旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

ダイヤモンドクロスを越えて 名鉄・築港線を完乗!

2020-02-29 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

冬の朝、久しぶりの抜けるような青空に、シルバーメタリックの車両が朝陽に輝く。
ここは東名古屋港駅、1.5kmと云う短い旅路の果ての終着駅なのだ。

昨晩は金山駅近くのホテルに投宿した。
何時もなら青春18きっぷで東京から日帰り往復の強行軍をするのだけど、
今回の築港線は朝夕の通勤時間帯しか運行しないからね。

築港線は常滑線の大江駅から分岐して、ひと駅、1.5キロを走る。
東名古屋港駅は無人駅なので、大江駅の5番線手前に改札内改札を設置している。

07:32発の東名古屋港行きが入って来た。午前中5往復するうちの2本目になる。
平日は通勤客を満載だろうに、今日は4両編成にたった3人を乗せて、ガクンと動き出す。

築港線には鉄道線同士としては日本で唯一のダイヤモンドクロスがある。
ダイヤモンドクロスとは、鉄道が直交または直角に近いX字型に交差している箇所のこと。
徐行する築港線の4両編成が交差するのは名古屋臨海鉄道になる。

3分の短い乗車で終点の東名古屋港駅に到着、故に缶ビールの1本も飲めない。
周辺に飲み屋もないし、今回ばかりは「呑み鉄」は成立しない。残念ながら。

東名古屋港駅のホームの先、築港線は往復6車線の県道を横切って更に西へ延びている。
左右に三菱重工系の工場を見ながら、もう少し鉄路に沿って歩いてみる。
っと、心細い引込線は約700mを進み、埠頭の厚い鉄扉の向こうに吸い込まれていくのだ。

名古屋鉄道・築港線 大江~東名古屋港 1.5km 完乗

唇よ、熱く君を語れ / 渡辺真知子 1980


高砂のホッピー酒場にて「高砂家」

2020-02-27 | 津々浦々酒場探訪

 京成高砂駅北口から徒歩3分、町の雰囲気に溶け込んだ大衆酒場「高砂家」がある。
ガラガラと引戸を開ける。カウンター席だけの正真正銘の京成沿線らしい大衆酒場だ。
少々様子が違うのは「お帰りなさい」の声。カウンターの中は若い女の子なのだ。
"じゃがいもバター塩辛"、彼女は「温かいうちにどうぞ」と微笑むのだが。ビミョーだ。
日本酒に合うのか、ビールに合うのか、そもそも塩辛は冷たいほうが良い気がする。
結局ポッピーを二杯、愉しく吞ませていただいた。地元にあったら通うんだけどなぁ。
今宵、高砂のガールズ居酒屋で一杯なのだ。

2017/02

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赤羽のポッピー酒場にて「若大将」

2020-02-25 | 津々浦々酒場探訪

 日が傾いて、飲んべえの街・赤羽、ここは昼から飲んでも違和感ない街なのだ。
でも最近は女子にも急速に支持が広がっているそうだ。深夜ドラマの影響らしい。
たしかに女性や若者を惹きつける洒落たワインバルなんかも目立つようになった。
 OK横丁は「居酒屋 若大将」 の紅い看板と提灯に誘われてみる。
先客は女子会を謳ったおば様グループと、早番上がりの都営バスの運転手さん2人。
ボクはと云えば、"ホッピー黒" と "マグロぶつ" で独り呑みを始めるのだ。

2018/02

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お岩木山と津軽の風と温泉と 弘南鉄道・大鰐線を完乗!

2020-02-22 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 冬晴れにステンレスの車両が煌めく。これきっと東急で走っていた車両だね。
今日は東日本で唯一吞み残している弘南鉄道・大鰐線で津軽の奥座敷をめざす。

