旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

サンマと犬吠埼灯台と地ビールと 銚子電鉄を完乗!

2020-10-31 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

ヤマサの工場群を掻きわけてガタゴトと2両編成がやってきた。この車両は伊予鉄道から嫁いで来た。
この車両の鮮やかな塗装は空の青、波の白、海の紺碧ってところか、なかなか洗練されているね。

JR総武本線の終着駅・銚子、電車を降りた2番ホームを前方へ進むと尖り屋根のゲートが待っている。
そこが銚子電鉄の乗り場だ。

銚子を発って2つ目の観音駅、3つ目の本銚子駅が旧市街に隣接している。
全国屈指の水揚げ量を誇る銚子漁港を抱えて、市内には新鮮な魚を提供する店が多い。
本銚子駅を途中下車して5~6分歩いて旧いアーケードの通りにチェックしておいた「喜可久寿司」を訪ねる。
ご自慢の "サンマの押し寿司" をいただく。旨い肴だ。見た目も食感もプリンのような "伊達巻" も楽しい。

ところで本銚子駅は、テレビ番組の企画でタレントのヒロミがリフォームしている。
ボロボロだけどノスタルジックで味のある建物は、レンガ調の外観に生まれ変わり、壁にはステンドグラス、
梁にはランプが掛かるモダンな駅舎になった。喜ぶ地元の方々と鉄道関係者、大ブーイングの鉄道ファン、
物議をかもしたっけ。そこに生活し、利用するひと達がハッピーになれば良いんじゃないかな。

南欧風の犬吠埼駅に降り立つ。待合室は銚電グッズや土産物に溢れ、老若男女、観光客でごった返している。
メディアにも登場する "ぬれ煎餅" や "まずい棒" は、資金難の銚子電鉄の救世主でもある。

紺碧の海を背景に、白亜の塔から満艦飾のような信号旗が風にはためきながら左右に延びている。
岬に高くそそり犬吠埼灯台は、高さ32m、レンガ造りの西洋式灯台、銚子のシンボルだ。

傍らの遊歩道に「犬吠埼・ロカ岬友好記念碑」を見つけた。
銚子市とポルトガル・シントラ市は同緯度に位置し、2つの岬は友好関係にあるそうだ。

ところで、INUBOW TERASU TERRACE には地ビール醸造所が入っている。
"銚子エール" の香りと苦味を愉しみながら、丸みを帯びた太平洋を眺める。潮風が心地よい。 

2両編成の電車がゆっくりと、かなり大袈裟に揺れながら最後の坂を上ると銚子電鉄の旅は終わる。
終点の外川駅、駅舎も赤いポストも引き込み線で古びたデハ800系も、映画のセットになりそうだ。
昭和ノスタルジーに浸りながら、僅かな休息で折り返す電車で吞み人も銚子へ戻るのだ。

銚子電鉄 銚子~外川 6.4km 完乗

天使 / 甲斐バンド 1980


甲州道中四十四次 街道めし8 甲府柳町宿「甲州ほうとう小作」

2020-10-29 | 旅のアクセント

 今回の街道めしは、地の野菜類をふんだんに使った郷土料理 "ほうとう" を食す。
武田信玄が野戦食として用いたことから、甲府盆地に広く根付いたと云う。
葡萄畑の実りに秋を実感しながら、勝沼宿から歩いてきた第8日目の甲州道中の旅。
甲府柳町宿まで歩いた後は、駅前の「甲州ほうとう小作」で生ビールを呷る。
野菜の甘味、秘伝のダシ味噌、 "ほうとう" のもちもちとした麺の食感が美味しい。
これからの季節、恋しくなる素朴な味わいだ。 

2016/10


甲州道中四十四次 街道めし7 勝沼宿「ぶどうの丘」

2020-10-27 | 旅のアクセント

 甲州道中を歩く第7日目は、標高1096mの笹子峠を越え、勝沼宿で甲府盆地を見渡す。 
ぶどうの丘の露天風呂「天空の湯」で、南アルプスを背景に甲府盆地の大パノラマを堪能、
汗を流したら休憩コーナーで大ジョッキー、歩いて湯に浸かった後の生ビールは最高だ。
今日の街道めし "ざる蕎麦" を一枚、ズズっと啜って旅を終える。
勝沼ぶどう郷から乗る復路の各駅停車、きっと高尾までぐっすり寝込んでしまうだろう。

2016/06


風を感じて! "秋田刈る" 筑波山へ

2020-10-24 | 単車でGO!

