旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

ボクも町中華で飲ろう 華山@浦和

2024-05-17 | 日記・エッセイ・コラム

狭い路地裏の、さらに奥まったマンションの1階にその町中華はあった。
自転車置き場の入り口に、移動式の黄色い看板がなければ、Googleマップ を覗いても到達は難しい。

多くのお客さんが4種類設定される「今日の定食」を注文する中、ボクらはギョービーから始める。
ジューシーでモチモチ、でもいい感じにきつね色に焼き上がった “ぎょうざ” が評判に違わず美味しい。
ビールグラスが冷えていれば申し分ないのだけれど、そこはある意味町中華クオリティ。

秀逸なのは小皿メニュー、280〜400円の設定なのだけれど、小皿いっぱいに美味しいが溢れる。
“くらげサラダ” に “焼き豚” それに “麻婆豆腐” が並んで、これは絶品アテの3兄弟。
2本目の一番搾りが空いて、小上がりの卓には “レモンサワー” が登場。調子が出てきたぞぅ。

パラッパラの “チャーハン” を取り分けた頃、熱々の餡かけラーメンがやってきた。
品書きに “華山麺” と、店の名前を冠している位だからここの看板メニュー、確かに美味い。
アッサリした味付け、たっぷり野菜の餡に細麺を絡めて音を立てて啜る。絶品ですよ。

小上がりに上がってから小一時間、満腹を抱えて路地に出る。ちょうど昼の暖簾を下ろす頃だ。
もう午後は何もできないなぁ。でもこんな休日も良いかも知れない。
次は純粋にランチに、そう “華山麺” を食べに来よう。ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Toremoro / 柏原芳恵 1984


人生のそばから 長沢茶屋@妙高市

2024-05-14 | 旅のアクセント

群馬県長野原町を起点に、R292は志賀草津道路として日本国道最高地点(標高2,172 m)を通過する。
そのまま辿ると新潟県妙高市に至るわけだが、新潟長野県境は富倉峠を越える。

雪深いこの辺りは小麦が採れないから、そばのつなぎにオヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉っぱの繊維を使う。
コシが強くみずみずしい食感の “富倉そば” は、幻のそばなんて言われたりする。

新潟方面に所用があったGWの終盤、軽井沢ICを降りて新緑の上信越高原に車を走らせた。
この富倉峠を越えてまもなく「山菜そばまつり」の赤い幟旗を目にする。っと、慌てて車を減速するのだ。

件の「長沢茶屋」の前では、運動会に登場するようなテントを張っている。
地元の親父さんたちが採りたての山菜を販売している。おっと、“たけのこ汁” を振舞っている。
ボクたちは、蕎麦のチケットと “笹寿司” を求めて店内に入る。親父さんがトレーでたけのこ汁を運んでくれた。

笹の葉に酢飯をよそり山菜、椎茸、胡桃などの山の幸や、大根の味噌をのせた笹寿司は上杉謙信の野戦食。
子どもにころは、確か妙高高原の駅弁として売られていた。海水浴の思い出と重ねてボクには懐かしい。

嬉しいのはたけのこ汁、姫竹(ねまがりたけ)が入っている。
姫竹の水煮、玉ねぎ、じゃがいも、溶き卵、味の決め手はサバの水煮、これっ北信濃のソールフードだ。

懐かしい味を堪能するうちに、せいろが山菜の天ぷらを従えて登場する。
コシが強くて、喉越し、香りの高さともに申し分ない “富倉そば” が美味しい 。

取り立てて予定のなかった今年のGWだけど、思いがけず美味しいロングドライブが楽しい。

 

*長沢茶屋さんは新潟県側のお店なので、本来「長沢そば」と書かないといけないかも知れませんね。
関係者の皆さん、ひろい心でお許しください。

<40年前に街で流れたJ-POP>
青春のいじわる / 菊池桃子 1984


玉川上水と武蔵野うどんと多滿自慢と 西武拝島線を完乗!

