旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

青空はエメラルド あなたから誘って 内房線を完乗!

2021-08-28 | 呑み鉄放浪記

館山駅に上り下りの内房線の電車が並ぶ。朝から30度を超える真夏日だ。海をイメージした明るい青色と、
大地を彩る菜の花の黄色のラインが流れる。前面の水玉模様は房総の海の波しぶきをイメージしているそうだ。

内房線の起点は蘇我駅、外房線から内房線が分岐し、また東京に直結する京葉線の終点でもある要衝だ。
駅から10分も西に歩けば、ジェフ千葉の本拠地フクダ電子アリーナに行き着く。試合日の騒めきが想像される。

5番線に千葉から8両編成の電車が入ってきた。07:04発の129Mは上総湊行きの各駅停車。
臨海部のコンビナートに出勤する通勤客、部活か補習だろうか高校生も多い。早朝から満員の内房線だ。

それでも君津を過ぎると車両は閑散、朝のひと缶を開けるのに罪悪感はない。プシュッと小気味の良い音。

静かな上総湊の駅、輸送密度がグッと下がって、2両編成の新鋭E131系電車に乗り換えになる。
2021年春のダイヤ改正、この新型車両の登場で木更津(上総湊)から上総一ノ宮間、内房線と外房線の
直通運転が始まった。短い編成でワンマン運転ができるのがこの新型車両の売りなのだ。

ふたつ進めると浜金谷、水色の甍が朝の陽に照り返る。ハイキング姿のグループが何組か降り立った。

浜金谷には対岸の久里浜とを40分で結ぶ東京湾フェリーの金谷港がある。
大型タンカーや時には豪華客船の間を縫い、富士山や伊豆大島を眺めて、ちょっとしたクルーズ気分だろう。
ちょうど久里浜行きが浦賀水道へと滑り出した。きっと夕陽を追う時間帯がご機嫌なひとときになるだろうか。

金谷港を背に山裾へ向かうと、鋸山(329m)へと赤いロープウェイが空へ舞い上がっていく。

山頂展望台からは360°のパノラマが楽しめる。南は洲埼から伊豆大島、さらに伊豆半島を望む。
西は観音崎から三浦半島そして城ヶ島まで浦賀水道に浮いて、照れくさいのか富士山は雲に隠れている。

暫し風に吹かれた後、ジリジリ暑い海抜0mに降りてきて、海と菜の花のラインの2両編成で館山に向かう。

スペイン風のオレンジ色の屋根がリゾート気分を掻き立てる館山駅。駅前広場でフェニックスが揺れている。

かねてから来たかった白濱屋本店、大正8年創業、昔ながらの大きな田舎寿司を握ることで評判の店だ。
この時期だから酒類は提供しないのだけれど、つきだしに “とうもろこし豆腐”、んっ冷酒が飲みたい。

いなり寿司のような大きさの八貫、“地魚寿司・松” が板場から供される。
時計回りに、サワラ昆布〆、黒アワビ、ヒラマサ、メイチダイ、キンメ、アジ、サザエ軍艦、カンパチと並ぶ。
希少な高級魚メイチダイは甘く、少し炙って黒アワビは絶品、コリコリとサザエが美味しい。

 酒が呑めなきゃランチは早い。後続の3135Mに乗って千倉へ抜ける。太平洋側に出たけどまだ内房線なのだ。
千倉観光案内所では電動アシスト自転車が1日1,000円で借りれる。ここまで来たら潮風に吹かれたい。
(余談だが、今、赤銅色の土方焼けが痛い。学生時代のバイトを思い出すなぁ。自転車は無謀だったか。)

青い海と白い波を眺めながら30分も南へ漕ぐと潮風王国、広い芝生の公園と磯浜が広がっている。
サバサンマ漁の漁船を浮かべた池では、小さなお兄ちゃんが妹のを乗せた浮輪を押したり引いたり微笑ましい。
そんな光景を眺めながら、きょう2本目のプルトップを引く。