 大型バイクを駆って爽快に秋の澄んだ風を切る。この感覚はいつ以来だろうか。筑波山が見えて来た。

麓からいくつかカーブを切ると、大きな朱塗りの一の鳥居が現れて路は行き止まりになる。
男体山と女体山、相並ぶ二峰の霊峰を御神体「いざなぎ、いざなみ」と仰ぐ筑波山神社だ。

神社の裏手からケーブルカーに乗って10分、折角なのでヘルメットを片手に山頂まで上がってみる。

山頂(877m)から関東一円を眺望、東に霞ヶ浦が鈍く光り、南に視線を転じるとスカイツリーと摩天楼が見える。

帰り道に築100年の風情ある古民家「筑膳」に立ち寄り、"自然薯 つけとろろそば" と "季節の天ぷら" をいただく。
期待に違わない香り高い石挽き手打ちそば、青海苔を散らしてどっしりコシのある自然薯、地野菜の天ぷら、
遠くから足を運んで、多少待っても、食べるに価値のある蕎麦処と見た。

今日、旅の相棒はSV650、Vツインエンジンの鼓動を感じながら夕陽を追いかける。"吞まない旅" 始めます。

風を感じて / 浜田省吾


高崎で一酒一肴 銀光カルパッチョと龍神と

2020-10-22 | 津々浦々酒場探訪

 

 17:15、高崎駅はすでに夜の帳が降り、暖簾を潜るのに何の罪悪感も感じることはない。
駅近の「和ダイニング だんべ」は、群馬県産の旬を中心とした手造り料理の店。
「だんべ」って上州弁を店名に戴くくらいだから期待大。地の酒肴を堪能させていただこう。 
 "龍神 芳醇辛口" は館林の酒、フルーティーな口あたりでやや辛って感じ。
アテは群馬産の高級ニジマス "銀光" をカルパッチョでいただく。 
オニオンスライスを巻いて、揚げにんにくを散らして美味。芳醇辛口に良く合うのだ。

2019/10 


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Gotta pull myself together / The Nolans 1980
     


一酒一肴 中野・立呑み二郎「南方純米吟醸」

2020-10-20 | 津々浦々酒場探訪

 17:30、中野駅のサインにグリーン灯が入った。さながら「もう飲んでいいよ」のサインってところか。
中野駅前と北に延びるサンモール商店街はなにしろ活気がある。若い人が多いからだろうね。
商店街を東に入ると立飲み屋が並ぶ路地に「立呑み二郎」に吸い込まれる。 ラーメン屋ではない。
和歌山世界一統の酒 "南方 純米吟醸" を択ぶ。華やかな吟醸香、芳香なふくらみ、キレがいい。
アテは "十六豆腐の厚揚げ" ってのが良い味出している。さて今宵はほどほどにして、帰ってラグビー観ないと。

2019/10 


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Celebration / Kool & The Gang 1980
     


海辺の露天風呂と青池と安東水軍と 五能線を完乗!

2020-10-17 | 呑み鉄放浪記

川部05:55発、始発の822Dで先ずは日本海に出会う鰺ヶ沢へと向かう。
この旅、観光列車 "リゾートしらかみ" には乗らずに、窓全開、各駅停車を乗り継いで往く。
どうやら遠くない将来、このキハ40系という国鉄時代のディーゼルカーが引退しそうなのだ。

川部駅でスタンバイ中に夜明けを迎える。
五能線は起点東能代で奥羽本線と別れ、日本海沿岸を北上し、ここ川部で再び奥羽本線と合流する。
時刻表と睨めっこした結果、どうも逆走する方が効率が良さそうだ。

朝日が岩木山を照らしはじめた。稲刈りを待つ黄金色の田圃にディーゼルカーの影が走る。
たわわに実ったリンゴ畑を包むように裾野を広げる津軽富士が美しい。

車窓に日本海がキラリと光ったらまもなく鰺ヶ沢。
06:55着。次の列車までは1時間30分、しばし漁港の町を漫ろ歩くことにする。

駅を背にして、白神山地に流れを発した中村川を渡ると海水浴場に出る。
芝生の公園、白い砂浜、凪いだ海はどこまでも穏やかで、イメージする荒波打ち寄せる日本海には程遠い。

