旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

昼下がりのざわめく浜辺にて 河和線・知多新線を完乗!

2019-08-31 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 休みなく働く車両だって暑いだろう。ホースの水を浴びてご機嫌...の様に見える。
ここは知多半島の河和(こうわ)、先週に続いて名古屋まで出張って来た。 

愛知県東海市の太田川、名古屋圏以外の方には全く馴染みのない駅だろう。
かなり新しい街なのか、駅はマンションに囲まれている。大学のキャンパスもある様だ。 

駅は3層構造になっていて、なんだか京急蒲田に似ている。
分岐する2線の一方が空港へ向かい、一方が半島を南下するところも共通している。
そんな余計なこと考えているところに特急が入線して来た。呑み人は河和線を旅する。 

常滑線から分岐してしばらくは高架線、車窓にはびっしりと住宅街が続いている。
スマートな特急は気付かぬうちに半島を斜めにトラバースして三河湾側を南下していく。 

車窓の風景が、コンビナートから鄙びた漁港の佇まいに変わるとほどなく終点の河和。
特急で30分、各駅停車で45分ってところだろうか。 

特急が到着すると、漏れなく師崎港行きの路線バスが連絡する様だ。
師崎港からは日間賀島、篠島、そして伊良湖へとフェリーか高速船で渡れる。
篠島の名前は、吉田拓郎や長渕剛の名とともに記憶にひっかかる人もいるだろう。 

炎天下、ふらふらと海まで歩いてみる。わずか5分の距離に汗が噴き出る。
小さな港があって、どうやら高速船には河和からも乗船できるようだ。 

 

暖簾に染め抜かれたのは南天だろうか、駅へと戻る途中に「さいとう」が在る。
知多半島一と地元で人気の店は、4組10名が順番待ち、カウンターに座ったのは15分後。 

中身ジューシーで外はサクサク、"あなご天" をアテに、半田の地酒 "國盛" をいただく。
適度に冷えた端麗辛口が美味い。地元のオヤジが飲む、なんてことはない本醸造だけどね。

さて、河和線を二つ戻ると富貴、小さいながらもなんとも縁起の良い駅名だね。
この小駅に全ての特急が停まるのは、知多新線が分岐するからだ。 

知多新線、内海行きの特急が入線してきた。これから半島を横切って伊勢湾側に抜ける。
この線は1980年に、沿線の宅地・観光開発のために建設された新しい路線だ。 

沿線の一大リゾート開発を企図した新線の現在は、利用者に比べてオーバースペック。
5駅17分かけて到着した終点内海は2面4線の立派な高架駅になっている。 

想像してたより人出があった駅前、今宵ローカル局主催の花火大会があるらしい。
恋の駆け引きをする若いグループの後を歩くこと15分、眼の前にパラソルの花が咲いた。 

パームツリーが南国風情を醸す海岸、軽快なMC、流れるラップ、ケバブの匂い。
このシチュエーションに襟付きシャツにカメラ片手のオジさんは浮く。否むしろ怪しい。
「おあとがよろしいようで」
早々に退散した呑み人は、特急のμシートに収まって、ラガーのプルトップを開けるのだ。

名古屋鉄道・河和線 太田川~河和 28.8km
名古屋鉄道・知多新線 富貴~内海 13.9km 完乗

モンロー・ウォーク / 南 佳孝 1979


旅情の小箱 釧路「かきめし」

2019-08-29 | 旅のアクセント

 オヤジの "かきべん" は、炊き込みご飯にふっくら柔らか旨みあるカキが美味しい。
大きな牡蠣が5つ、ゴロゴロと小箱の中で自己主張、口に含むと磯の香りが広がるね。
ワインレッドのラインを引いた単行ステンレスカーに小一時間ほど揺られる。
すると、車窓に広がってくるのは牡蠣の産地・厚岸湾とどこまでも広がる太平洋なのだ。

2018/08 


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旅情の小箱 釧路「たらば寿し」

2019-08-27 | 旅のアクセント

 午過ぎの釧路駅。根室行きの各駅停車の乗換時間は9分。
息子は座席の確保、オヤジは駅弁調達の役割分担で連携する。
発車を待ち切れず開けたのは釧路一押しの "たらば寿し" だ。 

たらば蟹のフレークと棒肉を盛付、醤油漬いくらとオホーツクサーモンを添えている。
蟹のフレークとご飯をひと口試す。口の中に北の海が広がった。 

2018/08


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陽光キラリ三河湾を往く 蒲郡線・西尾線を完乗!

