旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

今宵小さなスペインバルにて

2022-06-29 | 日記・エッセイ・コラム

 少し前のことだけれど「もうすぐ誕生日だね」と誘われて小さなスペインバルへ。
もう数えることも億劫な年齢だけど、まんざら悪い気はしないから、連れ立って出かけた夜だ。

カラフルな “タパス” を盛り合わせたら、セルベッサは “エストレーリャ・ガリシア” を択んで、
さっぱりした苦味、すっきり喉越しに、牛挽肉や野菜のみじん切りを詰めた “トマトのレジェノス” が美味しい。

“コンデス・デ・アルバレイ” はシトラスの香りが広がる辛口、“生しらすのアヒージョ” に合わせる。
いつものお気に入りのメニュー "パタタス・ブラバス" は、素揚げしたジャガイモにピリ辛ソースで美味しい。

  

“旬野菜色々オーブン焼き” で夏の到来を味覚で感じたら、赤はカタルーニャの “プレディカット” を注ぐ。
大ぶりなエビをのせた “パエリア” にレモンを絞って、清涼感のあるアロマと合わせて楽しむ。美味しい。

よくよく振り返ったら、前回、白も赤も同じワインを択んでいるね。案外冒険ができないボクの呑み方か。
それにしてもこんな店を1枚2枚とカードに持っていたら楽しいだろう。ほんと、ご馳走さまでした。

 

Xanadu / Erika Ikuta
     


サマーツアー Ohh Oh 御岳登山鉄道を完乗!

2022-06-25 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 梅雨の最中と言うのに関東の週間天気予報はずっと晴れマーク、群馬県伊勢崎市では40.2℃を記録したそうだ。

っで、呑み人はいっとき標高900mに退避して、冷たい生ビールを呷り、そばをズズッとやってきた。
都心から通勤型電車に2時間揺られたら、涼風吹く別天地があるんだから、東京は奥が深い。いや本当に。

御嶽駅で青梅線を降りると、R411のバス回転場に「ケーブル下行き」が待っている。西東京バスだね。
東京方面からの電車が到着する度に臨時便を出してくれるから、混雑を感じることはないから有難い。

「ケーブル下」とは御岳登山鉄道の滝本駅(標高407m)のこと。さっそく赤い車両「御岳号」に乗り込みます。

背の高い杉の森を切り裂いて延びる鉄路は、最大勾配25度、前面に陣取るとなかなかの迫力を感じる。

ちょうど中間地点(当たり前だけど)ですれ違う相棒は、緑を基調に彩られた「武蔵号」ですね。

距離1.1km、標高差424mをわずか6分で上り詰めて、御岳山駅(標高831m)に到着する。

関東平野を一望し、足元には蛇行する多摩川に沿った人々の生活の気配を見下ろして、絶景なのだ。
条件が良いと筑波山やスカイツリーまで見渡せるという景色を背負って、あと100メートルを登る。

御岳山(929m)には、30軒余の宿坊や商店があって、それに関わる人たちが暮らす謂わば「天空のまち」だ。
この美しい茅葺き屋根の宿坊は宮司さんのお宅なのだそうだ。歴史を感じるに十分な参道を往く。

 かなり急な参道を上り詰めて、漸く「随身門」まで辿り着く。がっこの先330段の石段が控えている。
崇神天皇7年の創建とされる武蔵御嶽神社は、天平8年(736年)に行基が東国鎮護を祈願して、金剛蔵王権現を
勧請したことにより広く知られ、中世には関東の修験の中心になったと云う。

さすがに膝が笑い出したころ、鮮やかな朱塗の幣殿・拝殿を見上げるところまでやってきた。ここで標高929m。
直下には「茅の輪」が編まれ、先客たちが唱え詞を唱えながら8の字を描いている。
五代将軍綱吉の命により改築された社は、江戸の西の護りとして東を向いている。なるほど彫物などを見ると
江戸期のものであることに納得なのだ。

ちょうど午前10時、参道の茶屋が開き始める。当然に冷えた生ビールを呷る。クゥッっと思わず声が漏れる。
爪楊枝で “蕎麦味噌” を突っつきながら待つほどに “舞茸天ぷら” が登場、抹茶塩をちょんちょんとして美味い。

それではっと、冷たい手打ちそばをいただきましょう。“とろろ” をたっぷり絡めてズズッとね。
多めに溶いた山葵が鼻にツンときた。ひと心地つくと、網戸から入ってくる風が心地よいなぁ。
さてと、小腹を満たしたら下界に降りますか。きっと30℃をかなり超えているんだろうな。