鰺ヶ沢はほぼ1年を通して水揚げされるヒラメが名産、町は "ヒラメのヅケ丼" を名物として売り出している。
この時間の漁港はほぼ空、夜通しイカを獲ってきた集魚灯をつけた二隻だけが小さく揺れていた。 

鰺ヶ沢08:33発、沿線の各駅から通学の高校生を送り届けた2両のディーゼルカーはここから快速運転となる。

最初の景勝「千畳敷海岸」は、寛政4年(1792年)の地震により隆起して出来た岩床の海岸。
線路は割と低いところを走るので全景は掴めない。時間のある方には途中下車をお奨め。
ちなみに "リゾートしらかみ" は15分の停車時間を設定している。

赤茶けた奇岩に囲まれた行合崎海岸が見えてくると間もなく深浦駅。

閑散とした小駅を飛ばして、快速列車は十二湖駅に停車、世界遺産・白神山地のゲートウェイだ。
奥十二湖(青池)行きの路線バスまでは50分、大阪からの青年を誘ってタクシー相乗りで先を急ぐ。

路線バスの終点・奥十二湖(青池)、森の物産館キョロロから歩きだす。
すぐ左手に見える「鶏頭場(けとば)」の池、上空から見ると鶏の頭のかたちに似ているらしい。
幸運にもさざ波ひとつなく、鏡のような水面に映る白神の山が美しい。

そして神秘の池「青池」が現れる。澄んだコバルトブルーに吸い込まれそうな気になるね。

十二湖12:09発、下りの弘前行き2531Dに乗って4駅戻る。艫作(へなし)ってのも難読駅名だね。
人っ子ひとりいない無人駅から、右手に五能線全通記念碑、艫作埼灯台を見ながら下って行くと、
眼下にご存知「不老ふ死温泉」が見えてきた。一度は浸かってみたい波打ち際の露天風呂をいただく。

先ずは高台にある新館内風呂「不老ふ死の湯」へ。豊富な源泉かけ流しの茶褐色の湯が楽しい。
遮るものがない開放的な露天風呂から日本海の大海原を感じる。

そしていよいよ「海辺の露天風呂」へ、海の青と温泉の茶褐色のコラボレーションが良いね。
打ち寄せる波の音、頬を撫でる潮風、潮の香りと鉄分の匂い、日本海の景色、五感で日本海を感じる。

凍らせたジョッキで生ビールが美味しい。思わず喉が鳴る。
深浦町が推すのは "マグロステーキ丼"、本マグロの水揚量では大間を抑えて青森県ナンバーワンらしい。
天然本マグロを三種のどんぶり(刺身丼・片面焼きステーキ丼・両面焼きステーキ丼)で楽しむマグロ尽くしだ。 

艫作14:50発、東能代行き326Dが近づいてくると、線路で遊んでいたカモシカが草叢に飛び込んだ。

陸奥沢辺の駅を過ぎると、2両のディーゼルカーは海岸間際まで降りてくる。
ガンガラ穴、象岩、かんざし岩が車窓を流れると、午前中に訪れた十二湖駅に滑り込む。

日本海に傾いていく陽を眺めながら、鰺ヶ沢で仕込んだ "安東水軍 辛口本醸造" のスクリューを切る。
白神山地から湧き出た水で醸したすっきりとした淡麗辛口の酒で五能線の旅を締めくくる。

っと、大間越~岩館間の絶景ポイントで列車が停車、車掌さんの観光案内アナウンスが入る。
"リゾートしらかみ" もいいけれど、旧型ディーゼルカーが窓全開でご機嫌なのです。

 2両のディーゼルカーが平地に飛び出して、高野々浜に7機の風車が見えると旅の終わりも近い。
向能代、能代で帰宅の高校生を乗せて、屈曲する米代川に沿って大きな左カーブを描くと奥羽本線が近づく。

