『天保水滸伝の時代から発展が停滞した旧飯岡町(現旭市飯岡)を想う』
ー総武本線は単線で短い線の終点が銚子駅の『どん詰まり』で途中駅の飯岡駅ー
天保水滸伝を調べていたら、『川端のおじいさん』と晩年呼ばれた、好々爺の飯岡助五郎を世間は、大利根河原の決闘と、それ以降の悪評で、当然だが悪役とした。 二足草鞋の助五郎は、関東取締出役の命令で笹川繁蔵を捕縛に向かった時の争いがこの決闘であった。
江戸時代の大衆は、決闘・喧嘩・出入等の講談・芝居を楽しんだ。 意外と江戸時代も娯楽が少なかったようだが、この決闘後の飯岡方の復讐の残酷物語を大衆は好まなかった。
余談です。
❶やくざの決闘・喧嘩を『出入』とも言うが、これは本来『訴訟』のことで、江戸時代、山林・河川等への 入会権の訴訟のことを『出入』といった。
❷対決した二人ですが、関東東海の大親分、清水次郎長・大前田英五郎・国定忠治などとも付き合いがあった。 笹川村も、飯岡村も、博徒が大きな一家を構えるほど、豊かな半農半漁村であった。
この決闘で、飯岡方は、半数を失い大敗北、笹川方の死者は、平手造酒一名であった(講談や芝居の通り)。 この逮捕失敗に対し幕府より、助五郎は入牢という屈辱を味わい、これが後の、繁蔵暗殺の引き金になったし、繁蔵を結局はヒーローにした。
助五郎は、相模国公卿村山崎(現在の横須賀市三春)の生まれ。 この縁で、飯岡漁港の整備、発展のために、生まれ故郷の公卿村や三浦半島一帯の漁師の二男や三男を移住させ、飯岡港の発展に尽力した。
大利根河原の決闘の後の、繁蔵は子分の騙しにもあったが、独力で、助五郎を討とうとするも、これを察知した飯岡方の、虚無僧に変装した3人の子分に繁蔵は、闇討ち、暗殺された。(今風に言えば、このシーンこそ判官贔屓の大衆受しそうだが・・・)。
天保水滸伝の凄さはまだある。 繁蔵暗殺は助五郎の指示かどうか、今でも不明だが、首塚が飯岡の定慶寺にあり、助五郎は懇ろに弔い香華を絶やさなかったと言われている。 暗殺の後、笹川一家は、繁蔵の首は、元より胴体の発見ができず血痕のしみ込んだ土を代わりに葬った。 胴体は昭和7年に銚子で発見された。
これで繁蔵は更に悲劇のヒーローになった。 後を継いだ子分、勢力富五郎は、助五郎(関東取締役道案内の二足わらじに大出世)の謀略に敗れ、自分は自刃、子分は処刑され、笹川一家は崩壊した。
蛇足ですが繁蔵も富五郎も力士あがりであった。自分の小さい頃に旧三川村(現旭市三川)の古老から聞きました『勢力富五郎が表通りを通ると皆が雨戸を閉めた』と。
講談も芝居も、繁蔵の死をあまり描いていません。 判官は殺させたくない江戸時代の大衆の、大の判官贔屓ぶりでした。 飯岡方が繁蔵を暗殺した事実を知ったとき、自分(旧飯岡町に吸収合併された旧三川村の出身)には大きなショックでした。
さて前置きが長くなりました。 飯岡助五郎の時代には、飯岡は半農半漁で大発展していたがその後、現在まで発展ができず停滞しているこの理由を山口瞳氏の著書『巷説 天保水滸伝』から探ってみました。
総武本線いまだに、単線で短い線の終点が銚子駅で『どん詰まり』であり、途中駅の飯岡駅からの数キロ離れた飯岡町は、発展の余地があまりない。 同時に下記の鉄道網にヒントがあります。
どこの町にも、そこを中心とした繁華街があるが、飯岡の細長い街にはそれがない。 町役場を中心とすれば、飯岡駅まで直線で4km、道なりで6km、
この地理的ハンデが大きい。 鉄道も、当初の計画は、東京➡佐倉➡芝山(成田山に次ぐ名刹・観音教寺あり)➡八日市場➡飯岡(飯岡港近く)➡銚子と引く案から更に、千葉を通すので、佐倉まではV字になったが、それでも佐倉から銚子は、ほぼ一直線。
ここからは自説です。
この成東を通らない、佐倉➡芝山➡八日市場➡飯岡(飯岡港近く)➡銚子、の『√(ルート)字』ラインは実現されず、現在の総武本線は、成東経由で『W字』ラインで、『√(ルート)字』ラインより長い(成東の皆様にはご容赦のほど)。 総武本線の終点の銚子駅は一般的なターミナル駅、どん詰まりの終着駅でハブ機能は持っていない。
どん詰まりの銚子駅が終点で且つ、この総武本線に在旧飯岡町の飯岡駅は実現せず、飯岡駅は在旧海上町で、飯岡町は、発展出来ず停滞したと言われる。
地元の住民の反対で、採用されなかった佐倉➡芝山➡八日市場➡飯岡(飯岡港近く)➡銚子、の『√(ルート)字』ラインのメリットは関東ローム層の切通しやトンネル掘削工事が激減する。 このルートに地元住民が反対した理由は、稲の花、桑の葉への悪影響でした(この迷信をなぜ信じたのか!)。 蒸気機関車は日本国中のどこでも、田圃・桑畑の中を走っていた。
九十九里海岸には大きな漁港は、南端の大原港と北端の飯岡港のみであった。飯岡港の最寄りに飯岡駅があったらと、だが歴史に『if・イフ』はありません。
(2017.6.14纏め、20190304改 #085)
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