旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

立山連峰と白エビかき揚げと三笑楽と 北陸本線を完乗!

2022-04-30 | 呑み鉄放浪記

 ヘッドマークも誇らしい旧国鉄の急行型電車、北陸本線で呑む旅のアンカー455系が直江津をめざす。
駅弁、缶ビール(子どもだったからバヤリースか?)、冷凍みかん、全開の窓、昭和な旅路がそこにあった。

まだ少し冬の匂いを残した凛とした朝の空気の中、兼六園と金沢城を巡って来た。
伝統芸能である能楽・加賀宝生の鼓をイメージした「鼓門」を潜って、北陸本線を呑む旅、第二幕が始まる。

07:57発、5区を走るのはスカイブルーの旧国鉄413系の3両編成、ある意味ラッキーな巡り合わせだ。

ガラガラの車内でボックスシートを一人占め、プシュッとプルトップを引くのに憚ることはない。
倶利伽羅峠越えのお供は “金沢百万石BEER”、黄金にかがやく缶はスッキリとした喉越しのコシヒカリエール。

高岡駅古城公園口には「ドラえもんの散歩道」って、オールスターキャストの銅像が戯れている。
ドラえもんを描いた藤子・F・不二雄氏は高岡の出身だそうだ。なるほど、知りませんでした。

その名も大佛寺にある青銅製阿弥陀如来坐像「高岡大仏」は、地元の銅器製造技術の粋を集めた高岡の象徴。
なにせ高岡銅器は、わが国における銅器の生産額の約95%を占めていると言うから凄い。

高岡から富山まで乗車した6番手ランナーはIRいしかわ鉄道の車両、コーポレートカラーの空色を纏う。
北陸新幹線の金沢延伸開業に際し、あいの風とやま鉄道とIRいしかわ鉄道はJR西日本から521系を譲り受けた。
3社は同系の車両を使用している訳だけど、ほか2社と比べてずいぶん厚化粧なIRいしかわの電車なのだ。

持続可能なコンパクトシティを推進する富山、駅前広場は歩行者と路面電車が主役の人に優しいレイアウトだ。
満開のサクラ越しに行き交う電車を眺めるのも楽しい、街灯にはオレンジやイエローの花が飾られているね。

天守閣と石垣を背景に、濠に満開のサクラが枝を投げ出している。ビルの谷間に立山連峰が覗く。
フレームに城とサクラと立山連峰と、なんとも豪勢、富山の街の風景に溶けこんだ立山連峰が美しい。

富山城址公園を抜けて富山最大の繁華街総曲輪に迷い込む。ここに地元で愛される「昼飲みの聖地」がある。
「丸一」の縄のれんを潜る。なんと開店は11:00、引戸を開けると奥まで伸びるカウンターはすでに満席。
2〜3分待って空けてもらった席に収まって、先ずは “サッポロ赤星”、アテは “ホタルイカの酢味噌和え” を。  

隣のご同輩は若い女の子を連れて、いや羨ましい。氏が薦めてくれた地酒は五箇山の “三笑楽” だ。
サクサクの “白エビかき揚げ” にはレモンをたっぷり絞って、ほどよい酸味がある純米酒によく合う。
口の中に広がるのは、あっこれ “かっぱえびせん” の味だ。
ご同輩の連れは富山大学に就学中の娘さん、一人暮らしを訪ねたらしい。ちょっと安心、いや余計なお世話で。

厚揚げ、玉子、大根にあんばやしを択ぶ。“富山おでん” はとろろ昆布をかけて、旨味がたっぷりで美味しい。
あと “すすたけ” を2本、春を感じるね。すすたけとは根曲がり竹のこと、信州や越後では姫竹って言うかな。
ボクはサバの水煮缶と溶き卵といっしょに煮る “たけのこ汁” に目がない。これ余談でした。
酒は北前船で栄えた岩瀬浜の “満寿泉”、優しい口当たりの純米酒がおでんに合うなぁ、燗酒でもよかったか。

