日立、東芝、三菱と総合電機として永い伝統を保ってきたが、経営危機に陥り、再建途上の東芝は、発電などのインフラサービス事業と、ハードディスクなどのデバイス事業を行う2つの会社を新たに設立し、東芝本体も含めて3つの会社に分割する方針を発表した。新たに設ける2つの会社は2023年度下期の上場を目指す方針で、東芝本体は、半導体大手の「キオクシアホールディングス」の株式などを保有する会社として存続させる方針だ。
狙いは綱川智社長の記者会見で「株主価値向上のための選択肢を検討した。取締役会は今回の選択が最善と結論づけた」と分割のメリットを強調したように、株主重視にあり、従業員はどう考えるか疑問だ。
最近、「コングロマット・ディスカウント」という言葉が米証券業界でよく言われている。たくさんの事業を抱えている大企業の経営が本来なら各事業間の相乗効果が期待されるが、技術革新が激しく逆に経営資源が分散され、成長の妨げになっている。むしろ各事業を分割した方が企業価値が上がる(株価が上がる)という意味だ。今月のGEや、ジョンソン&ジョンソンの分割発表はその良い例だ。
日本の場合、日立(株価7300円)は2010年経営危機に陥り、多くの関連企業を売却し、選択と集中を行い「社会イノベーション事業」に経営資源を集中して経営を立て直した。三菱電機は総合電機の形をなしているが株価は1500円近辺で低迷し、コングロマット・ディスカウントを地で行っている。
1960年代、モーターと言えば総合電機三社ものがトップブランドだったが今やモーターは日本電産(株価13000円)がはるかトップを走る。エアコンはパナソニック(株価1400円)がトップメーカーだったが今やダイキン(株価25000円)が世界でもトップだ。半導体は総合電機とNEC,富士通で世界一だったが今や台湾メーカーとサムソンだ。
こうしたコングロマット・ディスカウントの事例を見ると、東芝の再建は当初から分割していた方が良かったかもしれない。
東芝が分割して成長するかよく判らない、最終的には株主が決めることだ。しかし、ステイクホルダーとしての従業員の協力がなければ成功しないことも事実だ。
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