久しぶりにN県A市のO田保健師さんとお話をしました。
O田さんは、もう10年も前、日本でほんとに初めて地域主体のボケ予防活動を実践した保健師さんです。旧T町の保健師さん全体の活動ですよ、もちろん!
写真取り込み復活。山中湖からの富士山(4月)
旧T町はみごとに、二段階方式を導入した実践してくれました。
まず一人暮らしの高齢者に対する給食サービスが行われていましたから、そこで脳機能検査と生活実態調査を行いました。その二つが一致する実感がスタートだったと思います。
次に、脳卒中後遺症の方たちのためのリハビリ教室でも実施。
あの簡単なMMSで、後遺症を理解できることもすぐに納得できました。
旧T町での実践はすべて個別検査(当然生活実態と生活歴を聞き、生活指導は行われることになります)で、集団かなひろいテストすら使ったことがないというほど徹底していました。
そして地域に出かけて行って「ボケ予防教室」を各地区に立ち上げていきました。
半年行政がかかわった後は自主活動で継続して行ってもらうという、今エイジングライフ研究所がみなさんに指導している地域活動の原点はここから始まっています。
モデル地区選定の条件として
①正常高齢者中心で、かくしゃく高齢者を取り込み、小ボケは1/4~1/3にとどめる。
②中ボケは外す。同一カリキュラムでは無理があるし、自主活動が困難になるため。(Oさんはのちに中ボケ前半の高齢者を対象にした「遊び塾」を立ち上げました。中ボケ後半は介護保険適応)
③地域推進役がいるところから。その時、名刺に惑わされて小ボケを見落とさないように注意。
民生委員は女性のほうが関心が高く機動性に富む。
自主活動につなげるための工夫
①自主活動につなげる最大の要因は、開始時にかかわりが期間限定であることの宣言をすること。
②脳機能検査は必須だが、教室は楽しく右脳刺激が中心だと納得してもらう。
③他グループとの交流を計る。
④推進役の負担が大きくならないように配慮する。
⑤保健師の手伝いは継続するとを伝え、徐々に減じていく。
どうですか?
世の中は今、O田さんの実践したように”ようやく”動き始めてきたでしょう。
当時「ボケ予防」という言葉はありませんでしたが、O田保健師さんはじめ旧T町の保健師皆さんの共通理解として、「ボケは正常から始まり小ボケ、そして中ボケと移行する。生活実態とリンクしている。早いほど、回復が目覚ましい。予防は第一次予防として正常者に対して行う方が効率的」と認識されていたと思います。
その後、すこやかチェックという早期発見のシステムも構築されました。
O田さんにいただいたメールです。
「しみじみ10年前とは介護予防の考えが変わってきたなと実感しています。
A市には団塊の世代の方が退職し、大勢移住してきています。
大きな会社や省庁のOBの方々ともご一緒させていただいてなかなか新鮮です。(介護予防の太極拳教室をやっていますので)
高齢者と呼ぶには申し訳ないくらい皆様元気です。
旧T町の地区で教室やっていたときとは全く違う感覚なので、正しい情報であればすんなり受け入れてもらえます。
今の高齢者はいかに元気に生きるかが課題で、情報に敏感です。『いいことがあればぜひ教えて』と積極的ですので、指導はやりやすくなっています」
O田さんとの話です。 本栖湖芝桜公園
「認知症予防は絶対早くからです。予防にお金を使うのと、介護にお金を使うのとどちらがいいかはわかりきってます。国も、世の中も、大体私たちが考えたようになってきましたね」
私はその言葉を聞きながら、胸を熱くしていました。
もともとO田保健師さんは、控えめな方で、素晴らしい実践を前に「特別のことをしたわけではありません・・・」と謙虚に語ることが常で、私から「これだけのデータがあって(なにしろ脳機能検査が全数実施でしたから)、もっと強調してもいいんじゃない」などとハッパをかけられっぱなしでした。
今回も、いつものように控えめに言われたのですが、内容がすばらしい!
10年の実践が、これだけの発言につながったのかと思うと、ただ感動でした。
O田さん。ありがとうございました。