2024-05-12 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

副都心の高層ビル群をバックに、急行拝島ゆきが湘南新宿ラインとデットヒートで高田馬場に滑り込む。
遠出する予定のない連休、天気も良いから、東京の裏庭で乗って呑んでみる。

拝島線の起点は小平駅、駅前広場は花に溢れて落ち着いた郊外の駅だ。
起点から3駅連続で他線と交差をしたり、地図を見ると南へ西へとそれこそ直角に進行方向を変えている。
これは西武鉄道が、合併したいくつかの私鉄線、軍や工場への引込線を繋ぎ合わせた歴史による。

列車は新宿から拝島まで直通するもののほか、小平から玉川上水をシャトルするものがある。
ちょうど引き上げ線から折り返しの玉川上水ゆきが入線してきた。
イエローの2000系は1977年からの古参車両、呑み人がこの沿線に住んでいた頃は、絶賛勢力伸長中だった。

乗車前には小平駅周辺を散策して「小平ふるさと村」を訪ねてみた。
旧小平小川郵便局舎は明治41年の和風建築、昭和58年まで現役であったというのは、ちょっと驚きだ。

旧神山家住宅主屋ではギターマンドリンクラブが演奏会をしていた。
奏でる加山雄三の「旅人よ」が旅情をかきたてる。えっ、そんなに遠くまで来ていたっけ?

裏手に廻ると杉皮葺の水舎小屋があった。
旧小川村が開かれると玉川上水から分水され、33か所に設けられた水車は脱穀や製粉に用いられたという。
なんだかまだ東京が遠かった時代の、武蔵野の風景が目に浮かぶ「小平ふるさと村」なのだ。

近くに評判のいい手打うどんの店を見つけた。まずはここでビールを呷る。きょうは夏日だ。
そして “たまなす” 登場、玉葱と茄子ってことだ。
思い描いていた武蔵野うどんよりもかなり上品な一杯は、玉葱の甘味と相まってなかなか美味しい。

ところで2000系の6両編成は、玉川上水駅の折り返し用2・3番ホームに終着する。
萩山で多摩湖線、小川で国分寺線と交差した後、再び西に向きを変えてわずか4駅の運行だ。

駅の改札を抜けてみる。南口には木漏れ日を映してキラキラと玉川上水が流れていく。
この先終点の拝島まで、鉄路はこの煌めきに寄り添うように延びている。

モーターの唸りを聞いて、視線を水面から頭上に転じると、ちょうど多摩モノレールの電車がやってきた。
2つの路線が交差して、閑静なこの駅も朝夕は乗降客と乗換客で混雑するのだと思う。

1番線には堂々10連の20000系が軽快に進入してきた。この急行拝島ゆきでラストスパートになる。
玉川上水からは3駅、右に大きなカーブを描いて、横田基地へ向かうJRの引込線と交差すると終点の拝島だ。

4路線が乗り入れ6方面に鉄路が伸びる拝島駅は、なかなか規模の大きなジャンクションだ。
橋上駅の南口側からは、奥多摩から丹沢までの山々を眺める。目を凝らすろ富士が頭を覗かせている。

大きなケヤキを囲むように6つの登録有形文化財を有する酒蔵、石川酒造までは南口から徒歩15分。
蔵自らが「酒飲みのテーマパーク」と称する様に、季節の日本酒やビールを味わうために多くの人が訪れる。
地ビールとイタリアンの「福生のビール小屋」と日本料理の「食道いしかわ」があって、ボクは後者を択ぶ。

もちろんメニューの酒はすべて多満自慢、まずは冷たい “純米生原酒あらばしり” からいただく。
アテは “豚の角煮”、とろとろの豚肉にナスを添えて、白髪ネギを絡めてちょい辛子、美味しいね。

遅れて登場した “だし巻き玉子” に、二杯目の “熟成純米生原酒” はまろやかな味わいがいい。

何度か訪ねている石川酒造だけど、ずいぶん客層に外国人観光客が多くなった。
InstagramにX、SNSで調べては訪ね、訪ねては発信して、訪れる人は増えていく。
正直、彼らに教わる映えるスポットや美味しい店は多いのだと思う。そんな事を考える拝島線の旅だ。

西武鉄道 拝島線 小平〜拝島 14.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
17歳の地図 / 尾崎豊 1984


