・ネットカフェ難民に生活費、職業訓練条件に月15万円融資へ(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080823-OYT1T00426.htm
厚生労働省は23日、「ネットカフェ難民」の就労を支援するため、公共職業訓練の受講を条件に、訓練中の住居・生活費として月15万円を融資する制度を2009年度に創設する方針を固めた(以上、同紙より)―との事。数ヶ月の職業訓練を受けさせて、難民生活から足を洗わせる為に、その間の生活費として支給するもので、しかも受講修了者で年収150万円以下の人は返済を全額免除されるのだそうです。
一見すると、さも何やら耳障りの良い事を言っている様ですが、多分こんな事をしても、問題解決には何の役にもたたないでしょう。
何故ならば、まず第一に、今回の件でもそうですが、そもそも政府の公共職業訓練政策の位置付けそのものが、曖昧模糊で中途半端なものに終始しているからです。
グローバル資本主義・新自由主義の下では、求められる人材は、あくまでも「安上がりな即戦力」でしかありません。確かに長期的に見れば、そんな「使い捨て」雇用は企業経営にとっても必ずしもプラスにはならないのですが、株主・スポンサーからは短期的な利益追求だけが求められるので、そうならざるを得ないのです。そんな中では、たかだか数ヶ月の職業訓練で「パソコンが出来る様になった」「フォークリフト運転免許が取れた」程度では、屁のツッパリにしかなりません。
公共職業訓練の本当の役割は、そんな「屁のツッパリ」に甘んじる事ではなくて、パソコン技能取得者やフォークリフト免許取得者が、「それをワンステップにして如何に自分の可能性を広げられる様になったのか」という、社会教育の観点から評価されるべきなのです。たとえ短兵急には就職率のアップには結びつかなくとも、例えばパソコンでインターネットにアクセス出来る様になった事で、その人の世界が広がったならば、「職業訓練の意味は確かにあった」と言えるでしょう。
しかし、当の国にしてからが、その程度のビジョンすら持ち合わせていないのが現状です。今の公共職業訓練事業は、雇用能力開発機構に天下った役人が、補助金欲しさにアリバイ的にこなしている仕事でしかない。実際のカリキュラム作成や教育訓練も全て委託民間教育機関に丸投げするだけで、「自らも失業者の自活支援や生存権保障の為に何かしよう」という気概なぞ、サラサラないのです。だから、直ぐに目に付く成果が出ないからといって、いとも簡単に訓練期間を短縮したり、職業訓練機関を勝手に縮小・統廃合して、それで訓練生が翻弄されても、全然胸が痛まないのです。今までそんな事しかして来なかった国が、今回いきなりそんな支援策を打ち出しても、世間からは「どうせ行き当たりばったりの思い付きだろう」としか受け取られないのも、当然の成り行きです。
そして第二に、寧ろこちらが肝心な点ですが、こんなピント外れの施策では、ネットカフェ難民の救済・支援には全くならないという事です。言うまでも無く、ネットカフェ難民はネットカフェを塒(ねぐら)にしています。つまり、最低限のパソコンスキルは有しているのです。彼の人たちが定職に就けない決定的な原因は、パソコンスキルなどの職業能力の不足にあるのではなくて、住所不定だからです。中には生活破綻などで家族との絆も断ち切られて、身包み一つで出てきた為に、入居・就職の際に必要な身元保証人も立てられない人も、少なくないのです。
こういう人たちに必要なのは、僅か数ヶ月間の職業訓練などの弥縫策ではなく、もっと本腰を入れた生活支援策なのです。例えば、国や市町村が身元保証人になって敷金も援助して、雇用促進住宅や市営住宅を安価な家賃で提供し、今の日払い派遣の様な貧困ビジネスではなく、そこそこ食べて行けて人並みに暮らしていける常勤の仕事を斡旋すれば、状況は大幅に好転するでしょう。
それも、単なる生活支援ではなく、産業政策とも連動してそれを行う。例えば、医療・介護分野は大幅な人手不足に見舞われており、いくら人を募集しても誰も成り手がいません。いても直ぐに辞められる。それは、労働に見合うだけの適正待遇が保障されないからです。それならば、国が介護保険の体系を見直しするなどして、それを保障してやれば、それで済む問題です。
そうすれば、介護自体は潜在的な需要もあり社会的にも意義のある仕事なのですから、事業的にも充分成り立つ筈です。また、そうして若者が住む様になれば、空洞化・高齢化が進む当該住宅周辺地域の活性化にも結びつく。そうすれば、正に一石二鳥にも三鳥にもなる。わざわざEPA(経済提携協定)で開発途上国から人を引っ張って来る必要もなくなる。
その為の財源はどうするかって?そんなモン、今まで散々ワーキングプアを搾取して甘い汁を吸ってきた大企業や官僚から拠出させて、無駄な「ミサイル防衛」「米軍への思いやり予算」「長良川河口堰・諫早干拓などの公共事業」などを廃止すれば、それで済む話でしょう。福祉に金が回らないのは、財源が無いからではなく、あくまでも予算の不適正配分に起因する問題なのですから。
