旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

それでは酔いお年を 今宵、湊町の酒場で!

2021-12-31 | 日記・エッセイ・コラム

 2021年は年明け早々に大雪の便り。居ても立っても居られなくなって、雪を踏みしめ懐かしい街を訪ねた。
心細い冬の日が萬代橋の向こうに沈んだら青い暖簾をくぐる。新潟には2年暮らした。

趣きある酒場のカウンターで、真鯛、寒ブリ、それに甘エビ、冬の日本海を堪能する。
酒は鮭が美味しい村上の "大洋盛" をいただく。ふくよかな香りのひやおろし生原酒が美味しい。

 

 呑み鉄旅で大湊線を潰したのも雪の頃、雪に埋もれた野辺地から「はまなすベイライン」を往く。

田名部にある下北半島唯一の蔵は "関乃井"、家々では無口なオヤジが一升瓶を傍らに飲んでいるだろうか。
ウニ、ホタテ、エビやら旬の海の幸がぐつぐつと "みそ貝焼き" を肴に、最果ての無骨な酒が美味い。

 秋が深まった頃には高山本線を潰した。終点の富山の街で「きときと」と地酒を存分に味わう。
  日本海の幸は “甘エビ” と “ブリ” が登場、“ホタテ昆布〆” が美味しい。高岡の酒 “勝駒” を合わせる。

富山湾で揚がる “ゲンゲ” はさっと揚げて絶品の酒肴、優しい口当たりの “純吟 煌火 生原酒” でいただいた。

出かける機会がめっきり減った2021年ですね。来たる年にも美味しい酒肴との出会いがありますように。
それでは皆様、どうぞ酔いお年をお迎えください。

THEME FROM LUPIN Ⅲ 2021
     


ウイスキーがお好きでしょ 札幌「BARやまざき」

2021-12-29 | 津々浦々酒場探訪

 大通公園のイルミネーションをやり過ごしてすすきの交差点へ。今宵「Barやまざき」を訪ねたい。
先代のオリジナル “クローバー・フォー” はジンベースにアクアビット、それにカンパリを少々。
薄いオレンジがカクテルグラスを曇らせたらコアントローチェリーをそっと沈める。ちょっとほろ苦い。

バーテンダー氏、カクテルを注ぐ前に “ペルノ” というリキュールでグラスをリンスしていた。
この澄んだグリーンイエローのひと手間で味わいと香りを付けるのだそうだ。

今宵のウイスキーロックはニッカの “余市蒸溜所限定ブレンデッド”、ゴールドのポットスチルがいかしている。
掌でアイスボールを溶かしつつ時折りカランと鳴らしてみたり、老舗の重厚なカウンターで時間を愉しんでいる。

Arthur's Theme / Christopher Cross / 1981
     


草津よいとこ一度はおいで 吾妻線を完乗!

2021-12-25 | 呑み鉄放浪記

 緩やかな勾配を駆け上って一時代前の湘南電車、525Mが1番線に滑り込んできた。今日は吾妻線で呑む。

凛とした冬の朝、渋川駅前からは伊香保温泉行きの路線バスが出て行った。駅の背景は朝日を浴びた赤城山だ。

4両編成の湘南電車は上越線を離れると進路を西に転じ、静かな休日の朝を吾妻川に沿って走る。

四万温泉の玄関口である中之条、拠点病院がある群馬原町で乗客を降ろすと車内はガランとしてしまう。
だからロングシートと言えども “サッポロ黒ラベル” を開けるのに躊躇いはいらない。季節柄の有馬記念缶だ。

ベテランの車掌氏が乗降客の安全を確認してベルを鳴らす。ここ長野原草津口で4両編成を見送ることにした。
折角だから草津温泉まで足を伸ばしてみようと思うのだ。

駅から草津温泉まで走るのはJRバス関東、なるほど列車内の乗り継ぎ案内が丁寧な訳だ。

バスターミナルから(狭いけれど)中央通りを下っていく。そう「元祖ちちや」の前を通ってね。
所々に昨夜の雪が残っている。だんだん硫黄の匂いが漂ってきたと思うと目の前に湯畑が広がった。

氷点下の外気に濛々と湯気を立ち上げて、湧き出た熱々のお湯が7本の長い湯樋(ゆどい)を流れていく。
湧出量は毎分約4,000ℓ、温度は50度近いと言うから、その迫力は見応えがある。

少々温度を下げた源泉は湯滝となってエメラルドグリーンの滝壺に流れ落ちる。なかなか神秘的だ。
周辺にはいくつかの共同浴場があるので、時間に余裕があれば日本三名泉を堪能するといい。