弘前の中心街・土手町、シャッターが降りた店もちらほらあるけど趣ある旧い商店街。
大鰐温泉までガタゴト走る電車の始発・中央弘前駅はこの町にある。

年季がはいった駅舎、木造のベンチにダルマストーブ、哀愁漂う中央弘前駅。
発車は毎時30分って決まっているから、時間になると三々五々乗客が集まってくる。

良く見ると釣り輪がりんごの形になっている。葉っぱに見立てた緑のリボンがついてね。

千年駅を過ぎると電車は岩木山を背負って走る。雪を抱いた姿が神々しいのだ。

りんご畑をゴトゴトと、ステンレスの2両編成は35分をかけて大鰐に到着する。
跨線橋で繋がっているのにJRは大鰐温泉駅、弘南鉄道は大鰐駅。これいかに。

駅前広場にはスキーを抱えたピンクのワニ、大鰐温泉スキー場が近いからね。
これまたピンクの日除けの「駅前おもてなし足湯」は浸かる人もいない。

白鳥遊ぶ平川を月見橋で渡ると静かな温泉街に入っていく。
情緒たっぷりの共同浴場「若松会館」に、お昼を済ませたお婆ちゃんが集まり始める。

吞み人はと云えば、時間にたっぷりと余裕があるので、鰐comeの「鰐の湯」へ。
共同浴場のような情緒はないけれど、山を眺めながら大きな湯舟に浸かって至福。

さて、火照ったからだはキリンラガーで冷ます。つまみは "野菜炒め" にソースをかけて。
駅前の「山崎食堂」は "大鰐温泉もやしラーメン" の元祖として有名なのだ。
優しい醤油味、堅めのチャーシュー、昔ながらのラーメンに油揚げと炒めたもやし。
スープが絡む極細縮れ麺ともやしを啜って、ツルツル、シャキシャキと美味しい。

さて中央弘前行きは毎時04分発、時間に合わせてホームに戻る。
往路は気付かなかったけど、ステンレスの2両編成は "萌え" ているんだね。
雪の岩木山を眺め、湯に浸かり、旨ラーメンを啜って、冬の津軽の旅を終えるのだ。

弘南鉄道・大鰐線 中央弘前~大鰐 13.9km 完乗

帰ってこいよ / 松村和子 1980


一酒一肴 中州・酒一番「田中六五」

2020-02-20 | 津々浦々酒場探訪

 

 中州、福博であい橋近く、煌びやかなビル群を一本入ると赤提灯がさがっている。
大衆酒場「酒一番」は、中州にあって50年を超える老舗居酒屋だ。
博多らしく "水炊き" をいただく。鶏、豆腐、白菜が煮えてきた。春菊が香を添える。
"田中六五" は白糸酒蔵が地元糸島産の山田錦で醸した純米酒。口当たりが優しい酒だ。 
今宵は少々過ぎたか、那珂川ばたで美味しい夜は更ける。ふりむかないで、博多の人♪。

2018/03

ふりむかないで / ハニー・ナイツ

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一酒一肴 浦和・ビートル「冩楽」

2020-02-18 | 津々浦々酒場探訪

 白提灯を提げ、潜る暖簾も白。久しぶりの大衆居酒屋「Beetl」のカウンターに座る。
大衆酒場の基本メニュー "ハムカツ" はかなりの肉厚で食べ応えがある。なかなか美味い。
この店は北から南までかなりの銘柄の本醸造を取り揃え、1杯330円で提供している。
ほかに裏メニュー的に何種類かの純米吟醸を用意している。でっ会津の "冩楽" を。
寒い時期限定で出荷する滓をからめた薄濁り、果実香のフレッシュな生酒を愉しむのだ。  


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男鹿なまはげラインをキハ40が往く 男鹿線を完乗!

2020-02-15 | 呑み鉄放浪記

 昭和50年代に製造されたキハ40系気動車はすでに齢40年になる。
今日は旅情たっぷりの旧国鉄型気動車に乗って男鹿線で飲んでみる。
ところがだ、せっかくのボックスシートなのにテーブルが撤去されている。
秋田駅ビルで求めた "雪の茅舎 山廃"  はリュックの中、帰りの新幹線までお預けだ。

男鹿線の起点は追分駅、秋田と男鹿半島の船川港を結ぶために建設された。
「男鹿なまはげライン」を愛称するとおり、男鹿は伝統習俗「なまはげ」で有名だ。

追分を発って20分、キハは馬場目川(船越水道)を渡る。ここは八郎潟の海への出口だ。

途中駅で蓄電池電車ACCUMと交換、車両扉付近には「なまはげ」のイラストが描かれる。
旅情のキハ40・48形気動車は遠からずACCUMに置き換えられて姿を消す運命だ。

