(冒頭写真は、朝日新聞愛読者プレゼント “グランマ・モーゼス 素敵な100年人生シリーズ” より、油彩「静けさにつつまれて」。)
グランマ・モーゼス氏作品の特徴とは。
人が沢山描かれていて賑やかなことか、と捉えていたが。
今回の2枚の油彩作品には人が描かれていなかったり、描かれていてもごく少人数である点が特徴だろう。
そう感じていたところ、やはり解説もその趣旨の論評だった。
まずは、こちらの作品「静けさにつつまれて」の解説を紹介しよう。
四季折々の風景の中、楽しげに活動する日飛び地がこまやかに描き込まれている。 そのような作品を多く残したグランマ・モーゼスは、他方で、穏やかに静まり返った風景画も手掛けている。 小川のそばには、水車とつつましい家。 川べりの細い一本道には誰もいない。 その道の上に、モーゼスはひっそりと「ALL IS STILL(静けさにつつまれて)」と記した。
ややくすんだ色調は、19世紀後半のアメリカ合衆国で大衆的な人気を博した風景画を思わせる。 モーゼスは身近に手に入る印刷物の絵を手本とし、自分自身の世界を少しずつつくりあげた。 雄大な自然の情景は、モーゼスの小ぶりな作品の中でも確かに息づいているようだ。
原左都子の感想だが。
この作品、左側に小道(小道だよね??)が描かれているのが、私に郷愁をもたらしてくれる。
人は描かれていないけれど、いつかはこの小道を人や牛や馬??が通ることを想像すると、この作品も生命の息吹が根付いている風景であるような気がする。
次なる作品は、こちらの油彩「美しき世界」。
やはり人や動物が少数なりとも描き込まれていると、絵に活気を与えるものとの印象を抱く。
解説文を紹介しておこう。
「どんな絵がいちばん好きですか?」と生前にインタビューで聞かれたグランマ・モーゼスは、「きれいな絵」と答えている。 「本当にきれいなものはなんだろう、と考え抜いて思いついたら絵に描きます。そして古いものが好きです。歴史的な記念物、橋、水車小屋、旅館や古い家などですね。 どんどんなくなっていきますから。ほとんど記憶で描きます。 白昼夢みたいなものです」
単純すぎると思われるかもしれない。しかしどのような芸術も、何らかの意味で生を肯定するものではないだろうか。 人間の思考や感情はかけがえのないもので、時には美しい、という信念がモーゼスの画業の核心にある。
本作には、人間と自然のあいだの調和、という彼女の理想も表れている。
(以上、作品の解説文を紹介したもの。)