなか上手くいかない。
そうこうしているうちに濃厚なミルクが指に絡んでくる。口を窄めて冷たいソフトクリームが美味しい。

尾根を越えるピークは天空の展望台、東に関東平野、西に秩父の山々を眺める。

ひとつふたつとカーブに身体を合わせると、突然、視界いっぱいに赤が広がる。
ところどころにピンクやオレンジを従えて、赤いシャーレーポピーが彩る牧草地はまさに天空の楽園。

槻川の谷まで降りて、今度は県道11号を定峰峠へと登っていく。
この峠はヒルクライムの入門的なコースらしく、多くのロードバイクとすれ違う。

走り屋の若者たちを描いたアニメ「頭文字D」の聖地に、名物「定峰峠の鬼うどん」がある。
っとタイガーカラーのZが停まっている。なんだか嬉しい。

冷たい麦茶を飲みながら10〜15分、本格手打うどんの茹で上がりを待つ田舎家での時間を愉しんで、
ゴボウ、ニンジン、おろし大根、かつおぶし、天かすを満載して “きんぴらからみ鬼うどん” が美味しい。

涼しい早朝に発ってワインディングを走り、ご当地グルメを楽しんだら、昼下がりには帰路につく。
夏のツーリングは始まったばかりなのだ。

<40年前に街で流れたjazz fusion>
Hello Goodbye / The Square 1983


風を感じて! 芝桜とZと田舎そばと

2023-05-06 | 単車でGO!

この頃の飯能から秩父へと抜けるR299沿線には山藤が咲いている。
薄紫のカーテンを潜りながら、ワインディングをしなやかに走り抜けるのは気持ちがいい。

秩父のシンボル武甲山(1,304m)を背景に羊山丘陵では芝桜のパッチワークが華やかだ。
まだ明けやらぬうち、ランナーの姿も見えない街を抜け出してきた。

濃いピンクは大輪の “マックダニエルクッション”、淡いピンクは “オータムローズ”。
先週の雨で少し元気がないかな。
明るいホワイトは “モンブラン”、今が盛りと純白の絨毯を広げていたね。

秩父の春を彩る羊山公園の芝桜、10品種40万株が咲き誇り、多くの観光客が訪れる。
今年はちょっと見ごろが早かった様だね。

秩父からはR140で荒川渓谷を遡る。やはり彼方此方で山藤がアクセントになっている。
対岸に三峰口の駅が見えたら、贄川交差点を右に折れる。
すれ違い不可の狭いトンネルを潜った先の集落に、小さなそば処を見つけた。

不揃いで太い田舎そばには、蕎麦殻の黒い星が点々と瞬いて、んっ良い感じだね。
摺りたてのくるみ汁をつけて、まずはズズッと一口、ほんのり甘くて美味。
天ぷらは、しし唐、えのき茸、大葉、おいも、かき揚げにはえびが入ってなかなかボリューミーだ。

荒川が削る渓谷はますます狭く深くなる。
大滝温泉から二又に分かれる秩父往還は左を択ぶと、やがて目の前に二瀬ダムのアーチが姿を現す。
弧を描く堤頂の道路を走る。秩父湖の碧い水面に吸い込まれそうになるね。

二瀬ダムからいくつかのつづらを折って標高1,100m、関東屈指のパワースポット三峯神社まで登ってきた。
単車で訪ねるのはすでに3度目だけど、東京近郊からはほどよいツーリングのディスティネーションだ。

狛犬ならぬオオカミに迎えられて随身門を潜る。
秩父山はかつてオオカミの生息地、この一帯にはオオカミを祀る神社は多い。
右から左から恐ろしいオオカミに睨まれて、いよいよ身が引き締まる思いになるのだ。

樹齢800年を超えるご神木のあいだに、極彩色の拝殿が見えてきた。
三峯神社は日本武尊が東征の折、伊弉諾尊(いざなぎ)・伊弉册尊(いざなみ)をお祀りしたのが始まりと伝わる。

奥宮は妙法ヶ岳(1,332m)の山頂に鎮座するので遥拝殿から手を合わせる。
ここからは遥か下界を一望し、雲海が見られる人気のスポットでもある。

新緑のトンネルから溢れてくる陽射しを背に受けて山を下る。
カーブを曲がるたび、トンネルを抜けるたび、ピークを越えるたびに変化する風を感じて、
これから暫くは単車でゆく旅が愉しい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ラブストーリーはこれから / ハイ・ファイ・セット 1983 


風を感じて! 空と海とネモフィラと

2023-05-03 | 単車でGO!

