我が家を訪問してくださった友人の話です。
(今日の写真は、修善寺の修禅寺でいただいた精進料理)
友人 「それはまあ元気な奥さんでしたよ。もともと会社経営の家付き娘で、ご主人はお父さんのお眼鏡にかなったお婿さん。趣味も多彩で、とにかく彼女がいるだけで会話が弾んで楽しい人でした。
ノビノビしてるというか、言いたい放題。
オッと、そこまで言っていいのかというような発言もあって御主人はよく耐えてると思ったこともありましたが。自分ならちょっと無理ですねえ・・・
そうそうおしゃれで若々しい人でした」
友人「それが先日会ったのですが、3年ぶりだったんです。
びっくりしました。まるで別人!
とにかく、目が届かないんです」
私「目が届かないって?」
友人「こちらを見て、ボクに話しかけてるんですよね。それなのに視線が途中までしか来てないというか。
目と目を合わせて話す時って、漫画で書くように・・・→ ←・・・みたいになるでしょ。それが相手の・・・→が途中で止まってしまう感じというか。
見てるのに見てないというか」
胡麻豆富
私「小ボケの方とお話していて、私がよく感じるのは、確かにこちらを見ているのに、その視線が私を通り抜けていってしまってるということなんですが、そこまでも来てないんですね。
小ボケの家族の方がよくいわれます。
『腐った魚の目みたい』
ごめんなさい。すごい表現ですが、ほんとによく耳にする言葉ですよ。
『目が死んでるんです』といわれることも多いです」
友人「そうそう、それです。目がほとんど死んでる!」
私「小ボケのレベルになったら、というのは…(と解説)こういうことが起きてくるんです」
解説:小ボケのレベルというのは、いったんキチンと脳機能が大人のレベルになる。それは単純に普通行われる知能検査(これは脳の後半領域の検査)が合格ラインに到達することだけではなくて、前頭葉機能(脳の司令塔の働き)も、合格していることが必須。
種々の前頭葉機能のうち注意集中分配機能は、20代にピークを迎え、あとはなだらかに低下していく(正常老化)。
ところが生活上の大きな変化などをきっかけにして、前頭葉機能の出番が少なくなる生活(趣味遊び交友運動などすべてないナイナイ尽くしの生活)を続けると、脳の老化が加速される。
その時はまず前頭葉機能が最初に異常レベルになってしまい、その時脳の後半領域の機能は正常(通常の知能検査では合格)という状態が出現する。
これが小ボケ。
私「この状態になると、状況判断が苦手になるので、会話をしていると唐突に全く無関係の話をし始めたり」
友人「そうなんです。その通り」
私「流れはおかしいけど、言ってる内容はおかしくない。今話すことじゃないでしょという感じ」
友人「そうそう」
私「そこにいる人数が多くなるほど目立ちます。もっとひどい時にはその場で居眠りを始めたりします。前頭葉が働いてないということなのです」
私「おいくつなのですか」
友人「たぶん63歳くらいでしょう」
私「エッ!若すぎる・・・」
黒米焼にぎり茶漬け
解説:今の状態は小ボケとして理解できるが、ちょっと若すぎる。
仕事一筋の人が定年退職して、ナイナイ尽くしの生活を続けて3年。そして今小ボケなら理解できる。
元来生き生きと生活し、ボケとは無縁の生活ぶりの人ということを考慮すると、年齢が若いので、遺伝子によるアルツハイマー病だって視野に入れておかないといけない。
脳の老化が加速された普通のボケと判断するには、よほどの生活上の変化が起きて、それまでの生活とまったく違った生活が2~3年は続いたという証明が必要。
友人「あ、それなら思い当たることがあります。多分3年くらい前に、彼が女性問題を起こしました。ボク達は『よく我慢した方だよなぁ』といってましたが、奥さんの落ち込みがひどかったと聞きました。あれがきっかけか・・・」
今回は脳機能検査がない状態での解釈で、これは通常は行いません。
二段階方式で認知症を理解するときには、いちばん基礎になるのが、脳機能検査。次がそれをもとにした生活実態の把握。そしてそれを確定するのが生活歴。
とくに生活歴聴取の重要性を、心に留めておいてください。