新聞にノンフィクション作家の梯久美子さんの興味深いエッセイがありました。
インタビューの極意ともいうべきことに触れていました。
「幅のあるゆったりした視線で相手を見つめる」
エイジングライフ研究所の二段階方式では、正常から認知症のごく初期から、もちろんはっきりとボケとわかるレベルまで対応します。
手技は、まず脳機能検査、それから生活実態に一致するかどうかの確認。さらに生活歴を聴き取って、脳の老化が加速されたケースであることが確認されたなら、そこからが最も大切な生活改善指導になります。
そして保健師さんたちが苦手とするのが、生活歴の聞き取り、ですね。
「今から自分のすべてを、能力も、時間も、あなたのために使います」という気持ちを込めて、脳機能検査を始めます。
そしてその姿勢は、二段階方式の手技を行っている間中保つべきなのですが、テストや生活実態の確認には、それでも客観的に通用する基準があります。
生活歴の聞き取りに関しては、本当に一人一人違います。
生活も違えば、家族環境も違う。
ものの感じ方も違えば、生き方も違う。
同じ出来事であったとしてもその出来事から受ける影響は異なってくるほうが当たりまえでしょう。
必要条件としてはただひとつ「心をこめて聞く」。
具体的にはどうすることが「心をこめること」なのか、その答えがここにあると思います。
読みながら「ウワァー、おんなじだ」と声をあげました。
インタビューの極意として梯久美子さんがおっしゃっていることと、生活歴を聴き取る時の極意は同じです。
「ひとつ繭の中」ちょっとイメージしてみてください。
安心感が感じられますね。
「安心して何でも言っていいのです」という姿勢は、相手の心を開かせる大切な鍵です。
そしてそれはとても居心地のいい時間。
皆さんが苦手とされる「生活歴の聞き取り」はそういう時間と空間のプレゼントでもあることを知ってください。そのような覚悟をもって臨むことが、むしろいい結果につながると思いますよ。
私たちには脳機能テストの結果という武器がありますから、相手の人生に深く立ち入ることができます。
その時も、自分は傍観者ではなく、かといって一体化してしまっているのでもなく、そうちょうど柔らかな繭の中に一緒に入っているというイメージですね。
その時、私も、相手から心の中を見透かされていると思います。