湯滝通りの「蕎麦処あおやま」で、おとなり信州産の手打蕎麦をいただく。
いやその前に “水芭蕉” を味わう、川場村は永井酒造の純米吟醸は山田錦を醸したまろやかな酒だ。
蕎麦前は “湯の華豆腐” と酢味噌たっぷり “刺身こんにゃく” を。日が高い時間の一杯は背徳感の分美味いね。

     

酒が半ば空くタイミングで、〆の “舞茸天ぷらそば” を注文する。
舞茸天の半分は酒の肴に塩でいただいて、後の半分はそばのだし汁をちょっと吸わせて食べる。
温かいそばには大根おろしを浮かべてひと口、あとは刻みネギと七味を振ってズズっと美味い。

 吾妻川に架かる新しい第三吾妻川橋梁(八ッ場ダム建設に伴う新線)を渡って4両編成の湘南電車がやって来た。

長野原草津口を出ると太子方面への支線の廃線跡が分岐する。車窓からは赤く錆びついた白砂川橋梁が見える。
かつて日本鋼管群馬鉄山からの鉱石積み出し用の5.8kmの支線が太子駅まで延びていたのだ。

大前までは僅か20分の乗車だけど、駅隣接の物産展で求めた浅間酒造の “草津節” を開ける。
『草津よいとこ 一度はおいで ア ドッコイショ、お湯の中にも コーリャ 花が咲くヨ チョイナ チョイナ』って
湯もみの姉さん達の挿絵と、草津節の歌詞がほのぼのとさせるラベルが愛らしいね。

万座・鹿沢口を過ぎ、その勾配にモーターが唸りを上げてから6〜7分、4両編成は突然にゆく手を塞がれる。
標高840m、1面1線の寂れた単式ホームの100mほど先に車止めが見える。吾妻線の旅は呆気なく終わるのだ。

吾妻線はさらに先、嬬恋から菅平高原そして須坂を経て信越本線の豊野まで延伸する計画があった。
モータリーゼーションの波に敵う訳もないが、もしも鳥居峠を越えて全通していたらと考えると楽しい。
ホームの隅の道祖神がこの先を往く旅人を見守っている。まもなくこの辺りも雪に埋もれることだろう。

吾妻線 渋川〜大前 55.3km 完乗

悲しみは雪のように / 浜田省吾 1981
     


JY04 山手線立ち呑み事情 立ち呑みHook@御徒町

2021-12-23 | 大人のたしなみ

山手線も漸く運転再開して?半年ぶりの立ち呑み事情は4駅めの御徒町に途中下車。
御徒町から上野の間は立ち呑み昼飲みの聖地だから、数々の名店が並んで若者達で賑わっている。
そんな店に紛れ込むのも趣がないから、穴場を探して昭和通り渡る。っと「立ち呑みHook」を訪ねるのだ。

7〜8人立てそうなL字カウンターに2人用のハイテーブルが3脚ってところか。
ここはウイスキーが飲めるスタンド。でも先ずは “フィッシュ&チップ” をつまみながら “生ビール” がいいね。
前に覗いた時は騒々しかったけど、土曜日の開店時間にはボクひとり。有線から流れるJazz Pianoが心地よい。
二杯目は “角ハイボール”、遥さんのポスターが誘っているからね。ここからは緩りと飲もう。

つまみに “大盛り生ハムとアボガド”、かなり気前よくスライスされた生ハムに黒胡椒が振られている。
でっ、生ハムでタマネギやらアボガドやら巻いて口に放り込む。美味しい。
最後に “カンパリハイボール”、まったりした口をハーブが香る仄かな苦味で流して、御徒町の夜は更ける。

これで2,000円と少々。つまみ一皿とスピリッツ2杯、1,000円とコイン何枚かで抑えるのが上級者か。
さて次回、いよいよ上野に途中下車となる。立ち呑みで廻る山手線の旅はまだまだ先は長いのだ。

ルビーの指環 / 寺尾 聰 1981


駅そば日記 我孫子「弥生軒」

2021-12-21 | 旅のアクセント

 美味いの不味いのとWeb上では評価が真っ二つに割れているのが我孫子の「弥生軒」だ。
午後2時という時間帯もあるが、構内にある3店舗はいずれも列を成している。中には店外で啜る猛者もいる。
他の店と違うのは、客層がとにかく若い、それも暑苦しい部活帰りっぽい男子が多いことだ。
なぜって、世に轟く?この店の名物は、大きな唐揚げをのせたボリューミーなそば・うどんだからだ。

