バウホール公演『アンナ・カレーニナ』
原作:レフ・トルストイ 脚本・演出:植田景子
「文豪トルストイの不朽の名作「アンナ・カレーニナ」をミュージカル化した本作は、2001年の朝海ひかる、紺野まひる、貴城けいによる初演が好評を博し、2008年には宝塚バウホール開場30周年を記念したワークショップとして再演された究極の恋愛ドラマ。
19世紀後半のロシア。輝かしい未来を約束された青年貴族将校ヴィロンスキーは、社交界の華と謳われるアンナ・カレーニナに出会い心を奪われる。政府高官カレーニンの貞淑な妻として、何不自由無い暮らしをしていたアンナもまた、ヴィロンスキーの激しく真剣な求愛を受け、内に秘めていたもう一人の自分が目覚めて行くのを感じていた。二人の恋の噂は瞬く間に社交界に広がり、世間体を重んじる厳粛なカレーニンは妻の不貞を咎める。しかしヴィロンスキーとアンナにとって、もはや、この恋を失って生きていくことは不可能だった。愛に全てを捧げ、ただ愛に生きようとした二人が、その恋の終着駅で見つけたものは…。
2008年の星組公演でカレーニン役を演じて新境地を開いた美弥るりかが、愛の激流に翻弄されるヴィロンスキー役に挑み、作品に新たな息吹を吹き込みます。」(歌劇団HPより)
一路真輝さん主演の舞台とはかなり趣が違いました。ヴィロンスキーとアンナの、自分の感情に素直な生き方を肯定する終わり方だったかな。主役はヴィロンスキー。モスクワで出会った二人がひそかに惹かれあい、夫カレーニンの知るところとなり、ヴォロンスキーのもとに走ったアンナに子供は渡さないとセリョージャの手を引いて家を出ていき、一幕の終わりはセリョージャがヴォロンスキーとアンナに間に立って二人を引き裂くような演出。ニ幕の始まり、ヴィロンスキーの子供を産んだ後具合の悪く死の淵を彷徨うアンナが、死なないでくれと会いに来た夫カレーニンに、ヴィロンスキーのもとへと走った自分の罪を悔い詫びて、その姿に打ちのめされたヴィロンスキーもまた自分の罪深さにおののき、ここに自分の居場所はないと拳銃で自殺未遂をするところまでは共感できました。その後アンナが回復すると二人の恋はまた燃え上がり暖かいイタリアへと旅立ちます。(美穂圭子さん演じる社交界を取り仕切る夫人が、ヴォロンスキーが黙ってアンナのもとを去って僻地の任務へと旅立とうとするのを会わなくていいのかと、会わなかった後悔することになるとヴォロンスキーにもアンナにも迫らなかったらどうなっていたのだろうかとふと思いました。)ヴェニスの明るいカーニバルの場面にセリョージャが仮面を付けて登場する演出でした。セリョージャへの思慕とヴィロンスキーが衰えてきた自分に愛想を尽かして若い女性に会いに行っているのではないかと猜疑心にかられ、孤独感から精神を病むようになったアンナ。ヴィロンスキーにとってアンナは重荷になり始めていたのだろうか。ヴォロンスキーの表情からは読み取れず気になりました。アンナと離婚はしない、二人は破滅するしかない、行き場のなくなったアンナが最後に自分の所へ戻ってくるのを待っているという、月城かなとさんのカレーニンがしぶくって、男前過ぎました。
トルストイの原作はどうなっているのかな、この世にいる間に余裕があれば読みたいです。カーテンコールで光月るう組長に「宝塚の愛の巡礼」と紹介された美弥るりかさん、落ち着いた話し声が素敵でした。インフルエンザがはやっていますがわたしたちは大丈夫、この公演をご覧になったみなさまもライブビューイングをご覧のみなさまも大丈夫みたいな挨拶。3回目のカーテンコールだったかな、ひとり緞帳の前に出てきてくれたとき、初演を客席でみて憧れ、星組公演ではカレーニン役、そして今回ヴィロンスキー役をやることができてすごく嬉しいと涙目で話されました。予定していなかったことでその時心の底から出てきたことを話していた感が好感もてました。下級生にいたるまでひとりひとり学びがあった舞台だったという内容の話も。チケット難だったこともご存知だったようでした。2回目のカーテンコールだったかな、ブルーレイの収録日だったことも明かし、ライブビューイングの会場のみなさま、テレビの前でご覧のみなさまと話しかけてくれるところ、明日海りおさんと同じで可愛いって思いました。
宝塚なのでダンスシーンがいっぱいの、どこか夢々しい幻想的な世界。だからおもくなりすぎずにひたれる。軍服姿とダンスが指の先まで美しい美弥さまをスクリーンいっぱいに拝見できたの、目服でした。左の前髪が巻き毛になってたれている感じも素敵でした。(的確に表現できる言葉がみつからず・・・)。アンナがセリョージャの誕生日に贈ろうと用意した地球儀がベッドから落ちそうになって支えたのはアドリブかな。そのしぐさの麗しいこと。あんなに細いのにお姫様抱っこも(折れないかとしんぱいになりました)。フィナーレでは短いけれど燕尾服の群舞とデュエットダンスもありました。それだけでも十分に楽しめたかな。アンナの海乃美月さんは『エリザベート』に続いて狂気の表情がお見事。小池先生直伝の月組ジャンプができたの?かな。美弥さまに「セクシー組長」と紹介された光月組長の音頭で、「会場のみなさまも隣の人と手をつないでください、通路を挟んで隣の方とも、会場が一体になりましたね」と美弥さま。楽しい締めくくりでした。こじんまりとしたセットもシンプルな舞台。ひとりひとりの表情の捉え方がいいライブビューイングだったと思います。美穂圭子さんと五峰亜希さんが存在感抜群でした。ロシアの作品、人名がむずかしい。噛まないで言えるのすごい。
プログラムは来週大劇場で買ってまたゆっくり思い出すことにしましょう。光月組長が話された「さまざまな愛」、ゆっくり振り返っていきたいです。一路さんの舞台の思い出し日記もまだ書きたい。
余談ですが、大劇場のオペラグラス、公演している組のカラーになっていることを先日はじめて知りました。今月は星組なので青色。すごいホスピタリティ。
次はまた大劇場日帰りバスツアー、それまでに書類を提出せねば、そこまで自分を追い詰めなくても間に合うんですけどね、できればすっきりしてから楽しみたい・・・。