水曜日は家呑み派 「常山 飛 直汲み生酒」

2024-05-08 | 日記・エッセイ・コラム

いい “たけのこ” が手に入ったから、今宵は家呑みってことで。
料理は “たけのこ” に徹するから、その他は手を抜いてデパ地下で見繕ってきた。

“たけのこ” をじっくり味わえる、春を感じる一品は “若竹煮”、細切りのお揚げはボクのリクエスト。
お揚げでちょっぴり甘味を増した一品は、日本酒にあうと思うのだ。

先日の北陸新幹線の旅で立ち寄ったのは常山酒造、“純米吟醸辛口 飛 しぼりたて直汲生” を開ける。
淡麗旨口とでもいうのかな、キレの良い淡麗なのだけど、米の旨みもじゅうぶんに感じる。

お刺身を白い陶器に盛りつけたら、テーブルが一挙に華やぐね。
それから “揚げイワシの甘辛” は青唐辛子を添えて、こんな肴で淡麗旨口を重ねる。
いただいた「常山」と描かれたグラスに、ひとつ買い足してペアにした。掌に収まってかわいらしい。

土鍋が湯気を上げて “たけのこご飯” が炊き上がったら、しゃもじで混ぜて木の芽をちらす。
品のいい茶碗に盛り付けて、なめこ汁と並べたら、なんだか料亭気分と自賛。
訪ねた蔵で求めた旨い酒を、こうして家呑みで開けると、呑み鉄旅は二度美味しいのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ひとり / 中島みゆき 1984


芝桜と秩父神社と天覧山と 西武池袋線・西武秩父線を完乗!

2024-05-04 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

急行の赤い電光表示も誇らしげに、飯能ゆきの10両編成が3番ホームに入ってきた。
この6000系電車は1992年のデビューと云うから、すっかりベテランの貫禄を身につけている。
西武鉄道線を完乗してから9年が経った。このあたりで再び沿線を呑み歩きたい。

最初に旅する池袋線の起点は西武池袋駅、池袋のランドマークとも言える西武池袋本店の1階にある。
このビルは昨年9月に米投資ファンドが買収、売場・ブランドは次々に取り扱い終了となり改装に入っている。
よもやこの青い看板が落ちるようなことにだけはなって欲しくない。。

所沢を出てから、池袋線は緩やかな勾配を直線的に駆け上がってきたのだけれど、
狭山市に差し掛かる頃には、耐え切れず、大きなカーブと急な勾配で狭山丘陵を登る。
途中下車した入間市駅も、そんなカーブと勾配の中にあった。

航空自衛隊の町入間には、旧陸軍航空士官学校跡地に「修武台記念館」という歴史資料館がある。
チャンスがあれば見学会に応募してみたい。今回は敷地外から F-86F-40 をパチリ。

隣接する「彩の森入間公園」では噴水が飛沫をあげ、新緑が木陰をつくっている。
沿線に住んでいたなら、バケットとチーズとワイン、それに文庫本を持って昼寝に出かけたい。

丘陵を登ってきたのは40000系電車、転換するとクロスシートになって座席指定列車として運用される。
FREE Wi-Fi や多目的トイレを設備し、乗って快適な新型車両だ。

入間市駅から3つ目の飯能駅はスイッチバック構造になっている。
ここから向きを変えて吾野方面へは本格的な山登りになるが、特急を除くほとんどの列車は飯能止まりだ。

飯能駅を背に飯能大橋まで来たら、薫風に吹かれて入間川沿いを下流へ向かって歩いてみる。
加治橋の袂に “天覧山” の五十嵐酒造を訪ねる。純米酒を中心に何本か求めたので何れご紹介したい。

旅の続き、西武秩父ゆきの4000系は、ライオンズカラーの2扉セミクロスシート車両。
いわゆる旧国鉄の急行車両のようなタイプ、たっぷりの旅情に車中酒を楽しむにはこれでなくちゃ。
構内コンビニでワンカップを買って準備万端、でも発車間際に駆け込んできたカップルと相席に。残念。