砂浜が弧を描いて南千倉海水浴場、千葉県は今夏海水浴場の封鎖を決めた。南房総市も例外ではない。
契約履行の関係?人が疎らな海岸にライフセーバーだけが所在なさげだ。渚に白いパラソルは咲かない。

アンカーは3139M、よく冷えた“寿萬亀” のスクリューキャップを切る。やや辛のスッキリとした喉越しだ。
車窓に波光きらめく太平洋を眺めながら、ちょっといい気分になる頃、青と黄のラインは安房鴨川に到着する。

内房線と外房線が鉢合わせする安房鴨川は、ほんのちょっと前までは全ての列車の終着駅だった。
今では新鋭E131系電車が両線を直通運転するようになった。然してほんの少しだけ休んだ電車は、
行先表示を外房線を表す赤色に変えて2番線を出て行った。ボクはただ風に吹かれて見送るだけだ。

内房線 蘇我〜安房鴨川 119.4km 完乗

白いパラソル / 松田聖子 1981


街角の蕎麦屋にて「浦和宿の老舗そば屋」

2021-08-25 | 日記・エッセイ・コラム

 やや甘のつゆに山葵をたっぷり溶いたら、刻み海苔とネギといっしょに、大げさにズズっと啜る。
夏の昼下がりに “大ざる” をいただく、こんな暑い日には冷たい蕎麦がいい。美味いねぇ。
使い込んだ漆器に味がある店は昭和10年の創業と云うから、すでに85年を超える老舗なのだ。

とても昭和な雰囲気の旧中山道に面した老舗を一歩裏手に入ると高級マンションやお屋敷が並ぶ住宅街。
子供たちが虫取り網を手に駆けている大楠の都市公園は、徳川家康が鷹狩の際に滞在した浦和御殿の跡地だ。
こんな立地の店だから旧くからの顧客も多いんだろうね。おかもちを据えたスーパーカブで、兄さんが
忙しなく出たり入ったりしている。

大衆食堂的に進化してきたお店はメニューも豊富。とある日は、懐かしい “中華そば” に “ヤキメシ” を半分こ。
出汁を効かしているのかな、明らかにチャーハンとは別物の一皿は試していただきたい逸品。

こんな蕎麦屋さんの丼ものだからハズレはない。多めに盛られたご飯の上に、ふんわりと玉子でとじた
ジューシーな豚カツをのせて “カツ丼” が美味しい。お約束の豆腐とワカメの味噌汁が泣かせる。
ところで、厨房のご主人と料理人さん、甲斐甲斐しいおかみさんも結構なお年とお見受けするのだけど、
こんなお店はいつまでも残って欲しいな。またお邪魔しますね。ごちそう様でした。

少女人形 / 伊藤つかさ 1981
     


灘菊のかっぱと姫路おでんと白鷺の城と 姫新線を完乗!

2021-08-21 | 呑み鉄放浪記

 07:18発、津山行きの854Dが2番線でアイドリングを響かせてい、車内はひんやりと別天地だ。
数えるほどの乗客に生活感はない。この季節ならではの「乗る」猛者の人たちに違いない。

谷間の小さな町の休日朝7時は、世の中から忘れ去られたかのように静粛の中にある。
ぽつりと1台、客待ちのタクシー、運転手氏はいつまで乗客を待つというのだろう。

呑み始めの一杯は “塩そら豆” を齧りながらのレモンサワー、ちょっと嵌まってしまったようだ。

刑部(おさかべ)では下り列車と交換、やはりキハ120系の2両編成だ。
谷と谷を繋ぐ鉄路はアップダウンを繰り返し、トンネルで分水嶺を越える度に車窓下の流れは向きを変える。

支流を集めて存在感を増した旭川の鉄橋を渡ると中国勝山、ここから津山の間は運行本数も多くなる。
出雲街道の宿場町・城下町として栄えた勝山、ノスタルジックな白壁の土蔵や格子窓の町並みが残るらしい。
“御前酒” の蔵元もあるので心惹かれるが今回は先を急ぐとする。