2019-08-24 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 青春18きっぷで延々東海道本線を乗り継いで蒲郡までやって来た。
関東甲信越はほぼ乗り(呑み)尽したからね。それにしても片道6時間は疲れる。 
いい大人がする遊びではないと思いつつ、なかなかこのゲームから降りられない。 

横23メートル、高さ38メートルと云うから見上げるほどに巨大なヨット。
世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」に出場した「ニッポンチャレンジ」が 
駅前広場に鎮座する。蒲郡はチームの練習基地があったそうだ。 

名鉄・蒲郡線は2両編成のワンマンカー。何度か廃線の話が起きた路線は閑散としている。
高校生と2人で降り立った6つめの東幡豆、射るような夏の陽にたちまち汗が噴き出る。

駅から数分、東幡豆海岸・前島は有名な潮干狩りスポットらしい。
芋を洗うような干潮の賑わいとは打って変わって、静かな波が打ち寄せる海岸だ。 

 

 漁港の目の前の「魚直」で今日の一杯。先ずは生ビールをいただく。
店の名前を冠した定食は2,600円也、フルコース的なメニューになっている。 

 

飲むことを告げると、奥さんは厨房に声をかけて一品ずつサーブしてくれた。
刺身はマグロ、サーモン、カンパチ、それにセイゴだね。煮魚は "舌平目" これが美味い。 

 

酒は地元幡豆の "尊皇"、地元のオヤジが晩酌する本醸造を常温、二合徳利で。
焼魚は "銀ダラ"、箸で突きながら杯が進む。
今日はカニが入らなかったって、代わりのフライをおかずに赤出汁でご飯をいただいた。 

半分朽ちかけた東幡豆駅からさらに西へ向かう。蒲郡線はぴったり30分に1本やってくる。 

蒲郡線は吉良吉田まで、この先は西尾線になるのだけれど、両線はなぜか直通しない。
Y字になった駅構内は、付け根の部分が自動改札の関所が設置されているね。 

西尾線は4両編成の電車が1時間に4本、半分は急行で佐屋まで乗り入れる。
調べたら、佐屋って津島線の中間駅、なぜこんな運用をするのだろうか。解らないな。 

 路線の中心駅西尾で途中下車、駅前の観光案内所でガイドブックを入手して町に出る。 

江戸時代には歴代譜代大名が入城した西尾城址には丑寅櫓が再建され、往時を偲ばせる。 

順海町通りは「三河の小京都」西尾にあって、最も古い景観を残した趣のある通りだ。

 

西尾の食材を使った独創的なフォトジェニックなかき氷が「西尾かき氷」のコンセプト。
駅近くのCAFE HOTCH POTCHで "生いちご氷" を試してみた。
The Beatles が流れるご機嫌な空間で、ほのかに甘く、ふんわりと、舌で氷を溶かす。
さて、汗がひいたら、新安城まで、残り15キロを急行電車で駆け抜けるのだ。 

名古屋鉄道・蒲郡線 蒲郡~吉良吉田 17.6km
      西尾線 吉良吉田~新安城 24.7km 完乗! 

 

ハート通信 / 石川ひとみ 1979


旅するどんぶり 松阪「牛丼」

2019-08-23 | 旅のアクセント

 名松線の旅の終わりに、明治13年創業の松阪牛の名店を訪ねた。
城下町松阪の面影を残す古い町並みに、牛鍋屋風情をのこす「牛銀本店」は在る。
おひとり様はお座敷を利用できないが、併設する「洋食屋牛銀」で "上牛丼" を食す。
霜降り肉の甘さと柔らかさを堪能した満足のランチだ。

2016/08

      
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旅するどんぶり 帯広「豚丼」

2019-08-21 | 旅のアクセント

 行く夏を惜しんで?日曜日の晩、帯広の中心街には意外と若い人の姿が多い。
十勝の恵みを肴に、池田町で生産する "トカップワイン" の赤を堪能する宵は更ける。
ロース肉を炭火で焼いて甘辛ダレに潜らせ、熱々のご飯にのせた "豚丼" は十勝の名物。

