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パレスチナ・イスラエル紛争解決の方向性

2009年01月25日 21時23分11秒 | その他の国際問題
  
 
※画像解説:
 1月3日にイスラエル国内で行われた反戦デモ。
 上はテルアビブ、下は北部のサクーニンでの様子。
 (出典:週刊「前進」)


 前号エントリー「転載:メディアとイスラエルの共犯―罠にはまっている私たち」の最後で言及した、以下の内容について、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

>90年代の湾岸戦争以降、ともすれば、米軍やイスラエルの側からの従軍報道ばかりが、メディアの中でやたら幅を利かせる様になりました。そんな中にあって、ややもすれば私たちも、知らず知らずのうちに、加害者も加害者も十把一絡げに「どっちもどっち」と捉えてしまう愚を冒しているのではないか、という想いがあります。
>パレスチナとイスラエルの戦いが、前者に対する後者の一方的簒奪にしか他ならないのに、それを恰も両者が対等な戦いであるかの様に、看做してこなかったか。まずは、それに対する自戒の意味も込めて、こちらに転載しました。
>しかし、だからといって、イスラエル全体を「悪魔の国」と決めつける立場には、賛成致しかねます。それでは、ブッシュによる「悪の枢軸」論の、裏返しでしかありません。
>ハマスも、反侵略・レジスタンスを言うのなら、シオニストに包囲されながらも、しぶとく反戦運動を展開している、イスラエル国内の左派・アラブ系市民との連帯を、何故模索しないのか? 国際連帯の視点を欠いたレジスタンスでは、ただの排外主義にしか為らないのでは。その言う事も含めて、考える上での素材として、上記論評の転載に踏み切った、というのもあります。
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/2566e657f4f49d39dc56af266cb8d618

 何故、上記の様な事を書くに至ったのかというと、「ガザ戦争で逆転する善悪」(田中宇の国際ニュース解説)の中で、田中氏が、今のハマスを、第二次大戦中のワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人居住区)蜂起の指導者モルデハイに準えて、「今のモルデハイはガザにいる」と述べているのを、目にしたからです。
 曰く、ガザの近くに、モルデハイの名を記したキブツ(イスラエルの農業共同体村落)があるが、そのモルデハイの子孫が、かつてナチスがユダヤ人に対して行ったのと同じ事を、今度はパレスチナ人に対して行っている。今や、善悪の役どころは、完全に逆転してしまっている。モルデハイの抵抗精神を真に継承するのは、キブツのユダヤ人ではなく、イスラエルの占領と闘っているハマスである、と。
 確かに、「かつての被抑圧者が、今や抑圧者として君臨している」というのは、全く以ってその通りなのだけれど、ではその現代の抑圧者と戦っているレジスタンス勢力(ハマス)も、イスラエル全体を「悪魔の国」と決めつけている限り、米国ブッシュの「悪の枢軸」論と、同じ立場でしかないのでは。それを克服しない限り、次にはハマスが、イスラエルと同じ役どころを演じる事にしかならないのではないか、と。
 そういう思いもあって、先のML「メディアとイスラエルの共犯―」の内容を、ブログで取り上げました。

 勿論、それが言うほど容易い事ではない事は、私にも充分わかります。それは、イスラエルの現代政治史を少し調べるだけでも、容易に想像がつきます。
 イスラエルでは、1948年の建国以後、60年代までは、労働党を中心とするシオニスト左派が、政権を担ってきました。しかし、67年の第三次中東戦争を機に、リクードを中心とするシオニスト右派が、次第に勢力を拡大し、今やシオニスト左派との間で、政権交代を繰り返すまでに至っています。近年は、リクード分派で、一応中道派と目されているカディマが、それに加わり、今やイスラエルは、これら三大政党を軸に、それに国家宗教党などの右翼宗教政党が加わる形で、少数与党による連立政権が続いてきました。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%94%BF%E6%B2%BB

 この様に、表面上は「中東における民主主義のショーウィンドウ」として、「左右」拮抗・小党分立の議会政治が続いているかに見えるイスラエルですが、実権を握っているのは、あくまでもシオニストに限られ、しかもその中では、「絶えず右派が左派をせっついている」という構図が、垣間見えます。それ以外の、非シオニストの共産党系やアラブ系の政党も、独自の政治勢力を保持して、国会にも議席を有してはいますが、その影響力は未だ限られたものに留まっています。
 現に、今回のガザ侵攻を行ったのも、シオニスト「左派・中道派」である筈の、オルメルト首相率いる労働党・カディマ連立政権なのですから。しかも、その侵攻の動機たるや、来る2月に予定されている総選挙に向けて、劣勢を伝えられる「左派・中道」政権が、右翼リクードに対する失地回復の為に、ハマスのロケット弾攻撃に託けて行ったものだと言うのですから、もう何をか況やです。
 中東メディアが、「イスラエルでは左派もこの戦争を支持している」と抗議の声を上げたのも、当然の成り行きです。この一点で以ってしても、今回のガザ侵攻が、ハマスには何の非もない、完全なイスラエルによる侵略戦争である事は明らかです。