インターチェンジを降りたら真っ先に海岸に向かう。
ヘルメットを脱ぐ前から潮の香りがくすぐる。
「ワイキキともサンタモニカとも違うわ」
• • • 少なくともキミと行ったことはない。

確かに、どちらかというと磯の香りだね。
それでも信州育ちのボクには、胸が高なる香りにかわりない。

 丘一面に広がる可憐な “青” が風に揺れている。この頃の海からの風は案外冷たい。
「いまが見ごろみたいね」とせがまれて、早朝のEXPWAYを駆け上った。

小径をゆくと朝陽を浴びて菜の花がそよいでいる。
「ねぇ、ありんこがたくさん」時折り少女みたいなことを口にする。
しなやかな指先を追うと、黄色い地平の先に “青” が広がって、なるほど花と空をありんこが分けている。

「私たちもありんこになりましょ」ボクの左手を優しくひっぱる。
さっきの小さな嫉妬はいつしか忘れてしまった。

空の “青” が降り注いだのか、ネモフィラの “青” が沁みたのか、花と空が溶け合っている。
長い黒髪を風になびかせて「見たかったの」とひとこと。

海岸線をグルージングして大洗港、ちょうど埠頭に苫小牧行きフェリーが停泊している。
「これに乗ったらいけるのね、北海道」
返事に窮したボク、少し頬を膨らませている。

少し町を巡ってみる。

空を映してマリンタワーの “青” が深い。
波を蹴立てて巨大カジキマグロの背がキラリと煌めく。

アクアワールドにはイルカのオブジェ
恋人たちは “出会いの鐘” を鳴らして、ハート型の愛の鍵をかけていく。

沖に “青” を浮かべて、貨物船がゆっくりと滑っていく。
どこから来たのだろう、仙台、室蘭それとも苫小牧?

「いつか走ろう、北海道、きっと」
横顔がコクリと頷いたような気がする。さぁ帰ろう。西陽を追いかけて。

<40年前に街で流れたJ-POP>
SUMMER SUSPICION / 杉山清貴&オメガトライブ 1983


風を感じて! 秩父神社とZと豚みそ丼と

2023-03-15 | 単車でGO!

 暖かい週末でしたね。ほぼ4か月ぶりにZのシートを脱がして、そろそろ呑まない旅も始めようか。

春霞に朧な武甲山と町並み、R299のワインディングを駆けて秩父までやってきた。

秩父の町並みを見下ろすミューズパークの梅園に600本が咲き誇って梅の香に包まれる。

高台に旧い酒蔵の建物を移築した風情ある「ちんばた」がある。秩父まで走ったら “豚みそ丼” が食べたい。
自家製合わせ味噌に漬けた豚肉をじっくり炭火で焼き上げて、香ばしく旨みたっぷり柔らかい豚肉が美味しい。

知知夫国の総鎮守「秩父神社」を訪ねる。御本殿は天正20年、徳川家康公の寄進により建造されたと伝えられる。

御本殿の四方を飾る、子宝子育ての虎、お元気三猿、北辰の梟、つなぎの龍、極彩色の彫刻が美しい。

復路はR140、岩畳・秩父赤壁・虎岩など岩間を緩やかな流れる長瀞渓谷を眺めてZは荒川を下る。
何かと気忙しい年度末の日常からEscape、風とひとつになれる季節がやってくる。

<40年前に街で流れたJ-POP>
エスケイプ / 稲垣潤 1983


風を感じて! わたらせ渓谷紅葉とZと十割蕎麦と

2022-11-23 | 単車でGO!

