旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

臨海工業地帯の秘境駅を巡って 鶴見線を完乗!

2020-05-30 | 呑み鉄放浪記

 時差勤務で17:00前に上がった吞み人は、終業後の寄り道で都会の秘境駅を巡る鶴見線の旅に出る。
折り返しの1707Bは本線を扇町まで走る黄と青のラインを引いた3両編成、17:45、短い旅が始まる。

鶴見線の3番ホームは西口側の高架上にある。鶴見駅を発った3両編成は総持寺を右手に見て高架上を進む
やがて大きく左にカーブを切ると、東海道本線と京浜急行線を跨いだ勢いでR15も越えて国道駅に滑り込む。
R15と旧東海道に入口を持つ国道駅のガード下は、戦前の開業当時の雰囲気をそのまま残している。
とは言え、大衆食堂も酒場も殆どが店を閉め、半ば廃墟のような様子である。

鶴見川を渡り鶴見小野駅を過ぎると、いつしか3両編成は東へと向きを変えて逆走しているのだ。
浜川崎で南部支線と連絡して貨物ターミナルをやり過ごすと、浅野運河を越えて人工島へと鉄路は進む。
見えてくる工場群は昭和電工のもので、終点ひとつ手前の駅「昭和」はもちろん企業の名を冠しているのだ。

暮れかかる扇町駅に3両編成が終着、1面単式ホームの南端に簡易Suica改札機を備えた小さな駅舎は無人駅だ。
駅員は居ないが猫はいる。どれも痩せっぽちの4匹がまだ温かいコンクリートに寝そべり乗客を意に介さない。

寂しく車止めに行く手を塞がれた旅客線を横目に、堂々複線の貨物線が踏切を越えてさらに先へ延びている。
この鉄路はやがて海に出会うのだろうか。吞み人の少年時代と違って、今は鉄道用地への冒険は憚れる。

 大川支線の乗り換え駅・安善まで戻って来た。「安善」は安田財閥創業者の安田善次郎の名前に因む。
工場と住宅が混在した駅前には酒販店が昔ながらの角打ちを営んでいる。仕事帰り夕涼みの一杯が羨ましい。

約20分の待ち合わせで大川行きの1807がやって来た。当然ながら、この時間帯の下り列車はガラガラなのだ。
この大川支線は工場が稼働しない休日は、早朝2本、夕方1本の3往復しか走らない。訪問にはご注意を。

本線の武蔵白石駅の直前を渡り線で右90度カーブした3両編成は、白河運河の船溜まりを越えて大川町へ。
大川支線の起点は武蔵白石なのだけれど、急カーブの構造上ホームは無く、列車は停車しないのだ。

終点大川駅の正面は三菱化工機本社、他に日清製粉鶴見工場などがある大川工業団地には住宅や商店はない。
通勤電車が草叢に埋もれる様は哀愁が漂う。都会の秘境駅とはよく言ったものだと思う。

 今度は海芝浦支線の起点浅野駅まで戻る。駅舎は本線と90度カーブで分岐する支線のY字の中に立つ。
ちなみに浅野駅にも駅守の様に4~5匹の猫たち、餌を与える住民がいるのか、こちらは丸々と肥え毛並も良い。

海芝浦行き1901が3番線に入って来た。すっかり日も暮れて、前照灯が眩しい。
極急カーブのホームと電車の間は50~70cmも開くところが在って恐怖だ。酔い酔いでは下車も覚束ない。

旭運河に沿って南下した海芝浦支線は、再び90度の右カーブを切って京浜運河に並行すると海芝浦に終着する。
海芝浦駅は駅舎が社屋に接しているので、東芝関係者以外は改札を出ることはできない。やはり秘境駅なのだ。

岸壁を波が洗うホームに立ち、海風に吹かれながら電車の折り返しを待つ。
対岸に東京ガス扇島LNG基地の灯を眺め、首都高速湾岸線「鶴見つばさ橋」を銀と紅の光の帯が流れている。

 

