2020年6月12日:星組『鎌足-夢のまほろば、大和し美しー』_思い出し日記(4)
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『鎌足』、書き留めておきたいことばがいっぱいなので、オンデマンド配信みながら文字起こし、断片的な備忘録。
蘇我氏がたおれ、日本初の元号「大化」が定められて、平穏がおとずれたかにみえた大和でしたが、宮中では権力争いが渦巻いていました。
二幕冒頭、弟である軽皇子に譲位した、有沙瞳ちゃん演じる大后(皇極天皇のちに斉明天皇)、
「どうして軽皇子を帝に据えてお前を皇太子にとどまらせたのです」
「優秀だからこそ臣下といえど油断なりません」
「大和はけっして一枚岩などにはならない、あの鎌足とて例外ではない」
「人質をとりなさい、あなたにも后が必要なころあい、ちょうどよいでしょう、そして鎌足の忠心を試してごらんなさい、けっして歯向かうことのできぬよう。それが臣下をひきいるものの務めです」。
蘇我入鹿を討つことを煽動した紅ゆずるさん演じる鎌足への憎しみを露わにする中大兄皇子の母の凍りつくような冷たさの裏にある女心と中大兄皇子を守るため入鹿を見捨てるしかなかった母としての葛藤、自分が傀儡にすぎないと知った孤独に共鳴し合った入鹿と皇極天皇。ナウオンステージで、下級生の自分が上級生に対して高いところからものを言うことが最初はできなかったと話していますが見事な役者ぶり。
中大兄皇子に仕えて大臣となり、綺咲愛里さん演じる車持与志古郎女(くるまもちよしこのいらつめ)と結婚してようやく平穏が訪れたかに見えた鎌足の人生に、幸せな時間は束の間のでした。結婚した二人の食事の場面、ここで『食聖』をぶちこんでくるアドリブ?さすがでした。
与志古「唐からきた料理人に作らせました、たしかホンとか」、与志古に「あなた」と呼ばれて照れまくる鎌足、与志古のことを好きすぎる。次は中臣(なかとみ)にかわる名前と世継ぎを望む鎌足に、入鹿を討ち果たし現実がすぐさま深く影を落とします。少年少女の日、志を誓い合った三人。与志古の口から自然に入鹿(少年の日は鞍作)の名前が出てきます。
与志古「鞍作(くらつくり)があたなに新しい名をつけてやると・・・」
鎌足「鞍作の話はよせ、わたしを責めるのか」
与志古「責めてなどおりませぬ」
「ただの思い出話」
「鞍作がいなかったことにもなかったことにもできますまい」
「過去は過去、思い出は思い出です」
入鹿の影におびえる鎌足を、「敗者となった入鹿を歴史から消した」と蘇我氏亡き後中大兄皇子に仕えるようになった天寿光希さん演じる船史恵尺(ふねのふひとのえさか)の不気味な笑みが、さらに追い詰めていきます。
そして鎌足は中大兄皇子に「お前の妻をめとることにした」と告げられるのでした。現代では血が凍るようなドロドロ。
鎌足「なにゆえ与志古(よしこ)を?」
中大兄皇子「お前との絆をより強いものとするために」
鎌足「しかし、しかし、与志古(よしこ)は・・・」
異存をとなえ、忠誠心を疑われようとする鎌足を与志古(よしこ)が救います。
「いいえ異存などございません、とてもありがたいお話でございます」「そうですね、鎌足様」
鎌足「なにゆえそのような、与志古(よしこ)はそれでよいのか」
与志古「よいも悪いもございません、中大兄様にお仕えしているのです、ありがたく頂戴するのがつとめというものでございます」
中大兄皇子「こちらへ参られよ」
崩れ落ちる鎌足がドレス?の裾をつかんで引き留めようとするのをかわして与志古は宮中へと入っていきます。「采女をひとりおまえにくれてやろう」と中大兄皇子に言われ戸惑う鎌足。
大后(皇極天皇)「安見児(やすみこ)では不服か?」
与志古「鎌足様、およろこびなさいませ」、目を見開く鎌足に「そのような顔をなさってはおかしいですわ」。心の中とは裏腹な言葉で鎌足を守り抜こうとする与志古の姿が力強い場面でした。
2019年7月7日:星組『鎌足』ライブビューイング_安見児得たり
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安見児(やすみこ)を得た悦びを「詠いなさい」とせまったのは皇極天皇でしたね。
安見児(やすみこ)の前で「つらい、わたしはいちばん失ってはならないものを失ってしまった」と膝を崩れおり、はいつくばり続ける鎌足。主に逆らうことはできない鎌足は「だがわたしには与志古を失うなど耐えられない、い~」と泣き崩れながら「この苦しみや悲しみがわからないのか」と立ち尽くす安見児に投げかけます。