さて旅は後半戦、8番手の泊行き437Mはあいの風とやま鉄道の521系、シルバーの車両がスタイリッシュだ。

車窓には常に残雪きらめく立山連峰が流れて飽きることはない。ちょうど12時、列車は黒部川橋梁を渡る。

シルバーの2両編成が泊駅の2番ホームに終着すると、えちごトキめき鉄道のディーゼルカーが迎えに来た。
乗り換えの便を計って同じホームに向き合うように縦列停車。ローカル線の乗り換え駅ではよくある光景だ。
9番手の1637Dは車体に日本海の海の幸をあしらって、前面に描かれるのはベニズワイガニか。
気動車とはいえ最新のET122系、出足も滑らかに、あっと言う間にトップスピードに達して軽快に駆ける。

快適な乗り心地のET122系とは僅かにふた駅乗車してお別れ、市振からは懐かしの急行型電車に乗る。
えちごトキめき鉄道が演出する昭和の旅路、かつて関西・中京と北陸を結んだ455系に10区のアンカーを任せる。
直江津方につけた「さくら」のヘッドマークは、満開を迎えた沿線の「高田城址公園観桜会」をアピールか。

途中の糸魚川駅では10分の停車、駅前広場には伝説の女王・奴奈川姫の像が立つ。
ヒスイを用いて祭祀を行い、高志国の一部を治めたとされる女王は、古事記では出雲の大国主命と結ばれる。

能生駅には桜並木があって、列車は撮影のための臨時停車となる。なるほどカメラの砲列が並んでいるね。
ボクはと言えば、ワンカップをカポっと開けて花見の一杯。“雪鶴” はちょい辛旨口、糸魚川の酒だ。

延長11,353mの長大な頸城トンネルを、モーターが唸りを上げて、急行電車が110km / hで疾走する。
かつては日本中の幹線を走った急行電車、ボクの子どもの頃は確かにこんな旅があった。
谷浜の海岸線から直江津の火力発電所が見えると、昭和の旅路はまもなく終わる。っと最後の五智トンネルだ。

14:31、8003Mが直江津駅1番ホームにゴールを切って、10本を繋いだ文字通りの駅伝、北陸本線の旅は終わる。
敦賀、金沢、富山、満開の桜と北陸の酒肴を堪能した2日間、さて最後に夜桜の高田城址公園を歩きましょうか。

     北陸本線 米原〜金沢 176.6km
  IRいしかわ鉄道 金沢〜倶利伽羅 17.8km
あいの風とやま鉄道 倶利伽羅〜市振 100.1km
えちごトキめき鉄道 市振〜直江津 59.3km

赤道小町ドキッ / 山下久美子 1982
     


駅そば日記 新潟「万代そば」

2022-04-27 | 旅のアクセント

 朝8時、万代シテイバスセンター構内にある「万代そば」へスパイシーな香りに誘われてやってきた。
休日の朝だから客筋は観光客ほ方が多いのかな、立食いそばの店だけど多分9割以上の方がカレーを食べる。
「バスセンターのカレー」といえば誰もが知っている、新潟のB級グルメというかソウルフードというか。

土産用のレトルトを堆く積み上げたカウンターに、無造作にスプーンを突っ込んだ大盛のカレーが出て来た。
きっ黄色い、真っ赤な福神漬けとのコントラストが美しくもある。“普通カレー” だけどかなの量があるね。
とろみが強く、やや甘め、後味かなりスパイシー、豚コマのほかにニンジン、たっぷりのタマネギ、美味しい。

ボクの子どもの頃はすでにルウカレーはあったけど、カレー粉と小麦粉でカレーを作るお宅がまだあった。
叔母が作ってくれたのはこんな黄色いカレーだった。軽く円を描くようにソースをかけて食べた。懐かしい。
単身赴任時代、オフィスとマンションの途中にある「万代そば」で時折り空腹を満たした。Wで懐かしいね。
バスセンターのカレー食べたさに、上越新幹線に飛び乗った大人の休日なのだ。


file-017

急いで!初恋 / 早見優 1982
     


雨晴海岸と海鮮漬丼と有磯曙と 氷見線を完乗!