丁寧なおばさんの接客はさすがは人気店と納得する。そしてボクの手元にも“唐揚げ(1個)そば” が着丼。
茹麺なのを差し引いても、沖縄そばのような中太麺は味気なく、近くの自社工場で揚げた唐揚げは冷たい。
これは後者に一票かな。ところがだ、存在感のある唐揚げを三分の一ほど齧ると状況が一変する。

味付けが薄い肉にカツオ出汁に浸されると、和風でジューシーないい感じの唐揚げになってくる。
濃いめのつゆには衣の油がいい塩梅にしみだして、これまたいい感じ。いや美味と言っていい。
つまり、慌ててかき込めば決して美味いとは言えず、唐揚げをつゆに浸しながらじっくり味わえば、
なるほど名物になるのも納得の味、きっと遠からず再訪したくなりそうな常磐線は我孫子駅なのだ。


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I Can't Go For That / Daryl Hall & John Oates 1981
     


富士の高嶺に雪は降りつつ 岳南電車を完乗!

2021-12-18 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

懐かしいこの顔、京王井の頭線を走っていた3000系だね。学生時代にずいぶんお世話になりました。
両端に運転台を取付け1両で走行できるよう改造された電車が、ガタゴトと吉原駅に入線してきた。

吉原を出発した単行電車が沼川を渡って右へ90度大きくカーブを描くと、視界正面に富士の高嶺を捉える。
静岡県東部地方が快晴の天気予報を聞いた週末、岳南電車で呑もうと朝から東海道線に揺られてきた。
過去2回はことごとく富士に嫌われたけど、今回は上出来な艶姿を見せてくれている。

ジャトコ前駅を発車して来た電車はサンタクロースの顔が描かれて、朱のボディーが富士を背景に映える。

電車はロングシートかつ短い旅だけど、SAPPORO “静岡麦酒” を開ける。プシュっと小気味いい音が響く。

岳南原田駅を出ると、サンタクロースは日本製紙の工場に吸い込まれていく。煙突と電車の朱のコラボだ。

岳南富士岡駅にはホームに沿って何本かの引き込み線が広がり、旧型電気機関車が留置されている。
2012年までは貨物輸送があって、比奈駅から吉原駅まで製紙ロールの輸送に活躍していたらしい。

マルーンに塗られたED402号機は松本電気鉄道、奥の凸型ED501号機は上田温泉電気軌道の出身。
信州から出て来たってことは呑み人とは同郷になるね。ED402号機に至っては年頃も一緒かも知れない。

須津川を渡ったサンタクロースは、緩やかな下り勾配を終点に向かってラストスパートをかける。
斜面には茶畑が広がり、背景で裾野を広げているのは旧い成層火山の愛鷹山(あしたかやま)だ。

東海道新幹線の高架を潜る。たった1両の電車の頭上をシュッと音を立てて16両編成が矢のように駆けていく。
っと終点の岳南江尾駅、わずかに9キロ20分の旅は終わる。学生時代の思い出は陽だまりの中で折り返しを待つ。

吉原駅から歩いて30分、田子の浦港を回り込むと「漁港食堂」がある。
雪を纏って扇のように裾野を広げた富士が美しい。まさに『田子の浦に うち出でてみれば 白妙の』の情景だね。

田子の浦といったらやはり「生しらす」その甘くてプリプリを味わなければ帰れない。
でもその前に地酒を一杯、富士宮は牧野酒造のその名も “富士山”、漁港を眺めながらいただくやや辛の本醸造。

生しらすの漬けはほんのり赤みを帯びて、これ “赤富士丼” って味付け卵黄は火口のお鉢を表現しているのかな。
最初は生姜を溶いて本醸造の肴に、後半は卵黄を割ってマイルドな丼を堪能する。美味い。
冬の澄んだ空の下、今日は富士づくしの岳南鉄道小さな旅、『富士の高嶺に 雪は降りつつ』なのだ。

岳南電車 吉原〜岳南江尾 9.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛の中へ / オフコース 1981


ご当地旨ラーメン事情 中洲「博多 一双」

2021-12-15 | 旅のアクセント

 通りの向こうから濃厚な豚骨スープの匂いが漂ってくる。ごこれ反則だよなぁ。つい吸い込まれてしまう。
なんともクリーミーなスープが泡立って、薄切りのチャーシューと味玉が見え隠れしているね。
細平打ちを無遠慮にズズッと啜る。鼻腔まで豚骨スープに支配される。濃厚な泡がカタ麺に絡んで美味しい。

     

