大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の男子生徒が、顧問の男性教諭より体罰を受けた翌日自殺に追い込まれるとの痛ましい事件が起きたのは、昨年12月中旬のことであった。
事件発生後から1ヶ月程が経過した1月中旬頃になって、ようやく大阪市教委の顧問教諭に対する聞き取り調査結果がメディア上に氾濫し始めたようだ。
朝日新聞1月12日朝刊記事によれば、部活動顧問教諭は部員への体罰が常態化していたと認め、「強いクラブにするには体罰は必要。気持ちを発奮させたいがためにそうした。ただ、自殺した男子生徒に対しては厳し過ぎたと思う。」等々とのコメントを述べたとのことだ。
大阪市内公立高校で発生した、上記部活動顧問教諭の体罰により自殺者が出た事件に、大阪市長である橋下徹氏が反応を示さない訳がない。
そう予想していた原左都子だが、案の状、橋下氏はすぐさまこの事件に飛びつき、メディア相手に再三再四のインタビュー対応を展開した。
現職としては一地方自治体の市長にしか過ぎない橋下氏ではあるが、昨年末の国政選挙戦に於いて新勢力として大旋風でも起こすのか?!と氏に期待した報道界だったことは国民の記憶に新しい。 そのため橋下氏が何か言えばメディアが飛びつく図式に関しては、特段珍しい現象ではなくなっているこの国の報道現象ではある。
この現象にいつもは「またか…」と辟易とさせられるのだが、元公立高校教員でもある原左都子としては、今回のみは「待ってました!」とばかり橋下氏の激言をテレビ報道等で注視した。
橋下大阪市長は今回の事件に対して、私が抱く学校教育に関する思想とほぼ同様の見解をメディアを通して痛烈に世にぶつけてくれた印象がある。 私の記憶に頼り、その幾つかを以下に列挙しよう。
体罰 イコール 指導・教育ではありえないこと。
当該高校の部活動現場においては日常的に体罰が繰り返されていたことに関して、教育現場に於いて絶対にあってはならず、即刻体育系の生徒募集を停止するべきこと。
当該部活動顧問教諭はこの高校に十数年間もの長き期間に渡って勤務を続けており、校長・教頭等幹部職員よりも学校内で実質的権限を保っていたらしい。 職員異動を流動化することにより、一部の職員の権力が学校内で増強されるような事態が起こらない体制作りをすること。 等々…
ひとまず、原左都子の私論に入ろう。
今回の桜宮高校における生徒自殺事件に関して言うならば、大阪市長橋下氏のメディアを通しての提言に全面的に賛同する私だ。
そもそも、体罰 イコール 指導・教育 であるはずがない。 体罰とは暴力であり、それをする側(今回の事件の場合は部活動顧問教諭)にこそ大いなる問題が内在しているものである。 親による子の虐待とて然りであろう。 子を虐待する親は決まり文句のごとく「しつけ」との言葉を吐くものだが、その背景事情を探った場合、必ずや可愛いはずの我が子に暴力を振ってしまう元凶を親自身が抱えているのが現状だ。
桜宮高校体育系部活動において日常的に顧問教諭より体罰が繰り返されていたとなると、この冬自殺者を出した直後の現場であるからこそ、一時体育系コースの生徒募集を停止するのが常識的判断であろうかと私も考えるのだが。
公立高校に於ける教職員の異動に関しては、短期間であるがその現場に勤務した経験がある私もよく理解できている。
どうやら民間企業と公立学校現場とでは、職員異動の方式や原理がまったく異なると私は痛感させられた。 民間企業現場においては「左遷」もあれば「栄転」もあるのが社員異動の実態である。 片や、公立学校現場とはそもそも校長・教頭を除きすべてが「平教員」の立場であるのだが、その平教員の中でも当然ながら能力差による上下関係は存在する。
ところが公務員という世界には「左遷」がないのが実情だ。(誤解を恐れずに言うと、無能力職員とて定年までの勤務を全うできるのが公務員世界の特徴である。) もし校長・教頭に実力があれば、能力不足あるいは問題を抱えている平教員を「左遷」扱いで何処かに異動させることは可能であろうが、大抵の場合その力がないのも実情だ。 そうした場合、やむを得ず問題教員の異動措置を取らずそのまま勤務させることと相成る…
教員による生徒への体罰が日常的に行われていようが、校内で生徒の自殺者を出そうが、自分の定年を静かに迎えたいのが今尚公立学校現場の校長・教頭陣の本音ではあるまいか…