以上述べた様な「身になる支援」をしてこそ、それを受ける方も、初めて将来への展望が持て、生活・人生設計への意欲も生まれようというものです。そういう「将来展望を持ってもらう」という長期的視野を欠いた、単なる「人気取り、思い付き」給付では、それこそバラマキにしかなりません。
それもこれも、国が本腰でこの問題の解決を図ろうとはしていないからです。多分、厚労省の役人の根っ子には、「ネットカフェ難民は自己責任」という意識があるのでしょう。だから、本当はこんな面倒な事には関わりたくはないのです。しかし、このままでは福田内閣や自民党の支持率はずっと低迷したままなので、何かアドバルーンを上げる必要がある。だから、こんな愚策を事を思い付いたのでしょう。そんな下心が見え見えの施策なぞ、凡そ成功する筈がありません。
(関連情報)
・「公共職業訓練切捨てに反対する全国共同緊急アピール」のHP
職業能力開発総合大学校の廃止に反対する卒業生有志が立ち上げたサイト。私のマイミクの一人でもある伊達さんも、ここで頑張っておられます。
http://www.geocities.jp/appeal_polytech/index.html
・派遣労働者:労災が3年で9倍 危険な業務裏付け…厚労省(毎日新聞)
2004年の製造業への派遣解禁以降、労働災害が急増。職場に初めて来た、右も左も分からない人間を、毎日入れ替わり立ち替わり現場に放り込んで、安全教育・基礎教育も抜きに、無理やり即戦力として働かせたら、そりゃあ必然的にそうなるわな。職業訓練なんかよりも、こっちの問題を何とかする方が先決だろう。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080821k0000m040120000c.html
・今こそ介護労働者の待遇改善を(JANJAN)
本欄でもネットカフェ支援策の一例として引き合いに出した介護労働に関する記事。こちらの記事も、マイミクの一人である「さとうしゅういち」さんの手によるものです。
http://www.news.janjan.jp/government/0808/0808225273/1.php
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080823-OYT1T00426.htm
厚生労働省は23日、「ネットカフェ難民」の就労を支援するため、公共職業訓練の受講を条件に、訓練中の住居・生活費として月15万円を融資する制度を2009年度に創設する方針を固めた(以上、同紙より)―との事。数ヶ月の職業訓練を受けさせて、難民生活から足を洗わせる為に、その間の生活費として支給するもので、しかも受講修了者で年収150万円以下の人は返済を全額免除されるのだそうです。
一見すると、さも何やら耳障りの良い事を言っている様ですが、多分こんな事をしても、問題解決には何の役にもたたないでしょう。
何故ならば、まず第一に、今回の件でもそうですが、そもそも政府の公共職業訓練政策の位置付けそのものが、曖昧模糊で中途半端なものに終始しているからです。
グローバル資本主義・新自由主義の下では、求められる人材は、あくまでも「安上がりな即戦力」でしかありません。確かに長期的に見れば、そんな「使い捨て」雇用は企業経営にとっても必ずしもプラスにはならないのですが、株主・スポンサーからは短期的な利益追求だけが求められるので、そうならざるを得ないのです。そんな中では、たかだか数ヶ月の職業訓練で「パソコンが出来る様になった」「フォークリフト運転免許が取れた」程度では、屁のツッパリにしかなりません。
公共職業訓練の本当の役割は、そんな「屁のツッパリ」に甘んじる事ではなくて、パソコン技能取得者やフォークリフト免許取得者が、「それをワンステップにして如何に自分の可能性を広げられる様になったのか」という、社会教育の観点から評価されるべきなのです。たとえ短兵急には就職率のアップには結びつかなくとも、例えばパソコンでインターネットにアクセス出来る様になった事で、その人の世界が広がったならば、「職業訓練の意味は確かにあった」と言えるでしょう。
しかし、当の国にしてからが、その程度のビジョンすら持ち合わせていないのが現状です。今の公共職業訓練事業は、雇用能力開発機構に天下った役人が、補助金欲しさにアリバイ的にこなしている仕事でしかない。実際のカリキュラム作成や教育訓練も全て委託民間教育機関に丸投げするだけで、「自らも失業者の自活支援や生存権保障の為に何かしよう」という気概なぞ、サラサラないのです。だから、直ぐに目に付く成果が出ないからといって、いとも簡単に訓練期間を短縮したり、職業訓練機関を勝手に縮小・統廃合して、それで訓練生が翻弄されても、全然胸が痛まないのです。今までそんな事しかして来なかった国が、今回いきなりそんな支援策を打ち出しても、世間からは「どうせ行き当たりばったりの思い付きだろう」としか受け取られないのも、当然の成り行きです。
