◎ココウは「餬口」が正しく「糊口」は誤り
久保天随著の『誤り易き漢字の読み方と正しき用字法』(精文館書店、一九一七)から、「書き誤り易き漢字」の部を紹介している。本日は、その四回目。
いちばん左のカタカナが「読み」。カッコ内は、引用者が付した「現代の読み」。その次が正しい漢字の表記、いちばん右が書き誤った漢字の表記。
コウキウ(こうきゅう) 購求 ×講求
コウシヤウ(こうしょう) 工廠 ×工敞
コウシヤク(こうしゃく) 侯爵 ×候爵
コウセキ 功績 ×効績
コウゾウ 構造 ×搆造
コウワ 媾和 ×講和
コキヤウ(こきょう) 故郷 ×古郷
ココ 呱呱 ×孤孤
ココウ 餬口 ×糊口
コジ 孤児 ×弧児
コセキ 戸籍 ×戸藉
コツコウ(こっこう) 骨鯁 ×骨硬
ゴンゴダウダン(ごんごどうだん)
言語道断 ×言語同断
コンザツ 混雑 ×昆雑
コンシン 渾身 ×揮身
コンセツ 懇切 ×墾切
コンテイ 根柢 ×根底
サイクワイ(さいかい) 斎戒 ×斉戒
サイジ 蕞爾 ×最爾
サイシウ(さいしゅう) 採集 ×菜集
サイバイ 栽培 ×裁培
サイホウ 裁縫 ×截縫
サクサク 嘖々 ×噴噴
ザンガイ 惨害 ×滲害
ザンシン 斬新 ×嶄新
ザンタン 惨澹 ×惨憺
ザンガイ=惨害、ザンタン=惨澹は、原文のまま。今日では、それぞれ、サンガイ、サンタンと読む。
サイジ=蕞爾という難語が出てくる。「非常に小さいさま」をあらわす言葉である。広辞苑第七版には、「この蕞爾たるナーモの島には」という用例が載っている。出典は「遅塚麗水、南蛮大王」だという。遅塚麗水(ちづか・れいすい、一八六七~一九四二)は、明治大正期の作家、『南蛮大王』(春陽堂、一八九四)は、その作品。