たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

星組『霧深きエルベのほとり』『エストレージャス』_二度目の観劇でした(3)

2019年02月09日 23時14分01秒 | 宝塚
 

 余韻はまだまだ続いています。トップコンビの退団が発表されたあとの東京宝塚劇場公演はさらに沁みるものとなることでしょう。わたしはせめて千穐楽をライブビューイングで見届けるべく、先行抽選に申し込みました。

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第12場 シュラック家のサロン
     -マルギットの怒り-

二階の扉から、ヨゼフとカール、ザビーネが出てくる。

ヨゼフ「マルギット、どうしたのだ」

マルギット「・・・」

ヨゼフ「喜びなさい。カールはお前と別れることを承知したよ。金をやったのだ。その金が思ったより多額だったので、カールは喜んでいるよ」

マルギット「お父さま」

フロリアン「カール」

カール「マルギット・・・お前の親父さんなあ、どうしても承知しねえんだよ。だから俺、金をもらった。よーく考えてみろ、お前のようなお嫁さんを連れて貧乏暮らしをした日にゃ、一生足手まといにならあ。金さえありゃ、どんな女だって手にはいるからな」

マルギット「カール、どうして!」

カール「まあ怒るなよ。お前だって責任があらあな」

マルギット「あなたは卑劣な女たらしよ」

カール「景色がいいからって誘ったのはそっちだぜ」

マルギット「あたなは悪魔よ!」

カール「やかましいやい!第一なあ、お前が俺を、あの湖のレストランへ連れていった時、なんと言った。俺が一般席はあっちの中庭だよと言ったのに、お前は特等席に座った。おかげで俺は赤っ恥かいたぜ。お前には、金持ちの上流階級が染みついてやがるのよ」

マルギット「あたなは、私よりお金に目がくらんだのです!」

カール「第二はさっきのパーティだ。俺あお前なんぞに哀れんでもらってまで、こんな家の養子になんぞなりたかねえよ。おい、俺を誰だと思ってやがるんだ。船乗り仲間じゃちっとは名の知れた、カサブランカのカール様よ! おかげでたんまり金を頂戴したぜ、ありがとうよ」

マルギット「・・・」

ヨゼフ「マルギット、その男の正体がわかったら、今日かぎり、この一週間のことは、何もかも忘れてしまうことだ」

カール「俺あ覚えてるぜ。金がある間だけはなあ(笑う)」

フロリアン「(近づいて)カール、言うことはそれだけか」

カール「ああ、お前さんにも世話になったな」

 フロリアンがカールを殴る。

カール「野郎!」

ヨゼフ「馬鹿者!刑務所に叩き込まれないのを、せめてもの情けだと思え!」

カール「いてえな・・・おい」

 カールはコートを引ったくり、扉まで行く。


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 脚本を読んでいると舞台の声が鮮やかによみがえってきます。1月29日(火)15時公演、紅カールが悪態つきながら、札束で白いドレスを着た綺咲マルギットの背中をペシッ、ペシッ、ペシッと叩くこと三回。マルギットは「ふぇ~」と声をあげていました。ト書きにカールがマルギットを叩くと書かれていないので初演からある演出なのかわかりませんがもっとも緊張感のある場面。カールがどんな気持ちで真剣に叩いているのかと思うと心が痛くなる場面。トップコンビの応酬がすさまじいと思いました。素で二人の信頼関係がないと成立しない繊細な心が描かれている場面。シュラック家のパーティーでマルギットとの身分の差を思い知らされたカールはどのあたりからマルギットをフロリアンの手に委ねようと心に決めたのか・・・。

 2月6日の退団会見の記事を読んで、宝塚を心の底から愛し、五作で全力を出し切ろうと覚悟を決めて命がけで舞台をつとめ、相手役の綺咲愛里さん、ファンと星組生への心使いを忘れない、こんな紅ゆずるさんが演じるからこその、温かさと優しさに満ちたカールなのだと納得しました。舞台に滲み出る人柄。人の心を動かすのは技術のみにあらず、なんというかもっと大きなものなのだと。思い切って二度目も行ったよかったと心から思います。こんな素敵な方が劇場中を包み込む舞台に出会えたことに感謝。


2月6日の退団会見を報じた日刊スポーツのネット記事

「真っ白なスーツ姿で、首元にはシルバーのネックレス。“泣いて”笑わせる持ち味の人情味を存分に発揮した。大好きな宝塚との別れ、組メンバー、ファンへの感謝の思いがあふれ、思わず涙。「泣かんとこうと思ったのに」「私、いっぺん泣いたら(涙が)止まらないんで」「こんな泣いた(退団会見の)人、いるんですかね」と、号泣しながら、自らにつっこみ続けた。