 再び迷い込んだ山間から吉井川が潤す広い津山盆地に飛び出す。
岡山から延びてきた津山線が右手から寄ってきて、しばし複線並走すると終着駅のホームに滑り込んだ。

姫新線に津山線それに因美線が交差する津山は交通の要衝、蒸気機関車の時代は鉄道の町でもあったろう。
駅前広場のC11-80号機は戦後、芸備線や津山線で活躍し、岡山国体ではお召機の栄誉を担った。

旧津山機関区の扇形機関車庫(1936年完成)と転車台、ここでは現役を引退した静態保存車両を展示している。
奥行きが22.1m、17線の扇形庫は梅小路運転区(京都鉄道博物館)に次いで日本で2番目の規模なのだそうだ。

 美作を走り抜ける佐用行き2826Dはキハ120系の単行、東津山で因美線を分岐すると山に分け入る。

車窓のお供はJR西日本がプロデュースする “ ”、瑞々しい香りと白桃のほのかな甘みがいい。

津山からちょうど1時間、単行120系と姫路方面からの122系はほぼ同時に佐用駅に到着する。
すると智頭急行線のホームに下りの “スーパはくと” と、上りの “スーパーいなば” がやはり同着。
閑散ダイヤを補うX字相互の連絡がすごい。
特急の発車後まもなく、姫新線の単行ディーゼルカーも其々、津山、播磨新宮へと折り返していく。

新鋭のキハ122系は山路を軽快に走って約30分で播磨新宮へ。ここで運行形態が変わるので乗り換えになる。
ホーム反対側の姫路行き1846Dは同系列の2両編成、京阪神間を走る電車のような精悍な顔立ちをしているね。

列車は揖保川を渡ると東へ転進する。需要の大きい播磨新宮から姫路間は高速化事業という資本が投下された。
コンクリート枕木、線路のカント、側線、新型車両、列車は100km/hでこの旅のラストスパートするのだ。

12:03、姫路駅着。1日半をかけた中国地方の背骨を往く広島から姫路への芸備線・姫新線の旅は終わる。
山陽新幹線なら1時間弱の距離、お盆を前に日本の原風景を愉しみながら、乗って呑んでの冒険だった。

 ところでWebで「姫路、昼飲み」と検索すると、結構な数のヒットがある。
これっていったいどんな文化なのだろうか。ご存知の諸兄は教えていただきたい。

小溝筋に地元酒蔵の直営店、11:30開店の有難い店に吸い込まれる。2階がメイド喫茶のアンバランスはご愛嬌。
気付くと客席の椅子は祭りに使われる和太鼓なのだ。これがまた愉しい。

一杯めは“純米灘菊”、濃醇でさわやかな酸味がある淡麗辛口は万能な食中酒、溢れそうなのを迎えにいく。
牛すじ、玉子、ひら天、こんにゃく、ちくわ、生姜醤油の姫路おでんに、たっぷりの酒粕ソースをかけた
名物の “大串白おでん” が楽しくも美味しい。

ふた皿目のアテは “塩麹漬焼き地鶏”、これも酒蔵直営ならではの逸品が美味しい。
穏やかで芳醇な香りの “ ” を愉しみながら芸備線・姫新線の旅を締めることにしよう。
小溝筋を突き抜けると、突然に視界が広がる。シラサギが鮮やかに白い翼を広げているのだ。

姫新線 新見〜姫路 158.1km 完乗

恋するカレン / 大瀧詠一 1981
     


Biz-Lunch 有楽町「べにづる」

2021-08-18 | Biz-Lunch60分1本勝負

 丼にたっぷり、熱々の “肉どうふ” は、溶き卵をあらかじめかけてマイルドにしていただく。美味しい。
大きめの小鉢にたっぷりの “切り干し大根”、こんな副菜は嬉しいよね。一杯やりたくなってしまう。
実際、カウンターには東北から信越の銘柄が並んでいる。あと九州の焼酎たち。泡盛のボトルもあるな。
棚には不揃いな二合徳利がびっしり、なんとも昭和な居酒屋の昼定食が満足度が高いのだ。

乗り換えの有楽町で地下街(たぶん交通会館の地下だと思う)に迷い込んだランチタイム。
波平さんとマスオさんが落ち合いそうな居酒屋が有楽町辺りにあるんだね。いやぁ発見、発見。
同僚にこんな雰囲気で冷や酒を呷るのが好きな奴がいるから、落ち着いたら誘ってみようか。
まだまだ色んな店が開拓できそうな有楽町、居酒屋のランチが侮れないのだ。


file-014

Being With You / Smokey Robinson 1981
     


TOMOEシャルドネ新月と菊文明と橙色の気動車と 芸備線を完乗!