 鶴見駅東口、旧東海道に近い雑居ビルに白提燈を灯した穴蔵がぽっかりと口を開けている。
コの字カウンターが中央に陣取る「大鶴見食堂」は、せんべろ的な大衆酒場、小ぎれいな店だ。
他には5組のカップル、30~50代ってとこか、子どもを仕上げたかDINKsか。素敵な週末の過ごし方だ。
"赤ポッピー" を注文したら、焼酎は別のコップに、小さいボール一杯の氷が出てきて気が利いている。
2杯目、3杯目も自在に作って美味しくいただける。

子犬の糞?みたいに焼き明太子がのった "ポテトサラダ" は美味いアテだ。
"冷奴 青唐辛子のせ"、これも日本酒にもビールにも合いそうだ。この店、とっても気に入りました。

 

並んだ地酒の品書きから、茅ヶ崎の "風露天青" を択ぶ、五百万石で醸したすっきりとした辛口だ。
厚切りのハムをうす衣で揚げた "ハムカツ" がジューシーで申し分のない逸品。
本醸造とは思えない旨い酒と、基本メニューだけど美味い肴をつまんで2,370円、思いがけず愉しい鶴見の宵だ。

  鶴見線 鶴見~扇町   7.0km
海芝浦支線 浅野~海芝浦  1.7km
 大川支線 武蔵白石~大川 1.0km 完乗

 

ダンシング・オールナイト / もんた&ブラザーズ 1980
     


一酒一肴 中山・いろ彩「残草蓬萊」

2020-05-28 | 津々浦々酒場探訪

 推しの串揚げを注文したら、"残草蓬萊(ざるそうほうらい)" を択ぶ。
愛川町は大矢孝酒造の純米酒は、原酒ながらの爽やかな喉越しの超辛口の酒が旨い。
ときおりキャベツをパリパリやりながら、熱々ジューシーな串揚げをいただく。
丹沢山系の良質な水に恵まれ、意外にも神奈川県には13もの蔵元があるんですね。
次回は生酛造り "昇龍蓬萊" を飲みたいな。美味い酒に巡り合った中山の夜です。

2019/05
     

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一酒一肴 中山・いろ彩「秀峰丹沢山」

2020-05-26 | 津々浦々酒場探訪

 緑区中山は、18、9の頃に横浜の大学に進んだ同郷の友人を訪ねた覚えがある。 
南口が昔からの町の様で少し雑然としている。その路地に「いろ彩」を見つけた。
こだわりの焼酎を揃えた店は若やいでる。ホールの娘が可愛いし機転が利くのが嬉しい。
"秀峰丹沢山" は山北町の川西屋酒造の純米酒、呑み飽きしない旨辛の酒だ。
3点盛は、サバへしこ、梅水晶、酒盗クリームチーズ、日本酒のアテのクリーンナップ。
これで結構飲めそうだ。夜の帳はまだ下りたばかりだ。

2019/05

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もうすぐ裸足の季節 伊東線を完乗!

2020-05-23 | 呑み鉄放浪記

 青く輝く美しい伊豆の海と空をイメージさせる「サフィール」は、オールグリーン車の新型車両。
上質・高級で優雅な旅を演出する8両編成が伊東駅にすべりこむ。初夏の青が伊豆の空に広がる。

海から段丘へ這い上がる霧が晴れる時刻になっても、時節柄、熱海サンビーチは閑散としている。

伊東線は熱海で東海道本線から分岐し、伊豆半島東岸を伊東まで抜ける20キロに満たない路線だ。
「踊り子」をはじめ多くの列車は伊東駅以南では伊豆急行線に乗り入れ、下田まで直通運転している。

10:46発の5639Mは臨時のダイヤで伊東止まり。伊豆急行の6両編成は東急から嫁いできたハワイアンブルー。

旅は20分と短いので、熱海ビール「煌」ピルスナーを1本。
ラベルには、夜空いっぱいに咲く花火、ジャカランタ、そして浴衣のお嬢さん。んっ夏が待ち遠しい。
長い不動トンネルを抜けると、車窓に相模湾が、鼻先にはピルスナーの芳香が広がる。

