三菱自動車の「eKワゴン」燃費不正問題、2015年度の販売台数は三菱自動車の「eK」シリーズが4万3297台、日産の「デイズ」シリーズが14万413台となっている。過去の台数を含めると62万台というが、具体的な補償金額がどうなるのか見当もつかないほど巨額になるのは間違いない。年金生活者には燃費の良い、税金も安い「デイズ」を売り込みに知り合いのセールスマンがよく来て自信たっぷりデイズの評判の良さを語っていた。かつて水島製作所のラインを見て、三菱自動車の軽自動車の素晴らしさに感銘を受けた。それだけに今度の不正問題は誠に残念だ。
三菱自動車はこの10数年で3度目の危機に直面し、2000年にリコール(回収・無償修理)隠しが発覚して業績が急落し、独ダイムラークライスラー(当時)の傘下に入った。その後も分社化した三菱ふそうによるリコール隠しによって元社長らが逮捕され、2004年にはダイムラーが追加の支援の中止し、存亡の危機をむかえた。本来ならここで軽自動車を作っていないトヨタ、日産といった大手に吸収合併する道を選ぶべきだった。ところが通常の破綻会社では考えられない三菱重工業と三菱商事を中心に、優先株発行という資金援助で何とか破綻を免れた。三菱グループという中にあって特別な配慮がされた。
軽自動車の燃費競争特にリッター当たり30kmを超える競争はスズキ、ダイハツを先頭に凄まじいばかりだった。ekワゴンがエンジンの改良で30.4km/Lにまで向上させたのはようやく2015年10月のことだった。鶴原吉郎氏による軽自動車に絞った研究開発費を見ると非常に大雑把にいって、ホンダの約400億円、スズキとダイハツの約300億円に対して、三菱自動車は180億円と推測できる。三菱という看板を背負って、他社に追いつくために現場は必死だったと思うがこの開発費の差はどうしようもできない。しかし、トップからは絶えず大きな圧力がかかった結果のごまかしだったのだろう。英語の諺でCheats never prosper「ごまかしは栄えず」といわれる。
今後、厳しい局面を三菱自動車はむかえる。2004年の時とは違い、三菱各社への株主の監視は厳しくなっており、どういう形にしろ資金援助は難しい。優秀な製造技術を有する工場を日産とか他社に売却するといった三菱自動車解体への方向も考えられ、従業員には茨の道だ。経営者の失敗は最後には大勢の従業員を苦しめることになる。