押さえないといけない名物丼、息子からひと口味見させてもらって今宵の〆なのだ。
明日は東の果て納沙布岬をめざして、根室本線の旅はまだ半ばだ。

2018/08

 
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盛夏の風景 姨捨にて

2019-08-19 | 日記・エッセイ・コラム

 ぐんぐん勾配を登ってきた普通列車がスイッチバックして姨捨駅に停車した。
上り線のホームはそのまま、善光寺平を一望する展望台となっている。
特急の通過待ちは5分、このパノラマを満喫する時間を提供してくれる。
「日本三大車窓」に数えられる眺望は、明治の頃から旅人とって憧れの場所だ。 
山また山に囲まれた細長い盆地、その真ん中を千曲川がゆったりと流れている。 

千曲川 / 五木ひろし


松本城と真夏のたま子とHighland Railと 上高地線を完乗!

2019-08-17 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

アイボリーの2両編成がガタゴトと奈良井川鉄橋を渡っていく。 
前面には Highland Rail のロゴ、紫・ピンク・山吹・緑・赤の斜めストライプが流れる。
井の頭線の3000系は信州に嫁いだんだね、学生時代にお世話になった車両だ。 

1泊2日の短い帰省、高校時代の仲間と酌み交わした翌朝、松本経由で戻ることにした。 
午前9時半と云うのに温度計はすでに31℃を示している。これ「さわやか信州」じゃない。

1,000円の1日フリー乗車券を握りしめて、アイボリーの2両編成に乗車する。
6番は大糸線、7番は上高地線、JRと共用のホームはアルピニストとハイカーの世界だ。 

 

少し時間を遡る。
乗車前に訪ねた「松本城」は岳都・松本のシンボル、甍の黒が夏日に輝いている。
現存する唯一の漆黒の天守閣は "烏城" と呼ばれる。五重天守は松本城と姫路城だけだ。 

 
 

明治時代の町屋を改修した信州蕎麦の店で、こだわりの "十割そば" をズズっと啜る。
そばを待つ間、"板わさ" をつまみに "今錦 真夏のたま子 生" をいただく。伊那谷の酒だ。
地産の酒米を使用し、酒槽で搾り、氷温で貯蔵した特別純米生原酒が爽快で美味しい。 

話を戻そう。
2両編成が奈良井川鉄橋を渡ると、ほどなく田園地帯が広がり、稲の匂いが鼻をつく。
ほぼ真西に向かう上高地線沿線には、大信州酒造、アルプス正宗醸造の蔵があるけれど、
あまりにも暑いので訪問は諦める。写真を撮ったら後続の電車に逃げ込もう。  

イメージキャラクター渕東なぎさ嬢に見送られ、旅の終わり新島々駅に降り立った。
駅舎はバスターミナルになっていて、乗客の殆どは上高地へ、高山へとバスを乗り継ぐ。
呑み人の旅はここで終わるけど、アルピニストとハイカーはさらに標高を稼ぐのだ。 

松本電鉄・上高地線 松本~新島々 14.4km

<40年前に街で流れたJ-POP>
微笑の法則 ~スマイル・オン・ミー~ / 柳ジョージ&レイニーウッド 1979


盛夏の風景 青海川にて

2019-08-15 | 日記・エッセイ・コラム

 昭和の時代、信州の子どもたちにとって、夏の一大イベントは海水浴だった。
すし詰めの列車に2~3時間も揺られるか、往復2車線の国道の果てることのない渋滞か、
レジャーに選択肢の少ない時代、父の過酷な献身の先に、僕ら兄弟妹の歓声があった。
旧盆、父母の墓参りに、遠回りして新潟の海を通ってみた。
想い出はずいぶん遠くなったけど、蒼い海と青い空はあの頃のままだ。

ブルースカイブルー / 西城秀樹
 


旅するどんぶり 辰野「ソースカツ丼」

2019-08-13 | 旅のアクセント

 天竜川を遡る旅は、"ほたるの町" 辰野で終わる。
冷房もない大衆食堂、金足農業の吉田くんの力投、職人さんが焼酎の水割りを呷る。 
それではボクも遠慮なく。地酒 "夜明け前" を燗でいただく。肴は瓜の浅漬けだ。
程よいところで名物ソースカツ丼を。懐かしくも素朴な味を愉しんで飯田線の旅を〆る。

2018/08 

 
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The Galaxy Express 釜石線を完乗!