2022-04-23 | 呑み鉄放浪記

 大きな弧を描いて能登半島が続いている。海面はどこまでも穏やかな富山湾だ。
定刻に警笛の音がしたような気がする。やがて海岸線をなぞって朱色のディーゼルカーが姿を現す。
カタンカタンとレールを鳴らして、2両編成のキハ40系が女岩(めいわ)の横を抜けていった。

北陸本線で呑む旅でふたつ目の寄り道、氷見線に乗って美味い海鮮丼を食べたい。喪黒福造にも会いたい。
新幹線に先んじて開業した瀟洒なステーションビルからは、海王丸の湊へと向かう路面電車が走り出してきた。

高岡05:56発、始発の523Dに乗車する。地方に出張るとどうしても行程を欲張るから、勢い早起きになる。
わずかな乗客を乗せた2両のタラコは、少し大袈裟な唸り声を発して、鈍重に動き出す。

朝ビールは “ゆずびぃる”、石川県産大麦を使用したJR西日本のKIOSK(セブンイレブン)の限定販売モノ。
もう県境を越えちゃってるけどご愛嬌、爽やかなゆずフレーバーを楽しみながらディーゼルカーは往く。

高岡を発って二つ目の能町までは住宅街の中、けっこう軒下ギリギリを抜けたりして趣がある。
小矢部川を渡る前後は臨海工場群の中、四つ目の越中国分を出ると、車窓に風光明媚な海岸線が広がる。

海岸線に沿って曲がりくねる車窓に男岩(おいわ)が、続けて女岩(めいわ)が見えてくる。雨晴海岸だ。
氷見までのラスト2区間は青々とした松林に沿った直線区間になる。鈍重だったタラコは軽快に走り出した。

わずか30分、缶ビール1本の旅は、車止めに行く手を塞がれた単式ホームに甲高いブレーキ音とともに終わる。
休む間もなく折り返す2両編成には、高校生たちが次から次に乗り込んでいく。

「ドーン!!!!」っと笑ゥせぇるすまん。ボクはどストライクな世代なので喪黒福造と会えて感無量なのだ。
氷見は藤子不二雄Ⓐの故郷、町中には氏の描いたキャラクターたちに溢れている。

午前8時、桜花爛漫の湊川べりに足を運ぶと、軽快な音楽が流れて水煙が上がり、カラクリ時計が動き出す。
約5分の愉快なショーは、忍者ハットリくんが風呂敷を広げて空を飛んで終わる。子供たちは大喜びだね。

桜の並木に包まれた湊川を河口まで歩くと氷見漁港、寒ブリで有名なこの漁港は富山湾随一の水揚げを誇る。
つまり、ここを訪ねれば富山の「きときと」が堪能できるのだ。っで漁協の2階「漁市場食堂」を目指す。

氷見の高澤酒造が醸す “有磯 曙”、キリッとしまった淡麗辛口は豊潤でもあり、なかなか上品で美味い酒だ。
択んだ丼は “氷見海鮮漬丼”、揚がったばかりの新鮮な魚を甘辛い自家製ダレに漬け込んで最高のアテになる。
小鉢の “もずく酢” も嬉しいね。生姜を溶いて、これまた酒の肴にピッタリなのです。

漬けは三分の一を肴に、さらに三分の一をご飯と楽しんだら、だし汁を注いで茶漬け風に楽しむ。美味い。
土鍋でグツグツと音を立てて、磯が香る “漁師汁” も純米吟醸を引き立てて、なかなか味のある助演なのだ。
富山湾の「きときと」な酒肴を味わい、嬉し愉しの寄り道、氷見線の旅。さてそろそろ北陸本線に戻りますか。

氷見線 高岡〜氷見 16.5km 完乗

夢見る渚 / 杉 真理 1982
     


ご当地旨ラーメン事情 富山「支那銀」

2022-04-20 | 旅のアクセント

 大将が言うには富山ラーメンは存在しない。ひと頃マスコミが騒いだ富山ブラックも定着していないね。
店々がさまざまな素材でダシにこだわったスープで味を競う。海の幸にも山の幸にも恵まれた富山らしい。
ゆで卵をのせてもらって “ラーメン” が着丼、「支那銀」の一杯は昔ながらの醤油ラーメンだ。
レンゲでスープをひと口、続けて極太麺をズズッと啜る。鶏ガラベースの醤油味が麺に絡んで旨い。

ボクにはやや濃いめのしっかりした味付けは、なるほど富山ブラックが生まれる素地はあるのかなぁと思う。
旅の途中で出会う昔ながらのラーメンはこころをほっこりさせるね。
店を出る。ライトアップされた富山駅前に、ワシントン ポトマック河畔の桜「里帰り桜」が揺れていた。


file-026

妖精時代 / 石川秀美 1982


残雪と桜と若鶴と 城端線を完乗!