そして第二に、寧ろこちらが肝心な点ですが、こんなピント外れの施策では、ネットカフェ難民の救済・支援には全くならないという事です。言うまでも無く、ネットカフェ難民はネットカフェを塒(ねぐら)にしています。つまり、最低限のパソコンスキルは有しているのです。彼の人たちが定職に就けない決定的な原因は、パソコンスキルなどの職業能力の不足にあるのではなくて、住所不定だからです。中には生活破綻などで家族との絆も断ち切られて、身包み一つで出てきた為に、入居・就職の際に必要な身元保証人も立てられない人も、少なくないのです。
こういう人たちに必要なのは、僅か数ヶ月間の職業訓練などの弥縫策ではなく、もっと本腰を入れた生活支援策なのです。例えば、国や市町村が身元保証人になって敷金も援助して、雇用促進住宅や市営住宅を安価な家賃で提供し、今の日払い派遣の様な貧困ビジネスではなく、そこそこ食べて行けて人並みに暮らしていける常勤の仕事を斡旋すれば、状況は大幅に好転するでしょう。
それも、単なる生活支援ではなく、産業政策とも連動してそれを行う。例えば、医療・介護分野は大幅な人手不足に見舞われており、いくら人を募集しても誰も成り手がいません。いても直ぐに辞められる。それは、労働に見合うだけの適正待遇が保障されないからです。それならば、国が介護保険の体系を見直しするなどして、それを保障してやれば、それで済む問題です。
そうすれば、介護自体は潜在的な需要もあり社会的にも意義のある仕事なのですから、事業的にも充分成り立つ筈です。また、そうして若者が住む様になれば、空洞化・高齢化が進む当該住宅周辺地域の活性化にも結びつく。そうすれば、正に一石二鳥にも三鳥にもなる。わざわざEPA(経済提携協定)で開発途上国から人を引っ張って来る必要もなくなる。
その為の財源はどうするかって?そんなモン、今まで散々ワーキングプアを搾取して甘い汁を吸ってきた大企業や官僚から拠出させて、無駄な「ミサイル防衛」「米軍への思いやり予算」「長良川河口堰・諫早干拓などの公共事業」などを廃止すれば、それで済む話でしょう。福祉に金が回らないのは、財源が無いからではなく、あくまでも予算の不適正配分に起因する問題なのですから。
以上述べた様な「身になる支援」をしてこそ、それを受ける方も、初めて将来への展望が持て、生活・人生設計への意欲も生まれようというものです。そういう「将来展望を持ってもらう」という長期的視野を欠いた、単なる「人気取り、思い付き」給付では、それこそバラマキにしかなりません。
それもこれも、国が本腰でこの問題の解決を図ろうとはしていないからです。多分、厚労省の役人の根っ子には、「ネットカフェ難民は自己責任」という意識があるのでしょう。だから、本当はこんな面倒な事には関わりたくはないのです。しかし、このままでは福田内閣や自民党の支持率はずっと低迷したままなので、何かアドバルーンを上げる必要がある。だから、こんな愚策を事を思い付いたのでしょう。そんな下心が見え見えの施策なぞ、凡そ成功する筈がありません。
(関連情報)
・「公共職業訓練切捨てに反対する全国共同緊急アピール」のHP
職業能力開発総合大学校の廃止に反対する卒業生有志が立ち上げたサイト。私のマイミクの一人でもある伊達さんも、ここで頑張っておられます。
http://www.geocities.jp/appeal_polytech/index.html
・派遣労働者:労災が3年で9倍 危険な業務裏付け…厚労省(毎日新聞)
2004年の製造業への派遣解禁以降、労働災害が急増。職場に初めて来た、右も左も分からない人間を、毎日入れ替わり立ち替わり現場に放り込んで、安全教育・基礎教育も抜きに、無理やり即戦力として働かせたら、そりゃあ必然的にそうなるわな。職業訓練なんかよりも、こっちの問題を何とかする方が先決だろう。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080821k0000m040120000c.html
・今こそ介護労働者の待遇改善を(JANJAN)
本欄でもネットカフェ支援策の一例として引き合いに出した介護労働に関する記事。こちらの記事も、マイミクの一人である「さとうしゅういち」さんの手によるものです。
http://www.news.janjan.jp/government/0808/0808225273/1.php
かっての石油公団なんて一兆円も使ったんでしょ。それで東シナ海の調査もやってない、ふざけてますよ。
やっぱ、公共料金(税金、保険も)振込とか天引きじゃだけなんですよ。カネが欲しいのならちゃんと集金にこいつーの。しっかり小一時間説教してやるつーの。
ブチ切れそうなのはあの谷垣。おぼっちゃんでみるからになんの苦労もしてない。
あいつにはNHKに出向させて受信料の集金やらせろ!
