礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

松蔭を斬り、雲濱を葬りたる幕府当局を想起す(愛国法曹連盟)

2023-03-09 01:04:02 | コラムと名言

◎松蔭を斬り、雲濱を葬りたる幕府当局を想起す(愛国法曹連盟)

『司法研究 第十九輯』から、第十章第一部第一項の「三 愛国法曹連盟」を紹介している。本日は、その二回目。

 本連盟の行動として先づ挙ぐべきは佐郷屋留雄〈サゴウヤ・トメオ〉に対する減刑運動にして、愛国社関系諸団体と協力して活溌なる運動を行つた。
、判決確定前の運動
 昭和五年〔一九三〇〕十一月十四日東京駅頭に於ける濱口〔雄幸〕首相狙撃事件に付き佐郷屋は昭和七年四月二十二日東京地方裁判所に於て殺人罪により死刑(松木良勝は殺人幇助罪として懲役十三年)第二審は昭和八年〔一九三三〕二月二十八日東京控訴院に於て殺人未遂と認定せられて死刑(松木は同幇助罪として懲役八年)に処せられ両名共上告するに至つたが、本事件後所謂血盟団事件、五・一五事件の発生するあり、社会情勢の急転に依り、右翼各団体に於ては佐郷屋の行為は五・一五事件被告等の行動と動機を同じうするものにして国家改造運動の先駆者なりと為すに至りたるが、特に愛国法曹連盟に於ては昭和八年四月「濱口首相狙撃事件判決書並に佐郷屋留雄特別弁護人申請書写」と題するパンフレツトに左記内容の印刷物及減刑上申書用紙を各方面に送付して署名を求むる等、減刑運動の名の下に国家改造機運の促進に努めた。
 () 貴下は佐郷屋留雄に対し東京控訴院刑事部に於て言渡したる私刑の判決に適性妥当なりと思料せらるゝや否や 
 () 前示判決は治安維持法違反及巡査狙撃事件の被告三田村四郎に対して東京地方裁判所刑事部に於て言渡したる無期懲役の判決と比較し均衡を失せずと思料せらるゝや否や
 斯て〈カクテ〉昭和八年九月二十五日上告審の開廷に先立ち愛国学生連盟員は右減刑上申書三万二百余通(後に國體擁護連合会より十三万余通を提出す)及愛国法曹連盟署名の「判決の当否に関して回答に接したるもの一、一〇四通中不当とするもの七二七通にして(中略)、志士佐郷屋君に死刑の極刑を科し奸逆三田村〔四郎〕に無期の軽罰を科したる司法官の抱懐する思想は以て推察するに難からず……〔吉田〕松蔭を斬り〔梅田〕雲濱を葬りたる幕府に忠なる司法当局を想起し慓然たるもの有之〈コレアリ〉」等縷々輿論の死刑反対なる旨を力説せる上申書進達書を添付し、大審院刑事部に提出した。尚本運動に刺戟され後に五・一五事件被告減刑運動の澎湃〈ホウハイ〉として全国的に抬頭するに至りたる事実は注目に値する事実である。【以下、次回】

 文中、(中略)、……は、原本のまま。
 最後のほうに、「上申書進達書」という言葉が出てくる。これは、集めた上申書を司法当局に提出する際、それに添えた「進達書」(添え状)の意味であろう。なお、この進達書を執筆したのは、「理論家」の林逸郎ではなかったか。

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