2022-04-16 | 呑み鉄放浪記

 散居集落、残雪、桜の老木、ディーゼルカー、なんだかホッとする雪国の春の風景がある。
こんな風景の中に帰る田舎があったらステキだなぁなんて思う。北陸本線の旅の途中、城端線で呑む。

金沢駅のみどりの窓口、ダメ元で尋ねた「ベル・モンターニュ・エ・メール」の指定席。聞いてみるものですね、
最後の1席を手に入れる。たった530円の指定席に笑顔で「いってらっしゃいませ」と駅員嬢、旅はいいなぁ。

予定を変更して途中下車した高岡駅の2番ホーム、「美しい山と海」をフランス語で表した、濃緑のボディーに
ゴールドのラインを纏って、ちょっぴり高級感のある車両が乗客を待っていた。

砺波平野を南下する城端線、新幹線から乗り継ぎの乗客を迎えると、ほどなく農村風景の中に溶け込んでいく。
青々とした畑は植えたばかりの大麦だそうだ。地元の親父さんが教えてくれた。

カポっと鳴らして売店で仕込んだワンカップを開ける。沿線砺波の “若鶴” は旨味とキレ味ある辛口純米酒。
ひと箱で二度おいしい “ますのすし” と “ぶりのすし” の小箱、脂ののった鱒と鰤を肴に嬉しい楽しい朝酒だ。

「べるもんた」が砺波駅を出ると、車窓にはいよいよ散居集落の風景が広がっていく。
散居集落の島を浮かべた広大な耕地の海原を、濃緑のディーゼルカーが優雅にクルージングしていく様だ。

終点に近づくほどに、砺波平野を狭めていく左右の山並み、白い残雪がまだら模様の雪国の春。

高岡から1時間弱、静かな終着駅の車止めに行く手を塞がれた「べるもんた」は先行したタラコ2両と並ぶ。
撮る鉄ちゃんには良い絵になるのではないだろうか、濃緑と朱の共演が小さな終着駅を華やかにする。

城端は越中の小京都とも言われ今もレトロな町並みが残っている。朝酒で気持ちも軽やかに旧い町並みを巡る。

町並みの中心は真宗大谷派の城端別院・善德寺、開基450年来の山門・本堂・太鼓楼・鐘楼は県の文化財だ。

板張りの趣きある建物は城端曳山会館。ユネスコ無形文化遺産に登録された300年の歴史を誇る城端曳山祭、
曳山会館には祭に使用される城端塗と木彫刻や金箔で飾られた絢爛豪華な曳山が展示されている。

恵比寿、大黒天、布袋と、展示された曳山は美しくも迫力がある。
5月5日に行われる
城端曳山祭本祭、絢爛豪華な曳山巡行は一度見てみたいと思う。

越中の小京都を漫ろ歩いて城端駅に戻ってきた。昨秋は吉高由里子さん主演ドラマのロケ地にもなったね。
桜が見下ろすホームに2両編成のタラコがアイドリングしている。ローカル線の風景にはこの朱色が似合う。
気温が上がった午後は車内の扇風機を回して、心地よい揺れと優しい風に吹かれて城端線の旅は終わるのだ。

城端線 高岡〜城端 29.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
あまく危険な香り / 山下達郎 1982


握りまでたどりつかない鮨処で「君の井」

2022-04-13 | 日記・エッセイ・コラム

 

 久しぶりに「握りまでたどりつかない鮨処」を訪ねた。そろそろ世情もよい頃だ。
今月の日本酒メニューを見て、今宵は新潟の酒で攻めようと思う。肴は板さんにおまかせが良い。
先ずは “〆張鶴 純”、五百万石で醸した淡麗できめ細やかな味わいの淡麗辛口で刺身を楽しむ。