その辺の学校教員をはじめとする公務員の甘さを、よくぞ橋下さん、突いてくれたものだ!! と喜んでいた私なのだが…
ところが、昨日1月23日付朝日新聞夕刊記事によると、「桜宮高校生 心に傷」 との事だ…
早速その内容の一部を以下に要約して紹介しよう。
桜宮高校サッカー部生徒の母親によると、「桜宮をすべて否定するような橋下市長の言葉にも報道にも傷ついている。子ども達の方が加害者みたいにされていませんか」 運動部主将の高3女子も「自殺した子のことを皆重く受け止めているのに、何もできない間に体育科を奪われ、支えてくれる先生も奪われ、部活も奪われ、つらい」…
自分達が信頼していた教員が橋下氏により非難され、自分自身が責められていると感じる生徒もいる。大事なのは被害者の周辺にいる人々が日常を早く回復することだ、と話すのは東京学芸大学教授の小林正幸氏である。 しかも生徒に追い討ちをかけているのが「風評被害」である。
(以上、朝日新聞1月23日付夕刊記事より要約引用)
最後に再び、原左都子の私論に入ろう。
上記朝日新聞1月23日付夕刊記事にコメントをされた東京学芸大学教授の小林正幸先生。 我がエッセイにおいて、あえて小林先生の実名を記させていただくのには私なりの理由がある。
朝日新聞の取材に応じ、桜宮高校現場が置かれている現状を慮り一般市民の誰もが感じ得る程度の見解を語るのはよいのだが、何故現役大学教授としてもっと具体的な現場支援対策見解をせっかくのメディア取材のチャンスに言論しないのか!?
自殺者を出した高校現場からこの種の反論が出ることは国民誰しも承知の事実であろう。
それでも尚、私は橋下氏がメディア上で厳しく叫んだ見解にこそ賛同したい。
今後学校現場で自殺者を出す事態を壊滅するためには、橋本氏の言及通り、現状を根源的に打破するべく徹底的な対策が講じられるべきであると私も常々考えている。
その裏で、橋下市長のメディア発言に心を痛めている桜宮高校の生徒や保護者の皆様にとって今現在一番必要なのは、適切なカウンセリングであろう。
どうか市政維持の観点ではなく、現場の生徒や保護者の困惑に真に寄り添えるべく優秀なカウンセラー陣を桜宮高校学校現場に早急に配置することを、大阪市長橋下氏に願ってやまない。
事件発生後から1ヶ月程が経過した1月中旬頃になって、ようやく大阪市教委の顧問教諭に対する聞き取り調査結果がメディア上に氾濫し始めたようだ。
朝日新聞1月12日朝刊記事によれば、部活動顧問教諭は部員への体罰が常態化していたと認め、「強いクラブにするには体罰は必要。気持ちを発奮させたいがためにそうした。ただ、自殺した男子生徒に対しては厳し過ぎたと思う。」等々とのコメントを述べたとのことだ。
大阪市内公立高校で発生した、上記部活動顧問教諭の体罰により自殺者が出た事件に、大阪市長である橋下徹氏が反応を示さない訳がない。
そう予想していた原左都子だが、案の状、橋下氏はすぐさまこの事件に飛びつき、メディア相手に再三再四のインタビュー対応を展開した。
現職としては一地方自治体の市長にしか過ぎない橋下氏ではあるが、昨年末の国政選挙戦に於いて新勢力として大旋風でも起こすのか?!と氏に期待した報道界だったことは国民の記憶に新しい。 そのため橋下氏が何か言えばメディアが飛びつく図式に関しては、特段珍しい現象ではなくなっているこの国の報道現象ではある。
この現象にいつもは「またか…」と辟易とさせられるのだが、元公立高校教員でもある原左都子としては、今回のみは「待ってました!」とばかり橋下氏の激言をテレビ報道等で注視した。
橋下大阪市長は今回の事件に対して、私が抱く学校教育に関する思想とほぼ同様の見解をメディアを通して痛烈に世にぶつけてくれた印象がある。 私の記憶に頼り、その幾つかを以下に列挙しよう。
体罰 イコール 指導・教育ではありえないこと。
当該高校の部活動現場においては日常的に体罰が繰り返されていたことに関して、教育現場に於いて絶対にあってはならず、即刻体育系の生徒募集を停止するべきこと。
当該部活動顧問教諭はこの高校に十数年間もの長き期間に渡って勤務を続けており、校長・教頭等幹部職員よりも学校内で実質的権限を保っていたらしい。 職員異動を流動化することにより、一部の職員の権力が学校内で増強されるような事態が起こらない体制作りをすること。 等々…