 快晴の土曜日、ちょっと寝坊して8時前にZのシートカバーを剥がす。久しぶりだね。
単車で走るなら断然高速よりも一般道の方が楽しい。R 17を北上してバイパス上部道路をクルージング。
世良田インターを降りたら、あとは県道69号線でわたらせ渓谷までまっしぐらだ。

大間々の高津戸峡、狭隘な渓谷に両岸から覆いかぶさるような紅葉の紅や朱そして黄色が美しい。

渓谷をさらに遡る。右へ左へ緩やかに登るワインディングが楽しい。いつしかボクらは草木ダムの堤頂へ。

ダム底へと続く細道を降りてみた。堤高140mの巨大コンクリート構造物はさすがに迫力があるね。
左右から迫る山々の紅や黄色に囲まれて、白い壁がずいぶんと弱々しくなった陽を反射している。

草木橋の袂の蕎麦処も錦秋の中、真っ赤なモミジに隠れた古民家に「新そば」の札が掛かっている。

ぼそぼそっと十割蕎麦、さっと汁に浸してズズッと一気に啜る。濃密な香りとともに新そばが美味しい。
モミジ、ぎんなん、まいたけ、天盛りの中にも秋が散りばめられて、ちょっと遅めのランチが楽しいのだ。

わたらせ渓谷鐵道(旧足尾線)の沢入駅付近にやってきた。撮り鉄氏が三脚を構えている。何か来るのかな。
甲高い警笛一声、ディーゼル機関車が牽くトロッコ列車がおっとりやってきた。なるほど車両も錦秋だ。

見頃を終えた山々が枯れるのを待っている。渇水期の低い湖面と相まってなんだか寂しげだ。
もう少し走ると峠を越えて日光に抜けるのだけれどすでに時間を費やした。この辺で踵をめぐらす。
帰る頃には真っ暗だなぁ。ジャケットのジッパーをいっぱいに引き上げて、西陽に向かう駆り人なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
On My Way / 安全地帯 1982


風を感じて! 名栗湖紅葉とZと肉汁そばと

2022-11-09 | 単車でGO!

真新しいライディングジャケットを羽織って名栗湖まで走った。見上げる空には澄んだ「青」が広がる。
入間川を遡る県道はご機嫌なワインディングだ。大きなカーブから立ち上がるごとに黄や橙が濃くなっていく。

名栗湖と上流の有間渓谷沿いは見頃まであと少し?それでも所々でモミジが湖面に朱を映している。

名栗渓谷の「鳥居観音」も紅葉のビューポイント、北野武監督の「Dolls」のロケ地でもある。
白雲山に点在する白亜の建造物と真紅に染まった紅葉のコラボレーションはなかなかの見応えだ。

最奥の救世大観音までの山道は、モミジやらカエデやらが色付き、緑から黄・橙・紅へのグラデーション。

玄奘三蔵塔とモミジ、フレームの中に白亜と真紅がピタリと収まって、なかなか美しいのだ。

渓谷のせせらぎを見下ろす「花廼家」さんに立ち寄る。同年輩のバイク乗りが3人偶然に居合わせる。
連んで走るのは好みではないけれど、ライダー同士の情報交換は楽しい。そばを待つ間も退屈することはない。
ひと足先にボクの “肉汁そば” が登場、太さがまばらな田舎そばを温かい旨汁に浸してズズッと美味しい。

色づく渓谷をクルージングしてワインディングを緩やかに下りていく。ビックバイクのトルクを楽しむ瞬間だ。
2年ぶりの「飯能まつり」に熱く湧く市街地をpassして東へと帰る。次の週末は?、秋のツーリングが愉しい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
スターダスト・キッズ / 佐野元春 1982


風を感じて! 榛名富士紅葉とZと水沢うどんと

2022-11-02 | 単車でGO!

