行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

タイの反政府デモ、デモクラシーの難しさ

2013-12-03 19:14:53 | Weblog

連日タイのタクシン派インラック政権へのデモが報道されている。タクシン派はバンコック等都市以外の農村を重視したばらまき政策で人気があり、選挙では多数派を占めた。インラック首相は政権を取ると、最賃の引き上げなど都市部労働者に配慮した政策で順調の滑り出しだったが、亡命している兄のタクシン氏の復帰にこだわり、反政府大規模デモを招き、ピンチに立たされている。

選挙で勝てば何でも出来るとの思い込みが野党を中心とする反政府勢力の反発を招いた。特にタイの場合は都市部では反タクシン派が多数を占めているという事情も拍車を賭けた。日本でも現在、秘密保護法をめぐって連日首相官邸へ抗議デモが繰り返され、大声をだすデモはテロだとか、巨大与党の石破幹事長の発言が国民の請願権を毀損するなど議論を呼んでいる。

エジプトでは選挙で勝ち、ムスリム同胞団がムルシ政権を確立したが、ムルシ大統領は行政権と司法権を握り、キリスト教の弾圧など強権政治でアラブの春を演出した若者の反発を招き、大規模抗議集会で立ち往生し、軍のクーデターで失脚した。ブラジルでも人気の有った庶民派大統領ルラ氏を引き継いだルセフ大統領が公共料金の値上げを断行し、一気に反政府デモが全国で拡がり、政策の修正を余儀なくされた。

共通しているのは、選挙で勝ち自分の都合の良い政策を強行することから反政府運動が活発化するという結果だ。選挙は何年か1度の民意を聞く機会で、勝てば何でも出来ると過信するところに落とし穴がある。時の政権は民意を絶えず把握し、野党の主張を取り入れ、妥協を探りながら政策を推進しなければならない。決める政治という言葉が昨今日本で流行っているが、決めることは妥協を排除することではない。ギリシャで始まったデモクラシー、何と難しいことか、しかしものも言えない独裁政治よりはるかに価値がある。

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