2019-08-11 | 呑み鉄放浪記

大人の休日、三陸を巡る旅、最後は銀河鉄道に乗車する。 
雨に煙る釜石駅、C58-239号機は汽笛を響かせ、黒煙を吐き、重厚な動輪が動き出す。 

濃紺の4両の客車は、白い蒸気に包まれながら、半ば強引な機関車にしたがう。
えっ乗らないのかって?旅立ちの光景を見たかったからね。この後の普通列車で追う。 

蒸気機関車の「黒」を際立たせた雨が釜石の町をも包んでいる。ここは鉄の町だ。 

 

釜石ラーメンは、程よいコシの極細の縮れ麺、琥珀色に透き通る醤油味のスープが特徴。
是非食べておきたいと、発祥の店「新華園本店」の開店時間に飛びこむ。  

少しだけ青空が覗いた釜石駅、12:12発の花巻行きで "SL銀河" を追う。 

普通列車はJR東日本管内で広く普及したディーゼルカーの2両編成。
列車は意外にも座れない乗客が出るほどの混雑、地酒 "浜千鳥" は出る幕を失った。 

遠野駅前広場の水辺では伝説の「河童」が水遊びに興じている。  

 

3番線で待っていたC58-239号機、スノープラウを装着した姿は精悍に映る。
朱のプレート板がお洒落なアクセントになるね。運転席の窓に置かれた機関士帽が良い。 

客車は1号車の「青」から4号車の「濃紺」へとグラデーションしている。
星座たちが金色プレートで描かれているね。なんとも美しい。

"SL銀河" がゆったりと動きはじめる。やがて遠野の外れで宮守川橋梁を渡る。
半円が五つ連なるアーチ橋、通称「めがね橋」は、釜石線の前身・岩手軽便鉄道のころ、
宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」のモチーフになっている。
緑色や橙色でライトアップされた橋は、人々を幻想の世界へと誘うと云う。 

トトン、トトンとレールの繋ぎ目の音、時折山間に響く汽笛の声に身をゆだねる。
窓辺のテーブルには、遠野麦酒 "ZUMONA" のヴァイツェン、至福の時間が流れる。 

遠野から1時間半、ゆるりと山を下って来た "SL銀河" が北上川を渡ると終点の花巻。
到着後の1番線、屈強な機関士たちが優しく気遣うように足まわりを点検している。
戦中生まれの老貴婦人には過酷な旅だったろうか。お疲れさま。
呑み人も彼女が回送されるまで、反対側のホームに佇み、見守らずには居られないのだ。

釜石線 釜石~花巻 90.2km 完乗 

<40年前に街で流れたJ-POP>
銀河鉄道スリーナイン / ゴダイゴ 1979


旅先のひと皿 青森「生姜味噌おでん」

2019-08-09 | 旅のアクセント

 今宵のひと皿 "生姜味噌おでん" は、戦後の青森駅周辺の屋台(闇市)に由来する。
厳冬期、連絡船に乗り込む船客の体を暖めようと、味噌に生姜をすりおろして入れた。
本町の「なら屋」はアットホームな店。カウンターで生姜味噌おでんを肴に飲む。
地酒は西田酒造の "特別純米酒・田酒"、辛口の酒が冷やした竹筒になみなみ注がれる。
思えば遠くに来たもんだ。みちのくひとり旅は、明日、北の外れ龍飛埼が終焉だ。

2015/08
 
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一酒一肴 鶴岡・味鈴「煌凛」

2019-08-07 | 津々浦々酒場探訪

 

 人口13万、出羽三山のゲートウェーである鶴岡市。それにしては寂しいな。
旧盆を迎える来週あたり、若者や家族連れが帰省して街は賑わうだろうか。
"栄光富士・煌凛" は、爽やかな吟醸香で豊潤な無濾過生原酒。春の限定酒だけどね。
庄内豚は天ぷらで。からっと揚がったロースに、レモンを絞って岩塩まぶして美味しい。

