原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

今回の衆院選で問われる軍事力行使に関する政治姿勢

2017年10月21日 | 時事論評
 冒頭より、2017.10.18朝日新聞夕刊 文芸・批評ページ「時事小言」 国際政治学者 藤原帰一氏による「この衆院選で問われているもの 『保守VS.革新」崩れても」 の記述の一部を、以下に要約して紹介しよう。


 そもそも今回の衆院選の意味が分からない。
 任期満了の解散ではない。 北朝鮮や税制についてもこれまでに日本政府のとってきた政策と異なる選択を問いかけるわけではない。 現政権への信任を問う選挙、それもいま解散すれば勝てそうだから衆院を解散した選挙である。
 新たに結成された希望の党もよくわからない。 現政権との違いはあるが、どこまでこの政党が「12のゼロ」にコミットしているのか心もとない。
 各党の主張を見る中で浮かび上がるのが、憲法への姿勢である。
 自民党 「憲法改正の原案を国会で提案・発議」
 希望の党 「憲法9条を含め憲法改正論議をすすめる」
 立憲民主党 「安保法制を前提とした憲法9条の改悪に反対」
 公明党 「平和安全法制」を認める点で立憲民主党と異なるが、憲法9条1項2項を堅持する点においては自民・希望とやや違いがある。
 憲法改正を支持する国会議員が、「安保法制は憲法の枠の中で安保条約との整合性を求め、紛争地域における平和構築への貢献も可能とするはずのものであるが、安保法制だけでは不十分、憲法改正が必要だ」と主張するのを聞いたこともある。
 国際政治を専門とする私(藤原氏ご自身)は、国際関係において軍事力の果たす役割は存在すると考える。 同盟と抑圧、さらに平和構築を軍事力抜きに考えることはできない。
 だが、憲法改正を求める政治家の主張は、平和主義の硬直を拒むあまり、軍事力の効果を過信しているのではないか。 攻撃すると脅せば相手が引っ込むとは限らない。 紛争における軍事力の効果を過大視すれば紛争を誘発し、拡大しかねない。
 憲法9条を擁護する政治家は、およそ二種類に分かれる。 第一は、憲法9条に基づく平和国家をつくる視点から、国際関係における軍事的関与を否定し日米同盟にも反対する立場。 もう一つは、国際関係において軍事力の果たす役割があることは認識し、日米同盟にも賛成するが、日本は軍事行動に慎重な政策を貫くべきであり、憲法はその慎重な姿勢を保つために重要な役割を果たしているという考えである。 前者が憲法の理想を支持しているとすれば、後者は憲法が権力に加える制約に期待するものである。   
 吉田茂首相の時代に生まれた、経済成長を優先する保守政党と護憲平和を求める野党諸党が織りなす戦後政治の構図は、現代世界と大きく異なる。 憲法を根拠に国際紛争への関与を拒むことは現実的でも正当でもない。 憲法9条に基づく平和国家という構想の中に国際危機への対応を読み込むことは私(藤原氏)は出来ない。 国際紛争から目をそらした日本だけの平和を求める意味も少ないだろう。 だが、保守対革新という構図の背景に、保守革新を通じて軍事力の行使には慎重な態度を共有する基本的な了解があったことは無視してはならない。
 そして、現在の国際関係ほど軍事力の行使に慎重な姿勢が必要な状況は少ない。 北朝鮮でもイラクでも戦争の可能性がかつてなく高まり、危機を戦争にエスカレートさせない判断力が必要だからだ。 合同練習によって抑止力を誇示したところで北朝鮮の行動を変えることは難しく、西側から先制攻撃を加えるリスクも高い。 軍事力の限界を知る人でなければ、この状況における外交を担うことはできない。 
 保守か革新か、安保か憲法かという伝統的な図式はすでに後退している。 軍事力の行使に慎重を求めるという戦後日本政治の基本的合意を壊してよいのか。 
 この選挙で問われているのはその点である。
 (以上、朝日新聞「時事小言」国際政治学 藤原帰一氏の記述を、原左都子が要約して紹介したもの。)


 原左都子の私見に入ろう。

 9月末頃に突然「衆院解散総選挙」を発表した当初、その張本人である安倍首相は突如として「消費税を10%に上げてその増税分を国民の皆さんの社会保障に充てる」、と今回の選挙の主柱らしき(私に言わせてもらえば、国債額膨大にして完全論理破綻の)声明を出した。 
 即座に野党がそれに反発し始めると、安倍首相は今度は論点を北朝鮮問題にすり替え、やたらに拉致被害者を表に出す作戦に出た後、決して消費税増税に触れなくなった。
 そして希望の党が自滅し始めた暁には、まんまと自公与党“棚ぼた”勝利を確信した様子で、今では既に安倍政権続投に向け平然と余裕を扱(こ)いている有様だ。

 そんな安倍首相から、アカデミックなレベルの「憲法論」を聞いたためしが一度も無い。
 ただただ改憲・安保法制定を自分勝手に強直に国民に押し付け、(他の主要国首長が誰一人として全面的に迎合しない)米国のトランプ大統領に迎合しつつ、「北朝鮮には断固として制裁を加え続ける!」とトランプ氏に従い明言し続けている。

 上記の藤原氏記述に賛同する私の視点からだが、安倍首相は何故、素人もどきに(大変失礼だが知能指数の程が疑われそうな)非アカデミックな発言を国民に平然と投げ続けるのだろう?
 一国の首相であるならば、時には過去の政治を振り返り先人政治家達の偉業の程を確認しその知恵を拝借したり、あるいは現役政治学者とまみえてその学術力を自身の政治活動の参考にする等々の努力をするべきだろうに…。


 最後に私論だが。

 この私は、既に「期日前投票」を済ませた。
 以前より当エッセイ集にて公開しているが、上記憲法・安保論議も含めた総合評価で私は枝野氏率いる「立憲民主党」へ貴重な一票を投じてきた。
 枝野氏の「憲法・安保」観に関しては、先週放送されたBSプライムニュースにて2時間たっぷり枝野氏の現時点での思考・政策の程を聞き、同意させて頂いている。

 明日(10月22日)選挙に行かれる国民の皆様にお願いしたい。
 今回の衆院選挙の最大論点は、上に藤原氏が記されている通り「軍事力の行使に慎重を求めるという戦後日本政治の基本合意を壊してよいのか?」であろうと私も考える。
 ただその文言が多少難しいと感じる場合であれ、とにかく棄権せず、ご自身が“一番マシ”と思える党や人物に貴重な一票を投じて欲しいものだ。 

 巨大台風ねえ。 どこまでも混乱する今回の衆院選だこと……。