太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ソフィア

2024-04-03 13:54:44 | 日記
昨夜、猫の鳴き声で目が覚めた。
うちの猫じゃない。声は庭から聞こえてくる。ニャー、ではなく、フゥーン、という声。
「ソフィアだ!」
私は咄嗟にそう思い、窓に駆け寄り庭を見た。

3年前、私は職場の敷地をうろうろしていた小さな黒猫を保護し、家で飼おうと計画した。(詳しいいきさつはカテゴリー「3匹目の猫計画」で)
「6月19日にあなたを家に連れていくからね」
私はその黒猫を見かけるたびに話しかけていた。
その19日、同僚があわててやってきた。
「あの猫、仔猫連れてるよ!」
私はてっきりオスだと思っていたが、メスだった。
しかも、今まで一人でいつもうろうろしていたのに、今日になって仔猫を4匹も連れてきた。
仕方がないので4匹の仔猫もろとも家に連れて帰り、翌日、病院で検査をしてもらった。

母猫にはソフィアと名前をつけた。仔猫たちは生後3週間ほど、ソフィアもまだ半年の若いママだった。
それから夫と二人で、毎日猫たちのお世話に追われた。
4匹の仔猫の里親を探し、ソフィアは家で飼うつもり。
いろんな人のおかげで、仔猫たちは里親も決まり、あとはソフィアを慣れさせるだけなのだが、これが難しい。
ケージのドアを開けると、ソフィアは飛び出して、部屋の窓と網戸の間にはさまるようにして、外に出たがる。
先住猫たちとの面会以前の、野性味の強い猫だった。

あれこれ手を尽くしてみたが、結局、ソフィアは外で自由に生きるのが幸せなのだと思い、避妊手術をして、泣く泣く庭に放したのだった。

庭に放して数日は、夕方、呼ぶとどこかからやってきて、裏階段に置いた餌を食べ、このまま外猫として飼えたらいいのにと思っていたけれど、そのうち、呼んでも出てこなくなった。
ソフィア

あれから、私はソフィアのことを忘れたことがない。
毎日、ソフィアの幸せを祈り、黒猫を見かければソフィアじゃないかと思う。
雨が降れば、こんな雨の中、ソフィアはどうしているだろうと思う。
お腹をすかせていやいないだろうか。
ケガをしていないだろうか。
病気になったりしてないだろうか。



里親に出した仔猫のうち、1匹が事情があって我が家に舞い戻ってきた。
それがコーちゃんだ。
コーちゃん



ふぅーん、ふぅーん


庭のどこかで鳴く声を、ベッドの上で寝ていたコーちゃんが耳を立てて聞いていた。
窓から庭を見ても、そこは真っ暗闇で何も見えない。
しかし鳴き声は、割と近いところから聞こえる。

「ソフィア、ソフィア」

私は名前を呼んだ。
鳴き声は一瞬止まった。
うちの庭には何匹かの猫がやってくるから、そのうちの誰かかもしれない。でも、私にはソフィアだと思えて仕方がなかった。

「ソフィア、あなたの子供たちは全員、ソフィアのおかげでものすごく幸せにしているよ。ソフィアは世界一えらいママだよ、みんなをこんなに幸せにしたんだから。
ありがとうね、ソフィア。
ありがとうね、ソフィア、大好きだよ」

私は窓にしがみついて、そう叫んだ。
鳴き声は止まったが、猫はそこにいて、私の言うことを聞いている気がした。



4匹の仔猫のうち、1匹は「チーズ」と名付けられて、「クラッカー」という名前の犬ときょうだいのように仲良く暮らしている。
2匹は、「ロジェ」と「ジェニー」という名前で、友人の韓国人のお宅で舐めるようにかわいがられている。
そしてコーちゃんは、我が家で我がもの顔で走り回り、チーズケーキ達とすっかり家族になった。

コーちゃん

コーちゃんを真っ黒にしたら、ソフィアにそっくりだ。

こんなに可愛い子を私たちに残してくれて、ありがとう。
ひとめ、ソフィアに会えたら。
ソフィアが元気でいるのを、この目で確かめられたら。
ソフィアを思うと、涙が出そうになる。