車窓に回転展望台を頂く寒風山が見えてきた。が、まるで雪国の風景ではない。

 日本海につかず離れず40分、2両編成のキハ40系気動車は男鹿駅に到着。
ちょうど座席が埋まるほどだった乗客を終着駅のホームに吐き出す。
半分は足早に駅舎へ、半分はセルフィーに興じる。その多くは中華圏からの観光客だ。

 船川港の向こうに秋田市街が見える。その背景の雄姿は鳥海山だろうか。
道の駅「なまはげの里オガーレ」にて、メニューに地酒がないのでプレミアムモルツ。
運ばれて来た "男鹿産天然甘海老と紅ズワイガニの2色丼"、ちょっと贅沢な丼でしょう。
プチプチと、ぶりっこ(ハタハタの卵)の食感とともに冬の日本海の幸を堪能して満足。 

 なまはげに見送られて、1時間後のキハで秋田へと折り返す。雪がちらついてきた。
さてとっ、帰りの新幹線で "はたはた磯焼" をアテに "雪の茅舎 山廃" を開けようか。

男鹿線 追分~男鹿 26.4km 完乗

ランナウェイ / シャネルズ 1980


一酒一肴 広島・お八「賀茂泉 立春朝搾り」

2020-02-13 | 津々浦々酒場探訪

 

 今宵の八丁堀、狙った2軒の立ち飲みが入り込む余地がないほど盛り上がっていた。
しからば、電停近くに先月OPENしたばかりと云う「大衆酒場お八」をみつける。
酒は "賀茂泉 立春朝搾り"、節分の豆まきで邪気を払った未明に搾り上がる生原酒。
時節柄であり、縁起ものであり、一杯目は迷わずに択んだ。
アテの "ガンス" は魚のすり身にたまねぎを入れ、パン粉で揚げた広島のご当地もの。
ちょっぴり醤油を垂らしたマヨネーズをつけて美味しい。
思いがけず、真新しいカウンターで広島の地酒を堪能した八丁堀の宵なのだ。

2019/02

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一酒一肴 広島・ナイス☆ユカリ「亀齢」

2020-02-11 | 津々浦々酒場探訪

 

 ここは広島、横川本通りには気に入った立ち飲みが在る。
アテは中華風の創作料理が美味しいこの店、2度目の訪問は横川線に乗った雨の夜。
"大根きのこあんかけナムル風" は、さっぱり大根にピリ辛の餡が美味しい。
今宵いただいた地酒は西条の "亀齢 寒仕込"、すっきりとキレのよい辛口の純米酒。
この辛口、味の濃い中華風のアテにも相性が良い、新しい発見の広島の夜。

2019/02

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にいがたは霧に更けゆく 上越新幹線を完乗!

2020-02-08 | 呑み鉄放浪記

 上越新幹線にもE7系が導入されましたね。
北陸新幹線との違いは、サイドに「朱鷺色」のラインが鮮やかにひかれているところ。
時間帯がいいのか、この車両を狙ってか、とき315号の自由席は150%ほどの乗車率。

上越新幹線は東北新幹線から分岐する大宮駅が起点。
平均乗車は258,000人/日はJR東日本では第8位、押しも押されぬターミナル駅だ。
何度も乗車している路線ではあるけれど、呑み鉄のルールで潰しておこう。

国境の長いトンネルを抜けたけど、そこは雪國と云うには程遠い風景。
折からの雪不足で地肌をむき出しにしたゲレンデが哀しい。駅前広場はカラカラだ。
温泉街に面した西口の足湯が賑わっている。ほとんどが中華圏からの観光客のようだ。

 湯元共同浴場「山の湯」までは徒歩20分、小説『雪国』の川端康成も浸かったと云う。
外湯めぐりのなかで唯一の硫黄泉、そして源泉かけ流し、ゆるりと浸かって至福。
先客の地元の親父さんと暫し談笑、彼らにとっても自慢の湯なのだ。

