「日経新聞(20210819)経済教室欄から 1(民主主義の未来㊥)」
―サブタイトル「権威主義の優位」前提疑え―
表題は、ミシガン州立大博士(政治学)・東北大学准教授東島雅昌氏の記事からです。
この記事のポイント
❶政府対応の速さだけでコロナ対策を測るな
❷統計の正確性や資源配分の公平性にも難
❸公衆衛生に及ぼす効果は長期的に観察を
冒頭にはこうありました。
『市民の権利と自由を制限し公正な選挙を実施しない権威主義国に優位がコロナ禍の下で強調されている。 権威主義体制の指導者(独裁者)は世論に配慮する必要がなく、市民の権利を大幅に制限して迅速かつ極端な防疫体制を採用できる。 よって多様な民意を反映しないと選挙に敗北する民主主義体制の指導者よりも効果的にウィルスの脅威に対抗できるというのだ。
日本を含む先進民主主義国は間接民主制への不信、ポピュリズムの台頭、経済不平等の拡大に苦しむ。 民主主義は権威主義よりも公衆衛生や経済成長など望ましい経済的帰結を生み出すうえで劣位にあるのか。 独裁政府は休校・会合禁止・職場閉鎖・ロックダウン(都市封鎖)など思い切った措置を迅速に採用する傾向にあったことを示した。 そのうえで自由と安全はトレードオフ(二律背反)の関係にあると主張する。
権威主義体制の方が公衆衛生向上に優れると結論づけるにはそこには三つの論点の飛躍がある。
❶権威主義体制では、政策パフォーマンスに関する情報を操作するインセンティブ(誘因)構造が生み出されやすい。
❷独裁政府が主導する経済分配や公衆衛生に関する政策はたとえ大規模であっても、当局と公式・非公式につながる人々が受益者として優先されやすい。
❸データに潜む操作の問題を織り込み、権威主義と民主主義をきちんと比較できても、政治体制が公衆衛生に及ぼす影響は、長期的効果も加味して評価される必要がある。』
最後にこう締めていました。
『コロナ禍の下で、民主主義の苦境が、権威主義の優位を意味すると結論づけるのは拙速すぎる。 自由と安全を両立させるためには、権威主義の誘惑に抗し、民主主義の価値を信じてその刷新を進めることが肝要だ。』
民意の通じにくい『共産主義・社会主義国家』、同様に民意が通じにくくなった民主主義国家。 繰り返しになりますが、香港駐在中に、『財界総理』・石坂泰三元経団連会長と会食の機会がありました。 『資本主義と共産主義・社会主義』についても、ほんの少しお話を拝聴できました。 『どちらも、今のままではなく、修正されていくでしょう』とその時に理解していました。 その後、大きく修正されたのは、共産主義の方でした。 AI、SNSの発展・拡大の下ではどこまで修正・刷新ができるのか心配ばかりです。
(20210826纏め、#372)