春を迎えて “ホタルイカの酢味噌和え”、酒の肴にはぴったりの一品、“白アスパラガス” も焼いてもらおう。
面白そうな(飲んだことがない)酒がラインナップされていた。“君の井” の山廃仕込純米 無濾過壱度火入、
まろやかなで軽やかな優しい酒は、たいていの料理に合わせてくれそうだ。

煮物揚げ物を注文するから、定番の晩酌酒 “吉乃川 厳選辛口” を択ぶ。
“たこの柔らか煮” は散らした柚子の香りとともに、揚げ物は “タラの芽” に春の苦味を堪能する。
再び登場の “ホタルイカ” はレモンを絞って美味しい。お膳で季節を感じて、つくづく和食は楽しいと思う。
さてっと、さすがに今宵は一貫二貫と握って貰いましょうか。

ASAYAKE / CASIOPEA 1982
     


桜花爛漫の石川門と鴨治部煮と菊姫と 北陸本線を往く! 

2022-04-09 | 呑み鉄放浪記

 早朝の金沢城公園、石川門も百間堀も満開のソメイヨシノに埋もれてしまったかの様だ。
4月の週末、出張から解き放たれて、桜花爛漫の北陸本線を鈍行列車に揺られて呑み潰そう。

姫路から長駆200km、新快速3232Mはここ米原で後8両を切り取られて、たった4両で北陸本線を往く。

長浜で観桜と竹生島クルーズに向かう乗客を降ろすと、やっと転換クロスシートに席を確保する。
すかさず開ける “萩の露” は高島市の福井弥平商店が山田錦・吟吹雪を醸したやわらかな辛口の酒。
余呉湖を眺めながら、ちびりちびりと呑み始めよう。

     

肴は米原で仕込んだ駅弁「湖北のおはなし」を。粒こしょうでローストした鴨、鍬焼風のかしわ、
甘辛く炊き込んだこんにゃく、葱とお揚げのぬた、どれも申し分のないアテ、辛口の酒がすすむ。

 近江塩津からは2番手の3438M、同じく姫路発ではあるけれどこちらは湖西線を駆けてきた。
辿り着いた敦賀駅は北陸新幹線工事の槌音が響く、駅舎は2015年、ひと足先に瀟洒に生まれ変わった。

敦賀のメインストリートには、なぜか「宇宙戦艦ヤマト」と「銀河鉄道999」のブロンズ像に溢れていて、
五代進や星野鉄郎、メーテルに出会える。どストライクな時代に育った呑み人としてはちょっと嬉しい。
気比神社の門前にはアナライザーが戯けている。んっと佐渡酒造先生と愛猫のミーくんは見つけられなかった。

越前國一之宮「氣比神宮」の大鳥居の両脇にも満開のサクラ、朱色と桜色のコラボレーションが美しい。
「月清し遊行のもてる砂の上」敦賀の港に宿をとった芭蕉は、月の美しい夜、氣比神宮を参拝している。

赤れんが倉庫、欧亜国際連絡列車が発着した旧敦賀港駅舎を巡って海に出る。
海沿いのボードウォークから敦賀港を一望、北前船の帆を模ったモニュメントが青い海を背景に鈍く光る。

 駅に戻るとすでに3番手の1243M福井行きが待っている。短い2両編成がローカルな旅を演出するね。

長い長い北陸トンネルを潜って福井平野へ抜ける。桜が咲き乱れる足羽川を渡ると、列車は福井駅に到着する。
数多くの恐竜の化石が発掘された福井県、西口駅前広場で威嚇しあうフクイサウルスとフクイラプトル、
全長10m、首長竜のフクイティタンが咆哮を上げる。実物大モニュメントを見るだけで途中下車の甲斐はある。

 折り返して1347M金沢行きになる4番手ランナーが停車すると、乗降客でホームが溢れるばかりになる。
少なくとも県庁所在地を発着する列車に2両編成はキツイんじゃないかな。せっかくの転換クロスシートだけど
立ち客になった呑み人、仕込んでおいたご当地ビールはブリーフケースの中で出番を無くしてしまった。

