ルイス・トリスタン
《法悦の聖フランチェスコ》
1620年頃?
油彩、カンヴァス
120 × 110cm
(公式カタログより)
「17世紀の最初の四半世紀にトレドの画家ルイス・トリスタンによって描かれた本作品は、しばしば、同じ時期のより偉大な宗教画家であり、トリスタンの師でもあったエル・グレコの様式で描かれた祈念画として検討されている。実際、この絵画は強い宗教性を示し、また、抑制的でありながら、同時に情熱的でもある技法で描かれている。聖人は台状のものの背後に半身で描かれ、その台の上には頭蓋骨、十字架、聖書が置かれている。彼は頭上に降りてくる神の光を見上げている。聖書の見える両手は自己犠牲、献身、神への進行を雄弁に物語っている。聖フランチェスコは12世紀末から13世紀初頭に活動し、グレゴリウス9世によって列聖された。
17世紀のカトリック教会が好んだ超自然の作例として、ルーヴル美術館の《法悦の聖フランチェスコ》はさまざまな方法で議論し得るものである。第一に、それは重要な托鉢修道会のひとつであるフランチェスコ修道会の創設者を描いている。同修道会は植民地への布教活動で名を上げ、福音書的任務とヨーロッパにおける知的発展(特に、異国の薬草に関して)に貢献する多くの資料収集を行なった。トリスタンの作品は清貧の勝利を表わしていると同時に、地球上各地に宣教師たちを送ったスペイン帝国の頂点を謳歌している。
このような作品は17世紀のカトリックの信仰の証と受け取るよりも、むしろ、その構造を問うことが必要だろう。本作品は、まさに奇跡を描いている。トリスタンは聖フランチェスコが精根(この血の傷跡はキリストが十字架に架けられた身体と同じところ、手足に加えられた)を受けたまさにその瞬間を描いているのではないかもしれないが、彼は神性との関係において描かれている。人間世界におけるこのような超自然の不意の出現は、古代に由来する。そこでは、人間に対する神々のこのような行為が絶えず語られていた。それゆえトリスタンの作品を古代とは断ち切られていると見なすのは、おそらく間違いであろう。」