ザ・フーの「ライヴ・アット・キルバーン」(アメリカ/カラー/64分)は
2008年11月に、シアターN渋谷にてロードショーされたから
その時、映画館で観たのだが
※その時の感想は、
「あるBOXⅢ」映画コーナー にUPしております
その内容に満足しつつ、「DVDかブルーレイの国内版が出たら買おう」と
思ったものの、なかなか発売に至らず
結局、数年待って見当たらないから
「もうイイわ!」と米国版を買ったのでした
そもそも、ザ・フーの「ライヴ・アット・キルバーン」とは
ザ・フー初のドキュメンタリー映画『キッズ・アー・オールライト』の制作にあたり、監督のジェフ・スタインは彼らのアーカイヴ映像と共に最新のライヴ映像を盛り込みたいと考えたワケで
ザ・フーは、1977年12月15日にロンドンのキルバーンにある劇場=ゴーモン・シアターにて撮影を目的としたシークレット・ギグを開催、ファンの前に1年ぶりに姿を現し
ジェフ・スタイン監督は映画撮影用の35mmカメラ6台を会場に持ち込み、バンドは15曲を演奏
監督は、その一部始終をフィルムに収めたそうな。
そのセットリストは
01. I Can't Explain
02. Substitute
03. Baba O'Riley
04. My Wife (by John Entwhistle)
05. Behind Blue Eyes
06. Dreaming From The Waist
07. Pinball Wizard
08. I'm Free
09. Tommy's Holiday Camp (by Keith Moon)
10. Summertime Blues
11. Shaking All Over
12. My Generation
13. Join Together
14. Who Are You
15. Won't Get Fooled Again
ザ・フー、1年ぶりのステージ・パフォーマンス。
観客もバンドもハイテンションだったが、やはり1年間のブランクによるアンサンブル不調とキース・ムーンの不出来を理由にバンドは同ライヴをオクラ入りにし、ライヴの再撮影を決定。
映画「キッズ・アー・オールライト」には、翌年のシェパートン・スタジオでのスタジオ・ライブ映像が使用され、キルバーンのライヴ映像はファンの目に触れる事は無かった・・・そうな。
シェパートンは「スタジオ・ライヴ」、キルバーンは最後の「シアター・ライブ」
・・・なんて言われるが
どっちも観客は熱狂してるし、あまり箱の種類で「あ~だ、こ~だ」言わなくてもイイんじゃないか?・・・とも思うが
ようするに不出来でオクラ入りだった映像だが、やはり貴重なモノなので、30年経った21世紀になって「音にも」「映像にも」デジタル・レストア施して公開してみたよ・・・という一品なワケだ。
そしてキースは、この9ヵ月後の1978年9月7日、薬物の過剰摂取が原因で亡くなってしまったので。
オリジナル・メンバーの最晩年ライヴとして、ファンからするとキルバーン公演は「感激の鑑賞」となるワケだ。
ロジャー・ダルトリー(VO)
ピート・タウンゼント(G/VO)
ジョン・エントウィッスル(B/VO)
キース・ムーン(D/VO)
風貌で言えば・・・
ロジャーは若いが顔の骨格がゴツゴツしてきた。ピートとジョンは体型こそ維持しているが、髭の似合うオヤジになりつつある。
キース・ムーンは放蕩がたたって往年の可愛らしい風貌から程遠いデブオヤジになりつつあり、
「最後のアルバム『Who Are You』レコーディングでもマトモに叩けなくなっていた」と、噂されていた時期。
注目は、発表前の「フー・アー・ユー」が試験的に演奏されているところ。
また、「無法の世界」のレーザー・ライトを使ったステージ演出やメンバーの衣装、ステージ・パフォーマンスなど「キッズ・アー・オールライト」のシェパートン・スタジオのライヴに通する要素が数多く見られ、それらを比較すると面白い。
さてさて、不出来といわれた「キルバーン」だが
それでも、やっぱり70年代のThe Wh♂ 。もともと完成度より勢い重視のライヴ・バンド。
一種異様なエネルギーが全編を支配する。私にとっては充分すぎる演奏と映像です。
ぶっちゃけ非公式なモノを含め色々とThe Wh♂のライヴ音源は聴いたが、みな荒かった。
ヘタクソでメチャメチャな物も少なくなかったですよ。
※当然スケール大きなメチャメチャさだから、それでも愛せましたが
むしろ、ライヴ盤の代表作「ライヴ・アット・リーズ」(1970年)こそ
「初の実況録音盤収録用のライヴだから、頑張って合わせたんだろう」と思うくらい、まとまって聴こえたもんです。
だから、私はキルバーンの演奏に落胆する事は無く、むしろ「リーズ」と「雑で荒いライヴ」の中間に位置し、橋渡しをする有難い存在であったのです。
たしかに、キース・ムーンは2曲目くらいで息上がってるっぽいし、
ロジャーは「オレたちも年とったな」とか言うし、
ピートのギターはチューニング狂うし、
ロジャーは「Dreaming From The Waist」の歌詞を忘れるし、(せっかくジョンが神がかったベース弾いてるのに・・・)
「ダメだ、やり直しだな」とかライヴの出来を否定するような言葉もあるし、
中盤は演奏が一丸となれずにバラバラになりかけるトコロもあったし
アラは見えますよ。
「次、なに演る?」ってトコロで
ロジャーが「オレは Summertime Blues だな」って言ってるのに
キース・ムーンが「Tommy's Holiday Camp がイイ」と捻じ込んで、皆が「仕方ないなぁ」・・・と始めたものの
結局は「あんたら、それでもプロか?」と言いたくなる程グダグダな演奏に終始
そこでのキースの歌唱もヒドイし、裏声なのに声が出ないし。
※まぁ、「キッズ・アー・オールライト」の「バーバラ・アン」を
見た人なら想像出来るだろうが・・・
でもね、
続く「Summertime Blues 」では何事も無かったかのようにワイルドに同曲をキメるし。
69年の曲も75年の曲も同じテンションと破壊力で演奏するし、その初期衝動は後発のパンク・ロック連中にも負けていない。
「30以上のヤツは信じるな」と言ってたヤツが、30歳にもなって「若いうちに死にたい」、「たかが10代の荒野じゃないか」と歌う事は滑稽・・・
77年といえば、そう言われ始めた時期だろうか。
80年代には「ギャグだよ」と吐き捨てる若手バンドも居た。今でも居る。
しかし、「10代の荒れ地(Teenage Waistland)」は、20才を過ぎても心の中で燻り続ける。
物心ついて以降、10代で固まり始める自我は、一生、身の回りとの折り合いが付かない。
要するに、我々は30になっても40になっても50になっても
「Teenage Waistland」で足掻き続けるのだ。
そして、それに疲れてヘタリ込んだ時
ピートの声か聞こえてくるのだ。
「嘆くな、下を向くな、たかが10代の荒野じゃないか!」・・・と。
ロジャーの声が聞こえてくるのだ。
「さあ、顔を上げろ、歩き始めるんだ」・・・と。
The Who - Won't Get Fooled Again (Shepperton Studios / 1978)
VIDEO
※動画は「キッズ・アー・オールライト」の「無法の世界」
さすがにキルバーンよりは完成度高いです。ロック史最強のLIVE映像・・・。
やっぱ、The Whoイイなぁ・・・。
ホント、「シェパートン」のライヴ映像も、フルで公式発売して欲しいですなぁ・・・。