網代、宇佐美の美しい海岸線を左手に、ハワイアンブルーの6両編成はひたすら南下する。

熱海を出て22分、伊東線の旅はあっさりと終了。初夏の陽光の中、先へと延びる鉄路は伊豆急行線だ。

"花と海といで湯の街" 伊東の玄関口は、白亜にオレンジの瓦をのせた南国風。
一方、ロータリーの歓迎看板には黒紋付き振袖姿の半玉さんの艶姿、このアンバランスがなんとも素敵だ。

駅前通りをふらりと、伊東オレンジビーチまで漫ろ歩いてみる。
初夏の日に照らされた伊豆の海は、僅かに電車で20分だけど、熱海のそれより青みを増したようにも思える。

湯の花通り商店街を歩いて「楽味家まるげん」は古民家風の居酒屋、実は昼から飲むことができる。
魚やイカのすり身に野菜を混ぜ、山芋をつなぎに揚げた "ちんちん揚げ" は伊豆のB級グルメ。
「※おじさんが想像しているモノではございません」って、品書きの短冊に注釈がご愛敬だ。

 

"ちんちん揚げ" を肴に、喉ごし端麗な東海道・原宿の酒、"白隠正宗 特別純米" を愉しんで、
まぐろ、まんだい、〆サバなど、海鮮丼の具をつまみに二合目をいただく、美味いね。

帰路の宇佐美駅で185系「踊り子」に出会う。東京と伊豆を結ぶ代名詞的な車両も引退の日は近いらしい。
青く輝く伊豆の海と空、美味い地魚とB級グルメ、淡麗な地酒を愉しんだ久々に「吞み鉄」的休日なのだ。

伊東線 熱海~伊東 16.9km 完乗

裸足の季節 / 松田聖子 1980


町の中華屋・洋食屋 浦和「洋食屋BON REPOS」

2020-05-21 | 日記・エッセイ・コラム

 洋食屋「ボン ルポ」は、夜は遅くまで開いてないようだ。どうりで覚えがない。
昼間見る街は結構発見があって楽しい。もちろん初めましての店なのです。
先ずは "こだわりオムライス" を。ふんわり玉子とコクあるデミグラスソースは及第点。
以前の店から居抜きであろう内装は、ちょっと余裕のある造りで落ち着ける。
これでスープが付けばいいのだけど。ご馳走さまでした。


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オリーブの栞 / 石川ひとみ 1980


Biz-Lunch 浦和「割烹 千代田」

2020-05-19 | Biz-Lunch60分1本勝負

 老舗の「割烹千代田」も、いまでは高層マンションの谷間で窮屈そう。
季節の自然を映す中庭を眺めながらいただく "昼会席弁当" は、かなりお得感がある。
温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、一品一品丁寧にお重をにぎわして美味しい。
ちょっと、ぬる燗の純米酒でも飲みたいところだけど、テレワーク中だからね。
今度は夜、おじゃまします。


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雨の慕情 / 八代亜紀 1980


人生のそばから 信濃町「仁の蔵」

2020-05-16 | 旅のアクセント

 長野から信濃町に抜ける県道37号は、快適にR18をショートカットするワインディング。
北信五岳(飯縄・戸隠・黒姫・妙高・斑尾)を眺めて走る高原の道は、美味いそばの道だ。
夏の日には、高原野菜の直売所が庇を延ばし、焼きトウモロコシの甘い匂いが漂う。
所々、県内外のナンバーが屯うのは蕎麦の名店に違いない。「仁の蔵」もそのひとつ。
30分ほど待って小上がりに席を占める。当然に "天ざるそば" を注文する。
高原野菜の天ぷらは、塩をぱらぱらふって、頬張ると甘さが口いっぱいにひろがる。
標高600m、昼夜の温度差の激しく霧が発生しやすい黒姫高原の「霧下そば」は香り高い。
艶やかなそばをズズっと啜る。鼻孔にほのかに香りが残る。信州を実感する瞬間だね。


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涼風 / 岩崎良美 1980


一酒一肴 伊勢佐木町・寺嶋屋「楯野川」

2020-05-14 | 津々浦々酒場探訪

 