東能代は3番線に終着、向かい側2番線には弘前行き、跨線橋を渡って1番線には秋田行きが停車中。
いずれも2~3分の待ち合わせで乗り継ぎの便が図られている。
でっ、ボクはと云えば、旅の余韻に浸る間もなく、慌ただしく秋田行きに乗り込むのだった。

朝陽を浴びた岩木山、車窓に次から次に現れる波打ち寄せる奇岩、深浦のマグロステーキ丼、
波音を聴きながら露天風呂、神秘の青池そして "安東水軍" 、アトラクションたっぷり五能線の旅が終わる。

五能線 川部~東能代 147.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
風は秋色 / 松田聖子 1980


旅するどんぶり 鰺ヶ沢「ヒラメのヅケ丼」

2020-10-15 | 旅のアクセント

 鰺ヶ沢は "ヒラメのヅケ丼" で売り出している。
鰺ヶ沢で水揚した新鮮なヒラメをヅケにし、たっぷりと丼にのせた贅沢なご当地丼だ。
でもちょっとだけ色彩が地味だから、本マグロとイクラも盛って三色丼にしてもらった。
青森の地酒 "田酒" をなみなみ注いでもらって、"ヒラメのヅケ" をアテに愉しむ。美味い。 

漁協近くの「地魚屋食堂たきわ」は納得できる食材が水揚げされないと営業しない。
だからお出かけの際は要注意、Webで営業予定をチェックすることをお奨めする。

店の目と鼻の先は漁港、なるほど新鮮な魚がここに揚がってくる訳だ。
そうそう、訪問したときも大将が豪快にマグロのカマを焼いていた。

     

お腹が満ち足りた後は鰺ヶ沢の町を漫ろ歩きする。
町はずれの尾崎酒造を訪ねて "安東水軍 辛口本醸造" の300mlを仕込む。
これから波打ち寄せる奇岩を五能線の車窓に眺めながら、この辛口の酒を愉しもう。


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元気です / 吉田拓郎 1980
     


旅するどんぶり 津島「味噌煮込み」

2020-10-13 | 旅のアクセント

 昼の営業終了直前に「松屋うどん店」の暖簾を潜る、津島では人気の店らしい。
メニューは味噌煮込み一本、カウンターに座るや "天ぷら玉子味噌煮込み" を注文する。
大将の手際に見入りながらキリンラガーを呷ると、着丼を待つ時間もなんだか楽しい。 
土鍋がぐつぐつ音をたてて、最後に落とした玉子が次第に固まっていく。
天ぷらは、海老、ナス、かき揚がのる。汁を吸う前にサクサクと味わってしまおう。
暑い中、ハフハフとうどんを食べる。濃いめの味噌が美味いね。
ボク的には、汁をたっぷり吸った揚げが好きだな。って「名古屋めし」堪能の津島の町。

2019/10


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渓流の露天風呂と制服と比内地鶏と 花輪線を完乗!

2020-10-10 | 呑み鉄放浪記

IGRいわて銀河鉄道(旧東北本線)に乗って盛岡から6つ目、好摩駅が花輪線の起点。
ちょうど1番線と3番線に2両編成が顔をそろえた。すべての列車は盛岡始発終着なのでここは途中駅。

『ふるさとの 山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな』
跨線橋の窓を開けると、石川啄木が朝に夕に仰ぎ見た岩手山の存在感が半端ではない。

旧東北本線から分岐した2両のディーゼルカーは八幡平の豊かな田園地帯を往く。
ボクは盛岡で仕込んだ "七福神" のスクリューキャップを切って、黄金色の田圃を眺めながら一杯。
安比高原まで唸りを上げていたエンジンも、峠を越えたのかいつの間にか軽快に坂を下っている。

 山間の小駅で途中下車、2両編成のディーゼルカーを見送ってしまうと次の列車までは3時間もの空白。
急ぐ旅ではなし、渓流のせせらぎ聴きながら、湧き出る温泉にと大自然に身をゆだねるのだ。

 駅から5分、湯瀬ホテルに伺う。宿泊客の到着までは日帰りの湯を提供してくれるのだ。
湯舟がそのまま渓谷に張り出したような露天風呂、せせらぎに耳を澄ませながら至福に浸る。