調子にのって替え玉を頼んでしまう。つい口を滑った感じだ。味玉を割ってマイルドに楽しむ。
今度は辛子高菜をたっぷりのせてアクセントをつける。んっこれもまた九州の味か、ピリッと美味い。
冷え込んだ夜、外には席待ちの列が続く。出張もまた楽しからずやなのだ。


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ウエディング・ベル / シュガー 1981
     


ウイスキーがお好きでしょ 福岡「COOPER」

2021-12-11 | 津々浦々酒場探訪

 小雨降るロンドンの裏町にでも紛れ込んだ気にさせる佇まいが博多川の端に在る。
オーセンティックではないにせよ、落ち着いた雰囲気のカウンターは老舗バーそのものだ。

淡緑色がカクテルグラスに注がれてライムの香りが広がる。すでに “ギムレット” には早過ぎる時間ではない。
生ハムを巻いたクリームチーズをつまむ。軽く焼いてあるバケットもいい感じなのだ。

シングルモルトは “GLENLIVET” の12年、ほんのりバニラの香り、初級者にはこんなところからか?
空いた小腹に辛みのある “サラミピザ” を口に放り込むと人心地つく。
ときおりボールアイスをカランと鳴らしながら博多の夜は更けていくのだ。

酒場の騒めきがなんとなく億劫な気分の夜、たまにはこんなバーカウンターもいい。

Say Goodbye To Hollywood / Billy Joel 1981 
     


Biz-Lunch 天神「キッチンしゃもじ」

2021-12-09 | Biz-Lunch60分1本勝負

 玄界灘で朝どれの真サバを博多独特のごま溜り醤油で生のまま食す「博多ごまサバ」が美味しい。
「博多に来たらやっぱりごまサバ!」のキャッチに誘われ、今日のランチは “ごまサバ定食” をいただく。
福岡にこんな郷土料理があるなんて知らなかったなぁ。まだまだ勉強不足の呑み人だ。
酒の肴にも良いだろうけど、すりごまたっぷりのしょうゆだれ、万能ねぎをたっぷりのせて、
ごまの香りと甘じょっぱい味付けをあったかご飯といただく、これまた楽しい博多のBiz-Lunchなのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
センチメンタル・ジャーニー / 松本伊代 1981


錦繍の東京風景「六義園」

2021-12-07 | 日記・エッセイ・コラム

 6時台に近藤奈央さんが旧古河庭園から生中継していたので、天邪鬼にも駒込駅を反対に南へ抜ける。
川越藩主・柳澤吉保が元禄15年(1702年)に築園した回遊式築山泉水の大名庭園「六義園」を訪ねるのだ。

中の島を浮かべた大泉水を右手に、先ずは時計回りに錦繍を求めて回遊する。
吹上茶屋から吹上峯へと登る小道、モミジが枝を投げ出している。淡い午後の陽を透かして美しい。

つつじ茶屋から水春江を振り返る。「金」と「朱」のコラボレーションがキレイだ。

枝いっぱいの「紅」が枝垂れて、石灯籠を包み込むようだ。ゆっくりと紅葉を愛でたくなった。

     

出汐湊(でしおのみなと)近くの茶屋で淹れたてのコーヒーで一息。栗まんじゅうに添えられたモミジが嬉しい。

引き返して渡月橋を渡る。見上げると「紅」が眩しい。

蛛道(ささかにのみち)から剡渓流(せんけいのながれ)の対岸を臨む。常緑との共演もいい。
山陰橋を渡って今度は藤代峠を臨む。

再び千鳥橋に差し掛かると銀杏の巨木が聳えているのに気が付いた。西日を映じてシャンパンゴールドが耀く。
都心にぽっかりと在る錦繍と静寂を愉しんだ午後、さてっと喧騒の酒場でも探しましょうか。

     

<40年前に街で流れたJ-POP>
ラブレター / 河合奈保子 1981


五連アーチとタラコと金雀と 岩徳線を完乗!

2021-12-04 | 呑み鉄放浪記

 瀬戸内海には朝靄がかかり、波頭が朝日に煌めいている。コンビナートには銀色の灯が点滅している。
この時期になると西国の日の出は7:00を過ぎる。タラコ色の2228Dは明けたばかりの徳山駅を発つ。

1つ目の櫛ヶ浜は山陽本線との分岐点、本線は瀬戸内海に添い、岩徳線は山間部を抜けてそれぞれ岩国へ至る。
肌寒いこの日に呑み潰す岩徳線は、本線より18.3kmも短いのに20分も余計にかかるのんびりとした旅になる。

稲刈りが終わった田圃には霜が降りたようだ。低い朝の陽にキラキラと輝いている。
博多で見初めた大分の “かぼすハイボール” をプシュ、このスッキリとした酸味と香りはハマりそうだ。美味い。