 伊勢佐木長者町駅から徒歩5分、伊勢佐木町通りと浜っ子通りの間に「寺嶋屋」はある。
時代がかった引戸を開けると、カウンターとテーブルで30名くらいは立てそうな空間。
酒は3~4種がプレミアム地酒として品書きされ、酒田の "楯野川" を注いでもらった。
若々しく爽やかな香りと酸味の酒に、肴はポン酢に浸された "鳥たたき" が絶品だ。
さて、ほろ酔いになったところで外はまだ明るい、帰りは海岸通りまで漫ろ歩こう。

2019/05

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一酒一肴 勝田台・竹うち「梅一輪」

2020-05-12 | 津々浦々酒場探訪

 京成本線、勝田台駅前の賑わいが途切れる一角に「大衆酒場 竹うち」がある。
休日は14時からの開店、既にロの字のカウンターは8割方埋まっている。人気の店だ。
九十九里の酒 "梅一輪"、シャープな辛口の酒が花冷えですっきりと美味しい。
肴は新鮮な "地だこ頭スライス"、ポン酢ともみじおろしでいただく。旨い。
せんべろを自認する店で、逸品の肴を味わいほろ酔って、でも駅の時計はまだ17時前だ。

2019/05
     
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ご当地旨ラーメン事情 喜多方「あべ食堂」

2020-05-09 | 旅のアクセント

 市街地を南北に貫く狭い国道から路地を入って「あべ食堂」を訪ねた。
喜多方ラーメン店の中でも老舗と言われる一軒は、それこそ蔵を持つ民家風の店だ。
素直にオーソドックスに "中華そば" を注文、着丼まではノンアルを呷って待つ。

麺が見えないたっぷりスープにバラ肉を並べて、たっぷりネギとメンマがのって、
中太麺には、とんこつ・煮干しダシが調和したスープがたっぷり絡まって美味しい。
磐梯山にまだ雪が残る頃、時折訪れる肌寒い日に啜る一杯はご馳走だ。


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素敵なモーニング / 石川優子 1980


旅の酒場にて 水戸「てんまさ」

2020-05-07 | 津々浦々酒場探訪

 水戸駅北口のとあるビル、階段を地下に降りると「てんまさ」の暖簾が架かる。
11:00から飲めるこの店、客筋は親父ばかりと思いきや、若いカップルなんかも杯を傾ける。
なかなか侮れない水戸の昼吞み事情。
多彩な地酒のラインナップから "特別純米  霧筑波" を択ぶ。つくば市は浦里酒蔵の酒だ。

肴も茨城のものを食べたい。"あんきも豆腐" さっぱり素麺サラダ風、カリカリに揚がった
"メヒカリ唐揚" にポン酢を垂らして美味しい。料理を引き立てる淡麗辛口は二合目を。
〆の "納豆オムレツ" には出汁の利いた餡がかかって、これも日本酒に合うな。
観梅に偕楽園を訪ねて、ぶらり旅先の昼吞みが楽しい。

南回帰線 / 堀内孝雄&滝ともはる 1980


路面電車が走る風景

2020-05-06 | 日記・エッセイ・コラム

12E系統はサン・ジョルジェ城を中心に環状の路線を時計回りに走っている。
石畳と坂の街に、向日葵のようなイエローの古びた車両がよく似合う。

大王ジョアン1世騎馬像のフィゲイラ広場から12Eの軌道に沿って Rua dos Fanqueiros を南にむかう。
リスボン大聖堂から Rua Augusto Rosa の坂を上る。急坂を12Eの向日葵のトラムが下ってくる。

息が切れかかる頃、ポスタル・ド・ソル広場に至る。
広場からは青きテージョ川とオレンジ色の甍が連なる旧市街アルファマを一望できる。
迷路のような路地、急な坂道、どこか郷愁を誘う、見たかったシーンがそこにあった。