御岳登山鉄道 滝本〜御岳山 1.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
サマーツアー / RCサクセション 1982


KAFUKA TOKYO × 真澄

2022-06-22 | 日記・エッセイ・コラム

 麻布十番大通りから一本南に入ったら、先ほどまでの人混みが嘘のような閑静な住宅街に変わる。
さらに大黒坂へと抜ける細道へ折れると、オーストリア大使館の木立が影をつくる辺りにレストランがある。
何にせよ呑み人には似つかわないエリアに足を踏み入れたのは、蔵元とのコラボレーションを覗くためだ。
ウェルカムドリンクは “ゆず酒” をロックで、今宵、洗練された和食と諏訪の酒・真澄を愉しむ。

 会が始まると蔵元からの長いプレゼンテーション、若い社長室長は熱い。
とても関心のある内容なのだけれど、お行儀の良くない呑み人としては、いただきながら伺いたい。

ひんやりと “焼き茄子のズっぺ” をいただいてから、前菜は “蟹と帆立とあやめ雪かぶ” がボウルで供される。
山田錦と七号酵母で醸した “山花SANKA” は、華やかで優しい口当たりの純米大吟醸酒だ。

ひかる水面のような金属の皿に “稚鮎” が泳いだら、グラスには微かに発泡する “突釃TSUKIKOSHI” が注がれる。
江戸時代の製法を再現というが、その先は聞き逃した。鮎の苦味に、ほんのり甘みのフレッシュな吟醸がいい。

お椀は “とうもろこしの卵豆腐と冬瓜” をいただく。ちょっとホッとするね。

たけづつに夏酒が注がれる。その名も “すずみざけ”、ほのかな酸味がアクセントになって口当たり爽やかだ。
炙った “かつおのたたき” は、大根おろしに刻みネギとみょうがをのせ、ポン酢を垂らして美味しい。夏が来た。

山梨のマス “富士の介” が、たっぷりの胡麻味噌ソースをバーナーで炙り、ヤングコーンを従えて登場した。
先ほどから感じていた甘い香りの主は、キングサーモン×ニジマスのこのひと皿のようだ。
山廃づくりの “七號” は県産米と七号酵母(真澄の蔵から発見された)で醸したまさに信州の地酒と云える。
酸味と苦味が同居したちょっと贅沢な大吟醸が旨い。余談だけどチェスの駒のようなこのグラスが欲しい。

アルコール抑えめの純米吟醸 “白妙SHIRO”、穏やかなやや甘は “里芋の餡かけ” のような濃い味の料理にも合う。
普段飲みに手が届きそうな酒を、こんな素朴な陶器の酒器でいただくとなんだか落ち着くね。 

デザートにひんやりと爽やかな “トマトのコンポート”、深紅のトマトにペパーミントがお洒落でしょう。
すっとスプーンが入る柔らかで甘ぁいトマト、合わせるゴールドイエローがかがやく “真澄スパークリング”。
果実の香りと滑らかな甘味が、はじける泡とともに口の中に広がって、麻布十番の夜は更けゆくです。

恋するカレン / 大瀧詠一 1982
     


JY06 山手線立ち呑み事情 晩杯屋@鶯谷

2022-06-18 | 大人のたしなみ

 鶯谷駅南口からホテル街をやり過ごすと言問通りに出る。っと対面に角打ちが一軒、立ち呑みが一軒。
どちらも連休明けまで営業自粛していたから、それが「山手線立ち呑み事情」運転見合わせの理由でもあった。
漸くの運転再開。っで、ちょっぴり妖艶なオレンジの灯に誘われて「晩杯屋」に吸い込まれてみよう。

一杯目はお約束の “生ビール” を呷る。泡立ちもジョッキの冷えも申し分ない。好感度良好なのだ。
アテは “黒ムツ刺身”、旬を外して脂のりはさほどでないけれど、ちょっと一杯のお供には申し分ない。

カウンターの調味料の脇に紙とえんぴつを入れた籠を見つけた。どうやら自分で伝票を書くのがお作法らしい。
それでは早速 “極厚ハムカツ” と走り書きしてお兄さんに手渡す。二杯目は爽やかに “生ゆずハイ” を択んだ。
辛子をたっぷり付けて厚切りをかじる、鼻にツンっときたところに生ゆずハイをゴクリ、これが楽しい。