星蘭ひとみちゃん演じる安見児「わかりません」「わたしは采女です」「思うことも思われることもすっかり捨てて生きておりました」「鎌足様、与志古様への思いをひとひらだけでもわたしにおおしえください」
鎌足「悲しい人だ、あなたも」、安見児(やすみこ)を抱きとめる鎌足。
鎌足と安見児(やすみこ)、与志古と中大兄皇子、二人組をオーバーラップさせる振付は歌舞伎界の藤間勘十郎さん。(ナウオンステージで稽古場で振付している時の藤間先生すごくかわいいっていう話が出ていました。)中大兄皇子の前でも与志古は毅然と、力強く鎌足を肯定するのでした。
中大兄皇子「わたしがこわいか」
与志古「こわくはありません」
中大兄皇子「それほど強く鎌足のことを、そして鎌足もお前のことを」
与志古「中大兄(なかのおおえ)様、本当に必要なのはわたしではなく鎌足様なのでしょ」
中大兄皇子「鎌足が必要だから妃にしたのだ」
与志古「畏れているのは中大兄様のほうです、中大兄様はお強い方だとうかがっていましたが間違いでした、鎌足様の方がずっとお強い」
中大兄皇子「私の方が弱いというのか、鎌足よりもわたしが」
与志古「中大兄様、体に触れることはできても心に触れることはできません」
中大兄皇子「悲しいな」
与志古「いいえ悲しみはわたしと鎌足様のものです」、鎌足を守るために中大兄皇子を抱きとめる与志古。
そして鎌足は中大兄皇子に、入鹿を討つとき加担してくれた蘇我倉山田石川麻呂(そがのくらのやまだのいしかわのまろ)を、謀反の疑いありとして討つよう命じられるのでした。石川麻呂は大化の改新後の地位に不満を抱いていました。「謀反が起こってからではおそいのだ」という中大兄皇子の次なる一手は孝徳天皇、さらにはその遺児、有間皇子(れんれんの薄幸の少年感お見事でした)。己が生きるために鎌足は、もがき苦しみながら斬って斬って斬り続けなければならなくなっていたのでした。
「このような流血のために志をたてたのではない」もがき苦しみながらも「では死にますか」と恵尺にせまられると「与志古をおいては死ねない」とはいつくばりながら生きようとする鎌足。
中大兄皇子が天智天皇として即位した祝いの席でのぞみのものをたずねられた鎌足は「与志古を返していただきにまいりました」と。返してもらえぬならと刀をとる鎌足、「与志古はわたしの志です」。ここの天皇の側近たちとの立ち回り、完全に歌舞伎でした。自害しようとする鎌足の姿をみた与志古は天智天皇に「帝ごらんになられたとおりです、鎌足様が謀反など企てるとお思いですか、鎌足様は与志古がいないと生きていけないのです」「帝は鎌足様を失ってでも与志古をそばにおいておきたいとお思いですか」「鎌足、くよくよなさいますな」「こんなにもおいつめられて、帝はつよい方です、でも与志古は弱い鎌足様が好きです、鎌足様は与志古がいないと生きていけないのです」と強く投げかけます。ライブビューイングでは見逃してしまった場面、幼い日、弓を射るのにへっぴりごしの鎌足に「与志古は強い殿方が好き!」といい放った無邪気だった10歳の与志古ちゃん。宮中へ仕えることになった時も「お前までいなくなってしまうのか」とすがるように泣く鎌足に、「強い殿方が好き」と言ったその与志古が泣き崩れる鎌足を抱きしめる姿はむねあつでした。弱い鎌足が好きだと、鎌足の全てを肯定する与志古。
天智天皇は「そこにいるのはお前の妻、与志古だ、わたしの妃ではない、二人連れだって好きにするがよい」と二人を許します。そして「鎌足を失うことを思うとわたしはおそろしかったのだ」と側近に本音を漏らすのでした。与志古は「あのお方こそ鎌足様なしでは生きてぬけのです」と。そして帝の子を宿していることを鎌足に告げるのでした。
何がおこっても鎌足を信じ続け、病に倒れ最期の時を迎えようとする鎌足の人生を肯定する与志古の心に残ることばもこの機会に書き留めておきたいですが、長くなってきたので次回にします。愛里さん、退団挨拶で与志古の台詞をかりたことばが心に沁みました。またあの台詞が聴けるとは思わなかったので感無量でした。
星組のトップスターとなった紅さんの相手役に選ばれた時は、紅さんに話しかけれても「はい」と「いいえ」しか言えなかったという愛里さんがよくぞここまで成長したと思いました。可愛いく逞しく舞台をささえるヒロイン、たのもしい限りでした。