(冒頭写真は、試験管内でつくった精子から生まれた赤ちゃんマウス。 朝日新聞記事より転載したもの。)
冒頭から、朝日新聞2021.10.04付夕刊記事、“ぷらっとラボ” 「試験管内で精子できた!」の内容を要約引用しよう。
マウスの精子をつくることに成功したのは、京都大と横浜市大のチーム。
精子が成熟していく各段階を詳細に解析できるようになり、不妊の原因などを解明する研究に役立つ可能性がある。
万能細胞から精子をつくる研究は、これまで精子のもととなる細胞までの段階は試験管内で成功していた。 だが、この細胞を生きた個体がつくる精子と同レベルに成熟させるためには、細胞を生体内に移植する必要があった。
生体内で精子が成熟する過程を観察するのは難しく、メカニズムを解明する研究の壁となっていたが、今回の成果はその現状を打破した。
兄弟の斎藤教授らは、生体内では精子のもととなる細胞が成熟する途中で、遺伝子の働きを調整する機構がいったんリセットされることに着目。 この過程を再現するために、精子のもととなる細胞を薬品などを入れて5日間培養した。 すると、遺伝子の働きがリセットされることを確かめた。
リセット後の細胞に、マウスから採った精巣の細胞を混ぜたところ、生体がつくるものと同レベルの精子に成熟させることができた。
試験管内でつくった精子を体外受精させると、赤ちゃんマウスが生まれ、通常のマウスと同様に健康に育った。 今後、世代を継いでも影響がないかを調べる。
今回の研究では、試験管内で全過程を進めているものの、生体から採った精巣の細胞を使う必要がある。 チームは、ほかの細胞を使わず、薬品を使って人工的な操作のみで精子をつくることをめざす。
研究成果は8日、米科学誌「セル・ステム・セル」オンライン版に掲載された。
(以上、朝日新聞夕刊記事より要約引用したもの。)
私事及び私見に入ろう。
いやあ、懐かしいなあ。
この記事を読んで、国立研究開発法人・理化学研究所に勤務していた日々を思い起こした。 あれから既に10数年の年月が流れているのだなあ、と感慨深い気分になる。
私は、研究の実験担当者として採用されていたが、まさに日々マウスの遺伝子との闘いだった。
そのマウスの尻尾の先を短く切るエキスパート女性担当者がいて、その人が切ってくれたマウスの尻尾から、遺伝子を抽出して様々な実験を施したものだ。
私自身は実験動物を直接扱った経験は一度もなく、実験台にての実験こそが専門だった。
上記朝日新聞記事に戻ると、試験管内で精子をつくるのに成功したのは京大と横浜市大の研究者たちのようだ。
私自身が2度目に卒業・修了したのは横浜市大商学部、及び大学院修士課程経営学研究科・経営法学コースだが。(1度目の医学部に関しては郷里の国立大学卒業です。) 現在横浜市大の医学分野が、諸研究に於いて躍進している事実に驚かされる。
この記事を読んで、私が一番に注目したのは、「今後、世代を継いでも影響がないかを調べる」の部分だ。
それぞ、肝心要であろう。
万能細胞のひとつであるES細胞からマウスの精子をつくることに成功した事実、及び、その精子から赤ちゃんマウスが生まれた事実は素晴らしいの一言に尽きるが。
まさにその次世代への影響調査こそが、今後必須となろう。
(医学研究とは、下手をすると人の命を奪いかねない事実を把握している身として。)
この実験結果が更に発展して、人類に適応される日はまだまだ遠いのであろうと想像するが。
それにしても万能細胞を使用した実験は日々成長を遂げつつある事実を、改めて実感させられるニュース報道であった。