渓谷美を切り取って絵画のような半露天風呂からの眺め、木々が赤や黄に染まる頃は最高だろうな。
そっと右足を湯舟に入れると、湯面に映ったもう1枚の絵具が滲んだ。

温泉を堪能したら、ラウンジで缶ビールのリングを引く、やはり3時間の待ち合わせを少々持て余してる。

 静かな山間の駅だから、列車の接近はずいぶん速くから感じるんだね、到着の5分前くらいから。
風に乗って、山に響いて、レールを伝って、タタンタタンという走行音やピーって警笛音が届いてくる。
ずいぶん遠くまで来ている感(実際そうなんだけれど)がして、ひとり旅の醍醐味かな。

2両編成のディーゼルカーは米代川の渓谷を軽快に下る。終点の大館までこの東北第5の大河に寄り添うのだ。

やがて車窓に平地が広がると鹿角花輪に停車、反対側のホームにも2両編成が到着して上り下りが交換。
可憐な制服たちが手を振りながら、盛岡行きと大館行きに分かれて乗り込む。夏服姿も今週で見収めだ。

 鹿角花輪を出て8キロほど、それまで北へ流れていた米代川が西へとほぼ直角に流れを変える。
米代川に沿う花輪線は十和田南で不自然なスイッチバックで進行方向を変える。んっ?
どうやら鉄道が敷かれた頃は、潤っていた小坂鉱山方面へと直進する路線計画があった名残りらしい。

 秋分を過ぎたこの沿線が夜の帳に包まれるのは早い。6時ともなれば寂しさと肌寒さに包まれる。

終点ひとつ点前の東大館に降り立つ。地図で見る限り、酒場の集積は大館駅周辺よりむしろこちらの様だ。
といっても真っ暗な町並み、スナックや赤ちょうちんの灯りが点在するノスタルジックな通りを抜けていく。
やがてアーケードの蛍光灯の灯りが眩しい県道に出ると、正面に「一の酉」の紅い暖簾が現れる。

地酒はまず "刈穂 山廃純米" を。山廃ならではの超辛口をさっぱり "とりかわポン酢" をアテに愉しむ。
(地酒と言っても大曲の酒、鹿角・大館の酒は置いてなかった。ちょっと残念。)

二杯目の "福小町" は湯沢の純米吟醸酒、吟の精仕込みの限定醸造は024/300とナンバーリングしてる。
アテは "とり豆腐"、絹ごしに熱々の鶏のとろみ煮がかかって絶品、寒い季節、燗酒のお供に最高だろうな。 

さて、味は申し分ないこの店だけど、焼き方がワンオペで回っていないなぁ。ずいぶん時間がかかりそう。
ご自慢の焼き鳥やつくねは諦めて、そろそろ仕上げにかかる。

でっ〆は "比内地鶏の親子丼"、ここまで来たのだから食べておかないと。
歯応えある比内地鶏にとろっとろの玉子を絡めて口に運ぶ、噛むほどに旨味が感じられ美味。

 まだ9時前だけど、これが最終の大館行き。ただひとりを乗せて2両のディーゼルカーはラストスパート。
地方都市の夜は早い、駅前にはタクシーがぽつり1台。すでに晩秋の気配の中、花輪線の旅は終わる。
これからこれまた早い最終青森行きで弘前に向かう。明日は五能線を潰すのだ。

花輪線 好摩~大館 106.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Eighteen / 松田聖子 1980


もりおか漫ろ歩記「じゃじゃ麺」

2020-10-08 | 旅行記

 開運橋で北上川を渡って、若き日の木が暮らした "もりおか漫ろ歩き"。
中ノ橋の「岩手銀行赤レンガ館」は東京駅を手掛けた建築家辰野金吾の設計。
ルネッサンス風の赤煉瓦造りに緑のドームが秋空に映えて威風堂々としている。

 こちら「紺屋町番屋」は、1891年に建てられた盛岡消防よ組番屋。
寄棟屋根に六角形の望楼を持つ木造様風建築、これもまた美しい。
こうした建物が街中に残っているのは住んでいる人の誇りですね。きっと。