 "風味爽快ニシテ" を呷ってほてりを鎮める。サッポロの新潟限定ビールだ。
駅前の「味らく茶や」は郷土料理 "けんちん汁" が有名、具だくさんの一杯が美味しい。 

新幹線の分割併合は、子どもは勿論、女子も訪日外国人も興味津々、皆カメラ片手だ。
堂々の2階建て16両編成は、前8両が新潟行き、後ろ8両がガーラ湯沢行きなのだ。

都心に家を持つのが厳しかったバブルの頃、新幹線通勤のブームが起こりましたね。
越後湯沢や熱海に温泉付きマンションが建ったり、フレックスって定期券が発売されて。
そうした通勤の大量輸送を担ったのがE4系2階建て車両、定員は1,600人を超える。

っで、そのE4系に乗車してガーラ湯沢に寄り道。支線も漏れなく潰さないと。

 まるでホテルのロビーのよう、15号車は荒神静香氏の前衛的な作品。
とき455号は注目のアーティストの作品が展示された「現美新幹線」で新潟平野を抜ける。

16号車では新潟の美しい里山を舞台にした映像がまるで絵画のように映し出される。
これはaki inomata氏の作品だ。っと2両分観賞しただけで、あとはソファーで船を漕ぐ。

スタイリッシュでシャープな車両は新潟駅14番ホームに終着。あっという間の50分だ。

賑わう駅前・万代シティーに背を向けて、今日も霧がふる「万代橋」を渡り
昭和初期には祇園、新橋と並んで日本三大花街に数えられた古町に向かう。

90年代後半から賑わいは徐々に駅前・万代に比重を移してしまったけれど
いつか寄り添った「古町通り」界隈、石畳の路地はやはり情緒があって良い。
橙色のちょうちん、格子戸を開け、白い暖簾をくぐってカウンターに収まる。
昭和初期の置屋を改装したレトロモダンな「すゞ家」は新潟在勤時代にお世話になった。

穏やかな吟醸香、優しい口当たりの "麒麟山 冬酒" は白身魚の刺身に合うかな。
お造りは、ブリ、平目、ヤリイカが器に盛られた。冬の日本海の幸が美味しい。

二杯目は "真野鶴 辛口純米酒" 、爽やかな淡麗辛口が新潟の酒らしい。
里芋でとろみをつけ、しょうゆ味の出汁で煮た "のっぺい" は新潟の家庭料理。
小料理屋や割烹、居酒屋で具材や味付けは様々、食べ比べるとなかなか奥が深い。

キャベツの甘みと肉の旨味がぎっしり詰まって、ここの "きゃべつメンチ" は絶品。
そして芳醇で素朴な "鶴の友 純米酒" は揚げ物にも合う、燗してよし冷やでよしの旨酒。 
懐かしい店についつい過ぎただろうか、すっかり「ほろ酔い」の出来上がり。
カウンターの姐さんが覚えていてくれたのには、ほっこり嬉しくなってしまった。
さてと、青い灯がゆれる「新潟駅」から、最終の1本前で東京へ帰ろう。

上越新幹線 大宮~新潟 303.6km
  越後湯沢~ガーラ湯沢 1.8km 完乗

新潟ブルース  / 美川憲一


旅するどんぶり 宮島「あなごめし」

2020-02-06 | 旅のアクセント

 厳島神社の出口を抜け、山に向かって進むと「あなごめし」の看板が見えてくる。
大きな杓子に「ふじたや」の屋号、実はミシュランの一つ星を獲得している名店なのだ。
"酢牡蠣" を肴に "賀茂鶴 大吟醸" を飲みながら "あなごめし" の出来上がりを待つ。
なんとも贅沢な時間だ。ほどなく香ばしく焼かれた地アナゴたっぷりの丼が運ばれる。
ふんわりツヤツヤのアナゴたちが甘い醤油ダレで美味しい。もう言うことなしの宮島の旅。

2019/02

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人生のそばから 大内宿「三澤屋」

2020-02-04 | 旅のアクセント

 大内宿名物の "高遠そば" を求めて三澤屋さんを訪ねる。
茅葺屋根の板戸を開けると囲炉裏で岩魚を焼くかおりが漂ってくるね。
花春酒造の特別純米酒 "大内宿" と大根と麩の煮物を楽しんでそばを待つ贅沢。
"高遠そば" とは、会津の殿さまが信州高遠藩で育ちであったことに因むそうだ。
大根おろしそばを長ネギを箸がわりに用い、薬味をかねていただくのが大内宿流だ。

2017/02

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秘境・マタギのふるさとを往く 秋田内陸縦貫線を完乗!