ひとまず、原左都子の私論に入ろう。
今回の桜宮高校における生徒自殺事件に関して言うならば、大阪市長橋下氏のメディアを通しての提言に全面的に賛同する私だ。
そもそも、体罰 イコール 指導・教育 であるはずがない。 体罰とは暴力であり、それをする側(今回の事件の場合は部活動顧問教諭)にこそ大いなる問題が内在しているものである。 親による子の虐待とて然りであろう。 子を虐待する親は決まり文句のごとく「しつけ」との言葉を吐くものだが、その背景事情を探った場合、必ずや可愛いはずの我が子に暴力を振ってしまう元凶を親自身が抱えているのが現状だ。
桜宮高校体育系部活動において日常的に顧問教諭より体罰が繰り返されていたとなると、この冬自殺者を出した直後の現場であるからこそ、一時体育系コースの生徒募集を停止するのが常識的判断であろうかと私も考えるのだが。
公立高校に於ける教職員の異動に関しては、短期間であるがその現場に勤務した経験がある私もよく理解できている。
どうやら民間企業と公立学校現場とでは、職員異動の方式や原理がまったく異なると私は痛感させられた。 民間企業現場においては「左遷」もあれば「栄転」もあるのが社員異動の実態である。 片や、公立学校現場とはそもそも校長・教頭を除きすべてが「平教員」の立場であるのだが、その平教員の中でも当然ながら能力差による上下関係は存在する。
ところが公務員という世界には「左遷」がないのが実情だ。(誤解を恐れずに言うと、無能力職員とて定年までの勤務を全うできるのが公務員世界の特徴である。) もし校長・教頭に実力があれば、能力不足あるいは問題を抱えている平教員を「左遷」扱いで何処かに異動させることは可能であろうが、大抵の場合その力がないのも実情だ。 そうした場合、やむを得ず問題教員の異動措置を取らずそのまま勤務させることと相成る…
教員による生徒への体罰が日常的に行われていようが、校内で生徒の自殺者を出そうが、自分の定年を静かに迎えたいのが今尚公立学校現場の校長・教頭陣の本音ではあるまいか…
その辺の学校教員をはじめとする公務員の甘さを、よくぞ橋下さん、突いてくれたものだ!! と喜んでいた私なのだが…
ところが、昨日1月23日付朝日新聞夕刊記事によると、「桜宮高校生 心に傷」 との事だ…
早速その内容の一部を以下に要約して紹介しよう。
桜宮高校サッカー部生徒の母親によると、「桜宮をすべて否定するような橋下市長の言葉にも報道にも傷ついている。子ども達の方が加害者みたいにされていませんか」 運動部主将の高3女子も「自殺した子のことを皆重く受け止めているのに、何もできない間に体育科を奪われ、支えてくれる先生も奪われ、部活も奪われ、つらい」…
自分達が信頼していた教員が橋下氏により非難され、自分自身が責められていると感じる生徒もいる。大事なのは被害者の周辺にいる人々が日常を早く回復することだ、と話すのは東京学芸大学教授の小林正幸氏である。 しかも生徒に追い討ちをかけているのが「風評被害」である。
(以上、朝日新聞1月23日付夕刊記事より要約引用)
最後に再び、原左都子の私論に入ろう。
上記朝日新聞1月23日付夕刊記事にコメントをされた東京学芸大学教授の小林正幸先生。 我がエッセイにおいて、あえて小林先生の実名を記させていただくのには私なりの理由がある。
朝日新聞の取材に応じ、桜宮高校現場が置かれている現状を慮り一般市民の誰もが感じ得る程度の見解を語るのはよいのだが、何故現役大学教授としてもっと具体的な現場支援対策見解をせっかくのメディア取材のチャンスに言論しないのか!?
自殺者を出した高校現場からこの種の反論が出ることは国民誰しも承知の事実であろう。
それでも尚、私は橋下氏がメディア上で厳しく叫んだ見解にこそ賛同したい。
今後学校現場で自殺者を出す事態を壊滅するためには、橋本氏の言及通り、現状を根源的に打破するべく徹底的な対策が講じられるべきであると私も常々考えている。
その裏で、橋下市長のメディア発言に心を痛めている桜宮高校の生徒や保護者の皆様にとって今現在一番必要なのは、適切なカウンセリングであろう。
どうか市政維持の観点ではなく、現場の生徒や保護者の困惑に真に寄り添えるべく優秀なカウンセラー陣を桜宮高校学校現場に早急に配置することを、大阪市長橋下氏に願ってやまない。