行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

イタリア人にIMFランチが食べられるか

2011-11-08 15:00:10 | Weblog

ギリシャ財政危機が世界第8位の経済大国イタリアにまで影響しようとしている。格付け会社のイタリア国債の格下げで、欧州中央銀行がイタリア国債を買い支えているにも拘わらず価格が下がり、国債金利は7%に迫ろうとしている。イタリアの財政赤字はGDPの4.6%だから日本に比べればはるかに健全なのだが信用不安を払拭するには財政再建しかなく、ベルルスコーニ首相はIMFに財政再建への監視を要請した。

ここで思い出すのは1997年7月にタイで始まったアジア通貨危機で、アジア各国の急激な通貨下落(減価)現象で、米国のヘッジファンドを主とした機関投資家による通貨の空売りによって惹起された。成長の原資を短期の外国からの借入金で賄っていたアジア各国は外資の引き上げで外貨が底をつき、大きな影響を受けた。

アジアの市場に異変を感じたムーディーズは、1997年7月に、韓国の格付けをA1からA3まで落とし、同年の11月には更にBaa2にまで格を落とした事で、一挙に外資が引き上げ、韓国に衝撃が走った。12月12日時点で韓国の抱えていた民間短期対外債務残高は320億ドル、外貨準備高は10月末の223億ドルから12月2日には60億ドルまで減少し、まさにデフォルト寸前の状況にまで追い込まれた。これによりIMFへの支援を要請し、日米欧の民間銀行に対する債務返済繰り延べ(リスケジューリング)を要請すると伴にGDPの3%以内の抑制や厳しい財政緊縮策などのIMF介入を受け入れた。

新任早々の金大中大統領によって海外からの証券投資に対する規制が緩和され、対外証券投資の流入が促進され、国際収支は安定を取り戻した。一方成長を抑える緊縮政策は企業の整理解雇が相次ぎ、不評を買ったが、韓国国民は「朝鮮戦争以来、最大の国難」「IMF危機」として、貴金属の供出を行い、昼食は各レストランで「IMFランチ」と称する普段より倹約したメニューが登場し耐乏生活ムードが流行った。

イタリア人が韓国で流行ったIMFランチを口にするだろうか?イタリアは都市国家群が1861年明治時代のちょっと前に統一された国で、旅行すれば判るがかなりの地方分権が残っているし、地方にはそれぞれの料理があるごとく豊かで個人個人の伝統的な生活はかたくなに守られてきた。国内にはそれなりの富裕層と技術蓄積を持つ高付加価値の製品を製造する中小企業もあり、ユーロが下落すれば息を吹き返すことが可能だ。

しかし、IMFの要求する財政再建に手をつければ国民生活には大きな影響が出る。医療費が無料というのも今では珍しい国で、これらが手をつけられ、さらに年金の削減改革ともなると反発が大きく、現政権では難しい。まして韓国のようにIMFランチを食べて耐乏生活などといった国民の協力は期待できない。イタリアの友人は定年が来るのを指折り数えて待っているので定年延長への反発は日本人が想像できないほどだ。


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