芦原、加賀、粟津と加賀温泉郷をつなぐ車窓いっぱいに、霊峰白山が存在感を大きくしてきた。
たっぷりと雪を抱いた信仰の山は、午後の陽を浴びて神々しく輝いている。

途中の小松で列車を飛び降りる。実は是非見ておきたいものがあった。
東口駅前に広がる「こまつの杜」に、超大型ダンプトラック930Eと超大型油圧ショベルPC4000を見上げる。
オーストラリアや南米の鉱山で唸りをあげる姿を想像して、本邦のモノづくりを誇らしく思ったりする。

1日目の5区を任された653Mは金沢〜小松間をシャトルしているらしい、さすがに4両を連ねていた。
小松から40分、雅やかなチャイムが流れて電車は金沢駅の3番ホームに滑り込んで、今日の旅を終える。

若い青春18きっぱーは遠くへ遠くへと乗り継ぐのだろうけど、呑み人は陽が傾き始めたら街へ降り立つ。
ガラスのドームに覆われた駅で満開のサクラに迎えられ、今宵この街の酒場で金沢を味わう。

君と出逢った香林坊交差点から鞍月用水のせせらぎを遡ると、酒場(酒と人情料理いたる)に白い灯がともる。♪
つきだしの “バイ貝の煮付け” をアテに生ビールを呷りながら、地酒純米酒の品書きを眺める。

お造りの小桶には、がんどぶり、かじき鮪、桜鯛あぶり、生だこ、甘海老が踊って美しい。
北陸の鮮魚はどれも美味、とくに脂がのった “がんどぶり” は甘くて美味しいなぁ。出だしから絶好調だ。

加賀の酒はご存知 “加賀鳶” の山廃純米、絶妙の酸味と深みのあるコクの超辛口が美味い。
アテは “サバの糠漬け(へしこ)” にレモンを搾って、これ好きなんだよね、これだけで二、三合はいけそう。
さらに “大人のポテトサラダ” はカリカリに揚げたポテトを散らして、これまた申し分ない酒のつまみだ。

次なる純米酒はこれまた山廃仕込の “菊姫” を択ぶ。ハレの日の郷土料理 “鴨治部煮” を味わいながら、
濃醇で飲み応えがある硬派な酒を愉しむ。いやはや金沢の旨い酒肴を堪能した柿木畠(かきのきばたけ)の宵だ。

北陸本線 米原〜金沢 176.6km 完乗

My Song For You / 尾崎亜美 1982
     


一酒一肴 生麦・そばっ晴°で庭のうぐいす

2022-04-06 | 津々浦々酒場探訪

東海道本線(羽沢線)が地下に消える生麦辺りで見つけたご機嫌な店、お肴・お蕎麦・地酒の店「そばっ晴°」だ。
カウンター10席だけの「袖振り合う」限られた空間に身を捩ってご常連の間に腰掛けさせてもらった。

この店の "おさしみ盛合せ" は豪華で美しく新鮮で云うことなし。この一皿を求めて縄暖簾を潜る価値がある。
地酒は定番の他に日替わりで5~6銘柄の用意がある。今宵の呑み人は "庭のうぐいす 特別純米" を択んだ。

山口酒造所を訪ねたのは5年前の春、西鉄甘木線では「くらの細道きっぷ」って粋なイベントを実施していた。
フレッシュですっきりとした味わいに、なんとなく記憶が甦るね。筑紫平野をずいぶんと歩いたっけ。

美味い刺身を肴に、訪ねた蔵の酒との思いがけない再会、なんだかほっこりしてしまう生麦の夜です。


file-097

Midnight Rendezvous / Casiopea 1982
     


春色の汽車に乗って いすみ鉄道を完乗!

