長期間保存された日本酒に生じる特有の香りに「熟成香」とか、「老ね香(ひねか)」などと呼ばれるものがあります。
どちらも似たような香りでありながら、良い意味で使われるときは「熟成」、良くない意味のときは「老ね」と表現されているようです。
ではその二つをどう使い分けるのかとなると、そこが難しいのですよ。
ひとつの物事に対して「快」と感じるか「不快」と感じるかは人それぞれですからね。
お年を召された役者さんを見て、「あの人も老けたねぇ。」と残念がるか、「若いころには無かった魅力が出てきたねぇ。」と好感度が上がるか・・・
昔、某酒蔵のかたと呑みながらお話ししたときに「このお酒は きれいに老(ひ)ねてるね。」と表現されたのを憶えております。
「老(ひ)ねる」という言葉を肯定的に使われたかたは後にも先にも多くはありませんから記憶に残ったんでしょう。
以来、私にとって「老ね香」という言葉は決して悪い評価のときにだけ使うものではなくなりました。ですから会話の中でも「老ね香」と「熟成香」をあまり区別せずに使うこともしばしば。
きれいに老(ひ)ねてるお酒、ありますよ。
それでは本日も日本酒で乾杯!