2020-02-01 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 古来より山深く分け入って熊などの狩猟を生業にしていたマタギ。
東北地方から甲信越、北関東の山岳地帯で古くからの方法で集団で狩猟していたと云う。
特に「マタギの里」として有名な秋田県阿仁地方をたった1両のディーゼルカーで往く。

 昨年1月、冬型の気圧配置が強まる週末、みちのくの小京都・角館にやってきた。
秋田内陸縦貫鉄道を呑み潰して、雪の中を鷹巣まで抜けようと云う訳だ。 

国鉄から特定地方交通線を引き継いだときは南北分断されたままの暫定開業。
その後両線を結んで94キロ、意地悪な言い方をすると "作ってしまった" 赤字線だ。
ここ2代の社長は旅行会社からの出向、外国人観光客の利用を増やす戦略も採っている。

 

 ディーゼルカーがガクンと動きは始めたら "秀よし 純米生酒" のキャップを切る。
淡麗にして味にふくらみがある酒、肴は前日津軽鉄道のストーブで炙ったスルメだ。 

窓の結露を拭うと単線と絡むように桧内川が流れるのが見える。 

3つ目の八津駅で10分程の長い停車、待ち合わせの急行列車が雪で遅れていた様だ。 

松葉から比立内の間は1989年に北線と南線を繋いだ比較的新しい区間。
橋梁と隧道で繋いだ直線的な軌道を、思いがけない快速でディーゼルカーは駆けて行く。
圧巻は分水嶺を越える全長5,697mの十二段トンネル、カーブが無くひたすら直線。
勾配の頂点で数秒間入口と出口が同時に見える。この瞬間にする願い事は叶うと云う。 

 単行ディーゼルカーは1時間30分をかけて沿線の中心駅・阿仁合に辿りつく。
この普通列車を見送って、後続の急行列車までの50分、ここで腹ごしらえをする。 

 

 金、銀、銅が採掘された阿仁鉱山が1978年に閉山して以来ひっそりした町。
霙降る雪道を10分歩く。昔ながらの「高田食堂」は創業45年だと云う。
豚バラ、ブロッコリー、カボチャ、煮タマゴが入った "カレーラーメン" が美味しい。 

 身体を温めたら足早に阿仁合駅に戻る。とっ駅員さんがバタバタと様子がおかしい。

運転見合わせ。遅れてきた急行の乗務員氏もアテンダント嬢も、お手上げって表情だ。
代行バスを見送って角館へ折り返す。鷹巣へ抜けても奥羽本線も止まっているからね。 

 1年後、阿仁合駅に戻って来た。完乗を断念した昨年に比べて積雪量が少ない。
冷たい雨が降るホームから秋田内陸線の旅を再開、今度こそ鷹巣まで抜けよう。

旅の後半は30キロ、1時間を阿仁川に沿って鷹巣盆地へと下る。
米どころの田圃はほとんど土を見せている。夏の水不足を心配させる今冬の小雪だ。
鷹巣盆地を潤す米代川を渡ると、左手から奥羽本線が近づいて程なく鷹巣に到着する。

ディーゼルカーが車止めに行く手を塞がれる。
わずかな乗客を吐きだした頃、1番線には秋田行きの普通列車が入って来た。
県都秋田方面へは連絡の便を図っているようだ。

駅から南へ延びるシャッター街を左に折れると手打そばと比内地鶏の「いな穂」がある。
大館の「北鹿」が復刻米で醸す純米吟醸原酒 "仙台坊主" を味わいながら蕎麦を待つ。
鴨汁よりさらに濃厚なつけ汁 "比内地鶏そば" をズズっと啜る。ここまで来た価値がある。
一年越しになった秋田内陸線の旅、芳醇な地酒と旨い蕎麦に辿りついて終えるのだ。

秋田内陸縦貫鉄道 角館~鷹巣 94.2km 完乗

赤と黒 / 岩崎良美 1980