礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

神功皇后とjingoism(強硬外交論)

2024-11-06 02:18:51 | コラムと名言
◎神功皇后とjingoism(強硬外交論)

 本日も、山中襄太『国語語源辞典』(校倉書房、1976)の項目を紹介する。本日、紹介するのは、「じんぐう-こうごう【神功皇后】」。

じんぐう-こうごう【神功皇后】 仲哀天皇(登浦〈トユラ〉の宮)の皇后で,応神天皇の母。木村鷹太郎氏はいう――北欧神話の3大神に,Thōr, Jingō , Ōdinがあり,みな尚武の神である。この3神の性格や名称が,日本のトヨラ,ジングー,オージンと一致する云々とて,詳論している(「世界的研究に基づける日本太古史」上,PP.743~6)。[考]この東西類似は単なる外見上の類似か,或はその間に何等かの連絡が伏在するか。これ以外に,日本の神話伝説風俗言語など,広い分野にわたって東西の類似を氏は多くあげているし,同様の意味を発表している人も他にあるから,冷静に研究してみるべきであろうと思われる。Jingo(対外強硬論者,主戦論者),jingoism(主戦論,強硬外交論,感情的国咸宣揚主義)などの語が,この北欧3大神の中のJingō からでている。神功皇后もjingoist であったといえる。1877~8年の露土戦争の時に流行した歌に,“by Jingo”という文句がある。すなわち We don't want to fight,But, “by Jingo”,if we do, We've got the ships, we've got the man, We've got the money, too. (Encyclopedia Americana)。―→序論。

 文中に、「世界的研究に基づける日本太古史」とあるのは、木村鷹太郎著『世界的研究に基づける日本太古史』(博文館、1911・1912)を指す。木村鷹太郎(1870~1931)は、歴史学者、言語学者。翻訳家、『プラトーン全集』(冨山房、1903~1911)の翻訳などで知られる。
 ところで、項目の最後に、「―→序論」とある。『国語語源辞典』には、たしかに「序論」がついているが、それは28ページにも及んでいる。山中襄太は、読者に対し、その序論中の、特に、どの部分の参照を求めていたのだろうか。

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