 『不来方( こずかた )の お城の草に 寝ころびて 空に吸はれし 十五の心』
木が詠んだ盛岡城跡公園を訪ねる。

堅牢な石垣が積まれた本丸だが天守閣はない。完成したのが大阪の役の頃であるから、
南部氏が幕府に警戒されるのを避けたとする説が有力だ。

城の東側内堀にあたる鶴ヶ池、夏の夕涼みに訪れたくなるような清涼な雰囲気。

 城の北側には南部氏の開祖や南部藩初代藩主を奉った櫻山神社が鎮座する。
そして、その鳥居前にある盛岡じゃじゃ麺の元祖「白龍(ぱいろん)」が今回の目的地。

もちもちとした食感の平打ち麺と、ひき肉、胡麻、椎茸を混ぜ込んで炒めた味噌を
必死にかき混ぜて、好みで酢・ラー油・にんにくを少量加えて "じゃじゃ麺" 準備完了。
いただきます。

麺を少し残したところで、テーブルの丼に盛られた卵を溶いてカウンターに載せる、
ひと声かけると店員さんがじゃじゃ麺のゆで汁、ねぎ、味噌をかけてくれるのだ。
このスープが "ちいたんたん"、これで〆る。

 腹ごなしに中津川沿いを上流に歩くと、菊の司酒造の白い蔵が見えてくる。
江戸中期から醸す蔵で、"てづくり七福神" の300mlを仕込んだら花輪線を潰します。
開運橋から県のシンボル岩手山(2,038m)の雄姿、これから裾野をぐるり廻るのだ。

Season / 門あさ美 1980


人生のそばから こばやし@信濃大町「くるみそば」

2020-10-06 | 旅のアクセント

 

信州名物 "くるみそば" は甘みのあるクルミペーストをそばつゆに溶いていただく。
クルミの甘味とつゆのしょっぱさの絶妙なバランスを味わいながら、ズズっと啜る。
そばは香り高いとは云えないけれど、胡桃だれを邪魔せず、むしろ良いんじゃないかな。
歳を経るごとに蕎麦が好きになってきたのは、ボク自身が信州産だからだろうか?
美味い蕎麦を探して、いつだって訪ねたい信州なのだ。ごちそう様です。

 山小屋風の信濃大町駅から本町通りを北へ向かうと「手打そば処こばやし」がある。
南小谷では叩きつけるような雨が、いつしか霧雨になって、雲間から陽の光が射す。
糸魚川~南小谷を代行タクシーに乗ったから、大糸線の呑み潰しは mission incomplete。
それでは寄り道せずに松本まで流そうと思いつつ、信州そばを求めて途中下車なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
摩天楼 / 岩崎宏美 1980


夕陽に染まる松本城と信州の地酒と 篠ノ井線を完乗!

2020-10-03 | 呑み鉄放浪記

大糸線で北アルプスを眺めながら缶ビールでも開けようと、朝一番の "はくたか" で糸魚川へ向かった。
ところが、昨晩停滞した前線の影響で新潟県西部は大雨、姫川沿いの糸魚川~南小谷は運転見合わせだって。
考える間もなく代行タクシーの後部座席に押し込まれて mission incomplete 決定。
それではと、寄り道せずに松本に抜けて篠ノ井線を旅しよう。70kmほどだから午後からでも行けるだろう。

北陸新幹線を跨ぐ篠ノ井駅は3階の高さにある。なんだか東京近郊の私鉄駅みたいだ。
ペデストリアンデッキには聖火トーチを支えるブロンズ像「雪ん子像」が立っている。
なぜって?篠ノ井駅は1998長野冬季オリンピックの開会式・閉会式のスタジアムに最寄りだから。

篠ノ井線の主役は "ワイドビューしなの"。篠ノ井~松本の単線区間を1時間に上下1本ずつ走るから、
貨物列車を退避させ、各駅停車を待たせ、それはもうわがもの顔で25‰の山道を駆け抜けていく。
ボクはと云えば、後続14:20発の2240Mに乗車、各駅停車で往くのが吞み鉄ゲームのルールなのです。 

2つ目の姨捨駅には15分ほどで到着、うばすて山伝説、更科の月、そしてスイッチバックで有名です。
善光寺平を一望するこの辺りは、石北本線の旧狩勝峠、肥薩線の矢岳越えと「日本三大車窓」と称され、
ホームの展望デッキからは千曲川が滔々と流れ、甍が煌めく善光寺平の大パノラマを堪能できる。