Caso Arrumado / Ana Moura


Alta Velocidad Española

2020-05-05 | 日記・エッセイ・コラム

 バルセロナ、バレンシア、アンダルシア方面行きのAVEが出発するアトーチャ駅。
改札でパスポートチェックを済ませると、ClubPreferente の乗客はラウンジ Sala Club を利用できる。

 深いソファーに腰を沈め、読めもしない西語新聞を広げてセルベッサを愉しむ。
赤ラベルの Cruzcampo がお気に入りだ。

 荷物置き場にスーツケースを収め、Preferente の革張りシートに自分の座席を見つけた頃、
セビーリャ行きはごく軽い振動を残してプラットフォームを静かに滑り出す。

 白い14両編成は市街地を抜けるとぐんぐんと速度を上げ、窓の景色が猛烈なスピードで流れはじめる。
1時間もすれば左右の車窓に満開のヒマワリ畑が広がるはずだ。

Asturias / Alexandra Whittingham


踊り子

2020-05-04 | 日記・エッセイ・コラム

 王宮にほど近い Corral de la Morería は1956年創業の格式あるタブラオ。
情熱的な歌声、激しく美しい踊り、繊細なギターの音色、本場フラメンコショーが楽しめる。

著名人も訪れるこのタブラオ、さすがに主役級の踊り手の迫力たるや圧倒されてしまう。
とはいえ、先に登場したキャサリン・ゼタ=ジョーンズ似の踊り子に魅了されたのが本音なのだ。

アンジェリーナ / 佐野元春 1980



桜のトンネルをくぐって 京福・北野線を完乗!

2020-05-02 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

嵐電北野線は、鳴滝駅から宇多野駅間の区間で「桜のトンネル」という桜並木をくぐる。
御室川を挟んで約200mに80本のソメイヨシノが、春の陽にキラキラと煌めいて、はんなり美しい。

四条大宮から乗った嵐山行きを帷子の辻で降りると、3番線で只1両の北野白梅町行き電車が乗換え客を待つ。
互いにグリーンとクリームが基調の電車を走らせる江ノ電と嵐電は姉妹提携をしている。
でっ「江ノ電号」のヘッドマークを付けた電車が、広隆寺、仁和寺、妙心寺、龍安寺など観光地を結んで走る。

始発から4分後クライマックスがやってくる。
鳴滝駅を出発した電車が勾配にモーターの唸りを上げると、車窓という車窓から桜色が溢れてくる。
「桜のトンネル」は北野線開業時に植樹されたと云うから、樹齢100年になろうとしている。

勾配を上り切った電車が、キーっと音を立てて御室仁和寺駅に停車する。
木造仏閣型?寅さんが降り立ちそうな渋い駅舎を出ると、駅前から仁王門が見える。

ソメイヨシノだろうか、中門から金堂にむかう石畳の参道を満開の桜が彩る。
仁和4年(888年)に創建された真言宗御室派の総本山、門跡寺院であった仁和寺は「旧御室御所」と称される。

東を見上げると五重塔、黒灰色の塔を背景に、桜と御室ツツジのコラボレーションが美しい。

薄く紅紫がかかった花弁は大沢桜?鐘楼の「朱」に挑む艶やかさだ。

「わたしゃお多福 御室の桜 鼻が低ても 人が好く」
京都で一番遅咲きの桜として江戸時代から庶民に親しまれている「御室桜」はちらほらと咲きはじめ。

桜の仁和寺を巡ったら、再びグリーンとクリームの電車に乗って東へむかう。

電車が西大路通りにぶつかると終点の北野白梅町、確か駅舎が建っていたはずだけど今はただの停留所だ。

 北野白梅町のランドマークは天満宮だけど、今日は平安遷都以来この地に鎮座する平野神社を訪ねる。
魁、胡蝶、一葉、寝覚、御衣黄、衣笠が彩りを競い、鳥居や灯篭の「朱」とハーモニーを奏でて美しい。
一度は見たかった満開の「嵐電桜のトンネル」を訪ね、洛西で桜を堪能した北野線の小さな旅なのです。

京福電気鉄道・北野線 帷子の辻~北野白梅町 3.8km 完乗

なのにあなたは京都へゆくの / 渚ゆう子