串木野純也vsカーロス・エリオット
1984年7月30日 大阪府立体育館
日本ウェルター級タイトルマッチ
下馬評ではエリオット有利だった。
デビュー以来6連勝(全KO)。4戦目で韓国の元世界ランカー黄忠載を2RKO、
抜群のパワーは後楽園のファンにも お馴染みだった。
一方、王者串木野も充実していた。
13敗ボクサーから奇跡の変身、番狂わせのKOで日本王座奪取して以来、10連続
KO防衛。
しかし11度目の防衛戦で1度KO勝ちしている興島将二に判定まで粘られ、串木野も
ここまでかの声もあったのも確かだ。
何よりも、八戸の米国軍人エリオットの黒光りした全身のバネとパワーが、すべてを
凌駕する雰囲気に満ちていたのだ。
不安要素はキャリア不足くらいのモノだった。
試合開始。
意外に静かなジャブの突き合い。しかしピーンと張り詰めた緊迫感。
エリオットのジャブが強い。串木野が左フックで身体を流した所にエリオットの右アッパー。
それだけで串木野の上半身が揺れる。不的確だが恐い。
右の相打ちは共にミス。
ガードを固める串木野に、エリオットが外側から右フック。
「オープンや!」の野次に意地になったかエリオット、その右を連打。王者をロープに詰める。
串木野防戦に回った所でゴング。
―専門誌の名勝負コラムだったら。
山本茂氏などがラストをドラマチックに描く為にか、「串木野はピンチを ひたすらガードを
固めて耐えた」表現に終始させるだろう。
しかし私の目では・・・。
串木野は1Rから しっかり右ショート(ストレート&フック)を狙っており、単発ながら
有効打となっていた。
串木野は決して一方的に押されてはいない!
第1R、ラストの連打を取って小差でエリオットだが、それまでは王者がリードしていた。
第2R。
挑戦者が左フック右アッパーを強振、串木野応戦するも押され気味。
ロープを背負って防戦、生命線の右ショートを狙うが、それでもエリオット構わず連打。
エリオットのペースが早い。
この回バッティングで串木野は左目から出血。ポイントは完全にエリオット。
第3R。
この回は中間距離でボクシングしあうエリオット。
意外とペース配分を考えてるのか?思えば1Rから要所で横へのステップも使っている。
串木野相変わらず右クロスを狙う。
この回は互角か。
第4R。
中盤までボックスしていたエリオットが、我慢できなくなったかのようにスパート。
串木野をロープに詰め連打する。
ガードを突き破られ、右に左に揺れる串木野。しかし それでも頼みの右を狙う。
スリリングな打ち合いだがエリオットが手数と迫力でポイントを奪った。
第5Rには波乱。
例によって中盤までのボクシングペースから、今度はボディを叩き攻勢のエリオット、
一休みの後ラウンド終盤再び攻めに出る。
連打からの右アッパーが串木野の顎を撥ね上げ、王者の足が引き攣った!
力なくロープに下がった王者にエリオットの重そうな連打が叩きつけられた所でゴング。
第6Rは最初からエリオットが飛ばす。
ダメージの残る王者を追って強打。串木野、必死の防戦。
救いはエリオットの連打が回転の速いものでなく、一発一発タメてくる事だ。
しかも大振りで的確さに欠ける。カウンターのチャンスはある。
レフェリーが挑戦者の攻勢を止めて、オープンブローの注意を与えた一瞬の間も王者を
救ったかもしれない。
再開直後、王者の左ショートフックがカウンターでヒット。
自分のパンチの勢いもあって挑戦者の身体が流れた。そして流れた身体の戻しが遅く
なっている。
それでも大振りの連打を繰り返すエリオット。
串木野も打ち返す。
挑戦者の身体が流れ、半身の所に串木野の生命線の右が当たった。
またエリオットの身体が流れる。
一気に疲れたのか?ダメージもあるのか?
ここで串木野のワンツー!
挑戦者の上体が前のめる!王者、ダブルジャブからワンツー!!
おそらく何万回と練習を繰り返してきた基本のブロー。
エリオットが両手からダウン!
辛うじて立った挑戦者に串木野の右が襲いかかる。
流れて半身のエリオットの後頭部に最後の右!
ロープに引っ掛かった挑戦者を見て、レフェリーは即座にストップ!