 8%の辛口をチビリチビリと小一時間、タラコの2両編成はガタゴトと錦川橋りょうを渡って西岩国へ。
木造平屋建て寄棟造、玄関上部に切り妻壁を飾り正面玄関のアーチはたぶん錦帯橋を模しているのだろう。
オレンジ色の屋根が眩しい駅舎はもちろん国の登録有形文化財、1929年生まれだから齢90年を超える。

手に息を吹きかけながら歩くこと20分、岩国城を背負って五連の名橋・錦帯橋が見えてきた。
岩国藩の第三代吉川広嘉が架けた木造橋は戦後まもなく台風による洪水で流出している。
それでも巻きガネとカスガイを使った木組みの橋は精巧な弧を水面に映して美しい。訪ねた甲斐があった。

向こう岸からロープウェイで3分、初代藩主の吉川広家が築いた岩国城は幕府の一国一城令によって、
元和元年(1615年)に取り壊された。現在の四重六階の桃山風南蛮造は昭和になって復元されたものだ。

天守閣から眺望する。蛇行する錦川に囲まれた山頂はなるほど天然の要害であることがよく分かる。
曲くねった先には幾つかの青黒い島影を浮かべて瀬戸内海が鈍く光っていた。

 昼を挟んで錦川清流線を呑み潰してから、岩徳線の残る1駅間をラストスパートする。
車体を揺らして走ってきたタラコの2234Dは単行気動車、車体の両側に運転台を持つのはキハ40系だ。

西岩国から5分、タラコが90度の急カーブを描くと、右手から櫛ヶ浜で別れた山陽本線の複線が近づいて来る。
岩国15:04着、まだ酒場に暖簾はかからない。然らば酒蔵を訪ねる。岩国は五蔵を有する。いずれも著名だ。

河口を目前にした錦川(今津川)に面して八百新酒造がある。煉瓦の煙突に「雁木」の銀看板が誇らしい。

 炭火串焼と旬鮮料理の店「岩国縁家(ゆかりや)」は、ちょっと早い午後4時に提灯が点る。これは嬉しいね。

この店の蛇の目は1合盃、なかなか豪気だね。まずは “雁木ひとつび”、優しい飲み口の純米酒だ。
地魚の盛り合わせは、サーモン、アジ、カツオ。カツオにはたっぷりにんにくスライスをのせて美味しい。

もっちりでシャキシャキの “岩国れんこん” は天ぷらがよろしいようで。シンプルに塩でいただく。
二杯目は “五橋” の純米酒、五橋とはもちろん錦川にかかる五連の反り橋「錦帯橋」から由来する。
控えめな吟醸香の辛口を味わいながら、れんこんをシャキシャキと愉しむ。

“金雀” は錦川清流線の終点錦町駅に程近い堀江酒場の酒、プレミアムな酒を醸す小さな酒蔵だ。
メニューにはない “純米吟醸50” と “伝承山廃造” を大将が出して来てくれた。ちょっと嬉しいもてなしだね。
〆は長州どりを釜飯で。出汁で炊き上げた “鶏めし” を香りとともに頬張って、岩徳線の旅は終わりを迎える。

岩徳線 櫛ヶ浜〜岩国 43.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
心の色 / 中村雅俊 1981


水曜日は家呑み派 「蓬莱 家伝手造り」

2021-12-01 | 日記・エッセイ・コラム

 和の肴をいく皿か朱の盆に並べたら、小さなセラーから720mlを抜き出し、今宵は家呑みを愉しむ。
“蓬莱 家伝手造り” は酒造好適米「飛騨ほまれ」を醸した純米吟醸酒、ANAのファーストクラスに採用されている。
やわらかくも奥深いコクある旨酒は、冷やして、常温で、ぬる燗で、控えめながら美味しい酒です。
“さわらの粕漬け焼き”、“牛すき揚げ出し豆腐” に箸を入れながら、旨酒を味わう至福の週半ば。

     

10月の終わり、高山本線を呑み潰したローカル線の旅、夕暮れの飛騨古川駅に降り立った。
1,000匹余の鯉が泳ぐ瀬戸川沿のフォトジェニックな白壁土蔵は造り酒屋のもの、その一軒渡辺酒造店を訪ねた。
すでにレポートした通り、女将さんに惜しげもなく試飲させていただき、思わず大人買いをしてしまったのだ。
秋から冬への夜長、飛騨の酒を愉しむの家呑みはまだまだ続くのだ。

完全無欠のロックンローラー / アラジン 1981