2022-04-02 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

桜と菜の花とディーゼルカーと。見たかった情景が目の前に、旧国鉄の急行型ディーゼルカーが往く。

春色の汽車に乗って 海に連れて行ってよ ♪、40年という時間を超えても色褪せない名曲だと思う。
呑み人が「春色の汽車」で思い浮かべるのは、この菜の花色のディーゼルカーなのだ。

小湊鐵道に揺られ房総半島の背骨を越えると上総中野、菜の花色のディーゼルカーが迎えに来ている。
今回はいすみ鉄道(旧国鉄木原線)に乗って、外房の港町・大原まで抜けるつもりだ。

とは言っても寄り道の多い呑み鉄旅、早速っとふた駅目の菜の花が咲き誇る総元(ふさもと)に途中下車する。
菜の花に埋もれ、ソメイヨシノに包まれた上に鯉のぼりまで泳いで、地元の方々の優しさに触れた気がするね。

プァーンと春風に乗って、ずいぶん遠くから警笛が流れて来る。
高価なカメラを三脚に据えたアマチュアカメラマン達がざわめくと、あっと言う間に迎え撃つ砲列が並ぶ。
クルマ1台がやっと渡れる小さな踏切の警報機が鳴り出すと、彼らの緊張感は高みに達するのだ。

急行のヘッドマークも誇らしげに、上総中野行きの57Dが車体を大げさに揺らして石積みのホームに停車。
キハ28はJR西日本の高山本線を走っていたと言う。このノスタルジックな情景には言葉も出ないのだ。

40分後、折り返してきたキハ28のボックスシートに腰掛けると、子どもの頃の祖母を訪ねる旅を思い出す。
東総元〜小谷松間では、桜の淡いピンク色が車内まで飛び込んできそうな桜並木の中を走り抜ける。

ノスタルジックなディーゼルカーに揺られること10分少々、静かな城下町・大多喜に到着する。
キハ28とバディーを組むのはキハ52、1950年代から日本中に散らばって活躍した形式だと言う。

大多喜は天正18年(1590年)に上総国が徳川家康に与えられ、その勇将本多忠勝が拝領し3層4階の天守を築いた。
呑み人的には大河ドラマ「真田丸」で藤岡弘さんが演じた武骨ぶりをイメージする。
町はずれの行徳橋には、床几に腰掛ける甲冑姿の本多忠勝像が、外敵を追い散らすかのように睨みをきかす。

大多喜城は城下町の西側、夷隅川の河岸段丘上に築かれた平山城で、蛇行する川と城下町を見下ろしている。
二の丸御殿薬医門を残す大多喜高校から仰ぎみると、桜に包まれてなかなか美しいと思う。

大多喜城本丸跡に建設された天守閣づくりの建物は歴史博物館、現在は改修工事のため休館になっている。
それでも桜色に包まれた白壁の城郭様式を見ようと、多くの人たちが坂を上ってくる。

下城したら土蔵造りの商家・釜屋(旧江澤邸)など、風情ある城下町通りを歩いてみる。
“最中十万石” の津知家、“大多喜城” を醸す豊乃鶴酒造(国登録有形文化財)が並ぶ酒蔵小路も雰囲気がある。

ランチは釜屋正面の「とんかつ亭有家」を訪ねた。小さな観光地のハイシーズン、ランチ事情は厳しい。
席を待つこと数十分、座ってからも長そうだから “スーパードライ” を呷ってじっと待つ。
でも、お通しに出てきた “豚と大根の甘辛煮”、これが美味かった。んっ日本酒でもよかったかなぁ。

     

択んだのは変わり種の “梅とんかつ”、ロースと一緒に梅肉と大葉つけて揚げている。
房州豚はことのほかジューシーで甘みもあっていい、さらに梅の酸味を添えてなかなか美味しかった。

ランチ難民となった関係で、予定より遅い15:47発の66Dを待つ。この列車は立錐の余地もない混雑ぶりだった。
先ほど仕込んだ “大多喜城特別純米吟醸” は出る幕を失い土産となり、リュックの中のMyちょこが泣いている。

終点大原駅には16:20着、菜の花色のディーゼルカー2両編成は定員150%の乗客を送り届けて2番ホームに佇む。
陽はすでに西に傾いて、知り合って半年になる彼女を海に連れていくことなく、いすみ鉄道の旅は終わるのだ。

いすみ鉄道 上総中野〜大原 26.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
赤いスイートピー / 松田聖子 1982