この際、恥を忍んで正直に告白しますが、これ↑、実は自分の事でもあるのです。時は私の生協時代末期、大リストラと共に到来したIT化の波の中で、私もたった半日の研修を受けただけで、パソコンを使いこなさなければならなくなりました。しかし、当時のPCはウィンドウズ98で、しょっちゅうフリーズしていました。それに対して、付け焼刃の研修しか受けられず、自宅にもPCなんて無かった当時の私は、応用が全く利かず、バグにはまり込む事もしばしで。
それで生協を退職した訳ではないのですが、退職後は「まずはPCを基礎からみっちり復習し直そう」と、公共職業訓練(PC講習)の門を叩いたのです。若し当時講習を受講していなかったら、このブログも日の目を見る事はありませんでした。そう言えばその頃は、一時本気で、ウェブデザイナーとしてSOHO起業する事も考えていましたっけ。今から考えたら無謀以外の何物でもありませんが。
そういう私の例もあるのですから、杓子定規に就職率云々の数字だけで、簡単に公共職業訓練の廃止・縮小を口にするのは止めて欲しいと思います。
>今の公共職業訓練事業は、雇用能力開発機構に天下った役人が、補助金欲しさにアリバイ的にこなしている仕事でしかない。実際のカリキュラム作成や教育訓練も全て委託民間教育機関に丸投げするだけで、「自らも失業者の自活支援や生存権保障の為に何かしよう」という気概なぞ、サラサラないのです。
この点についても、誤解があったらいけませんので先に書いておきますが、私は何も公共職業訓練の民間委託そのものに反対している訳ではありません。現に私が受講したPC講習も、実際の講習は、カリキュラムも講師陣も含め、全て大阪市内の某大手民間教育機関(専門学校)の手によるものでしたから。
「餅は餅屋」と言います。実務に関しては、「素人の官」より「プロの民」のやる事の方が、よっぽど確かなのですから、民間委託する事については何ら問題はありません。私が問題にしているのは、そうではなくて、「民に丸投げ・任せ切り」で「官としての仕事を何もしていない」事に対してです。
失業者に無料で職業訓練を受講させ、彼の人たちの生存権を確保しつつ、更に自信と展望をつけてもらうには、どういう施策が取られるべきなのか。それを実現するには、「民」だけでは無理です。そこで「官=政治」が「民」をどうリードしていくのか。それを考えるのが公共セクターとしての公務員の本来の役割なのに、現状はそれを全く放棄して、厚労官僚どもは資本家と癒着して、職業訓練を己の私的な栄達の手段に利用しているだけではないですか。国民の税金で平気でマッサージチェアやカラオケセットを買ったり。そんな似非「公共」セクターなら要りません。
そんなヒラメの猟官役員なぞ全員クビにして、一層の事「餅は餅屋」の喩え通り、ネットカフェ難民から雇用能力開発機構の職員を採用して、彼の人たち自身の手で制度運用させてはどうか。その方がよっぽど上手くいくと思うのですが。
>ブチ切れそうなのはあの谷垣。おぼっちゃんでみるからになんの苦労もしてない。
あいつにはNHKに出向させて受信料の集金やらせろ!(todoさん)
何なら、今私が働いている職場に来て貰いましょうか。ウチの職場、派遣社員だけでなく直接雇用の契約社員も募集しているのですが、折角募集してもなかなか居着いてくれないのです。確かに朝早いし寒い所で、仕事の流れも速いと言えば速いかもしれませんが、決して普通の人がついて来れないスピードでもないと思うのですが・・・。
しかし、谷垣にしても橋下にしても、多分使い物にならないでしょうね。其処で派遣ワーカーと一緒に仕事して、カップラーメンだけのランチや「冷凍庫・冷蔵庫ダイエット」を一年間ぐらい経験すれば、格好の民情視察になるのに。最悪「森モドキ」の餌食になったりしてw。