先週教室で、 一人の中学生が とても悲しそうな顔をして「もう勉強なんかしたくない。 親がうるさいからやるけど、本当はやめたい」と言いました。
私は彼の気持ちがよくわかります。 痛いほどにわかります。彼は今とても苦しんでいます。でも、今私の立場からは 「だったらやめなさい。止めていいよ」とは言えませんし、言いません。
さて、どうしたものでしょうかと、 ここ数日ずっとそのことが頭から離れません。
先ほど、ふと富士登山したときのことを思い出しました。 富士山は何度か登ったことがありますが、いずれも須走口から、というのが私の定番のコースです。 何回目かの時に、確か6合目付近でのことだったと思いますが、いかにも登山中に体調を崩したと思われる女性が苦しそうに足を運んでいるところに 出会いました。
彼女は言いました。「 この先で下ります。下るために登っています」
須走口から上っていくと 7合目 の辺りで 下山コース に合流します。 そこからは砂走という、軽快に下って行くことのできるコースがありますが、これは下り専用なのです。 彼女は、 ここから降りるために今そこのポイントに向かって登っていると言ったわけで、 これが 「下るために登る」ということです。
機会があれば、あの中学生に 「下るために登る」ということを なにかの形で体験させてあげられないものかと今考えています。