2018/08


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一酒一肴 鶴岡・味鈴「夏純米銀河」

2019-08-05 | 津々浦々酒場探訪

 

 羽越本線を呑む旅は去年の8月、途中、鶴岡に一泊の宿をとって、地酒・旬菜「味鈴」へ。
今が旬の "岩がき" は鼠ヶ関や由良で揚がる。肉厚の生ガキにレモンを絞って美味しい。
鶴岡の地酒で攻める。"大山・夏純米銀河"、なにしろラベルが涼やかで格好良い。
山形県産「はえぬき」を使用した、キレ良く喉越し良い爽やかな純米酒だ。
鶴岡には羽前大山に4蔵が酒を醸している。米どころは例外なく酒どころなのだ。

2018/08 


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三陸の牡蠣と千兩男山とうみねこが翔んだ日 山田線を完乗!

2019-08-03 | 呑み鉄放浪記

梅雨の晴れ間が広がった宮古、先週に引き続き三陸海岸までやってきた。
盛岡と宮古を結ぶ主役はすでに急行バス、1時間に1本が県都と湊町を繋いでいる。
対する今回のアプローチ、山田線は日に4本の直通列車が走るのみで勝負はついている。

利便性より旅情を求める呑み人としては、駅ビルで地酒を仕込んで2番線へ下りる。
ところがだ、11:05発の快速リアスは満員御礼、なんとかロングシートに席を確保する。
どうやら地酒はリュックの底に沈んで、家まで持ち帰るらしい。  

大志田、浅岸とかつての秘境駅は廃止となり、2両編成は駅間27キロを駆けて区界へ。
標高744mの区界(くざかい)駅は東北地方のJR最高所、もちろん山田線のピークになる。

一日平均乗降人員1名の区界を過ぎると、急坂を転げるように列車は下っていく。
この先宮古まで寄り添う閉伊川の渓谷が美しい。まもなく鮎が解禁になるそうだ。 

快速リアスは100キロの道程を2時間と少々かけて、七夕が飾られた宮古駅に終着する。
この先釜石までの区間は、3月の復旧とともに三陸鉄道に委譲されている。

宮古駅では6分の待ち合わせで、浄土ヶ浜へ行く路線バスに乗り継げる。
さながら極楽浄土のごとき白い流紋岩が林立する景勝地を観よう。呑むだけが旅ではない。 

荒天で楽しめなかった先週の北山崎断崖クルーズのリベンジを誓って遊覧船に乗り込む。
ウミネコパンが販売され出航を待つ。ご婦人らの殆どがパンを購入。美味いのかな。

出航と同時に、ウミネコが船の回りを群れ飛ぶ。否、襲いかかるが如きだ。
この後数分、よく映像で見る餌付けの光景が展開する。
ウミネコたちは現金なもの、パンが尽きたと見るや、ひと足先に防波堤へと帰って行く。

さて、松の緑、岩肌の白、海の群青が共演する極楽浄土がごとき風景はと云うと、
いやまたしても「やませ」特有の濃霧が海岸線を包んでいる。
船内放送では、残念ながら船は港に引き返すこと、乗船券を払い戻すことを伝えている。
いやいや、煩悩を抱える者には、そう簡単に極楽浄土は見えないらしい。

さて今日の一杯は、宮古駅近くの「蛇の目本店」と決めてある。
上り列車が出るまでの2時間が「呑み鉄」のクライマックスなのだ。 

 

浄土ヶ浜から歩いて戻ったから、先ずは生ビール。喉を鳴らして一気に呷る。
お通しの "イカの塩辛" がなかなかの出来栄えだ。 

 

酒は "千兩男山"、先週も飲んだ地元宮古の生貯蔵酒を愉しむ。
肴は "海鮮サラダ" と "カキフライ"、三陸の豊かな海を感じる逸品に満足の昼呑みなのだ。

山田線 盛岡~宮古 102.1km 完乗  

<40年前に街で流れたJ-POP>
かもめが翔んだ日 / 渡辺真知子 1978