ところがだ、この華人のカップルは呑み人の前で、不埒なほどイチャつき始めるのだ。
しからば止むなく或いは対抗上?ボクはカポッと “秩父錦 金印” を開けるのだ。
コクとキレのある淡麗辛口にアテの “いぶりがっこチーズ” がよく相応う。これって絶品です。

終点ひとつ手前の横瀬駅で降りると、芝桜の丘(羊山公園)は近い。
秩父のシンボル武甲山を背景に、見ごろを迎えて、色とりどりの花じゅうたんが美しい。

芝桜は北アメリカ原産の多年草で別名をハナツメクサという。
数ある種類の中でも、この “スカーレットフレーム” と “多摩の流れ” が好きかなぁ。

横瀬駅を発った4000系が大きなS字を描いて荒川の河岸段丘を下りる。っとそこは秩父線の終点 西武秩父だ。
秩父線は池袋線の事実上の延伸路線なのだけれど、戦前に開通した吾野までの池袋線と区別している。
秩父線(吾野〜西武秩父)が開通した1966年、同時に特急レッドアローが誕生している。

西武秩父駅はフードコート「祭の宴」や日帰り温泉「祭の湯」を併設した駅舎を持つ。
レジャーランドのような駅は、休日ということもあって、家族連れ、グループ、カップルで賑わっていた。

これだけで腹が膨れるのは分かっていながら、どうしても食べたいのが秩父のB級グルメ “みそポテト” だ。
きょうは秩父そばの人気店「立花」を訪ねて、秩父地粉と武甲山の伏流水で打つ二八蕎麦をいただく。
少し豪華に過ぎる天ぷらを持て余しつつも、喉越し良く、二八を一枚、ズズっと啜って美味しい。

世に名高い例大祭 秩父夜祭(ユネスコ無形文化遺産)で知られる秩父の総鎮守 秩父神社を訪ねる。
お元気三猿、子宝子育ての虎 と つなぎの龍(いずれも左甚五郎作)と極彩色の彫刻が施された社殿は、
徳川家康の命により建てられたものというから、その時代の、例えば東照宮の雰囲気に似ていなくもない。

さて、御本殿に奉納されていた菰樽の一つ “武甲政宗” の蔵が、その重厚な佇を残している。
お約束通りに利き酒を楽しんだら、お気に入りの純米酒を求めてご満悦なのだ。

さて今宵の一杯は飯能駅まで戻って、いや宵というより寧ろ昼呑みの時間ではある。
駅近の隠れ家的居酒屋「なかよし」は、午後2時に縄のれんが掛かる稀有な店だ。

件の縄のれんを潜る。L字に切った年季の入った白木のカウンターが7席、居酒屋というより小料理屋って感じ。
お通しの大根とごぼう天の “おでん” が絶品、上品な出汁がいい味を出している。
唯一がっかりしたのは、地酒の “天覧山” を切らしてしまったんだって、そりゃないよ。

それでは東北の酒で揃えようと、一杯めは秋田県は八峰町、山本酒造店の “白瀑 ど辛” を択ぶ。
“お刺身盛” をつまみながら、日本酒度+15の超辛口が飲みごたえ十分なのだ。

後客が入ってくる。座敷に入った予約客はゴルフコンペの帰り。
小上がりに上がり込んだ5人はリュックを背負ってきた。
なるほど合点が入った。午後2時から暖簾をかけるのは、こういう来客ニーズがあるからだね。

次なるアテは “若鶏の甘唐揚げ”、いいテリをしてるし、これは美味しい。
福島の “会津中将 純米” は、濃醇だがしかしすっきりとした味わい、肉料理にも上手に相手をしてくれる。

さてと、カウンターに常連の二人連れが入るのを潮に店を出る。八十八夜を過ぎて外は明るい。
ゴルフに登山に呑み鉄に、大人の遊びに優しい町に感謝しながら、西武池袋線、西武秩父線の旅を終えよう。

西武鉄道 池袋線 池袋〜吾野 57.8km 完乗
西武鉄道 秩父線 吾野〜西武秩父 19.0km 完乗

君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。/ 中原めいこ 1984