場所がら客層はご同輩ばかりと思いきや、若者もお嬢さんもオバちゃんも、老若男女が並び立つカウンター。
“冷やっこ” には小エビを散らして、このひと工夫が客の心を掴む。刻みネギと生姜、ポン酢をかけて美味しい。

食事代わりの “納豆オムレツ” でまったりしたら、中をお代わりした “黒ホッピー” でさっぱりと流し込む。
開け放した窓から流れ込む心地よい風に吹かれて、ちょっぴりほろ酔い気分の鶯谷の夜。次はぁ日暮里ぃ。

哀愁のカサブランカ / 郷ひろみ 1982
     


室町和久傳 × SAYS FARM

2022-06-15 | 日記・エッセイ・コラム

 堺町通り御池下ル、白地に「室町和久傳」のシンプルな暖簾が揺らめいて、老舗の威厳を感じさせる。
京料理と日本ワインのコラボレーション企画、今回の京都行の本来の目的だ。無論ボクの提案ではない。

セイズファームは富山湾と立山連峰を望む氷見の丘上にあるワイナリー、魚問屋さんが興したという。
前菜には “オジコシャルドネ 2016”、フレッシュでフルーティー、すぅ〜と喉を通って料理への期待が高まる。

「先附」(写真は失敗)は、茄子釜に富山湾の “甘えび” と茄子アイスを詰め、トマトのジュレをかける。絶品だ。
カウンターの中では「中皿」に供される “蛍いか” がキラキラしている。このあと出汁とポン酢でいただく。

「椀物」は “鳥貝” に、ホワイトアスパラガスと柚子の実がコラボレーション、ほのかに潮の香りがする。
蓋を開けると貝がらごと入っていた。視覚的にも楽しませてくれる。合わせるワインは “ロゼ 2020” だ。

八角形を半分にしたようなカウンターはわずかに15〜16人の席、目の前で一流の包丁さばきを眺める。
氷見で揚がった “ブリ” をはじめ大きな皿にネタが並ぶ。これから「寿司」を握ってもらう。特別なことらしい。
ワイングラスはブルゴーニュに代わって “ピノ・ノワール 2018” が注がれる。606本しかないワインの1本だ。

「焼物」は初夏を告げる琵琶湖の “若鮎”、山蕗、しいたけ、三つ葉を添えて、 旨味と苦味が美味しい。
ワインは白に戻って “ソーヴィニヨンブラン2020”、柑橘系のアロマとドライな口当たりがいい。

湯呑みのような器で供された「凌ぎ」は “氷見うどんとジュンサイ”、ここでも富山の食材にこだわって、
マリアージュを追求している。それにしてもシェフの号令一下、料理人さんの流れるような動きは美しい。 

“プライベートリザーヴ・サンジョヴェーゼ2018” が注がれて、カウンターにルビーの影が揺らめく。
っと「強肴」の “牛カツ” が花山椒を散らして登場、カラッと揚がってるけど、肉はジュワッとミディアムレア、
赤酢たれを垂らして、ほんと美味しい。

一流の京懐石と洗練された日本ワインを堪能した「室町和久傳 × SAYS FARM」の企画だけれども、
やはり呑み人にはワインは難しい。

YES YES YES / オフコース 1982
     


JY05 山手線立ち呑み事情 ほていちゃん@上野

2022-06-11 | 大人のたしなみ

 いい感じに暮れてきた。混み合う広小路口を抜けて横断歩道を渡れば、そこは酔客たちのワンダーランド。
酒場を物色してガード下を右へ左へ、まだ酔ってはいない。実に5か月ぶりの立ち呑みで巡る山手線の旅。

「ほていちゃん」のホールさん達、国籍は片手に余るのではないだろうか。実にインターナショナルだ。
そんな余計なことを考えながら、先ずは生ビールを注文。客層は若者が多い、ご同輩は少ない感じだな。
子どもが喜びそうな形状だけど “ねぎネギとろ” が美味い。海苔で包んで口に放り込むと蕩けるようだ。

二杯目は “デュワーズハイボール” を。最近CMを見たような、ロゴの入ったジョッキは気分がいいね。
今日のお奨めは “黒ガレイの竜田揚げ”、カラッと揚がった淡白な白身をポン酢おろしでいただく。合うね。