このパノラマを楽しめるのも、わがもの顔に振る舞う主役を通過させるための待ち時間のお蔭なのだ。
ホーム下の本線を長野行きの特急が軽快に駆け下りていくと、待たされていた2240Mも出発時刻になる。

全長2,656m、レンガ造りの冠着トンネルを抜けると、そこは標高676m、篠ノ井線のピーク。
蒸気機関車の時代、急勾配の続くトンネルでは煤煙による機関士の窒息事故なども起きたそうだ。

ピークを過ぎた後続の2242M、今度は松本平に向かって勾配を駆け下りることになる。
およそ30分で視界が開けると明科、西にはすでにシルエットとなった北アルプスの頂が連なり、
傍らには山々から昨日までの雨を集めた犀川が、列車とすれ違うように北へと蛇行していく。

16:25、松本着。夏山シーズンを終えて、ようやく落ち着きを取り戻した岳都の玄関口。
お城口(東口)に出たら浅間温泉行きのバス停を探す。こんな時間だけど松本城くらいは見ておきたい。

夕陽を浴びた松本城、静けさの中に神秘的に浮かぶ。そういえばこんな時間に訪ねたのは初めてだな。
五重六階の天守、黒と白のコントラストが王ヶ鼻(美ヶ原)の濃い緑を背景に美しい。

城下町を漫ろ歩いて、今宵は駅近の「信州酒場 山里」で地酒と郷土料理を堪能したい。
場所柄、地元の若者、観光客、出張のサラリーマン風など、ちょっと混沌とした雰囲気になってるね。

まずは天竜川沿い中川村の "今錦おたまじゃくし"、ふくよかな味わいの特別純米酒ひやおろしを。
もみじを散らしたラベルには工夫があって、酒の成長をおたまじゃくしで表しているそうだ。
冬に出荷する生酒は手足なし、春の特別純米では足が出て、1年を経たひやおろしは手も生えてってね。
アテには "辛味大根おろしと馬肉叩き"、炙った赤味馬刺しに信州の辛味大根をたっぷりおろして、
ポン酢でさっぱりと美味しい。 これ、馬肉はちょっとって人でもいけるんじゃないだろうか?お奨めです。

2杯目は高瀬川沿い池田町の "大雪渓 山装う"、こちらは生酛造りの特別純米、やわらかな口当たりの酒。
秋酒らしいネーミングとラベルが気に入りました。もう一品 "岩魚と野菜のかわり天ぷら" をいただく。
身はふっくらサクサクと、骨はからっと素揚げして、安曇野の岩魚が美味なのです。

18:25、松本発。ほろ酔いの身体をクロスシートに沈めて、旅の残りはあと駅5つ。
松本~塩尻間は、長野からの列車に松本始発の新宿方面、名古屋方面への列車を加えて賑やかになる。
838M、夜の木曽路を中津川まで走り抜けるJR東海の電車はアルミのボディーにオレンジのラインが鮮やか。
18:43、塩尻駅着。ブドウ畑が広がる桔梗ヶ原を抱えて、ここ塩尻には信州ワインの産地。
宵闇に浮かぶサイン、まるでワインボトルのエチケットのような塩尻駅で篠ノ井線の旅は終わるのです。

篠ノ井線 篠ノ井~塩尻 66.7km 完乗

バスルームから愛をこめて / 山下久美子 1980


甲州道中四十四次 街道めし6 阿弥陀海道宿「酒遊館」

2020-10-01 | 旅のアクセント

 難所笹子峠を控えて賑わった阿弥陀海道宿、本陣、脇本陣などの遺構は残っていない。
代わりに存在感を示している笹一酒造、常々酒蔵は宿場の華だと主張しているのだけど、
この蔵に限って創業は大正8年で、すでに輸送の主流が鉄道(中央本線)に移ってからだ。
甲州道中を歩く第6日目、笹一酒造の直営ショップ「酒遊館」で昼食休憩となった。
純米吟醸で喉を潤して、地野菜たっぷりの "田舎うどん" を食す。さすがに味付けは濃い。
 蔵の少し先、峠の名物 "笹子餅" を求めたら、笹子駅(黒野田宿)で旅を終えよう。

2015/12