2021-08-14 | 呑み鉄放浪記

 中国山地にあるローカル線の小駅、交換待ちしているキハのオレンジが夏の日に照らされて眩しい。
この週末は中国地方の背骨に沿って、広島から姫路へと芸備線・姫新線を呑み抜けようと思う。

博多から都区内への乗車券をこのルートに乗変すると差額は990円、ちょっとした遊び心で冒険は始まる。
07:21、のぞみ2号を降りた広島はすでに35度。真夏日の土曜日、さすがのターミナル駅も閑散としている。

9番ホームへ降りると、すでに三次行きの1808Dがディーゼルエンジンを響かせていた。
JR東海に続きJR東日本でも全廃になったキハ40系列もここでは健在、広島近郊では堂々4両を連ねる。

効きの悪い冷房、ローカル線独特の大袈裟な揺れに、朝レモンサワーしながら身を委ねる。
キハは大きく右カーブして大田川を離れる。迫る山並みにマンション群的な広島の風景とはお別れになる。

中三田駅では下り快速の通過を待つ。照りつける陽、騒ぎ立てる蝉がいなければ静かな山間の駅だ。
っと、キハが短くなっている。広島への通勤圏を抜け、どうやら途中駅で後ろ2両を置き去りにしたようだ。

09:52、オレンジのキハ2両は三好駅に終着する。ここに降り立つのは三江線を呑み潰して以来になる。
さて、乗り継ぐ備後落合行きまでは3時間の待ち合わせ、ちょっと路線バスに乗ってワイナリーを訪ねてみる。

 葡萄色の屋根と欧州風の尖塔、広島三次ワイナリーは緑に囲まれた丘の上にあった。
ワイナリーの専用圃場ではメルローやシラー、ピノ・ノワールなど、ヨーロッパ品種も栽培している。

BBQガーデンでは “TOMOEシャルドネ新月” をいただく。樽が効いて重厚なシャルドネだ。んっちょっと贅沢。
ランチは “焼き肉丼” を択んだ。ニンニクのチップを散らして、ジューシーな和牛が美味しい。

 備後落合行きの356Dはキハ120系の1両、彼が登場するのは相当な赤字ローカル区間だ。
こんな時期ではあるが青春18きっぷの期間でもあり、コアなファンをのせてほぼ満員での発車になる。

兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川、車窓には原風景的な里山が広がる。民家の石州赤瓦がチャーミングだ。

糸瓜が陰をつくった広縁、作務衣のボクはい草の枕に微睡む。チリリンと風鈴の音。仏間から線香の香り。
庭に手押しポンプの井戸、捌口の下に桶を置いて、西瓜にトマト、キュウリ、缶ビールが冷水に浮かんでいる。
思い出したように起き出しては、冷えた缶ビールを掬い上げ、プシュッとリングを引く。至福だ。
子どもは虫取りあみを抱えて、従兄たちを追って飛び出していったままだ。
居間のテレビから微かにさよならヒットを叫ぶ声、試合終了を告げるサイレン、聞いたことがない校歌。
どれくらい寝ていたのだろうか、家々から風呂を焚く薪の匂いがする。
「そろそろ蚊取り線香付けましょうね」と義姉の声、糸瓜を透して夕焼けが降ってくる。

ってな妄想をしているうちに列車は山間のターミナル備後落合に終着。乗降人員30人/日に満たない駅だけど、
14:30には三次、新見、宍道と3方面からの列車が落ち合って、一時の賑わいというか輝きを見せるのだ。