地酒を置いてない酒場では、三杯目は “ホッピー” がお約束になりつつある呑み人だ。っで今宵は “黒” で。
アテは確か “ピリ辛肉どうふ” だったっけ?唐辛子の真っ赤なスープで煮こんだ豆腐にゴロっと牛スネ肉、
いい感じの辛さに、この一椀いただくのに “中” をお代わりしてホッピー2杯いけちゃうね。
喧騒のガード下、ほろ酔いの立ち飲み席、そろそろ「おあとがよろしいようで」 では次回は鶯谷で。

匂艶 THE NIGHT CLUB / サザンオールスターズ 1982
     


旅するどんぶり 勝沼「南瓜ほうとう」

2022-06-08 | 旅のアクセント

 勝沼宿の脇本陣?と見紛うような重厚な門を潜ると、ツツジが咲く庭が広がっている。
ワイナリーを3軒巡って漸くのランチは、落ち着いた和の佇まいの中で、郷土料理 “ほうとう” をいただく。

かぼちゃほうとうに、季節のごはん、小鉢、焼きプリンのデザートが付いたセットを択ぶ。多分これが基本。
野菜とキノコがたっぷり、優しい味噌の味にコシのあるほうとう、南瓜の甘みを楽しんで美味しい一杯だね。

緑豊かな庭を眺めながら、ちょっぴり贅沢な時間を過ごしたら、復路の120kmもボクがハンドルを握る。
帰りも下道かって?いいえ大月から中央フリーウェイ ♪。GWをちょっと外してご機嫌な週末のドライブだ。

しあわせについて / さだまさし 1982
     


哀しき iced coffee

2022-06-04 | 日記・エッセイ・コラム

 甲府盆地の隅っこの、小さな扇状地の小高い丘の上、小さなワイナリー「98wines」がある。
涼風が吹く丘の上からは、青々とした葡萄畑と甲府盆地を見下ろし、正面には富士をのぞむ。

ハンドルを握るのは久しぶりだ。ずっと呑む旅ばかりしていたからね。
でも決してドライブは嫌いではない。そしてとにかく下道や峠道がお気に入り。だから同乗者の評価は良くない。

6時半にスタートしたステーションワゴンは、途中新緑透く奥多摩湖に遊び、大菩薩ラインで柳沢峠を越え、
openの10時ピッタリにワイナリーに付ける。このセンスに自惚れてほくそ笑んでいるいるのだ。

“ポークリエッタ“ のプレートを択んで、あと “ケークサレ” も、テラスのテーブルを賑やかしたら、
98wines がリリースする “甲州” と “マスカットベーリーA” のグラスを並べて、とても楽しそう。

でも今日のボクは、泡が膨らみきっていた時代で言うところのアッシーくん、日ごろ一人遊びしている償いだ。
カランっと、グラスの中で溶けだした氷が音を立てて、ボクの iced coffee が悲しい。

Sugartime / 佐野元春 1982


京町家のtrattoriaで

2022-06-01 | 日記・エッセイ・コラム

 紅がらの壁に黒い格子、温もりのある提灯がさがった京町家のtrattoriaを見つけた。
厨房の様子が窺えるゆったりしたカウンターに座って、今宵イタリアンワインを愉しみたい。

とはいえ、素直にワインから入れないボクは、そうはいっても一杯目は生ビールを呷る。
前菜の盛り合わせが華やかにシルバーの皿を彩る。小さなボウルに盛られた “大根のムース” が絶品だ。

“鰯のレモンオイル煮” を択ぶ、オイルサーディンが大好きなのだ。トマトとパプリカが赤を添えて美しい。
となれば白ワイン、でも呑み人はワインは分からない、奨められるままに “Tramonti“ のフリウラーノ。

♡のエチケットが可愛らしいサーモンピンクは “クオール ロゼ トスカーナ”、熟したリンゴの香りだって、
言われてみればそんな気もする。パスタは自家製パンチェッタと玉葱のトマトソース “アマトリチャーナ”。

ピッツァはオーナーシェフにお任せ。目の前で生地をのばして、出始めたトウモロコシを散らしてくれた。
甘酸っぱいトマトソースに甘味たっぷりのトウモロコシの一枚が美味しい。
三杯目は “シャルドネ  フリウリ コッリ オリエンターリ”、最後はしっかり目の辛口のシャルドネで〆る。
坪庭に面した掘りごたつ席には向日葵が生けられて、夏に向かう演出たっぷりの烏丸のtrattoriaなのだ。

雨のウェンズデイ / 大瀧詠一 1982