大阪出身で、02年入団。173センチの長身を生かした華やかな立ち姿と、人情物、軽妙な芝居運びを得意とする“大阪人トップ”らしい、ボケつっこみ。武器をさく裂させた。

16年11月のトップ就任後は、「ドリームジャンボ宝くじ」のテレビCMにも出演するなど、達者な話術を生かして、劇団の“広報”的役割も担い、昨秋には第3回台湾公演にも主演した。

退団については「(17年3月の本拠地)お披露目のスカピン(スカーレット・ピンパーネル)が終わってからすぐ」決めたという。

宝塚のトップスターは、退団時期をめぐって「自分の中で鐘が鳴って知る」と表現することが多いが、紅は「私は一生、鳴らないんじゃないか」。宝塚音楽学校の受験前から、電車を乗り継ぎ通う自身をイメージしていたというほどのあこがれの“聖地”だ。
「もう1度、退団して、もう1度、入団できるのならば、入団したい。音楽学校で制服を着たい。朝の掃除は苦手でしたけど、どんなつらいことも、制服を着られるだけで幸せでした」

あふれる宝塚への愛をこう表現した。離れたくない思いが強過ぎ、自らに区切りをつけるために「5という数字が浮かんだ。(トップ)6作だと中途半端。4作だと短い。5作で退団。そこまでに力を出し切ろうと決めていました。あ(自主ユニットの)紅5(くれないファイブ)ですしね。今思いついたけど、私、うまいな~」と、笑わせながら振り返った。

紅は、トップ娘役綺咲愛里(きさき・あいり)とともに、7月12日に兵庫・宝塚劇場で開幕する「GOD OF STARS-食聖-」「エクレール・ブリアン」の東京宝塚劇場公演千秋楽をもって退団する。同作で、トップ就任から本拠地5作になる。

「(綺咲に)いつ伝えたか覚えてないんで、電話して聞いた。無駄ばなしで1時間ぐらいしゃべっちゃった」と苦笑。綺咲には、昨年4月の「ANOTHER WORLD」公演中に、退団時期を伝えたという。


綺咲も「絶対に紅さんと一緒に卒業します。一点の曇りもないです」と返し、添い遂げ退団が決まった。組のメンバーには、今月3日に伝えた。

「あんまり私が明るく言っちゃったもんだから、皆固まっちゃって『…』みたいな。その後にポロポロ泣いてくれた。うれしかった」

寂しさは胸に押し隠し、おどけて笑ってみせるのが紅らしさ。その様子での退団報告に、組メンバーが戸惑った様子も明かした。

一番の思い出の作品は新人公演初主演で、トップ本拠地お披露目だった「スカーレット・ピンパーネル」。厳しい指導で知られる小池修一郎氏の演出初体験だった。思い出のできごとには「余興が楽しすぎて…。でもここで、人を喜ばせる楽しさ、術、サービス精神を磨けました」とも話した。
退団後については「今は宝塚のことしか考えられない。というか、考えたくない」と言い、進路は未定。「可能性を感じることにであれば、考えたい」とした。

また、恒例の寿退団への質問が出ると「この質問聞かれたかった~っ」とおどけてみせ「ありません。結婚は1人では無理なので」と口にすると、大笑い。ただ、その後、真摯(しんし)な表情で「私は宝塚で綺咲と結婚しましたし、大切なファンの方もいる」と続け、17年の劇団生活を支えてくれたファンに感謝した。」





 真っ白なスーツを着こなした姿が潔く清々しい。瀬奈じゅんさんが「いちばんいい時に辞めたい」とテレビ番組で話されていました。ギャッツビーをみたかったな、もうあと二作と思いますが台湾公演もあわせると大劇場6作分なわけで十分すぎるほどつとめを果たさているかな。さみしいですが退団後どんなふうにさらに個性をみせてくださるのか楽しみ。退団後のOGさんはすごく元気。早霧せいなさんが退団後にもう一度男役としてるろ剣を演じたり、先日東京国際フォーラムのベルばら45で拝見したアラフィフのOGの方々はさらにパワーアップしていたし、可能性はさらにひろがっていくことを期待。その前に最後まで無事に楽しく舞台をつとめられますようにと思います。

 ショー、『エストレージャス』、中詰めの客席折りがある場面、銀橋では、紅ゆずるさんが綺咲愛里さんの肩に腕を回してワチャワチャしていると礼真琴さんがすりすりと寄っていって紅さんが礼さんの肩にも腕を回して3人でワチャワチャ、ほほえましい場面でした。礼さん、すごくさびしくなるなあと心配。


 明日は雪組の『ファントム』東京宝塚劇場公演千穐楽ライブビューイング。朝から論文なんて書けない、無理だー、面接もういいよ、って考えていると気持ち追い詰められるので明日は忘れるようにつとめます。大劇場からどんなふうに深化しているか楽しみ・・・。