礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

帝国憲法の条規中、絶対的に変更すべからざるもの

2022-08-17 05:09:39 | コラムと名言

◎帝国憲法の条規中、絶対的に変更すべからざるもの

『国家学会雑誌』第四八巻第五号(一九三四年五月)から、清水澄の論文「帝国憲法改正の限界」を紹介している。本日は、その二回目。

 帝国憲法改正の限界を闡明〈センメイ〉するには、其の条規中絶対的に変更すべからざるものを列挙するを以て捷径とする。乃ち〈スナワチ〉、その主要なるものを条陳〈ジョウチン〉して以て帝国憲法改正の限界を略々〈ホボ〉映出することが、此の一篇の意図である。其の箇条は、以下に列掲〈レッケイ〉する所の如くである。
  帝国憲法第一条に、「大日本帝国ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。改めて言ふまでもなく、これは国家統治の大本を明々白々に道破したるものである。建国の基礎は、之を措いて他に求むべくもない。此の一条は未来永劫微塵〈ミジン〉だも改変すべからざること、勿論である。
  帝国憲法第二条に、「皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス」とあり、皇室典範第一条に、「大日本国帝位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス」とある。此の二箇条は措辞は少しく異なるも内包は全く同一で、俱に皇位継承の資格要件を明定したるものである。即ち、其の定むる所は、皇位継承の資格を限局するに、皇祖宗の血統に属すること・男系に属すること・皇室の列に在ること・男子なることの四要件を以てするに在ること、炳焉〈ヘイエン〉として昭〈アキラカ〉である。此の四つの要件の中〈ウチ〉強いて軽重を別てば〈ワカテバ〉、男子なることは蓋し稍々軽しと為すべきであらう。現に嘗て〈カツテ〉女子にして帝位に即かせたまひたる御方の幾方かおはしますことは、国史上紛れもない事実である。されば、将来憲法典範の改正に因つて皇位継承の資格要件中男子たることを削除することは、或は必ずしも行ひ得ざる所ではないかも知れぬ。乍併、其の他の三要件に至つては、毫末〈ゴウマツ〉だも変更せらるべき限では無い。世には、欧羅巴〈ヨーロッパ〉の諸君主国に於て女系の所出〈ショシュツ〉にして皇位を継承したる者ある事列を見て、皇位継承の資格要件として、男系に属することは必ずしも絶対的の必要に非ざるかの如く考へる者があるかも知れぬが、少くとも我国に於てはそれは許すべからざる謬想である。萬世一系の純乎たる意義は、たゞ男系所出の継承に因つてのみ之を保維することを得べく、従て、皇位継承の資格要件として、男系に属することは絶対的に欠くべからざるものである。【以下、次回】

 なお、昨一六日の夕、今年はじめて、ツクツクボウシの声を聞いた。

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