礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『文字と言葉の歴史』(1948)の著者は誰か

2023-03-22 00:28:00 | コラムと名言

◎『文字と言葉の歴史』(1948)の著者は誰か

 東京社会科教育研究所編『文字と言葉の歴史』(東紅社、一九四八)から、「餡パンの発明――漢字の日本化」という項を紹介している。本日は、その三回目(最後)。

 漢字を以て国語を書き表わすために、このような努力を続ける一方、漢文をそのまゝに取り入れて、大陸の新しい知識や学問を学ぶ事にも当時の日本人達は非常に熱心であつた。いやむしろ当時の学問のある知識人というのは、漢文や漢字について深い理解があり、中国人に負けぬ位に漢文が読め、漢語が発音出来る事であった。ちようど明治の初期、ヨーロツパから文明開化の波が押し寄せた時にはわれわれの祖父や曽祖父〈ソウソフ〉達は、数学も地理も歴史も、皆英語で書かれた教科書を用い、日本人の教師も教室では英語で講義をし、生徒も英語で質問した時代であつたのと同様である。そのために漢民族の発音のまゝのことばである漢語や、彼等の文章である漢文がをのまゝにわれわれの国語の中にとり入れられ、従つてそれを表わす文字が、漢語としてそのまゝに国語の中に入り込んだのである。例えば「しろがね」という国語を表わすために「銀」なる漢字を借りたわれわれは、同時に又「ギン」という漢語をも採り入れたのであつた。国語の「はゝ」を表わす漢字は「母」であり同時に之は漢語の「ボ」をも表わし、「ちち」は「父」であり「フ」でもある。
 現在われわれの用いる漢字に「音」「訓」二様の読み方のある理由は以上で了解し得たことと思う。
 漢字の「音」も更に考えれば、種々の問題を持つている。第一に音には幾通りもの種類があることである。例へば「行」には「コク」「ギヨウ」「アン」の三種の音がある。銀行 旅行の「コう」、行幸 行水の「ギヨウ」、行燈 行宮の「アン」等である。
 之は日本へ輸入された漢語漢文は、決して同一時期に同一地方から来たのではなく、中国各地の異つた発音や語法が、いろいろな時代に、いろいろの経路を通つて輸入され、それ等が日本に於ては尽く保存された結果である。
 漢字の音は現在 漢音【カンオン】 呉【ゴ】音 唐【トウ】音の三種類がある。
 漢音は、唐時代の首府であつた長安――中国の北部地方――の発音を伝えたもの。 
 呉音は、中国の南方系の発音
 唐音は、宋時代以後、最も新しく移入された発音で、仏教のお経を読む場合などに多く用いられる。
 次には発音の方法にわれわれ日本人には出来ぬもの、国語の中には無いものがあつた。之を如何にして日本語化したかということは次章の仮名遣の説明の項で述べよう。

 以上が、「餡パンの発明――漢字の日本化」の項である。
 ところで、この『文字と言葉の歴史』の著者は、いったい誰なのだろうか。書き写しているうちに、言語学者の服部四郎(一九〇八~一九九五)ではないかという気がしてきた。もちろん、深い根拠があるわけではない。

今日の名言 2023・3・22

◎日本が上回った、しかし今夜の本当の勝者は野球界だ

 メキシコのベンジー・ギル監督の言葉。WBCの対日本戦(マイアミ、2023年3月20日)で、逆転サヨナラ負けを喫した監督は、ツイッターで、「Japan advances, but the world of baseball won tonight.」とコメントしたという。

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