一陣の風が吹いて、さっきまで湖面に映っていた榛名富士もすっかりさざなみに揺れている。
いい感じに色づいてきたね。榛名湖の湖面標高は1,084m、日本で2番目に高いそうだ。まもなく見頃を迎える。

この週末は快晴の予報、北の空に雲がないのを確かめて、zを走らせてきた。
関越自動車道のスマートインターを降りると、迫る榛名の外輪山がほんのり色づいている。期待ができるね。

単車の旅は何かとランチのタイミングを外しがちなので、10:00開店をめざして目当ての店に飛び込む。
榛名山や伊香保温泉を訪ねたら “水沢うどん” 押さえておきたい。っと古民家風の一軒にウインカーを出す。

オーダーは “ざるうどん” の一択、コシの強いうどんを先ずは “なめこ汁” でズズッと啜る。いい感じだね。
甘いカボチャの天ぷらを岩塩で口に放り込んだら、次は “胡麻汁” かな。4種類のつけ汁で美味い楽しい。

伊香保温泉からの県道を右に左にzを内倒させてアクセルを開ける。スキーをやっていた頃を思い出す。
葛折りを登り切ると黒髪山神社の鳥居を合図に、カルデラ湖へ飛び込むように延びる一直線の下り坂になる。
左右はすすきの原となり、特徴ある二ッ岳は黄色や茶そして橙に染まっている。

湖畔の周遊道路を走る。結構な数の手漕ぎボート、白やゴールドのスワンが湖面を賑やかしている。
それにしても彼女のオレンジのトップスは、コスモスやら紅葉やら、秋の風景によく映えると思う。

モミジにカラマツ、サクラが色付きつつある。湖畔のカエデが真紅に染まって青い湖面に映える。
風はあっという間に冷たくなったこの頃だけど、もうしばらくは風を感じる単車の旅を愉しめそうだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ドラマティック・レイン / 稲垣 潤一 1982


風を感じて! キャンパスイエローとZと肉汁うどんと

2022-10-22 | 単車でGO!

長く続いた秋雨が上がった昼まえ、zのカバーを解いてエンジンをかける。腹に響くような低音が心地よい。
もうこの時間だから、近場のドライブに連れ出したい。どうやら鴻巣市の荒川河川敷でコスモスが咲いている。

約88,000平方メートルに1,000万本というからなかなかの見応え。
赤い水道橋を背景に、濃紅色、桃色、白色と咲き乱れるのは “センセーション”、最もポピュラーな種類ですね。

ようやく咲き揃って来たのは “キャンパスイエロー”、青空に映える透明感のある黄色が爽やかでしょう。

いわゆる黄花コスモスは生命力が強そうだ。まるで剛毛のような茎が絡み合いながら好き勝手に伸びているね。
半八重咲きの花は “ブライトライト混合”、黄色と橙色の混合らしいのだけど、辺りはオレンジ一色だ。

ところで対岸の吉見町は苺の産地、ゆるキャラの “よしみん” はいちごの妖精らしい。
っで、荒川と多摩川に挟まれた武蔵野台地の郷土料理は “うどん”、江戸期から小麦や大麦の栽培が盛んだった。

「名代 四方吉うどん」の暖簾をくぐる。家族連れで賑わう有名店だけど、13時を回って並ばずに入店。
お奨めの “肉玉うどん” を注文すると、大きな丼いっぱいの饂飩と、半熟卵を落とした肉汁が運ばれて来た。
割り箸で大掴みしたうどんを濃ぉい肉汁に浸してズズッと一気に啜る。美味しい。これぞ “武蔵野うどん” だね。
すっごくコシが強い。肉汁が薄まってきたら半熟卵を箸で割る。マイルドに味変してこれまた美味いのだ。

吹上コスモス畑で一番魅かれたのは “ピコティ”。白い花弁がピンクやバイオレットで縁取られて可憐でしょ。
カメラ片手にずいぶん歩き回ったから、気付いたらすっかり日が傾いている。
zと同じくらいの茜が眩しい西の空に目を細めて、エキゾーストを響かせながら武蔵野の大地を直走るのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Happy Man / 佐野元春 1982


風を感じて! September

2022-09-24 | 単車でGO!