激戦は終わった。
自力で立ってられないほど疲れ果てた王者。
気の抜けない攻防に神経から疲労したのだろう。老いた獅子のような表情。
正直、拍子抜けした。
エリオットはペース配分も行いながら一気にスタミナを切らせた。
早い時期から辻本英守や林載根、亀田昭雄、朱虎、全盛の黄忠載、堀畑道弘
(若い頃は好センスのホープとして期待大だった)ら強豪と戦ってきた串木野なら、
「この程度の相手なら勝って当然」とも思わせた。
歴戦の戦士・串木野純也は、順当な結果で未熟な挑戦者を退けた。
1984年7月30日 大阪府立体育館
日本ウェルター級タイトルマッチ
下馬評ではエリオット有利だった。
デビュー以来6連勝(全KO)。4戦目で韓国の元世界ランカー黄忠載を2RKO、
抜群のパワーは後楽園のファンにも お馴染みだった。
一方、王者串木野も充実していた。
13敗ボクサーから奇跡の変身、番狂わせのKOで日本王座奪取して以来、10連続
KO防衛。
しかし11度目の防衛戦で1度KO勝ちしている興島将二に判定まで粘られ、串木野も
ここまでかの声もあったのも確かだ。
何よりも、八戸の米国軍人エリオットの黒光りした全身のバネとパワーが、すべてを
凌駕する雰囲気に満ちていたのだ。
不安要素はキャリア不足くらいのモノだった。
試合開始。
意外に静かなジャブの突き合い。しかしピーンと張り詰めた緊迫感。
エリオットのジャブが強い。串木野が左フックで身体を流した所にエリオットの右アッパー。
それだけで串木野の上半身が揺れる。不的確だが恐い。
右の相打ちは共にミス。
ガードを固める串木野に、エリオットが外側から右フック。
「オープンや!」の野次に意地になったかエリオット、その右を連打。王者をロープに詰める。
串木野防戦に回った所でゴング。
―専門誌の名勝負コラムだったら。
山本茂氏などがラストをドラマチックに描く為にか、「串木野はピンチを ひたすらガードを
固めて耐えた」表現に終始させるだろう。
しかし私の目では・・・。
串木野は1Rから しっかり右ショート(ストレート&フック)を狙っており、単発ながら
有効打となっていた。
串木野は決して一方的に押されてはいない!
第1R、ラストの連打を取って小差でエリオットだが、それまでは王者がリードしていた。
第2R。
挑戦者が左フック右アッパーを強振、串木野応戦するも押され気味。
ロープを背負って防戦、生命線の右ショートを狙うが、それでもエリオット構わず連打。
エリオットのペースが早い。
この回バッティングで串木野は左目から出血。ポイントは完全にエリオット。
第3R。
この回は中間距離でボクシングしあうエリオット。
意外とペース配分を考えてるのか?思えば1Rから要所で横へのステップも使っている。
串木野相変わらず右クロスを狙う。
この回は互角か。
第4R。
中盤までボックスしていたエリオットが、我慢できなくなったかのようにスパート。
串木野をロープに詰め連打する。
ガードを突き破られ、右に左に揺れる串木野。しかし それでも頼みの右を狙う。
スリリングな打ち合いだがエリオットが手数と迫力でポイントを奪った。
第5Rには波乱。
例によって中盤までのボクシングペースから、今度はボディを叩き攻勢のエリオット、
一休みの後ラウンド終盤再び攻めに出る。
連打からの右アッパーが串木野の顎を撥ね上げ、王者の足が引き攣った!
力なくロープに下がった王者にエリオットの重そうな連打が叩きつけられた所でゴング。
第6Rは最初からエリオットが飛ばす。
ダメージの残る王者を追って強打。串木野、必死の防戦。
救いはエリオットの連打が回転の速いものでなく、一発一発タメてくる事だ。
しかも大振りで的確さに欠ける。カウンターのチャンスはある。
レフェリーが挑戦者の攻勢を止めて、オープンブローの注意を与えた一瞬の間も王者を
救ったかもしれない。
再開直後、王者の左ショートフックがカウンターでヒット。
自分のパンチの勢いもあって挑戦者の身体が流れた。そして流れた身体の戻しが遅く
なっている。
それでも大振りの連打を繰り返すエリオット。
串木野も打ち返す。
挑戦者の身体が流れ、半身の所に串木野の生命線の右が当たった。
またエリオットの身体が流れる。
一気に疲れたのか?ダメージもあるのか?
ここで串木野のワンツー!
挑戦者の上体が前のめる!王者、ダブルジャブからワンツー!!
おそらく何万回と練習を繰り返してきた基本のブロー。
エリオットが両手からダウン!
辛うじて立った挑戦者に串木野の右が襲いかかる。
流れて半身のエリオットの後頭部に最後の右!
ロープに引っ掛かった挑戦者を見て、レフェリーは即座にストップ!
激戦は終わった。
自力で立ってられないほど疲れ果てた王者。
気の抜けない攻防に神経から疲労したのだろう。老いた獅子のような表情。
正直、拍子抜けした。
エリオットはペース配分も行いながら一気にスタミナを切らせた。
早い時期から辻本英守や林載根、亀田昭雄、朱虎、全盛の黄忠載、堀畑道弘
(若い頃は好センスのホープとして期待大だった)ら強豪と戦ってきた串木野なら、
「この程度の相手なら勝って当然」とも思わせた。
歴戦の戦士・串木野純也は、順当な結果で未熟な挑戦者を退けた。
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