 乗り継ぐ新見行きの444Dもキハ120系の1両、違うのは岡山色の橙と赤の帯ってところか。
キハは時折25km/hの速度制限区間を這いながら、成羽川と一緒にくねりながら山を下る。
呑み人は広島県側最後の町東城に途中下車する。下車するのは唯一人、乗るファンを満載したキハを見送る。

かつて東城は広島藩の家老が配され、中国路の要衝としてまた鉄の集散地として栄え、旧い町並みが残る。
築120年の元旅館・山楽荘は町並みを代表する町家、一般公開しているのでお邪魔してみた。
往時7軒を数えた造り酒屋は2軒が残る。で “菊文明” の北村醸造場さんを訪ねて、様々お聞かせいただいた。
北村醸造場さんはご夫婦で営む小さな酒蔵、酒は地元を越えて流通はしない。地元の宝のような蔵なのだ。

17:10、東城始発の454Dは高校も夏休みに入ってガラガラ、よって迷わず “菊文明” 純米吟醸を開ける。
辛口の酒をひと口ふた口と重ねるうちに、列車は備後から備中へと旧国境を越える。

やがて列車は右へ90度の急なカーブを切って、谷間の小駅、備中神代駅に到着する。
終点の新見まで2駅を残して下車するのは、伯備線と合流するこの駅が芸備線の起点、この旅の終着点だから。

夕日に照らされたキハ120が、0キロポストを半ば埋める夏草を排気で揺らして、トンネルに吸い込まれた。
人っ子一人いないどころか猫の子さえも居ないホームにポツリと独り、芸備線の旅の終わりを噛み締める。

新見の夜は早い。19:00を過ぎたあたりで人は歩いていない。
ビジネスホテルのフロントの兄さん推奨の焼きとり屋で旅で「はんばきぬぎ」を。先ずは生ビールを呷る。
夏バテ気味の今宵のアテは “長芋梅肉和え” と “たこ酢” でさっぱり。二杯目はめずらしくハイボールで。

それでもやっぱり地酒が欲しくなって、地元新見の “三光正宗” をいただく。もちろん初の手合わせだ。
“ねぎま” と “つくね” を焼いてもらって、定番の辛口食中酒と愉しむほどに、静かな新見の夜は更けゆくのだ。

芸備線 広島〜備中神代 159.1km 完乗

オレンジ・エアメール・スペシャル / 久保田早紀 1981
     


ご当地旨ラーメン事情 札幌「白樺山荘」

2021-08-11 | 旅のアクセント

 5人掛ければ満員のカウンター、表も裏も引き戸は全開なのに風は流れてこない。真夏日の札幌宵の口。
目の前にはサービスのゆで卵、挽肉ともやしを炒める中華鍋の音、まもなく “味噌ラーメン” が着丼する。

ゴロっと角切チャーシュー、メンマ、きくらげ、ニンニクが効いた肉もやし炒め、ネギとかいわれを散らす、
濃厚なスープを絡めた中太麺、奇をてらわないシンプルなザ・味噌ラーメンが美味しい。

味噌ラーメンが美味いほどに、長袖のビジネスシャツに、噴き出る汗は容赦ない。
濃厚な一杯を堪能したら、その香りをマスクの中に残して、程よく冷えている地下街に逃げ込むのだ。

宵の口からラーメンを啜るのは、北海道に「まん延防止等重点措置」が実施されたから。
久しぶりの札幌出張だけど、酒場探訪が叶わず大いに落胆なのだ。

然らばと、コンビニで “サッポロクラシック” を求めて、ホテルで女子バスケットボール準決勝に声援を送る。
それでも翌朝、投宿したホテル前で3周回も一山麻緒の激走に遭遇して、OnもOffも収穫を得た札幌出張なのだ。


file-021

Jessie's Girl / Rick Springfield 1981
     


対馬マグロと日南鶏と筑紫の酒と 篠栗線を完乗!

