日没までに下山が間に合わなかった人達がヘッドライトも持たずに降りてくる姿を見つつ、スニーカーに裸足、さらに100円カッパ、Gパンで登って行こうとする外国人たちに紛れ、翌朝までに戻る計画で望んだわけですが⋯
翌朝、激しく車を叩く雨音で目が覚めました。
とりあえず温泉に行きました。
明日こそ素晴らしい天気で「ゼロ富士」を締めくくりたいと思います。
0時30分起床。
タクシーで五合目に戻ります。
富士宮口登山道入り口です。
午前2時25分登山開始します。
2時45分「雲海荘」の前を通ります。
少し白んできました。
標高3,000mを超えます。
元祖七合目をだいぶ過ぎたところ、標高3061mのところでE君にトラブルが出ました。
手袋が思ったよりも気温に対応できず、さらに芯まで濡れているようで、かじかんできたというのです。
風はさらに勢いを増していて、霧といっても粒になって凍ったような感じです。
視界は3~5m程度のままです。
『高橋さん、申し訳ないんだけど俺行ける気がしない。手の感覚がなくなってきた』
『わかった。⋯ 撤退しよう』
この状態で山頂までなんて、そこを墓場に選ぶようなものかもしれない。ならば一旦撤退して次の選択をしよう。
踵(きびす)を返して下山するのに時間はかかりませんでした。
ガックリ肩を落とすE君。
諦めたんじゃない。
諦めたんじゃない。
より正しい選択をするために一度降りるだけ。
慎重に来た道を戻ります。
こんなに登ってきたんだと思うほど長かったです。
降りていくにつれて上がっていく気温にE君もホッとしている様子です。
『一度車まで戻ってリセットしよう。そしてきちんと装備し直して明後日五合目から登り直そう。食料調達して美味しいもの食べて温泉入って過ごそう』
五合目まで下山すると、外国人3人組がいました。
『あのぉすみません。タクシー電話うまくできなかったねぇ、助けてくれませんか』
どうやら話がよく分からなかったようです。
そこからタクシーを呼ぶためにE君と散々調べたり電話したりしていると、1台のタクシーが上がって来ました。
「空車」になっています。
手を振って止めます。
窓が空いて運転手さんが言いました『タクシー乗り場は上なんです。ここでは乗せられないのでもう一度上に上がって下さい』と。
疲労で突っばった足をもう一度スイッチ入れて登ります。
タクシーの運転手さんが走って来ました。
『また登らせちゃってすみません、ここで乗せるのが決まりなんです』
僕『5人なんです。2台必要ですか?』
タクシー『もう1台呼びましょうか』
長い間外で立ちすくんでいた外国人を先に乗せてあげようと思って『さ、乗って』と言うと『大丈夫、大丈夫先に行ってください。ほんとありがとう、ほんとありがとう』と乗り場まで着いてきて頭下げてくれました。
ヤマハ発動機で働いていると言っていました。
外国人だって日本人と同じ思いやりの心を持っている人もいます。
手を振って別れます。
タクシーの運転手さんが言いました。
『こんな天気ですからねぇ、最後に上まで上がって誰も居なかったら帰ろうと思ってたんですよ』
翌朝、激しく車を叩く雨音で目が覚めました。
昨夜遅く五合目に向かった人達はどうなっただろう。天気予報見てないのかなぁ。
まさか気合いだけで『行くぞー』なんてことはないよね。
念のため富士山の山小屋のTwitterを確認すると『来ないで!登らないで!救助すら出来ない状況です』 と動画付きで投稿がありました。
風速25mは超えているような横なぐり以上の凍ったような雨の動画は衝撃的でした。
激しい雨はやがて上がりました。
麓からも山頂が見えています。
あとから知りましたが、やはり低体温症で動けなくなった登山者が数人出たようです。
とりあえず温泉に行きました。
空いていて、露天風呂が広くて適温でした。
だいぶ身体のダメージが軽くなりました。
そしてコンビニで明日の食料と今夜の食事を買いました。
再び水ヶ塚駐車場に戻る途中富士山が丸見えになりました。
明日こそ素晴らしい天気で「ゼロ富士」を締めくくりたいと思います。
富士山の周りでは「走る人」「登る人」「自転車でヒルクライムする人」「旅の途中的な人」「自衛隊の訓練で走る人」などたくさんのジャンルでかかわっているなと思いました。
E君と明日の時間を決めて、それぞれの時間をすごしました。
E君はけっこう早めに支度して、サッサと寝てしまったようです。
僕は19時30分ごろ身体を横にしました。
2日目
歩行距離 11.8km
累計標高差 +1,802m -805m
行動時間 10時間40分
37,100歩
0時30分起床。
夜中に着いた車。わざわざ外に出て大声で電話していました。その声で起きたという感じです。
仕方なく身体を起こし、まだ生乾きの登山靴に足を入れ、靴の紐を締めてゲイターで包みます。
氷を入れたポットと沸かした甘いミルクティーを入れたポットを持ちました。
下では冷たい飲み物、上では暖かい飲み物が欲しくなるはずです。
タクシーで五合目に戻ります。
月が出ていました。
風は弱く前日とは打って変わって静かな夜です。
富士宮口登山道入り口です。
午前2時25分登山開始します。
2時45分「雲海荘」の前を通ります。
自販機も電源が落ちています。
お母さんたちも寝ているかな?
少し白んできました。
標高3,000mを超えます。
さあ、戻ってきましたよ。
ここからルート3776の続きが始まります。
その5に続きます。