 しかし、そんな中においても、イスラエル国民の中には、それまでのユダヤ・アラブの対立を乗り越え、互いに平等・対等な多民族・文化同士の共存による、新しい国造りを志向する動きも、根強く存在します。今回のガザ侵攻に際しても、少なくないイスラエル市民が決起し、人口700万余りの国の中で、10数万人以上が参加する反戦行動が取り組まれました。
 最終的には、戦争翼賛の左右のシオニストや、それと「合わせ鏡」のイスラム原理主義者(ハマス)にではなく、先述の新しい国造りを志向する人々の手によってこそ初めて、イスラエル(パレスチナ)の地に、真の平和がもたらされるのではないでしょうか。
 現状のままでは、仮に停戦協定が結ばれ、オスロ合意に基づく和平が機能したとしても、「ガラス細工の和平」に終わる可能性が大きいと思います。若し1967年以前の領域が復活したとしても、水資源豊かな平野部は全てユダヤ人が所有し、パレスチナ人は、依然としてヨルダン川西岸とガザに押し込められたままです。これでは、かつての南アのアパルトヘイトと、同じではありませんか。

 それなら一層の事、従来のユダヤやアラブ、イスラエルやパレスチナの枠を超えた、今のインドや、アパルトヘイト廃絶後の南アフリカ、チトー時代のユーゴの様な、「万人平等の、イスラエルでもパレスチナでもない、白紙状態からの全く新しい国造り」を、寧ろ志向すべきではないのか。
 第一次大戦後の西欧帝国主義の残滓ともいうべき三つの古証文(バルフォア宣言、フセイン・マクマホン書簡、サイクス・ピコ協定)や、それに基づく1947年の国連パレスチナ分割決議の内容など、この際全てチャラにしてしまえば良い。そして、イスラエルは1967年以前の領域に撤退し、領域外の入植地も全て撤去し、パレスチナ難民の帰還権も承認。他方でパレスチナ人や周辺アラブ諸国も、ユダヤ人の帰還権を承認。真実和解委員会(仮称)を設置し、これまで為されたあらゆる戦争犯罪に対して、真相究明と賠償を進める。
 その上で「全く新しい国造り」に着手する。将来的には、もはやその方向でしか、イスラエル・パレスチナ紛争解決の道は無いのではないでしょうか。ハマスも、表向きの強硬姿勢とは裏腹に、イスラエルがガザに対する経済封鎖を解除し、67年以前の領域に撤退さえすれば、同国政府とも交渉を開始すると表明しているのですから、それは必ずしも実現不可能な目標ではないと思います。

【参考資料】

・メディアとガザ報道(DAYSから視る日々)
 http://daysjapanblog.seesaa.net/article/112508511.html
・[AML 23638] <メディアとイスラエルの共犯―罠にはまっている私たち>
 http://list.jca.apc.org/public/aml/2009-January/023097.html
・メディアとイスラエルは共犯か?(アルバイシンの丘)
 http://papillon99.exblog.jp/10136791/#10136791
・【日記】きっこさん、これではだめだ、戦争は止められない!!!!(散策)
 http://sansaku.at.webry.info/200812/article_13.html
・ハマスの内幕 イスラエルが育てた戦闘的イスラム主義運動(デモクラシー・ナウ・ジャパン)
 http://democracynow.jp/submov/20070522-2
・イスラエル建国運動(シオニズム運動)
 http://ww1.m78.com/topix-2/israel.html
・イスラエルの「建国」記念日でパレスチナは封鎖状態(パレスチナ情報センター)
 http://palestine-heiwa.org/news/200505142234.htm
・イスラエル・パレスチナ双方の複雑なお家事情 パレスチナ、泥沼の意外な背景(All About)
 http://allabout.co.jp/contents/secondlife_tag_c/politicsabc/CU20020418/index/
・イスラエル国内・テルアビブで1万人が反戦デモ(レイバーネット)
 http://www.labornetjp.org/labornet/news/2009/1231343225954staff01
・MASSIVE DEMONSTRATION AGAINST THE WAR + ongoing protest(Gush Shalom)
 上記レイバーネット記事の原文
 http://zope.gush-shalom.org/home/en/events/1231029668
コメント (5)
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