2021-08-07 | 呑み鉄放浪記

 筑豊本線の桂川(けいせん)駅の3番線、都会的なオールステンレスの4両編成が入線してきた。
両開きのドアから車内に一歩入ると、天井から降りてくる心地よい冷気にようやく人心地つく。

「福北ゆたか線」と愛称される篠栗線は、福岡と筑豊を結ぶ通勤通学の足として、20分ヘッドで電車が走る。
桂川から篠栗の区間は1968年の比較的新しい開業、トンネルと鉄橋が連続する山岳区間だ。

小さな橙色のとんがり帽を頭に載せた駅舎が可愛らしい篠栗駅。
ここから終点の吉塚駅までの区間は明治37年に開業している。もちろん石炭輸送を担うためだ。

篠栗折り返しのダイヤもあるから、ここから先はかなりの運行頻度になってくる。
それでも全線単線なので、だいたい2駅毎に下り電車と交換する感じなのだ。
車窓は一転、隙間なく宅地が並んで、なるほど150万都市・福岡のベッドタウンであることを実感する。

電車が山陽新幹線を潜って高架に駆け上ると、正面にマンション群が見えてくる。
4両編成がゆっくりと左カーブすると、鹿児島本線の複線が寄り添ってきて吉塚駅5番ホームに滑り込む。

延長25キロ、所要40分の短い篠栗線の旅はここで終わり、呑み人はひとり813系電車を見送る。
ステンレスのボディーに西日を反射させ、電車は一つ先の博多へと並走する山陽新幹線を追いかけて行く。

夕方の吉塚駅に向かう人並みが半端ではない。人混みに逆らって県道の交差点を渡る。
なるほど、駅の西側には威圧的な福岡県庁舎がでんと構え、さらにその先には九大病院の敷地が広がる。
亀山上皇銅像を戴く東公園をぐるっと巡ったら、予定調和で駅前の酒場に吸い込まれてみる。

 席を占めたのはカウンターの角、目の前に “もつ煮込み” の大鍋が雰囲気を出している。
今日も暑い中を歩いたから、先ずはキンキンに冷えた “サッポロ生” を呷る。美味いねぇ。
お通しは “珠どうふ” にたっぷりの “しらす” をトッピングしてもらって、訳もなくハッピーな気分になる。

地酒は八女の喜多屋 “蒼田ブルー”、山田錦を磨いた上品な芳香とふくよかな味わいの純米吟醸酒だ。
アテは対馬に揚がった “本マグロ盛り合わせ”、洒落た器に中トロ、炙り、漬け、ネギトロと華やかに並ぶ。

店推しの “梅タルタルで食べるアジフライ” が、夏のひと皿らしく、さわやかに美味しい。
そして二杯目の “喜多屋” は50%磨きの純米大吟醸、フルーティーな香りと芳醇で深い味わいの一杯がいい。

“日南鶏の鶏天” はポン酢でいただく。さらに和がらしをたっぷり付けて、ツンとくる位が美味しい。
一度訪ねてからお気に入りになった “三井の寿” は三井郡大刀洗町の蔵、日本酒度+14の大辛口。
辛いだけじゃない爽快な旨口の酒を愉しみながら、夏の福岡に夜がやってくる。んっ、やはり出張はいい。

篠栗線 桂川〜吉塚 25.1km 完乗

酒と泪と男と女 / 河島英五 1981
     


Biz-Lunch 天神「鶏の水だき 新三浦」

2021-08-04 | Biz-Lunch60分1本勝負

 “鶏の水だき” 名店が天神の地下街に店を出している。丼のランチメニューもあるしここなら気軽に入れる。
客層はサラリーマン連れより品の良いご婦人おひとり様が多い。今日は天神までお買い物だろうか。
そんなウォッチをしているうちにお目当てが着丼、ボクは “照り焼き玉子丼” をいただきます。
甘辛い濃いめのタレ、皮はパリパリ、肉はジューシー、一切れ味わってから箸で玉子を割ってマイルドに味変。
んっ、なかなかいいぞ。濃厚だけどあっさりの鶏ガラスープ、これがまた照り焼きに合う。美味しい。

福岡に降り立ってからミーティングまで1時間半、ちょっと忙しないかなぁと思っていたけれど、
思いがけず美味しい丼に巡り会って、満足の天神 Biz-Lunch なのだ。


file-013

待ち合わせの交差点 / 長渕剛