 長坂ICから北杜八ヶ岳高原線を駆け上って山梨県立まきば公園、牛さんたちが長閑に草を食んでいる。
どうもボクと八ヶ岳の相性は悪いらしい、こんなに晴れているのに雄大な峰々は雲の中だ。

裾野を削る深い川俣川渓谷にかかる赤い橋を渡る。ポールラッシュ通りに入るとご存じ清泉寮。
ファームショップでカップルに混じってソフトクリームを試す。練乳のような濃ぉい甘さが堪らない。

JR甲斐小泉駅まで下ってきた。苔むした岩の間から清らかな水が湧くというよりまさに溢れ出している。
1日に8,500tも湧出するという八ヶ岳南麓高原湧水群の一つ「三分一湧水」の名称は、武田信玄が湧出口に
三角石柱を立てて水を3等分して流し、村々の水争いを治めたという伝承からだと云う。

湧水の近くには「そば処 三分一」がある。少々並んでもうまい蕎麦が食べたい。
“十割そば” の天盛りを択ぶ、香こそそこそこだけどコシが強くて喉ごしの良い蕎麦はなかなかの美味だ。

足が竦むような八ヶ岳高原大橋を越えて清里へ、さらに緩やかな勾配を登り切るとそこは甲信国境、
折よく高原列車が登ってきた。蒸気機関車が喘いだ急坂もディーゼルカーは軽快に駆け抜けていく。

カランカランっと、高原の乾いた空気に鐘の音が響いてきた。
標高1,357mは日本の鉄道最高地点、巨大なモニュメントに提がる「幸せの鐘」を恋人たちが鳴らしている。

野辺山宇宙電波観測所を訪ねる。直径45メートルの電波望遠鏡が仰ぐ天は、どこまでも蒼くそして高い。
エキゾーストを響かせて高原をゆく。夏の日差しが弱まるようにSeptember、季節は確かに秋に変わった。

SEPTEMBER / 宮本浩次


風を感じて! CHANGE YOUR MIND

2022-09-03 | 単車でGO!

 盛夏の名残りを感じたいと湘南をめざして来たけれど、湾岸を走るうちに青空は薄曇りに移ろってしまう。
稲村ヶ崎から三姉妹の女神の島「江ノ島」を望む。古くから景勝地は夏のあるいは海の代名詞的なスポットだ。

ガタゴトと緑の電車が走っている。稲村ヶ崎から由比ヶ浜の間で江ノ電1000形とコラボレーション。
喧騒の海岸線をちょっと離れると案外静かな鎌倉がある。迷惑をかけない程度に風景の中に溶け込んでみたい。

田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)を祀る辺津宮は源實朝の創建、大河効果でちょっとしたブームか。
境内の奉安殿には八臂弁財天に並んで、琵琶を抱えた妙音弁財天が美しい裸体を魅せている。

江ノ島には美しい天女に一目惚れした五頭龍(龍口明神社)の伝説がある。
龍宮大神をお祀りする龍宮から丘に上がると、弁財天と五頭龍の伝説にちなんだスポット「龍恋の鐘」がある。
鐘を鳴らして金網に南京錠をつけると永遠に結ばれる。らしい。ちょっとその愛、重くないですか?

そんなことで、江ノ島も奥津宮辺りまで上ってくるのは若いカップルが多いようだ。
そうした二人連れに混じって江之島亭、富士山と湘南を望む絶景が見えるはずの窓際も今日は残念な眺めだ。

“生しらす” をのっけて “海鮮丼”、たっぷりと溶いたわさび醤油を垂らしながら、相模湾の幸が美味しい。
賑やかな8点盛りをアテに生ビールを呷りたいところだけれどそこはお約束、この旅の小さな我慢なのだ。
あの酷暑がなんだか懐かしく感じる週末、お腹を満たしたらzの鼓動を感じながらLovelandを後にするのだ。

<40年前に街で流れた J-POP>
LOVELAND,ISLAND / 山下達郎 1982

CHANGE YOUR MIND / The Square 1982