◎警察庁長官狙撃事件で新証言(毎日新聞)
今月二〇日の毎日新聞のトップを飾ったのは、「警察庁長官狙撃 新証言/「実行犯逃走手助け」/当時参考人」というスクープだった。
リードは次の通り。
1995年に起きた国松孝次・警察庁長官(当時)狙撃事件で、警視庁の特命捜査班が事件の時効約1カ月前の2010年2月から複数回、参考人として事情聴取した元自衛官の男性(49)が毎日新聞の取材に応じ「事件当日、『狙撃犯』を名乗る知人の逃走を手伝ってしまった」と証言した。男性は当時の聴取に事件への関与を否定したが、昨春以降、取材に応じる中で「狙撃犯」の死期が迫っているとして口を開いた。今月で事件発生から28年。多くの謎を残す未解決事件の新証言となる。 (2、3面に「Nの記録」)
ここで、「狙撃犯」とは、別の事件で無期懲役が確定している中村泰(ひろし)受刑者のことである(現在、九十二歳)。
一面の本文、二面の記事、三面の特集も読んだ。署名は、すべて遠藤浩二記者。たしかに、これは、「スクープ」だと思った。
三面の特集は、「Nの記録/警察庁長官狙撃事件・上」と題されていた。その一部を引いみる。
……また、ともに襲撃計画を立てた支援役がおり、事件の1週間前から4回にわたり長官宅があるマンションの下見に同行させ、支援役が逃走用の自転車を事前準備したと説明。受刑者は支援役を語る際に「ハヤシ」という仮名を用いた。
95年3月30日の事件当日。中村受刑者は午前8時前にJR西日暮里駅前でハヤシと落ち合い、ハヤシが準備した軽乗用車でマンション近くの神社付近まで移動した。受刑者だけが降車してマンション敷地内に入り、出勤しようと建物から出た長官を約20㍍の距離から狙撃したとした。受刑者は準備された自転車で現場から逃げ、NTT荒川支店で待機していたハヤシと合流。ハヤシが運転する軽乗用車で西日暮里駅に移動し、受刑者は駅前で降車して新宿駅に移動し、拳銃を貸金庫に隠したと述べた。
中村受刑者はハヤシが何者かについて一貫して供述を拒んだが、特命班は受刑者の交友関係を洗い出す中で元自衛官の男性を割り出した。10年1月に男性の顔写真を示された受刑者は、取調室内を歩き回り落ち着かない様子を見せたとされる。男性とハヤシの同一について尋ねられた受刑者は「否定も肯定もしない」と述べつつ、「本来は複数人いた支援役をハヤシという同一人物にまとめてこれまで説明してきた」と供述を変遷させた。
特命班は最終的に支援役を断定できず、中村受刑者を実行犯とする筋立てで捜査本部を納得させることはできなかった。
中村受刑者は、「複数人いた支援役」を、「ハヤシ」という名前で総称していたと供述している。だとすれば、今回、毎日新聞が「新証言」を得た「元自衛官の男性接触」も、そうした「支援役」のひとりであった可能性が高い。
なお、特集記事「Nの記録/警察庁長官狙撃事件」の続編を待っていたところ、二三日になって、ようやく「中」が掲載された。その内容については、数日後に紹介することになろう。