・原発作業員 安全を優先してほしい
福島第１原発で働く作業員たちが、いかに危険にさらされているか。
東京電力の「汚染マップ」で知って、恐ろしくなった。作業員たちの奮闘に国民の期待が集まっているが、くれぐれも身の安全を優先してほしい。
放射線量が毎時９００ミリシーベルトのコンクリート片、３００ミリシーベルトのがれき。このほかにも１～４号機周辺の約１５０カ所で計測すると、各所で１００ミリシーベルト前後の高い線量が観測された。がれきを撤去した作業員が被ばくしている。
原発で働く作業員の被ばく線量は、労働安全衛生法に基づく規則によって、緊急時で年間１００ミリシーベルトが上限とされている。これを超えた作業員は今月２３日現在で３０人に上る。
厚生労働省は今回の事故対策については上限を２５０ミリシーベルトに引き上げている。国際放射線防護委員会（ＩＣＲＰ）の見解を参考に「健康被害が出ない上限を採用した」と説明する。
しかし、これだけの汚染下での作業であり、被ばく値はまたたく間に上がってしまう。すでに１５０ミリシーベルト以上被ばくした東電社員が数人いるという。
（中略）
米誌タイムの恒例「世界で最も影響力のある１００人」のネット投票で「福島原発の作業員」が１６位に入った。危険な作業に従事する彼らに頭が下がるが、単に英雄視するだけではいけない。
作業員が置かれた過酷な状況を直視すべきだ。朝食はクラッカーとジュース、夕食も乾燥米と缶詰１個、会議室や廊下で毛布にくるまって寝る毎日は改善されたのか。ようやく今月２１日に休憩室が新設されたばかりだ。
東電だけでなく下請け、協力企業、ゼネコンから派遣された大勢の作業員たちの健康を守るのは、政府の役割だ。現場を離れ、職が変わっても、長期的に白血球の減少など健康状態を追跡していく責務があるだろう。
作業員を危険な目に遭わせないために、政府や専門家は英知を集め、万全を期すべきだ。（以上、４月２６日付京都新聞・社説より）
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20110426.html
何が「世界で最も影響力のある１００人」（米誌タイム）か。その「１００人の英雄の中の第１６位にランクインした福島原発の作業員」が、何故クラッカーや缶詰１個の食事しか与えられず、休憩もまともに取れずに、風呂も入れないまま、防護服を着たまま雑魚寝させられなければならないのか。
「今は事故終息が第一で、労働環境整備は二の次」という事かも知れないが、交替もままならず、休憩も食事も入浴もまともに出来ないなんて、「環境整備」云々以前の「命に関わる」問題だろう。そんな状況で働かされていたのでは、事故は終息するどころか、更に酷い事故が引き起こされるに決まっている。
「彼らは英雄なので苦労を厭わないのだ」というのも完全な嘘だ。仕事に対する使命感や遣り甲斐なんてものは、ある程度の待遇改善と先の見通しがあってこそ、初めて芽生えてくるものだ。それがこんな、いつ事故が終息するかも分からない、最低限の休憩もまともに取れない中で、「さあ明日も頑張ろう」なんて気持ちになれる筈がない。
現場作業員の大半は現地の被災者だと聞く。震災・津波で失業し、他に仕事もない中で、半ば諦めにも似た気持ちで、日々の作業をこなしているのだろう。「日給×十万円の厚遇で釣られている」との一部ネットの噂も、私は眉唾だと思っている。何故なら、一日のべ数千人からの人間が復旧作業に従事させられているのだろう。そんな大勢の人間に日給ウン十万円も、あの貪欲な東電が払うわけがない。実際は、上に控える何層もの元請業者に賃金をピンハネされた最末端の下請け作業員が、放射能に関する安全教育も禄に受けられないまま、好い様にこき使われているだけだろう。そもそも、最低限の休憩も取れないような職場で、一体どんな安全教育が受けられるというのか。
何のことはない、実際は「蟹工船」や「ガダルカナルの戦場」のような所で働かされている作業員を、自らは決して手を汚さない政府・財界・御用学者が、自分に都合の良い時だけ「英雄」だの「フクシマ５０」だのと崇め奉り、そうやって上手く言い包めて闇に葬っているだけじゃないか。
記事冒頭に掲げた写真は、前掲の新聞記事でも触れていた福島第一原発の汚染地図（サーベイマップ）だ。図中の３号機左下付近に毎時９００ミリシーベルト（！）もの放射線を放つガラ（瓦礫）の存在が示されている。同様の汚染地図は東電のＨＰにも掲載されているが、このガラが掲載された４月２０日付のものは未だに公開されていない。
命あっての物種だ。現場作業員は今すぐこんな被曝奴隷労働から逃げ出すべきだ。その尻拭いは、今まで散々原発を推進し利権を貪ってきた奴らにやらせれば良い。そして、被災者がこんな被曝奴隷労働に依存しなくても良い様に、東電や政府にきちんと責任を取らせる事が必要だ。
